入門その頃のバス


ドアの形状

ボディ バスのドアというと、折り戸や引き戸などの複数の種類が思い浮かびますが、同じ車両に2ヵ所あるドアの種類が同じでなかったり、また、事業者ごとなのか時代ごとなのか、異なる種類のドアが多数存在するというイメージがあります。
このように種類の多いバスのドアは、折り戸をベースにしながら、ワンマンカーの自動ドア化に伴う引き戸の登場、低床バスに使われるグライドスライドドアの登場、豪華貸切バスに使われるスィングアウトドアの登場など、時代ごとに変化をしています。そして、そのうちどれを選ぶかは、かつてはユーザー(バス事業者)に委ねられていましたが、次第にメーカーでの標準仕様から選択するように変わってきています。
ここでは、バスに使われているドアの種類の主なものをまとめてみます。
なお、10-1 路線バスのドア配置とは、一部の記述が重複する場合があります。


ドアの種類

開き戸

世の中のドアという物の最も基本的な形態が開き戸です。バスでも、昭和初期の写真を見ると、この開き戸を付けたバスが見られます。
しかし、開き戸は、ステップのあるバスの場合、内開きにはできません。外開きの場合は、道路の端に寄せてドアを開く時、ドアと同じ幅を左側に確保する必要があるなどのデメリットがあります。
1930年代(昭和10年代)には、内側に開く折り戸が採用され、開き戸は姿を消したようです。

スミダM型バス(1932年式)
開き戸

撮影:キュリアス編集室様(いすゞ藤沢工場 2016.12.25)

折り戸
折り戸(2枚)
中国JRバス 三菱U-MP618M(1994年式)
折り戸

撮影:防府駅(2016.5.29)

岩手県南バス 日野RB10
折り戸

撮影:板橋不二男様(江刺営業所 1976.4.19)

バスのドア形状の中で最も標準的なものと言えるのが折り戸です。
2枚のドアが中央部で内側に折れて開く方式で、開閉スペースが少なくて済むほか、最小限の力で手動開閉できるメリットがあります。
昭和初期のボンネットバスの写真にも折り戸のものが見られ、現在に至るまで、約80年間使われています。有効幅は800mmくらいです。
写真は、前ドア、中ドアともに折り戸を採用している車両の一例と、開閉途中の状態です。

通常の折り戸は左側に折れて開くようになっていますが、右側に開く例も見られます。
折り戸の下部に欠き取りがあり、開いた時にステップの2段目を挟むようになっているのが見て取れます。
「逆ヒンジ」と呼ばれます。

京浜急行電鉄 日野RB10
折り戸

撮影:板橋不二男様(逗子営業所 1977.1.2)

4枚折り戸
ミヤコーバス 日野KC-RJ1JJCK(1999年式)
4枚折り戸

撮影:長谷川竜様(石巻駅 2017.6.3)

岡山電気軌道 三菱U-MP618K(1993年式)
4枚折り戸

撮影:岡山駅(2016.11.23)

2枚の折り戸を2セット4枚とし、両側に開くようにしたもの。観音開きドアなどとも呼ばれます。
ドア幅を広くできるメリットがあり、1960年代にはラッシュバスとしてツーマンバスの乗車下車を同時に行うために採用されました。
ワンマン化後は、1972年に西日本鉄道が採用し(注1)、1980年代には首都圏などにも拡大しています。都市部での2列乗車(または降車)が可能になる効果があります。有効幅は1,300mmくらいですが、1,400mmを超えるものも作られました。1990年代後半のワンステップバスにも多く用いられています。しかし、2000年代に入ると中ドア引き戸が主流となり、一部のワンステップバスのオプションとして残されるだけになりました。
開いた状態の写真では、中央に握り棒があり、2列乗車が可能になっているのが分かります。整理券装置も両側にあります。

グライド・スライド・ドア
長電バス 日野K-RC301(1983年式)
RC301

撮影:長野営業所(1997)

