<後編>

「あむ……ん……ちゅっ……」
 薄桃色の唇が、赤黒い固まりを貪欲に飲み込む。
 じゅぐ、じゅむ――唾液を絡める音が響き、んはあと口を離した時には細く糸を引き、真央はうっとりと唾液に濡れた剛直に頬ずりをする。
 ベッドから下り、まるで下僕のように跪いて、むしゃぶりつく。月彦はその様をベッドに座ったまま見下ろす形になる。
 見慣れたといえば見慣れた光景。ただ、現在居る場所が、真央の姿が月彦の中に軽い混乱を呼び覚ます。
 ブレザー姿の真央。そしてここは自室ではなく学校の保健室。だというのに――
「……ぁ、ふ……父さま、気持ちいい……?」
 月彦の危惧を知ってた知らずか、真央は剛直にキスをしながら上目遣いに見上げてくる。両手を艶めかしく動かし、焦らすように擦りながら、見ようによっては慣れぬ場所での行為に戸惑う月彦をからかっているようにも見えなくもない。
 真央が悪戯っぽく体をくねらせて、ブラウスごと大きな胸を揺する。ごくり、と月彦が生唾を飲むのを見て、真央は再び剛直をくわえ込んだ。
「んっ……ぷ……んんっんっ……じゅぷっ……じゅぷっ……ふっ……んんっ……」
「ぁぁっ……くッ、ま、真央……やっぱり、こういうのは……」
 下半身からしびれのような快感が広がり、月彦はとっさに真央の頭を掴んだ。それは真央の頭の動きを制止はしたが、口の動きまでは止められない。
「んむっんっ……んっはっ…ちゅは…れろっ……んっ」
「っっっ……真央、やめっ……!」
 先端部をこれでもかとなめ回され、月彦は腰を引いて真央の口戯から逃げようとした。が、真央は強引に身を乗り出してきてそれをさせない。
「っっっ――――!!」
 がくんっ、と月彦の体がぶれた刹那、真央の口腔に熱いものが溢れた。
「んんんんッ!!!!」
 真央が苦しげに噎ぶ。その喉が、こくり、こくりと鳴り、月彦は真央の頭を掴んだままはーっ、はーっ、と荒く息を吐いた。
「んはっ……ぁ、んっ……父さま……いつもより、早い……」
 剛直から唇を離し、辿々しい口調で言う。ねばついた精液が舌にからみついているのか、いささか喋りにくそうだった。
「ね……父さま。次は……真央にも」
 口腔内に残った精液を舌の上で転がすようにして味わいながら身を乗り出し、甘えてくる。月彦の胸元に頭を擦りつけるようにしながら、精液と唾液のからみついた剛直を白い指先で弄る。
「…………知らないぞ、バレても」
 月彦は半ば怒ったような口調でそれだけ言うと真央の腕を引きベッドに押し倒し、組み敷いた。
「あぁ……父さま…………」
 真央は満足そうに声を漏らし、期待の籠もった目で月彦を見上げる。畜生、と月彦は心中で軽く毒づきたくなってしまった。
 真狐だけではない。自分は真央にも良いように操られているのではないか――そしてそれが判っていて尚、目の前にある愛娘の体を陵辱したくて堪らなくなっている自分を止められないのが腹立たしかった。

 残り時間は一体何分だろう――授業時間は、保険医が戻ってくるのは、あの子、由梨子が室内に入ってくるのは何分後の事だろう。
 考えても詮ない事だった。眼下には制服を着崩した真央――ブラウスのボタンは半ば外され、ブラはまくし上げられ、白い乳房が覗いている。普段から窮屈そうにしまわれていたそれは拘束するものは何もなくなったとばかりに零れ出て、愛撫されるのを待ち望んでいるようだった。
 月彦はブラウスの隙間から手を差し込むようにして巨乳を捏ねた。母親ほどではない――しかし、同じ制服を着込んだ女生徒達の倍ほどはあるそれを慣れた手つきで丹念に揉む。
「あ、ん……あんっ……あっ……とう、さまぁ……」
 乳を捏ねられ、真央は喜びの声を上げながら体をくねらせる。制服と、シーツがこすれる音が思わずギョッとする程室内に響いて、月彦はとっさに手を止めた。
「やぁッ……」
 すぐさま真央が不満そうな声を漏らし、さらに体をくねらせる。催促されるままに愛撫を再開し、月彦は乳をコネながらその指先でピンと尖った突起をくりくりと擦った。
 真央が背をのけぞらせ、可愛い声を上げて鳴く。月彦は覆い被さり、「声が大きい」――と耳元で囁くように言った。
「だって……」
「あんまり大きな声を出すなら、もうしてやらないぞ」
「んっ……!」
 囁かれ、ついでに耳を――当然人と同じ形のそれを――舐め上げられ、とっさに声を出してしまいそうになるのを真央は口をつぐんで我慢した。
「いい子だ……」
 月彦は甘い声で囁いて、さらに真央の胸元をまさぐる。
「んっ……んっ……んんっ! んっ!」
