『 雪 』
雪が、降っていた。
ふわふわと、まるで、真綿のような雪が。
触れればつめたく、しかし眺めれば心あたたかく。
微笑んだ泉水は、鳥の羽音を聞いて天を振り仰ぐ。
まるで、雪の形作ったような、真白の梟。
赤い実をつけた南天の枝が、ぱさりと雪を落として。
その人の訪れに、ふわりと浮き立った胸に。
あたたかな雪が、やさしく、舞い降りた。
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『 月 』
月は、いと高き天より、皆を見下ろしている。
人の子も、そうでないものも。
等しく、やさしく、照らしてくれる。
その光に手を伸べても、触れることは叶わないけれど。
ただ、その眼差しだけは、確かに。
醜い正体を暴くことなく。
さりとて、目をそらすこともなく。
喜びも、苦しみも。
だた、ずっと。
見守っている。
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『 花 』
花の降る、春の空。
永泉は、それを見上げ、微笑んだ。
幾重にも、かさなる花を、日の光がすり抜けて。
ひらひらと、永泉を包む。
「泰明殿、花が・・・」
振り返った永泉の、花のような笑顔。
泰明の胸にも、一輪。
ふわりと、花ひらく。
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