エンジンのオーバーホール
〜その5〜 エンジン組立編


< 能書き >

 さて、エンジンO/Hも残すところ、組み立てのみとなり
佳境を迎えました。
クランクを割って、組み立てるなど、十年ぶりの作業です。
果たして、ちゃんと動くエンジンになるのでしょうか・・・?(汗)

自信がアリマセン・・・・。


< 内 容 >


     <   組立 1   >

先ずは、ベアリングや、シールを入れる前に、
クランクケースや、シリンダー、リードバルブの
接合面に付いた古いガスケットを落とします。



本来であれば、オイルストーンを使用して落とすのがセオリーですが
私は、ゴムサンダーなる物を使用しました。

オイルストーンとの差は特に無く、とても綺麗に落とせます。
低石油を使用しないですむので、ベタベタになりません。

     <   組立 2   >

一通り清掃が済んだら、シールとベアリングを組み込みます。

サービスマニュアルによると、シールの組み込みの方が
先の様でしたので、シールは先に圧入しました。

シールは外形の同じ、ソケットレンチのソケットを当てて
プラハンで叩いて入れました。

ベアリングは写真の用に、プレスで圧入です。

ソケット等を当てて、プレスにかけると
圧力が掛かりすぎた場合に、ケースを割ってしまったり、
変形させてしまう事があるので、過負荷の力が逃げる様、
ジュラコンのパイプを使用しました。




     <   組立 3   >

ケースにシールとベアリングの組み込みが完了したら
クランクと、ケースの隙間を測定して、
クランクに挟むシムの厚みを決めます。

今回用意したの上の写真の治具です。

クランク専用の自作のブロックゲージと、市販の隙間ゲージです。

この自作ブロックゲージは、Hi−upRでレースをしていた頃も
同じ様に作製してエンジンO/Hに使用していました。

アドレス110のクランクウェブの厚さは、40.00mm前後の様ですので、
ブロックゲージを精密旋盤で39.00mmに作製しました。



クランクケースをクランクシャフト無しで仮組みして、
ベアリングの間を計測します。

実測で40.85mmでした。

     <   組立 4   >

次に、クランクウェブの厚さを計測します。

元々付いていたクランクは39.95mmでした。
そのクランクには0.90mmのシムが入っており、
合計で40.85mmです。

純正ベアリングを使用しているとは言え、
多少の誤差は有ると思っていましたが、
ベアリング打ち替え後も誤差0です。。。。



今回用意した新しいクランクウェブの厚さは、
40.00mmでした。

クランクケースの隙間は40.85mmですので、
必要なシムは0.85mmのシムとなります。

ちなみに、シムのお値段、¥126-ナリ・・・。


     <   組立 5   >

入れるシムが決定したら、いよいよインストーラーで
クランクシャフトの挿入です。

尚、シャフトの挿入前に、シールの内側には
ラバーグリスを塗布しておくと、シールを傷つけずに済みます。



先ずはマグネト側から・・・。

この際の注意点は、クランクシャフトのコンロッドです。

インストーラーを使用すると、一緒にクランクも回ってしまう
場合があるのですが、コンロッドも一緒に回ってしまい、
ケースの接合面に引っかけてしまう可能性があるので
注意です。


     <   組立 6   >

お次は反対側です。

逆さ向きにセットしていますが、特に意味はありません。
私がこの方がやり易かっただけです(笑)



インストーラーをセットして、指が入る程度の隙間を残して
ストップします。

この状態で、ケースに液状ガスケットを塗布します。
この状態からなら、後はインストーラーで引くだけなので、
乾きの早いガスケットでも作業に焦る必要は無くなります。

ちなみに、専門家曰く、ガスケットの塗布量ですが、
クランクケースの様に面がきっちり出ている部分には、
極薄くで塗布するだけで十分だそうです。

私も色も解らない位に薄皮塗布です。


     <   組立 7   >

ガスケット塗布後は、落ちついて
インストーラーで残りを引いて完了です。



ケースのボルトを締める際は、クランクシャフトを回しながら
締め付けると良いそうです。

締め付け順序は勿論対角線状がお約束ですね。

締め付け後、クランクの回転が渋い様でしたら、
最初にインストーラーで引いた方(マグネト側)から
組んだ状態のまま、少し引き直すと、
軽くなる場合があります。

それでもダメな場合は、シムの厚さ設定が、違っている可能性が
あります。

尚、純正以外のベアリングを使用すると、
内、外形の寸法公差の違いから
稀にクランクの回転が重くなる場合があります。

この場合は、ケースを締め付ける前の時点で既に回転が重いので、
ケース締め付け前より回転が重い場合は、
ベアリングに起因している可能性もあります。

隙間精度が上級(狭い)物を使用しても
同じ現象が起きる事が在る様です。


     <   組立 8   >

作業に邪魔なので外していたシリンダースタッドを取り付け、
周辺部品を組み付けて行きます。



ピストン、シリンダー、インマニを付けて
エンジンらしくなってきました。

後はマグネト、駆動系の部品等、必要部品の取り付けを行い
車体に搭載するだけです。

シリンダーの取り付け、及び、車体からのエンジン脱着は
コチラを参考にして下さい。
  ↓↓↓
 ボアアップキットの取り付け


     <   組立 9   >

実家庭の秘密基地?にて載せ替え中の模様です。

10年前も暇さえあれば似たような事をしていたのですが、
近所のオバちゃんが、バイク屋と勘違いして
本気で壊れたスクーターを押して来た事がありました(爆)