 顔つきの割に豊満な胸をまるで粘土か何かのように好き勝手捏ねられ、真央は喉奥で噎ぶ。尖った先端をくりくりと弄られ、指先で擦られ、つぶすように押し込まれ、自室であれば甲高い声で喘いでいる所を、無理矢理我慢する。
「んっ、んんんんっんん−−−!!!」
 耳元から首筋へと舐められ、そのまま乳を吸われる。尖った先端を軽く噛まれ、くにくにとさんざんに嬲られる。真央は口をつぐんだまま腰を何度か撥ねさせ、ベッドの上で暴れた。
「真央、静かに……」
「そん、な……」
 愛撫が止み、真央は漸く唇を開けた。
「と……さま、お願い……はやく……欲しい…………」
「声、我慢できるのか?」
 軽く乳を揉みながら、問われる。真央はこくこくと頷きながら、自分に被さってきている父親の下半身を見た。
 先ほど出したばかりだというのに、あの屹立。最早驚く事ではない。この父親に限ってはむしろたった一度で萎える方が驚くというものだ。
 乳を揉みながら余程興奮しているのだろう。先端から迸った先走り汁が糸を引いてスカートに小さなシミを作っていた。その様を見て、真央はますます胸を高鳴らせ、興奮してしまう。
「判った。真央……尻、上げて」
 こくん、と頷いて、真央は狭いベッドの上で寝返りを打ち、四つんばいになった。月彦がその後ろに回り、スカートをまくし上げるのが判った。
「ぁっ…………」
 視線を感じて、思わず声が漏れる。尻を差し出すように四つんばいになっている真央からは、月彦の顔は見えない。見えないが、今、月彦が何処に目を向けているのか、真央には痛いほど判った。
「……下着、透けまくりだな」
「あっ……やッ――」
 すっかり濡れそぼり、湯気が出そうな程に火照った場所を指先で撫でられ、真央はびくんと体を揺らした。
「真央、声」
 威圧的な声で月彦はそれだけ言うと、真央の尻をなで回し、下着の上から秘裂を嬲った。
「ぁ……ぁッ……っっっくぅぅぅぅぅン……!」
 シーツを握りしめ、愛撫に耐える。いっそいつぞやのように術で音を消してしまえれば楽なのだが、耳も尻尾も隠した状態ではそれも出来なかった。
「ンッ……やっ……」
 きゅっ、と下着が引っ張られ、濡れた生地越しに秘所が浮き出る。真央はその様を想像し、顔を真っ赤に染めた。見られてる――そう思うだけで体がどうしようもなく疼いた。
「凄いな、ぐしょぐしょだ。いつからこうだった?」
 濡れた生地越しに秘裂を撫でられながら、囁かれる。
「それは……さっき、父さまのを……口でしてる時、から……」
「嘘だろ?」
「ン……!」
 くいっ、とさらに下着が引っ張られる。
「本当はみんなにジロジロ見られてる時から、濡らしてたんじゃないのか」
「……そんな……ち、がう……」
「そのまま授業受けてたら椅子までびしょびしょにしてしまいそうだったから、保健室に逃げ込んだんじゃないのか?」
「……っ……ちが、う…………ちがう、の……」
 真央は必死に否定する。が、月彦の目の前できゅうと下着を食い込ませたそこはまるで自白をするようにとろとろと生地越しに蜜を溢れさせていた。その表面、今にも滴りそうな滴を指に絡め取り、再度下着に塗り込むように擦りつける。
「ぁっぁっ……やぅッ……!」
「どうやら、本当に違うみたいだな。俺の勘違いだった。真央はそんなにはしたない娘じゃあないよな。真狐とは違うんだから」
 しゅっ、しゅっ、と下着を擦る。ぁっ、ぁっ……と真央が小さく声を漏らす。
「男の視線を集めて肌を火照らせたりしないし、自分がシたくなったからって強引に男をベッドに引きずり込むような事は絶対にしないもんな」
「っ……やっ、と……さま、そんな、事……言わな…………酷い……」
「酷い? 酷いのは真央の方だろう」
「私……?」
「ああ。今日真央を見た連中、間違いなく帰ってから真央の事をオカズにオナニーをするだろうな。それも一回じゃ収まらなくて、何回も」
「やっ……オカズって……」
「体育の時とか、みんな真央の胸や足見てたからな。相当ムラムラしてたと思うぞ。……事実、俺もかなりムラムラさせられた」
「……っ……やっ、と……さま、もう、言わないで……」
「真央は自覚が無いかもしれないが、まともな性癖の男から見れば真央の体は極上のエサみたいなものだからな。そんなのをいやって程見せつけられてそれでお終いってのはある意味拷問だろ。ならせめて想像の中で――」
「っっ……っ…………」
 皆が自分をオカズにする――そう言われ、嫌悪するのが普通。事実、真央は嫌悪した。だが、己のうちに湧いた感情は嫌悪だけではなかった。
