エンジンのオーバーホール


< 能書き >


最近、ウチのエンジンが疲れ気味で・・・・・
と言う事ではないのですが、あるキッカケで中古のエンジンを格安入手しました。

今のエンジンもかなり酷使しているし、通勤には無くてはならない存在の為、
日数の掛かるエンジンの仕様変更や修理はとても無理。

ましてや、エンジンをパワーアップしたアドレス110ならではの
クランク周りのトラブルが発生して、長期の自宅療養なんかになっては大変です。

そんな訳で、格安GETのエンジンをスペアエンジンとして多少手を入れながら
O/Hする事にしました。

とはいえ、スクーターのクランク割るのなんて10年ぶり・・・。
HI−UPRでレースしていた頃以来です・・・。

当時の記憶たどりながら、果たして出来るのかどうか・・・・。


< 目 的 >

疲労タップリのエンジンをO/Hして、新車時のパワーを蘇らせます。


< チョイス >

     <   チョイス   >

さて、今回、私がチョイスしたのはコレ。

初期型アドレス110のエンジンです。

走行約30,000km。
仕様的には
・NRハイスピードプリー
・デイトナベルト
・亀トルクカム
・ターボフィルター
と言った所です。
動きはするのですが、なんとなく疲れてきたような・・・・だそうです。

一つ、難点があり、プライマリーのセンターナットを締めても締めても
緩んでしまうそうです・・・。

また、以前に全開中に突然の機関停止に見舞われ、
すぐに復帰すると言う、チョットした「抱き付き?」
の経験もあるとか・・。

まあ、全バラO/H目的でクランクケース目的の
格安GETなので問題無いでしょう・・。

某オークションにキャブとエアクリ周りを売り飛ばしたら
元値になり相殺できました。


< 目 次 >

〜その1〜 30000kmの疲労編

〜その2〜 エンジン分解編 
             

〜その3〜 集まった精鋭達編(1) 
            
 

〜その4〜 集まった精鋭達編(2) 
             


〜その5〜 エンジン組立編
                  


〜その1〜 30000kmの疲労編

< 内 容 >

     <   疲労 1   >

エンジンのクラッチケースカバーを開けると、
いきなり目に飛び込んだのはコレ。

クランクシャフトのスプライン。 見えますか?
スプラインが削れてます。

こうなると、もうクランクシャフトは使えません。

長距離走破の初期型に多いと言われるクランクのガタ、
ベアリングの破損から来る鳴きは無さそうです。



クランクのスプラインが無くなった原因は?と言うとコレ。

フェイスのスプラインがすっかり無くなっています。
スプラインが無くなった事により、フェイスは空回りして
薄くなったのでしょう・・・。
この上に付く、スターターのギアも同じ様になっていました。



薄くなると、締め付けているセンターナットの締め付けは
緩くなる訳で・・・。

何度締めても緩んでしまう・・・といった具合になります。

     <   疲労 2   >

写真はプライマリープーリー。
純正ではなく、NRマジック製のようです。

表面のコーティングが剥がれ、疲労の凄さを物語っています。

真中がすり鉢状に削られていますが、
ココにフェイスが潜り込むことにより、プーリーのスライド量を
稼ぎ出し、最高速UPに繋げます。

よく見ると、純正加工品のようです。
鋳型のNOは初期型純正プーリーと同じで、
WRの転動面の端(最大変速の部分)も削られて
最高速UPの改造が施されています。



コチラはプーリーの内側。

ランププレートのダンパ(スライドピース)は見事に粉砕し、
グリスと戯れていました。

ダンパを失ったランプレはプーリーのスライドレールを見事にエグリ、
変速不良をもたらしていた物と思われます。

スライドレースの右隣に見える「S」マーク。
紛れも無く純正ですね。


     <   疲労 3   >

コチラはセカンダリーの様子。
見事にカムピンの穴が広がっています。

付属していたカムピンもかなりなクビレ具合です。
ユルユル、ガクガクでした・・・。



コチラはスプリングシート。
写真中央の亀裂が判りますか?

カムピンがガタの為に、変速中にトルクカムの溝の中で暴れ、
シートに引っかかり出すとこうなります。

コレの症状が更に進行すると、
噂の「カムピンシート突き破り」に至る訳です。

     <   疲労 4   >

コチラはクラッチ。

矢印の部分、判りますか?
クラッチのバックプレートの穴が広がっています。

こうなると、クラッチシューが広がる際に、一緒に支柱も広がって
しまうので、発進時のクラッチミートのバラツキなどが発生します。

また、Eリングで止まっているので外れはしない物の、
エンジン起動中は、クラッチの辺りから「シャリシャリ・・」と
このバックプレートが暴れる音が聞こえて来るようになります。


     <   疲労 5   >

さて、場所は移って部屋の中へ・・(←そんなのどうでも良い)
一通り、エンジン外観を洗浄、ホイール、マフラーを外して
身軽にしました。



そそくさとクラッチケースカバーを外し、シリンダー部を覆っている
エアシュラウドを外します。

     <   疲労 6   >

いざ、ヘッドご開帳!



流石に3万キロともなると、結構カーボンが蓄積していますね・・。

プラグは良い色に焼けています。


     <   疲労 7   >

ヘッドを外した状態からシリンダーを除いて見ました。

ピストントップもヘッド同様に真っ黒ですが、
ヘッドに比べ意外にカーボンの蓄積は少ないです。

抱き付き暦有り・・・と元オーナーは仰っていましたが、
シリンダーは綺麗です。


     <   疲労 8   >

静かにシリンダーを抜いて見ました・・・・。

ゲェ・・・・・。

抱き付き暦有り・・・・本当の様です。
上は排気側の様子です。



吸気側もご覧の通り。
掃気とジェットポートの間の当たりがキツクなった感じですね。

それでもシリンダーが綺麗なのは驚きです。


     <   疲労 9   >

ピストンピンも見てみることにしました。

よく、スナップリングの両端のバリが出ていて、
ピンを削ってしまい・・・・なんてマイナートラブルもあるのですが
はたして・・・?



さすがわ純正。
この辺は平気そうですね。




 その2 エンジン分解編に進みます。
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