奇跡の復活

埼玉県の謎のキャブオーバーバス(搬出編)

全国的に貴重なバス廃車体が撤去の波にさらわれる中、2年半前に譲渡交渉が成立していた長野県のボンネットバスが、所有者に無許可のまま解体業者によって現地解体されていたことが発覚。サルベージ隊は大きな衝撃を受けました。
所有者と譲渡の約束を交わしていても、何が起きるか分からない。もちろん、年月の経過は廃車体のコンディションも悪化させる。
2011年2月12日。3連休の中日、キャブオーバーバスのサルベージが断行されました。

サルベージ決行される(2011年2月12日)

首都圏に雪を連れてきた東北のサルベージ隊
上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

この連休は、1週間前から「全国的に大荒れ」との天気予報が流れていました。東北地方や日本海側のみならず、関西、中京、首都圏の太平洋側でも雪の予報が出ていました。
「関東の人達は雪道が苦手なので、もらい事故に遭わないよう注意して行って来て下さい」そう栗原大輔さんから助言をもらってきたのですが、高速道路を降りて現地へ向かう途中、早くも事故渋滞に巻き込まれました。
また、事故渋滞の先にはまた渋滞。冬タイヤ装着のための検問が行われていました。
「東北の田舎から来たんで、ちゃんとスタッドレスタイヤはいてまーす」と伏見さん。
「関東地方のもんは、冬になってもスタッドレスはかないんべか?」と海和さんは驚きました。

途中、こんなものを見つけたりもします。
ボンネットがひしゃげていますが、日野の剣道面のトラックです。

上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

静かに佇むバス
上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

現場に到着です。キャブオーバーバスは、静かに薄雪をかぶって佇んでいました。こうして見ると、かなり車体長が短く見えます。
所有者の方は造園業を営んでおり、倉庫代わりのこのバスには、大きな石を動かすためのワイヤーやオイル缶など想定以上の荷物があり、まずはこれを降ろすことから作業を開始。寒い日なのに汗が吹き出てきました。

車内の掃除が終わると、いよいよ搬出に入ります。
敷地内に入るショベルカーです。木の枝が低い位置にあるため、恐る恐る前進します。

上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

後ろ側にロープをかけるようです。後ろ側を持ち上げて、車両の向きを変えることで、引き出しやすくする。これまでのサルベージのノウハウが生かされます。
バスの側窓には波板が貼り付けられていますが、これは倉庫として使用される途上で張られたもの。

上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

いよいよ持ち上げに入ります。バスを傷つけることのないように、ワイヤの接続具合を確認。慎重に作業が進められます。

この角度から見ると、リアスタイルがよく分かります。中央の窓が大きいリアスタイルは、本などで見たことはありましたが、実物が残っているとは思いもよりませんでした。

上信電鉄

上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

無事バスの方向を変えると、今度は後ろ向きに引き出す作業です。

記念撮影

無事引き出しが終わって記念撮影をします。

上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

後釜の倉庫を置いていきます
上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

バス廃車体を持っていく代わりに、解体屋から購入した4tのコンテナを置いていきます。これも、最初に譲渡交渉をしたときの約束です。
今までの倉庫よりだいぶ綺麗になりました。所有者の方にもメリットがあるし、廃車体を手に入れたサルベージ隊にもメリットがあるし、一挙両得といったところです。

こんな物もありました

敷地内にあったボンネットトラック、いすゞTD。
これは所有者の方が処分するつもりで置いておいたもの。しかし、これを見つけて最近解体屋さんが頻繁にやってくるとのこと。ついでにキャブオーバーバスにも関心を示しており、油断していたらトラックともども鉄屑と化してしまったかもしれません。

上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

上信電鉄

撮影:海和隆樹様(埼玉県 2011.2.12)

セルフローダーに載せ終わると、住み慣れた場所を離れ、一路宮城県へと向かいます。
錆が出てガラスが一部なくなったバスは、不気味極まりない姿ですが、サルベージ隊にとっては宝物です。

堀江利昭氏

サルベージを決行する上で悩んだのが、25tのラフターを依頼して1回で積んでしまうか、コンマ25のバックフォーで引っ張り出すかと言うことでした。
そこで、大宮駅前に店を構えるミニカー専門店「ドリームファクトリー」店主堀江利昭氏に事前に現場を見ていただいたところ、ラフターは現場に入らないことが分かり、バックフォー持込が決まりました。
サルベージの陰で、たくさんの人の働きがあることが分かります。

堀江利昭氏
SALVAGE

>>海和さんの苦悩編に続く

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80s岩手県のバス“その頃”