エンジンのオーバーホール
〜その3〜 集まった精鋭達(1)


< 能書き >

さて、エンジンはバラバラになったので、
交換の必要な部品を揃えたいと思います。

ただ、折角時間をかけて自分で組むのですから、
少しは拘ってみたいものです。(横着しちゃう部分もありますが・・)

チョットばかし拘った部品を集めて(加工して?)みました・・。

・・・この加工に巻き込まれた友人数名曰く・・「通勤車でよくやるよ・・・」・・。


< 内 容 >

     <   チョイス1   >

今回のエンジンO/Hの目玉、クランクシャフトです。
勿論新品です。

組み込みまで時間がある(やる気の問題ダロ)ので、
折角なので流行?の芯出しをする事にしました。

今回は、埼玉の有名なボーリング屋さん「井上ボーリング」さんに
芯出しをお願いしました。

事前にメールでの打ち合わせを行い、発送〜加工〜返送到着まで
なんと3日間という短納期で行って頂きました。

この新品クランクシャフト、調整前で3/100(0.03mm)のブレが
あったそうです。

井上ボーリングさんのお話ですと、大体のメーカーは0.03程度ズレて
いるとの事です。

一応は、”並”だったということでしょうか・・・。

調整後は0〜5/1000以内(0.005mm)に調整して頂きました。
*個体差により期待される精度が出ない物も稀にあるそうです。

9640⇒井上ボーリング   送料 :640円
加工代+返送料+代引き手数料 :4515円
----------------------------------
                 合計 : 5155円

でした。

尚、井上ボーリングさんのHPはコチラ (リンク許可済)
      ↓↓↓
  http://www.ibg.co.jp/index.html

細かい内容にも丁寧に対応して頂けます。


     <   チョイス2   >

お次の目玉はコレ。 シリンダーです。
勿論新品です。

ここまで来て純正など注文する筈も無く、性懲りも無くKITAKO製の
ボアアップキット。

コチラは現在のエンジンでも使用しており、
ある程度のデーターが取れているので、
それらを基に追加工したいと思います。


     <   加工 1   >

お次の目玉はコレ。 KITAKO製ボアアップキットのピストン。
勿論新品です。(笑)

なんだか色が変ですね・・。ドス黒いです。

以前、プライマリープーリーでお世話になった所へ
WPC加工に出しました。

しかも、以前に予備として購入しておいたピストンを含め
太っ腹の2セット投入です。

プーリー同様、ショットされているメディアは不明・・・。(おまかせです。)

ピストン2個
リング2個
ピストンピン1個
------------------
合計 5000円  

コレが、安いのか高いのかは不明です。



コレが通常のピストン。 健全なシルバーですね。

                 <Thanks. : さすらいのアングラー さん>


     <   加工 2   >

お次の目玉はコレ。 Y/SK1用 フライホイールマグネト。
コチラは以前に軽量加工して、お蔵入りに近い状態だったのですが、
ようやく陽の目を見る日がやってきました。(←やる気の問題ダロ)

加工は、某製作所のアド通専属 技術主幹 「山ちゃん」に
加工して頂きました。

通勤仕様と言うことで、あまり切削せず、外周のみに留めました。

タダで良いと言われたのですが、昼休み返上で加工してくれたので
代わりに昼飯代で相殺したような記憶が・・・。

ところで、マグネトを見ると、外周上に、ある区間だけ
凸が付いてますね。

この凸の部分をピックアップコイルが拾って
点火時期を決めているのです。

そこで、点火時期で良く出てくる用語のプチ知識。

<BTDCとは?>

B.T.D.C < Before Top Dead Center >
ピストンの上死点前を指します。BTDC 8度はピストンが
一番上に上がる手前8度(クランク角)のことを言います。

逆に相対するのは

A.T.D.C < After Top Dead Center >
ピストンの上死点後を示します。ATDC 10度はピストンが
一番上に上がった状態からクランクを10度回した位置のこと
を言います。

<何故進角?>

ある点火時期から早めることを進角、
逆に遅くすることを遅角といいます。

普通、点火は混合気の燃焼時間を考慮して上死点前に行われます。

ガソリンエンジンでは吸気、圧縮、点火、燃焼させてトルクを
発生させるのですが、シリンダ内の圧縮混合気に点火後、
混合気全体が燃焼し最大圧力に達するまでにはある時間が
必要になります。

エンジンが最大トルクを発揮する点火時期は、
一般的に混合気の燃焼による最大圧力が上死点後約10°が
良いとされています。

この最大圧力に達するまでの燃焼時間を一定と考えると、
エンジン回転数が遅い場合は、一定時間のクランクの回転角は
少ないので点火時期をさほど早める必要はありません。

しかし、エンジン回転数が高くなると燃焼時間が同じであった場合、
一定時間のエンジンの回転角は大きくなるので、
最大圧力をATDC10°に合わせる為には、
点火時期を早めて燃焼開始を早くする必要があります。