 数多の男子が、自分を犯す所を想像しながら自慰にふける――その様を想像してしまった時、真央が感じたのは紛れもない快楽だった。
「まあ、こんな事言っても真央は嫌がるだけだろうけどな。そんなんで喜ぶのはアイツくらいのモンだろうし」
 そう――自分は母さまとは違う――とっさにそう思って、先ほどの淫らな妄想と、それによって湧いた快楽を打ち消そうとする。消そうとする――が。
「……どうした、真央。さっきより濡れてきてるぞ」
「っ……!」
 月彦の手が、指先を真央のものでとろとろに濡れそぼったそれが眼前に差し出される。
「ぁ、ぅ……」
 顔が、羞恥でさらに赤く染まる。
「……想像したんだろ。自分が犯される所を」
 怒気すら含んだような声。心を見透かされたような気がして、真央がハッと息を飲んだ刹那、唐突に――
「……きゃっ……!」
 下着が太股まで下ろされた。そのまま両手で尻を捕まれ、親指で秘裂を開かれる。
「全く、似なくていい所ばかり似て……悪い子だな。真央は…………これはお仕置きが必要だな」
「ぁぅ……!」
 お仕置き――その言葉に、真央はゾクリと体を震わせた。

「ぁッ……ぁッ……と、さま……ぁッ……ン!」
 ゆっくりと、堅い剛直に貫かれる感覚。同時に真央の中の牝の部分が歓喜の声を上げ、歓迎するように締め付ける。
「相変わらず、だな。真央の中は……狭くて、きゅうって締まって……暖かくてぬるぬるで……凄ぇ、気持ちいい」
 被さってくる月彦の呻くような声、余裕が全くない声からそれが真実だと判る。自分の中で月彦が気持ちよくなってくれていると思うだけで、真央の快感も何倍にも膨れあがる。
「ぁぁぁ……いいっ……と、さま、の……奥、まで、来て、る……ぅッ……ぁっあンッ!」
 ずんっ、と唐突に奥を小突かれ、真央はつい声を漏らしてしまう。静かな室内に軽い反響が残る程の声に、月彦もしばし動きを止める。
「まーお、次声出したら、本当に止めるからな……?」
 真央はこくりと頷いて、シーツを噛んだ。程なく、下半身を貫いている肉柱が動き始める。
「んッ……ん……っ……ぁ、ッ……んっ……ふっ……んッんんッ!!」
 決して小さな声とは言い難かったが、普段睦み合っている時の真央のサカり声に比べれば遙かにマシだった。
 そう。声を出されては月彦とて困る。困るが、――目の前でベッドシーツを噛んでまでけなげに声を押し殺している姿を見ると、どうしても悪戯をしてみたくなるのだった。
「んッ…………!?」
 背後から突いているが故に丸見えになっているもう一つの挿入口をそれとなく触れる。軽く指を埋没させて挿れるか――と見せかけて引く。そんな悪戯はまだ序の口。
 ブラウスをまくし上げ、背中を露出させて突きながら背骨に沿って舐め上げる。ンンンンンッ――真央が喉を鳴らしてそれをこらえる際に下腹部に力がこもるのか、締め付けが増して月彦もまた呻く。
 ひとしきり背中を舐め、耳を舐めた後は不意に脇腹を突いてみる。これには真央も不意を突かれたのか、一瞬噛んでいたシーツを離した。刹那、ここぞとばかりに腰を使って奥を小突く。
「やっ、ぁッ! だめっ……だめっ、と、さま……ぁッ……ぁッ……あんっあッ……やっ…!」
 口を噤む間を与えられず、良いように責め立てられる。ひとしきり真央の膣を陵辱した後で、月彦は不意に動きを止めた。
「……声、出したな?」
 態と恐い声を出す。ひっ、と真央が月彦の下で身を固くするのが判った。その反応がかわいらしくて、月彦は思わず笑みをこぼした。
「……それとも、俺の気のせいか?」
 だから、すぐに助け船を出してやる。真央は僅かに月彦の方を振りかえってこくこくと頷いた。
「そうか。ならいい」
 再び、抽送を開始する。真央は先ほどまでと同様にシーツを噛んで耐える。が、月彦の動きが早くなるにつれてそれでも声を押し殺せなくなりつつあった。
 それだけではない。二人が動く事によっておきる衣擦れの音、ベッドが軋む音も問題だった。肉柱が前後するたびにぐじゅ、じゅぷと粘度のある液体に気泡が混じり、潰されるような音が室内に木霊し、響き渡っていた。
 仮に誰かが、唐突に室内に入ってきたら、即座に何が行われているのか判るほどに、最早保健室内は牡と牝とがまぐわう音で埋め尽くされていた。
「はぁっ…、あんっ! あっ、ンン! あッあぁッ、あっぁぁッあッんッ! あっ……と……さま、とう……さまッ……あっあっあんッ!!!」
 嬌声は押さえ目とはいえ、真央はもう口を噤んでいなかった。噛んでいた箇所のシーツは唾液でぐっしょりと濡れ、シミを作っていた。月彦に良いように突かれている場所も同様、抽送の度にぐぷぐぷと音を立てて泡立った蜜が滴り、シーツにシミを残す。