東武鉄道 いすゞBU06D
グライドスライドドア

撮影:ポンコツ屋赤木様(新座営業所 1989.7)

低床車などで採用されているドア形状。
2枚の扉が両方の内側に開く方式ですが、回転軸が移動することで、ドア開閉に必要なスペースが最小限になるメリットがあります。そのため2枚折り戸よりもドア幅やステップを広くすることが可能です。1990年代後半には有効幅1,000mmほどのものが作られています。
1970年に低床試作車のいすゞBU06が前ドアに採用したほか、1990年代に車椅子用リフト付きバスのリフト装着ドアに使用、1990年代末期の初期ノンステップバスでは前ドア、中ドアの両方に使用されました。現在では、大型ノンステップバスの前ドアに採用されています。
開いた状態の写真は、いすゞBU06の前扉に採用されたグライドスライドドア。

引き戸
茨城交通 いすゞKC-LV380L(1998年式)
引き戸

撮影:水戸駅(2014.8.23)

岩手県南バス 日野RC100P(1966年式)
引き戸

撮影:板橋不二男様(江刺営業所 1976.4.19)

主に中ドアに使用されているドア形状。メリットは、折り戸に比べてドア幅を広くすることができる点と、車内にドア開閉のためのデッドスペースが不要になる点。デメリットは、戸袋が必要になる点。なお、手動での開閉には向かず、自動ドア前提です。有効幅は900mmくらいです。
1960年代後半にワンマンカー登場に合わせ、特に都市部の路線バスの中ドア、後ろドアに採用されました。1980年代〜1990年代にかけて、4枚折り戸やグライドスライドドアに取って代わられた時期がありましたが、2000年代のノンステップバスでは、車内にデッドスペースが不要になる点などが買われて、再び中ドアが標準仕様となっています。

引き戸(両開き)

4枚折り戸より広い有効幅を得るため、京浜急行が1983年から1995年まで採用していた両開きの引き戸は、「スーパーワイドドア」と呼ばれ、1,400mm幅を確保しています。4枚折り戸と同様に、中央部に握り棒があり、左右に分かれて乗降することが可能です。
電車ではよく見られる両開きドアですが、バスでは京浜急行以外には普及していません。
写真は、那覇バスに譲渡後。

那覇バス いすゞKC-LV380Q(1995年式)
両開きドア

撮影:那覇空港(2016.12.31)

スィング・アウト・ドア
スィング・アウト・ドア(1枚)

アームにより外側にスィングして開くドア。閉めた状態だと外板と面一になり、隙間風などが入らないことと、外観上スマートに見えるというメリットがあります。高速道路の走行には適するドア形状です。一方、外側に開くため、開くときに障害物や人に注意をする必要があります。開閉速度も折り戸などに比べると遅く、頻繁にドア開閉する使用法には不向きです。
1970年代後半から、観光バスのグレードアップに伴い登場し、1980年代には高速バスにも普及しています。1990年代以降の観光バスモデルでは、スィングアウトドアが標準になっています。

花巻観光バス 日産デK-RA51T(1980年式)
スィングアウトドア

撮影:宮野目営業所(1985.8.27)

スィング・アウト・ドア(両開き)

1977年に登場した日野のスケルトンが標準仕様とした両開きのスィングドア。上級車のオプションになった後、1985年のモデルチェンジで、正面が傾斜スタイルになる際に、姿を消しました。
なお、写真の車両では床下のトランクの扉がハッチ状に開いていますが、この時代にはハイデッカータイプでもこのようなタイプが主流でした。

岩手急行バス 日野P-RU638A(1985年式)
スィングアウトドア

撮影:本社営業所(1986.8.24)

ドアの窓

折り戸
上側1枚ガラス

客窓レベルに窓を設置したドア。
前ドアには安全窓を設置するのが一般的なので、こちらのタイプは、主に中ドア、後ろドアに用いられます。
写真のものは、プレス型が下窓付と同じなのか、ドア下半分にはプレスの凹みがあります。
折り戸の窓にはガラスを保護するための保護棒が内側に付けられています。

