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 和久山 きそ    慶応元年(1865)6月25日〜昭和18年(1943)2月15日
 明治〜昭和期の幼児教育者。

<生い立ち> 
 摂津国三田藩(兵庫県)藩士・和久山磐尾と行子の長女として生まれた。
 父・磐尾は、同地におけるキリスト教先駆者である。のち赤心社とともに北海道浦河へ移住して開拓に従事した。当時は、他にもキリスト者らの開拓事業が行われていた。

 (1) 赤心社(明治14年、現浦河町)・・・・・・・・・・・・・教会長老・鈴木清、和久山磐尾
 (2) 聖園農場(明治25年,現浦臼町)・・・・・・・・・・・国会議員・武市安哉ら
 (3) インマヌエル団体(明治25年,現今金町)・・・・・伝道者・志方之善(荻野吟子の夫)ら
 (4) 北光社(明治31年,現北見市)・・・・・・・・・・・・・牧師・坂本直寛(坂本竜馬の甥)ら
 (5) 晩成社(明治15年,帯広)・・・・・・・・・・・・・・・・・依田勉三、渡辺勝、鈴木銃太郎ら静岡県から(ひとつなべ)


 これらについては白井暢明氏の「明治期の北海道への開拓移住と開拓者精神」に詳細が出ているので、参照されたい。
 牧師・坂本直寛は教誨師として刑務所で聖書講義、囚人の相談役を担っていた。
 当時、空知や十勝集治監で刑に服していた亀水松太郎は牧師・坂本直寛から聖書の手ほどきを受けた。服役後は神学校で7年間の学びののちに日本橋教会の副牧師を経て、阿倍野にある望の門教会(現在は阿倍野教会)を開拓創設した。

<受洗> 
 きそは、明治11年(1878)三田小学校を中退して、神戸ホームに転校した。神戸ホームは、現在の神戸女学院の前身で、米国伝道会派のタルカット、ダッドレー両宣教師によって明治6年(1873)に神戸に開設された私塾のことである。明治12年(1879)に校名を「神戸英和女学校」と改称して、翌年に新しい5年制の課程を定めた女学校を運営している。

 きそは、在学中にタルカット女史より信仰に導かれて、同15年(1882)7月2日、摂津第一公会で松山高吉牧師より洗礼を受けた。

 明治18年(1885)7月、第3期生として神戸英和女学校を卒業した。卒業後は、同じ教派の同志社女学校で心理学と理科を学んで抜群の成績で卒業し、明治19年2月、英語教師兼舎監に抜擢された。

 神戸英和女学校第一期生の杉浦(浜口)信子の勧めで、当時は社会的評価の低かった保母を志した。恵まれた環境をわざわざ捨ててまで保母になることに反対するものも周囲にいたため、一時迷った。ある日、友人と桜見に出かけた嵐山で、ふと松の根元に一本のスミレの花をみつけ、人知れず良い香を放つ可憐な花のように自分もなろうと決心して、同22年(1889)頌栄保母伝習所の生徒兼教師となった。

 頌栄の門をくぐってわずか10日目に、きそはいきなりオルガン教師と付設幼稚園の保母を命じられ、教授・生徒・保母の3役をこなすこととなった。24歳の再出発のきそは、めまぐるしい生活が始まった。
同24年に卒業した。

 以後45年間頌栄に勤務して高いレベルの保母養成機関を目指す婦人宣教師ハウ,A.L.の右腕となって多数の幼稚園児と幼児教育者を育成に尽力した。

 昭和2年(1927)頌栄の創立者であるハウの引退後は、頌栄幼稚園園長、頌栄保母伝習所所長をつとめ、同9年に引退した。
 きそは、フレーベルを紹介したハウの『人の教育』『母の遊戯と育児歌』の翻訳を助けた。

 晩年は父・磐尾が関係した北海道浦河へ退き、77歳で生涯を閉じた。
赤心社  北海道浦河の荻伏を開拓した摂津第一公会(神戸教会)の信徒鈴木清、沢茂吉らを中心とした開拓者組織。
ハウ,A.L.  アメリカン・ボード宣教師。シカゴで幼稚園を創設して園長を努めた経験をもって明治20年(1887)来日。同22年神戸に頌栄保母伝習所、幼稚園を開設し、日本における幼児教育分野を開拓した。

 ハウは学校が出来るまでの間、まず日本語の勉強を始めた。家庭教師は通訳を兼ねて雇った杉浦牧師夫人信子であった、信子は依頼を受けて明治二十一年一月高知の伝道地より二人の子を連れて神戸に出て来た。杉浦信子はそれから四年間日本語の不自由なハウに仕えてよくこれを助けた。
出 典 『キリスト教歴史』 『女性人名』 『神戸女学院 総説』

和久山きそ http://www.nogami.gr.jp/rekisi/sanda_sizoku/23_wakuyama/wakuyama.html
北海道開拓赤心社 http://www.nogami.gr.jp/rekisi/sanda_sizoku/24_sekisinsya/sekisinsya.html
赤心(株) http://www.chibach.co.jp/fcu/sekisinsya.htm
頌栄保母伝習所所  http://www.nogami.gr.jp/rekisi/sanda_sizoku/23_syouei/syouei.html
明治期の北海道への開拓移住と開拓者精神  http://homepage3.nifty.com/nobu-shirai/sub38.html