 真央は当然、月彦もまた絶頂を前にそれらに対する気遣いを失っていた。否、月彦はまだ、快楽に溺れきっている真央に比べれば、まだ幾分冷静だった。
「は、ぁ……はぁッ……真央、このまま、中に出さず、制服にかけたら、どうなる、かな……?」
 被さり、密着して両乳をぎゅうぎゅう揉みながら腰を使い、囁く。
「ぇ……と、さま………なに、を……」
「スカートに、ブレザーに、たっぷりとかけたら、ちょっと拭いたくらいじゃ匂いまではとれないだろうな。ここじゃあ着替えもないからな、家に帰るまで、誰にも気づかれないかな?」
 ぐっ、ぐっ、と先端で膣奥を押すようにしながら、囁きかける。
「やっ……とう、さま……冗談、だよ、ね……?」
「さっき“仕置きをする”って言っただろ?」
 ひっ、と真央が悲鳴を漏らす。それを確認して、月彦は真央の中で一気に剛直を暴れさせる。
「やッぁうッ! うんッあんッ! だ、めッ……と、さま、おねがっ……そんな、事、され、たら…やぁぁッ! ひんっ、ぁっぁッ…もう、学校、来れなく――あんッ!」
 月彦は答えを返さず、はぁはぁとケダモノのような息づかいでひたすら真央の中を陵辱する。
「だめっ……だめっ、ンッ……ぁっぃッ……! ぁぁっぁッと、さま……中っ、中に……出しって……お願い、と、さま……ぁッ、ぁッぁっ……やっ、ッやっ……嫌っ、嫌っぁぁあッ!!」
 真央が悲鳴にも近い声を出しかけた時、ひときわ深く剛直がめり込み、そこで爆ぜるように獣液が溢れ出した。
「ひん――ッ!」
 想像とは全く違った――膣内での射精に真央は驚くと同時にぶるぶると体を震わせた。それは大好きな牡に中出しされた牝として、半ば条件反射とも言える反応だった。
「ぁっ、ぁ、ぁ、ぁ…………ひぃっ……凄っ……あつ、いの…………いっぱい……ぁぁぁ……はぁあん……………………」
 制服にかけられなかった事への安堵と、中出しの快楽。そう、月彦に中出しされる――ただそれだけで、真央の興奮は限りなく高まり、容易にイく。
「ああっ……あっ……やっ……まだ、動かさなっ……くぅぅっ……ぁっ……やぁぁ……擦りつけ、られてる………………」
 膣内で剛直が動き、その都度濃い精液が膣壁に塗りつけられ、途方もない快楽をともなって真央は断続的にイかされ、蕩かされる。まるでマーキングをするかのようなその行為を真央は恍惚として受け入れ、尻だけを突き上げたまま、だらしなく舌を突きだしたまま、はーっ、はーっ、とただ呼吸を整えるのみ。
「……本当に俺が制服を汚すと思ったか?」
 優しい声をかけられ、頬にキスをされる。
「真央が本気で嫌がる事を、俺がする筈がないだろ」
 そう言って、月彦は優しく真央の髪を撫でた。
「ふぁ…………父さま…………」
 蕩けたまま。まだ脳に白濁色の霧がかかったまま、真央は甘えるように月彦にしがみつく。そのまま、絶頂の余韻に浸れればきっと幸せだったのであろうが――
「っ……チャイ、ム――?」
 月彦の耳に飛び込んできたのは紛れもない授業終了を告げるチャイムの音だった。楽園の終わりを告げるようなその音に、真央も月彦もたちまち青ざめた。

 真央に大あわてで服を着せ、ベッドの始末をして(といっても手がなく、仕方なくマットを裏返しにして誤魔化すことにした)保健室から飛び出すと、そこには由梨子が律儀に立っていた。
「……随分長いお見舞いでしたね」
 何処か棘の抜けきれていない言葉使いでそう言って、かるく睨むような視線を月彦に向けた後、その後ろに立っている真央に目をやった。
「紺崎さん、もう気分はいいんですか?」
「うん……心配かけてごめんね、由梨ちゃん」
「いえ。紺崎さんが良くなって何よりです」
 それじゃあ教室に戻りましょうと真央の手を取って歩み出そうとする。月彦はまるで空気かなにかのように無視され、ふとデジャヴのようなものに襲われた。
「あっ、待って……」
「……?」
「あの……教室に戻る前に、ちょっと……トイレに……」
 真央は顔を赤くしながら呟き、横目でちらりと月彦の方を見た。ああ、教室に戻る前に“処理”をしないとな――と月彦は合点がいった。
 女子トイレの前まで行き、由梨子も習って一緒に入ろうとしたのを月彦は呼び止めた。一瞬、あからさまに不快そうな顔をされたが、真央一人の方がいろいろとやりやすいだろうと思うから耐えねばならない。
 それに、少し聞きたい事もあった。
「なあ、一つ聞いてもいいかな?」
「どうぞ」
「どうして、そんなに真央の面倒を見てくれてるんだ?」
