バスの型式の調べ方
「入門その頃のバス」を始めたきっかけは、「昔のバスはよく分からない」というご意見でした。これは、今に始まった話ではなく、1970〜80年代当時から「バスはよく分からない」と言われていました。なぜ分かりにくいのか。その理由は、バスを分類するための基準である「メーカー」と「名前」を知ることが難しいからなのだと思います。「名前」つまり「型式」です。そこで、「入門その頃のバス」では、主にその二つを見分けるための手がかりを解説してきました。
しかし、そもそもバスの型式というのは何であって、それはどのようにすれば分かるのでしょうか。
バスの型式とは
昔の型式は、日野RE100とかいすゞBU20とか、比較的簡単な記号の羅列でしたが、様々な分類を記号により行うため、最近では、日野AGC-HU8JMFPとか、いすゞPDG-LR234J2とか、非常に複雑になっています。
バスの型式の調べ方(実地編)
実物のバスを対象に型式を調べる最も一般的な方法は、銘板を見ることです。銘板は、通常はバスの車内前方のダッシュボード下に取り付けられています。
これを見るためにはバスの車内に入る必要があります。営業用のバスの車内に入るには運賃を払う必要があります。更に一番前の席に座るか、一番前に立って銘板を凝視する必要があります。バスの混雑状況にもよりますが、他の乗客から不自然に映る可能性がある行為です。
バスの外から銘板を見るためには、前ドアが開いている時に覗き込む必要があります。これもはなはだ不自然な動作です。ドアが閉まっているときには、ドアのガラス越しに室内を覗き込むことになりますが、明るい車外から暗い車内を覗き込んでも、銘板を読み取るのは難しい作業ですし、重ね重ね不自然で怪しい動作と認識されます。
そもそも、銘板というのは10cm四方程度の小さなもので、型式の文字はプレス印字されていることが多く、光線状態によっては読み取りにくい場合があります。
ドアガラスの外からでは、Aと4とか、3と9とか、読み間違いを起こすことが多々あります。車内の一番前の座席からでも、同様の読み間違いをすることは少なくありません。
また、基本的には写真のようにシャーシメーカーとボディメーカーの銘板が両方ついているケースが多いのですが、どちらか一方しかなかったり、車体更新時の銘板が追加されたりすることもあり、短時間で「型式」「年式」というキーワードを押さえるのは簡単ではありません。
バスの型式を調べるというのは、非常に難しいことなのです。
なお、このほかに実車の型式を調べる手段としては、車検証の「型式」欄を見ることとか、シャーシに刻印された車台番号を見るなどの方法がありますが、他人様のバスについてこれらを見せてもらうことはまず不可能ですし、見せてもらおうとすること自体非常識なのでやってはいけません。
バスの型式の調べ方(文献研究編)
実車の型式を調べることが難しく、また不自然で怪しい行為であることが分かってもらえたかと思います。
そうなると、バスの型式を調べる無難な方法として、文献を調べるという行為が考えられます。
現在、そこそこ大きな書店に行くと、バスの雑誌が並んでいます。書店になくても、ネットで購入が可能です。バス関係書籍の中で、「BJハンドブックシリーズ」や「バスラマ・インターナショナル」のバス事業者訪問コーナーなど、バス事業者単位での特集記事に付随する車両データ一覧表は、バス事業者から提供を受けたデータであるため、その正確性はほぼ保証されています。
一方、Webなどで調べた場合も、該当車両の型式について記載されているページが多く見られます。これらも参考にはなりますが、特に個人ページの場合、それが実地調査に基づくものなのか、二次情報によるものなのか、推定によるものなのかが明確でない場合が多く、全面的に信頼できるかどうかは保証されません。
最後に、メーカーなどが発行しているカタログや広報誌などですが、これは一般客がそう簡単に入手できるものではありません。また、仮に入手できたとしても、そこに書かれている型式はほとんどが基本的な仕様の車両であるため、実際にバス事業者に納車されたあとの車両とは、出力や仕様が異なる場合もあります。
近年では排出ガス規制に基づく記号が付けられていますが、外観は全く同じでも年式により排出ガス規制記号が異なる場合などもあり、実物の型式を知ることは容易ではありません。
バスの型式の意味
バスの型式は、記号と数字の羅列のように見えますが、果たしてこの並びに意味はあるのでしょうか。
基本的には、意味があるとは思えません。個々の文字や数字に意味が紐付けられているのは分かりますが、それが簡単に全体を判別する手がかりにはなりません。また、メーカーによってもその基準が異なります。
古いバスの型式によく使われていた文字に、Bがあります。これはバス(BUS)を表すのではないかと思います。戦後に三菱が製造したボンネットバスはB1型で、トラックはT1型を名乗ります。同時期にいすゞのバスはBXでトラックはTX、日野のバスはBHでトラックはTH、などBのつく型式は枚挙に暇がありません。
またRはリアエンジンバスを示すようです。民生BR、日野RB,RC、三菱R2など、リアエンジンバスの初期型にRを使うものが多く見られます。
同様に、Uはリアアンダーエンジン(いすゞBU、日産デU)、Mはフレームレスモノコック(三菱MR)など、意味が想像できる型式はいくつかあります。
また、数字では、1970〜80年代のいすゞでは、CRA580などで三桁数字がそのままホイールベースのcmを表しており、バスの長さを知るのが容易でした。
ただし、これら分かりやすい例はほんの一部です。またこれらを含め、モデルチェンジごとに基準が変わりますし、そのルールを理解することも困難です。