     <   組立10   >

載せ替え時に、気がついた事があります。
リストで品番が違っていたので、薄々は感じていましたが、
W型とSK型でファンの形状が違うのです。

ちなみに上がSK型。
下がW型。



特に、大きさには違いは無いのですが、
ファンブレードの先端の形状が違います。

何故かW型の方が凝った形状をしています。

あえて、複雑な形状をさせているのに、
新型のSKで、単純なストレート構造にした理由が
不明です。

考えられる事といえば、「騒音」で、
SKの様にストレート構造にする事により
ブレードの風切り音が抑えられるので、
騒音対策なのかもしれません。

一見、凝った形状の方が風量が多い気もしますが
実際の所は、不明です。

とりあえず、風量については全くの不明なので、
ボアアップでも実績がある、SKのファンを
取り付けておく事にしました。


     <   組立11   >


エンジンに繋がる電気系の配線を処理して、
完全に載せる前に、圧縮を計測しました。

結果 11.5kg/cm3。

まだ、組んでから火を入れてなく、
シリンダーの中はオイルでドロドロなので
多少、圧縮値は高く出ているかもしれません。

まあ、11〜11.5kg/cm3を狙ってヘッドの容積調整をしたので
絶妙の設定値だと思います。



< 注意事項 >
 ・作業内容な多量に及びます。
  一つ一つ確実に行い、各部締め付けトルク等は、
  サービスマニュアルに従いましょう。


< 使用する材料 >

 ・W型エンジン ¥20,000-(車体ごと)
 ・キタコ ボアアップキット ¥19,200-位?
 ・クランクシャフトアッシ 12200-16F01 ¥16,700-
 ・シム、T0.85 09181-30042 ¥126-
 ・ベアリング、25×52×15 09262-25070 ¥980-
 ・ベアリング、クランクシャフト 09262-30102 ¥1,000-
 ・オイルシール、09283-17026 ¥290-
 ・オイルシール、09283-30069 ¥400-
 ・オイルシール、24×43×6 09284-24001 ¥180-
 ・カメレオンファクトリー SPLベースパッキンKIT ¥900-
 ・ギヤ、オイルポンプドリブン 16331-16F00 ¥600-位?
 ・CR80 リードバルブ 14100-GS2-003 ¥3,696-
 ・リードバルブ用 ワンオフスペーサー 
 ・CR80リードバルブ対応 インマニ
 
 
 その他
   クランク芯出し加工 ¥4,000-
   ヘッド面研+スキッシュ+容積調整 ¥8,000-(2set)
   ピストン/リング/ピン WPC+メディアショット ¥5,000-(2set)
    


< 使用する工具 >

 ・メガネレンチ 8〜32mm
 ・ラチェット/ソケットレンチ 8〜32mm
 ・トルクレンチ  1〜10kg/f
 ・スパナ     8〜32mm
 ・モンキースパナ 300mm
 ・プライヤー/ペンチ
 ・ニッパ/カッター/はさみ
 ・貫通ドライバー +/− (M3/M4/M5)
 ・電動リューター
 ・エアーリューター
 ・油圧プレス
 ・プラスチックハンマー
 ・自作ブロックゲージ
 ・隙間ゲージ
 ・ノギス(0.05mm)
 ・


< 使用するケミカル >

・耐ガソリン用 液体ガスケット
・パーツクリーナー
・灯油(洗浄油)
・ラバーグリス
・シリコングリス
・ウレアグリス


< 参考文献 >

・アドレス110用 パーツリスト
・アドレス110用 サービスマニュアル


< インプレ >


    ↑↑↑ 画像をクリックすると、動画が見れます。

    慣らしも程々に、我慢しきれない私は、適当なセッティングのまま
    たまらずの全開加速テスト(爆)。



    但し、折角手塩に育てたエンジンを、散らす訳にも行かないので
    30秒限定です。
    (というより、テストコースは約30秒の走行で上り坂になってしまう)

    90km/hまで約11秒(13秒)。 100km/hまでは約15秒(19秒)と言った所です。
    ちなみに(カッコ)内は、旧エンジンでのベストタイムです。
    
    進角もノーマルで、キャブも駆動系も、旧エンジンの設定を
    そのまま移しただけなので、煮詰めればもう少し速くなりそうです。

    今回のエンジンの仕様
    ・クランク           : 芯出し新品
    ・シリンダー         : キタコ改
    ・ピストン/リング/ピン : キタコ改(WPC+謎ショット)
    ・ヘッド            : 純正改57.5Φ 容積秘密
    ・リードバルブ        : CR80
    ・キャブレター        : PWK33 MJ#135 SJ#40
    ・ベルト            : カメ
    ・プーリー           : SK純正(WPC+謎ショット)
    ・ランプレ           : W純正(WPC+謎ショット)
    ・トルクカム          : SK純正
    ・クラッチ            : V100純正
    ・センスプ           : 社外レッツ用
    ・ギア              : カメハイギア
    ・マグネト           : 純正改(軽量)
    ・点火時期           : ノーマル
    ・CDI              : W純正
    ・IGコイル           : RS125(NX4)
    ・マフラー           : W純正改(謎ファインチューン)

    



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