 まさか教師に言われたからではないだろう――と月彦は当たりをつけていた。もっと何か別の力が働いているという確信めいたものがあった。
 案外、この由梨子という生徒は真狐が化けているのではないか――そんな疑いすら月彦は抱いていた。ああ見えて時折子煩悩な所があるのを月彦は知っていた。もし真狐本人ではなくともその息がかかった者ではないかと疑っていた。
 が、それらの月彦の予想は結果的に全て外れる事になった。というのも――
「紺崎先輩に頼まれたからです」
 由梨子がいけしゃあしゃあとそう答えたからだった。
「……俺?」
 問うた刹那、眼前の女生徒の顔がゆがんだ。侮蔑のようでもあったし、怒りのようでもあった。さながら、一神教の信者がその唯一神である動物に似た神をただの動物と一緒にされた時に見せるような――。
「あ、ひょっとして……姉ちゃんの……?」
「……はい」
 怒りをさやに収めるように息を吐きながら、由梨子は頷いた。
「紺崎……霧亜先輩に、真央さんに悪い虫が付かないように守る様、頼まれました」
「なるほどなぁ……姉ちゃんに後輩の知り合いが居たなんて知らなかったな。部活とか何もやってなかった筈なんだが……」
 そうかそうかと頷きながら、月彦は興味深そうに由梨子の顔を見た。
「……そんな事、貴方には関係ない筈です」
 途端、由梨子は俄に顔を赤くして吐き捨てるように言う。怒ったようなその口ぶりになにか気に障る事でも言ったのかなと月彦は首をかしげる。
「まあ、そうだな。そんなのはどうでもいい事だ。宮本さんって、言ったかな。これはごくごく個人的な質問なんだけど」
「何ですか」
「真央のことは、好きなのかな?」
「好感は持てます」
 感情のこもらないような声で即答する。月彦は少し首を捻るも、まあ少なくとも嘘ではあるまい、と判断する。
「だったら、姉ちゃんに頼まれた事とは別として、真央の友達になってやってくれないか?」
「……?」
 今度は由梨子が不思議そうな顔をする番だった。
「いや、ほら……先輩に言われたから一緒に居るとかじゃなくて自発的にというか……嫌、俺が促してる時点でもう自発的じゃないか。うーん……なんて言やいいんだろ……」
「真央さんと仲良くしてほしい、という意味なんでしたら、既にそれは達成されていると思います。私……真央さんの事、嫌いではないですから」
 真央の事は嫌いではない――そう言う由梨子の目には何処か不思議な光が混じっているように見えた。好意そのもの――ともとれるが、かといって敵意ととれなくもない。
「もう良いですか。貴方とあまり話をしてはいけないと霧亜先輩から厳命されてますから。本当なら一緒にいる所を人に見られたくもないんです」
「…………ひでえ言われようだ。鬼かあの女は」
 ここに来て漸く、月彦は由梨子が自分を避けるような言動をしていた理由が分かった。あの姉の使徒であれば無理もない。由梨子に大して怒るのは筋違いだとも思うから腹も立たず、かといってあの姉に逆らう勇気もないから結局泣き寝入るしかないのだが。
「判った。とにかく疑問は無くなったし、不安も幾分解消された。俺は教室に戻るから、真央の事はよろしくな」
「言われるまでもありません」
 敵を見るような目に見送られて、月彦は自分の教室に向けて歩き出した。が、三歩と進まず、不意に振り返った。
「…………さっき……さ、聞こえた?」
 小声で聞いてみる。
「何がですか?」
「いや、聞こえなかったなら、いい」
 月彦は踵を返し、足早にその場を去った。

 授業が終わるのは、真央達一年の方が早い。放課後、月彦はそれとなく真央のクラスの方に行って見たが、既に帰った後のようだった。
 多分、あの女生徒と一緒に帰ったのだろう。それは容易に想像がついた。それならそれで構わない。学校でもあまりべったりとなると、それだけで妙な噂になりかねない。
 ただでさえ、心ない友人達に真央との関係を邪推されて困っているのだ。あれだけ可愛い従姉妹と同居していて手を出さないのは男としてどうかしている――などと罵る者も居るくらいだ。ごもっとも、その意見には月彦も大賛成だ。だからといって毎日ヤりまくってる等とは口が裂けても言える筈はなく、だから正確には連中のそれは邪推などではなく、現実のほうがもっとスゴい事をしているという事になる。
 とはいえ、真実を言えないことには変わりがなく、それでいてあまりに真央の情報開示を求める声がしつこいからその場の勢いで真央にはもう彼氏が居ると言い放ってしまった。友人達の落胆ぶりはそれはもうすさまじく、そして同時に『あれだけ可愛ければ当然か』と納得も早かった。ごくごく少数の男子だけ『そいつを呪い殺してやる』等と物騒な事を言って居たが、実在しない人物を呪い殺す事など出来るはずがないので月彦は無視した。