折り戸
上下2枚ガラス

一般的に、前ドアには、上部の客窓レベルの窓のほかに、下部にも窓があります。これは、運転手からの安全確認をするための窓で、「ワンマンバスの構造規格」で定められています。
このタイプが、中ドアや後ろドアに使われる場合もあります。これには、車掌などの乗務員が車内から外側の待ち客の確認をするためという意味があるものと想像されますが、前ドアとの部品の共通化というメリットも考えられます。

折り戸
通しガラス

上下2枚ガラス形の発展形で、上下のガラスをつなげたもの。視認性が向上するほか、デザイン上も優れているので、1970年代に入る頃から観光バスで採用され、1970年代半ばからは路線バスにも拡大されています。
車体がスケルトンタイプに変わる時期には、通しガラスがほぼ標準になっています。

折り戸
引き戸
上側1枚ガラス

引き戸は通常、中ドアまたは後ろドアに使用されるドアであるため、車内からの安全確認は必要なく、窓ガラスは上部にのみついています。

引き戸
上下2枚ガラス

中ドアまたは後ろドアでありながら、下部にも窓を取り付ける場合もあります。これはユーザー仕様であり、主に関西圏で見られます。京都市交通局、阪急バス、阪神電気鉄道、南海電気鉄道、奈良交通などが目立ちますが、徳島市交通局、徳島バスでも見られます。

引き戸

ワンマンバスのドア表示

自動ドア
自動ドア

運転手が一人で乗務するワンマンバスでは、客用扉を運転席から操作する自動ドアとすることが必須となります。
しかし、自動で開閉することが分からないと、乗客が挟まれたり、体を打ち付けたり、戸袋に手を引きこまれるなど、事故の原因となります。そこで、「ワンマンバスの構造規格」により、自動扉には内側から見て「自動扉」の文字を表示することが定められていました。
通常、折り戸は縦書き、引き戸は横書きになります。
ワンマンバスが一般化し、自動ドアが標準になったことを受け、1986年からは、「自動扉」の記載は不要になっています。

貸切バスのトランクルーム

はねあげ式

ハイデッカータイプが主流になる前までは、貸切バスのトランクルームは、標準装備ではなく、またあまり大きくありませんでした。その扉の開閉方法も、はねあげ式で、上側に開くタイプでした。

トランク

画像:日産ディーゼル公式カタログ(1980)

はねあげ式

1980年代に入ると、スケルトン構造やハイデッカータイプの登場で、トランクは大型化し、左右貫通式も登場します。
こちらは、1980年代初期には、デラックス車と言われる車両にも、まだはねあげ式のトランク扉が採用されていたという一例です。
ただし、高さや奥行はかなり拡大されています。
日野では「はねあげ式」、日産ディーゼルでは「上開きダブルヒンジ式」という名称になっています。

トランク

画像:日野自動車公式カタログ(1982)

スィング式(平行リンク式)

1980年代には、上級車種に、トランク扉が車体側面と平行に開くタイプが採用されます。1982年登場の三菱エアロバスでは、スィング式扉のトランクが標準装備となり、その後、他のメーカーでも標準的な仕様となってゆきます。
この方式であれば、開閉スペースが少なく済むほか、利用者や通行人が扉に接触するなどの危険も回避されます。
三菱では「スィング式」、いすゞでは「平行リンク式」、日野では「パラレル(並行)リンク式」という名称になっています。

トランク

画像:いすゞ自動車公式カタログ(1980)

(注1)
鈴木文彦(2003)「西鉄バス最強経営の秘密」 P.228による。また、最初の4枚折り戸は有効幅1,290mm(2枚折り戸は800mm)で、その後拡大されたとのこと。
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80s岩手県のバス“その頃”