 いつものように途中までの帰路を友人達と連れだって歩き、家につくや否や真央の姿を探した。
「真央ちゃんなら二階よ」
 と、葛葉が夕飯の支度をしながら言うので、月彦は二階に駆け上がった。が、自室に真央の姿は無く、変わりに霧亜の部屋からは楽しげな話し声が響いていた。
 さては、と思ってそっとドアの前に忍び寄り、聞き耳を立てようとした刹那唐突にドアがあり得ない速度で開いた。
「うがっ!」
 ちょうどドアノブがこめかみにヒットする形となり、月彦は悲鳴を上げて廊下に転げ回った。
 ドアは何事も無かったように締められ、中からは相変わらずの話し声。勿論誰の仕業かは分かり切っていた。
『姉様、どうしたの?』
『なんでもないのよ。誰か居る気配がしただけ』
 そんな話し声が中から聞こえる。思い切りドアを当てておいてなんでもないと言い放つ辺り、やはり故意だと確信する。
「ぅう……痛ってぇ……」
 多少腹が立ったが、しかしこれ以上痛い目にも遭いたくないので月彦は仕方なくすごすごと自室に戻った。だからといって、自分は決して腰抜け等ではない。長年続いた姉弟関係というのはそうそう容易く覆せるものではないのだ。と、月彦は誰にともなく、心の中で弁明をした。


 結局真央とは夕食の時に顔を合わせ、学校での出来事を興奮混じりに喋る真央のお陰で紺崎家の食卓はいつになく賑やかなものとなった。無論黙るべきことは黙り――そう、たとえば保健室でのすったもんだとか――初めての授業がどうだったとか、クラスメイトどどういう話をしたとか、そんな話が大半だった。ちなみに霧亜は夕食前に何処かに出かけ、そのまま戻って来なかったが珍しいことではないので家族の誰も気にしなかった。
 夕食の後はほぼいつも通り。風呂に入って、九時過ぎには自室に戻る。寝間着に着替えて――それとなく過ごす。そう、それとなく。
「なんか……疲れた、な……」
 月彦は自室のベッドにごろりと横になった。さて、今日は体育があったわけでもないのになと記憶を振り返って、一つ大いに疲れた要因を思い出した。
 異様な状況での交尾。誰がいつ入ってくるとも知れない緊張感。それらのせいでどうやら普段の数倍近い疲労となったようだ。慣れないことはするものじゃない。そもそも慣れてしまったらそれはそれでコトだ。
 かちゃりとドアノブが回って、湯上がりらしい真央も部屋に入ってきた。が、月彦は真央の格好を見て少々面食らった。
「真央、その格好……」
「うん。似合う……?」
 真央はやや恥ずかしそうに首をかしげて訪ねる。似合うも何も、真央の格好は耳や尻尾以外は昼間のそれ――制服、ブレザー姿なのだ。
「これ、姉様にもらったの」
 ああ、なるほどと月彦は思った。どうりでやや色あせている筈だ。それに体格が合ってないのか、真央のものよりいささかむちっとした感じになっている。胸元などは如何にも苦しそうに張りつめている。
「でも、真央は自分のがあるからお下がりなんて着なくてもいいだろ?」
「うん。でも……二着あったほうが、いいかなって……思って」
 真央が意味深に呟いて、それとなく月彦の側に座る。
「まあそりゃ、何かあった時のためにスペアはあった方がいいだろうけど」
「そうじゃなくて…………」
 真央は月彦の方をチラ見しながら、もごもごと口籠もっている。
「二着あったら、一着汚しても……大丈夫、でしょ……?」
 そりゃそうだ。何を当たり前のコトを――と月彦は言いかけて、はたと考えた。
「今日、ね……父さまに制服を汚される、って思った時、すっごくドキドキしたの」
 もじもじしながら、真央は何かを期待するような目を向けてくる。
「……つまり、真央はどうして欲しいんだ?」
「そのっ……昼間、父さまが言ったみたいに…………」
「汚して欲しい?」
 こくり、と真央はうなずく。そして、体を預けるようにもたれかかって来た。

「つまり、こういうことか。真央は昼間、俺に言われたことが忘れられなくて、犯されて汚される為にわざわざ姉ちゃんに替えの制服をねだって、もらってきたと」
 真央は反論せず、ただベッドの橋に座る月彦にもたれかかり、こくんとうなずいた。
「姉ちゃんには、制服を何に使うのか、ちゃんと言ったのか?」
 もたれかかってくる真央の髪を撫でながら、訪ねる。
「姉様には……汚れた時の為に替えのが欲しいからって……」
「なるほど。嘘じゃあないな。……でも、本当でもない」
 真央の胸元に手を伸ばし、窮屈そうに仕舞われた胸を掴む――そう見せかけて、胸元で結ばれたリボンの先を指先で弄ぶ。手を伸ばした一瞬身を固くした真央が、明らかに落胆したように吐息を漏らした。
「…………下着、つけてないのか?」
 よくよくブラウスを見てみると、真央はブラをつけずに直接ブラウスをつけているようだった。早くも堅くなり始めた突起が、ブラウス越しに自己主張を始める。
「姉様の……小さくて……ブラつけたら、窮屈、だったから……」
「……嘘、だろ?」
「んっ……!」
 ブラウス越しに胸を揉まれ、真央は喉を鳴らす。
「制服を着たまま、こうして揉んで欲しくて、下着をつけなかったんじゃないのか?」
「……ぁ……っ……」
 真央は頬を赤らめたまま、否定も肯定もしない。月彦はくすりと笑みを零して、真央の期待通りブラウスごと巨乳を捏ねてやる。
「あっ、あっ……あ、んっ……あっ……」
 衣擦れの音を立てて、真央が悶える。月彦はひとしきり揉むと、ブラウス越しに尖っている先端の辺りに唇を近づけ、軽く食んでみた。
「んっ……!」
 生地ごと舐め、鼻を擦りつける。ブラウス生地ごしにも、真央の体が火照ってくるのが判る。
 月彦は胸を揉んでいた手をそのまま下げ、スカートの中へと忍ばせる。真央がまた、僅かに身を固くした。
「下はつけてるのか。偉いな、真央……」
 月彦は呟いて、そして一気にショーツを太股までズリ下ろす。
「きゃッ……!」
 いきなり脱がすとは想定外だったのか、真央も悲鳴を上げてしまう。
「俺がこうやって脱がすの好きなのを知ってて、態と下だけは履いて来たんだろ?」
「ぁっぁっ……やっ……う……そん、な……いきなり、なんて……」
 いつもなら下着がぐしょぐしょになるまで脱がせず、下着越しに指で弄ってくるのに。今回の月彦はそれをせず、先に下着を脱がせてから、熱を帯び始めた秘裂にゆっくりと指を這わせる。
「ぁっぁっ……う……」
 熱を帯びた秘裂が、急速に潤い出す。愛しい相手の指を受け入れるべく、蜜を溢れさせる。たちまち、月彦の指の動きに合わせてくちくちと音が鳴り始める。
「いつもならもっと焦らすところだが……そうだな。今日はもう挿れる、か」
「えっ……やだ、と……さま、まだ無理っ……」
 抵抗むなしく真央はベッドに組み敷かれる。取り出された剛直には早くも先走り汁が浮かんでいて、月彦は態とそれをスカートに擦りつけた。
「あぁ……ぁ……」
 真央の脳裏に、保健室での……先走りから漏れたそれがスカートを汚した時の光景がフラッシュバックする。そう……あの時と同じように汚されている。でも、まだ――
「まだまだ――だろ?」
 まるで心を見透かされたような言葉。月彦はそのまま真央の足の間に体を入れて、覆い被さってきた。
「あっ……やっ……ン! と、さま……うっ、くッ……は――!」
 まだ十分にこなれていないそこに、醜悪な肉塊が埋没していく。潤いは十分、しかしそれでも下腹部を襲う圧迫はいつもとは比較にならなかった。
 はっ、はっ……と細かく、浅く呼吸をする真央に月彦は被さり、そのまま体重を掛けながら一気に膣奥まで貫く。
「ぁっあッ……ぅぅぅぅううッ!!!」
 苦しげに呻く真央の唇を鬱ぎ、舌を絡めて口腔を蹂躙する。
「んっ!……んんっん! んっ!」
 キスをしながら下半身をくねらせ、こなれていない膣をかき回す。組み伏せられた真央の体がびくんっ、びくんと撥ねるが、月彦の力は緩まない。
「んむっ、んっ……ちゅっ、んっ……はっ……ぁ……真央、いい……ぞ……んっ……」
 たっぷりとキスを堪能、そして真央の膣の感触を味わいながら、月彦は真央の髪を撫で、頬を撫でてキスをする。
「あっぃッ……とう、さま……やんッ! あっう、あッ……は、あん! あっ……はぁっはぁッ……んッ!!!!」
 ぐっ、と剛直を押し込まれて、真央は堪らずのけぞった。同じに負荷に耐えかねたのか、胸元のボタンが一つはじけ飛んだ。隙間からは、俄に上気した乳房が覗く。
「くす……やっぱり小さいみたいだな。破れる前に、もう一つくらい外しておくか」
 今にもはじけ飛びそうなボタンを外し、月彦はそこから手を差し込んで乳を捏ねる。捏ねながらなおも真央の膣を味わう。
「はぁっ……はぁっ……んっ! ぁっ、ぁっあっああああぁッ!!! あっひっ……ぁぁっ……はぁっぁあッ……くぅぅッ……ぅン!!」
 剛直を差し込むたびに体をくねらせて悶える真央を見下ろしながら、月彦は愉悦に浸っていた。さしたる抵抗をするわけでもない両腕は真央の頭の上で束ね、押さえつけている。
 いつもより、些か暴力的な交接。それはひょっとしたら――あの鼻持ちならない姉への復讐――そんな心が混じっていたからかもしれない。
 真央が身に纏っているのは紛れもない、かつて霧亜が来ていた制服。そしてそれを纏った真央を組み敷き、姉と重ねながら犯し、いたぶることでささやかな仕返しを――否、それとこれとは違うと、月彦は心の中で頭を振る。第一、自分には血を分けた姉に対して欲情するような性癖は皆無だと――納得させる。
「んぁっぁあッ! あっぃッうううッ!! とっ……さまっ……あんっ! とうっ、さまっぁ……私っ……もうっ……!」
 迷いを振り切るように遮二無二膣をかき回すと、たまらず真央が悲鳴を上げる。涙混じりに訴える、その叫びに、月彦は口の端をつり上げる。
「ああっ……俺も、もうそろそろ、だ――」
 はっ、はっ、とケダモノのような呼吸。抽送に合わせての呼吸故か、絶頂が近づくにつれて真央のそれとシンクロする。
「あっあッぁっあっ! あっ! あッ! あぁッ! あんっあっあっあっああんッ! あっあっあッ……と、さまっらめっ……も、イくッ……イッちゃうッ――!!!!」
 真央の中がきゅううっ!と締まる。月彦は反射的に剛直を押し込み、先端を膣奥に擦りつけるようにしてたっぷりと射精した。
「ぁぁぁうううッ!!!!」
 熱い奔流の感触に真央が甲高い声を上げ、びびびと尻尾を震わせ、どくっ、どくと膣奥に精液がはき出される都度、断続的に何度もイく。
「ぁ……ぁ……と……さま、どうして、中、に……」
「……かけてほしかったのか?」
 濃い液体で満たされた膣内で剛直が蠢き、真央は声を上げる。
「でも、まだだ。まずは真央の中にたっぷり出して塗りつけてから、最後に汚してやる」
「ぁぁ……そん、な……」
 失意、落胆――ではない。真央は期待と愉悦に濡れた目で月彦を見上げ、喉を震わせて歓びの声を上げた。


 前から、後ろからと体を入れ替えながら都合三度、真央は中出しされた。既に制服は着崩れ、それでなくても二人の汗で湿り、濡れていた。
 四度目の交接の後、月彦は予告通り中出しはせず、真央の制服を汚した。ブレザーを、リボンを、ブラウスを白濁色に染められて、真央は体を震わせてイッた。
 射精が終わった後、まるでティッシュか何かのようにスカートで剛直を拭われ、『舐めろ』と命令形で顔に剛直をつきつけられる。その様な扱いにすら真央は興奮を覚え、普段より下品な音を立てて剛直にむしゃぶりついた。
「ぁぁ……真央、いい……ぞ………………」
 真央の舌の動きに誘われるように、白濁が迸る。月彦はそのまま真央の口腔内にぶちまけず、真央の頭を掴んで剛直を半ば無理矢理に引き抜き、真央の顔を汚した。
「ぁ……あんッ! …………ぁ、ぁ……」
 ドロリとした白濁を髪に、鼻の上に、頬にぶちまけられて、真央はまた喉を震わせて喘いだ。
 髪も、顔も、胸元も、腕も、太股も余すところ無くどろどろにされて、その姿だけを見れば数十人に輪姦されて陵辱の限りを尽くされた後のように見えなくもない。
「凄い……父さまの、匂い……ぁっぁ………………」
 ただ、汚された真央自身は嬉々として――というよりは白く染め上げられた己にうっとりと蕩け、終始恍惚の様子だった。
「はぁ……ふう……これで、満足か……真央?」
 真央の体に塗りつけるように、剛直を擦りつけた後、月彦はベッドに座り込んだ。息がかなり荒い。
「うん……嬉しい……父さま、大好き」
 真央は汚れたままの制服で身を寄せて来たが、月彦は不思議と不快な感じはしなかった。
「あのね、父さま……」
 なにやらもじもじしながら、真央が切り出す。
「姉様にもらったの……制服だけじゃないの」
 ちらり、と上目遣いをされた刹那、月彦は嫌な予感がした。
「水着とか……体操着とかももらったの」
「そうか。よかったな、真央」
 月彦はなんとかそれで会話を終わらせようとした。しかしそれは無駄な努力だった。
「だから……今度はそれで……ね、父さま……?」
 ちなみに真央が言う“今度”というのは翌日とか後日という意味ではなかった。
 次の日の朝、元気一杯の真央に対して、月彦は弱った虫みたいになっていたそうな。後で悔いると書いて後悔――このままじゃいつか自分は娘に殺されると月彦は思いつつも、その場の勢いで求められるままに求められたことをしてしまう己が誇らしくも悲しかった。
 何はともあれ、真央はちゃんと学校に行けるようになったということで。めでたしめでたし。

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