厳密にはスロットル開度やエンジンの回転数で圧縮比率が変わるので燃焼時間は
微妙に違いますが、スクーター程度の安価な大衆車は無視されています。
スロットル、シフト、回転数、車速、それらを加味してシビアに点火時期を制御している
CDIとしては某H社のPGMなどが有名ですね。


コレは、ガソリンを変えた場合も言えることで、
一般的にハイオクガソリンはレギュラーガソリンに比べ
燃焼速度が遅いと言われ、点火時期を早くする必要があります。

CDIは各回転数で、点火のタイミングを電子的に制御している
部分なのです。

本来はATDC10°付近で最大圧力になるよう点火時期を制御
するのがベストなのですが、純正では、騒音や燃費対策の為、
ある回転数で点火時期を異様に遅らせるなどの「走りの性能」とは
まったく逆効果の制御も入れているようです。
*こちらはヒデさん運営の「アドイチ」様でも記述されている内容ですね。

       <Thanks. : 某製作所 アド通専属 技術主幹 山ちゃん さん>

     <   加工 3   >

さて、折角ですので、コチラのNEWシリンダーも
ポート加工を行おうと思います。
上の写真は、KITAKOシリンダーの新品未加工品の排気側。

各諸サイト様でもお話に出ておりますが、
相変わらず悲しい弦長です。弦長は28.5mmでした。
ノーマルですら29.5mmあるので、泣けてきます。



コチラは、現在のエンジンに搭載されている、KITAKOシリンダー。
一次加工からの追加工版なので、排気ポートが、長方形に
なってしまっています。 弦長は35mm。
一般的に安全マージンを置いた限界値と言われる、
ボア径の63%付近です。



そしてコチラが今回のKITAKOシリンダー。
この位置からではポート形状が判り難く楕円に見えますが、
実際には逆三角形と言うか、ダイヤモンドカットを縦割りしたような
形状になっています。

レーシングエンジンに良くある形状です。
(はたしてノーマルマフラーで回るのでしょうか・・??)

弦長はボア径の約64%の36.5mmです。



コチラはおまけ画像。
切り札というか・・・奥の手と言うか・・・。
暫らく前に入手したNF4型のRS125のシリンダーです。

センターリブ入りのシリンダーは排気ポートの
弦長は半端でなく、ボア径=排気ポート?
と言わんばかりのサイズです。
掃気も然り・・・。

ただ、ひたすら速く走るためだけのシリンダー・・・・。
根本的に物が違います。


     <   加工 4   >

今回のポート加工の内容です。

先ず、排気ポートの形状は、前項で記述したとおり、
名付けて「ダイヤモンドカット」型です。

弦長の一番大きくなる部分を排気の開き始めと、掃気の開き始めの
真中に取りました。(レーシングエンジンで良く使う形状らしいです。)

掃気ポートに関してはタイミングの変更は行わず、
補助掃気側に拡大(純正と同じに)しました。
コレには、角度を同じに削るので、一苦労・・・。

補助掃気は掃気に対してノーマルに比べ遅れたタイミングだったので
ノーマルと同じタイミングにしておきました。
コチラも噴出角度に気を使わなければいけなく一苦労・・。

各ポートの寸法は
------------------------------------------------
シリンダーTOPから排気ポート A:32mm
シリンダーTOPから補助掃気ポート B:43mm(掃気も同じ)
排気ポート弦長 C:36.5mm
掃気ポート弦長 D:26.5mm
------------------------------------------------

ちなみに今回のKITAKOシリンダー、各ポートの全体的な
底上げを実施したくてベースガスケットを0.5mmから1.5mmに
変更する予定でシリンダーTOPを1mm程面研しました。

各数値は面研後の数値ですのでご注意を・・・。

底上げ・・・というのも、以前から気がついていたのですが、
KITAKOシリンダー、ピストンのスカートが短い為に
ピストンが上死点に来たとき、スカートの下から1mm程
排気ポートが開いてしまうんです。

コレで吸気や、一次圧縮に影響が無いのか?
それとも何かKITAKOの業なのか?(単なる設計ミス?)
は判りませんが、気味悪いので塞いでしまおうと言う訳です。
(一号エンジンは排気ポートが開いたままで、動いていはますが・・)



コチラは、排気ポートの形状を上から見た様子です。
シリンダーの壁に対して90°になるようにポートを削り、
徐々に絞るように削るほうが効率が良いそうです。



RS125の排気ポートですが、ポートの形状をみると、
やはり、上の図の様に、ポートの口付近はシリンダーの壁に対して
なるべく90°になるような形状になっています。


     <   加工 5   >

コチラはKITAKOシリンダーのノーマルの補助掃気側。
純正に比べてもかなり品疎な大きさとタイミングです。
スリーブが薄くしたせいかな・・・。



コチラは、現在のエンジンに搭載されている、KITAKOシリンダー。
補助掃気のタイミングと掃気の弦長をノーマルと同じ位置に
調整しただけです。



そしてコチラが今回のKITAKOシリンダー。
面研の為、全体的に1mmタイミングが早い以外は
稼動中のエンジンの仕様と同じです。


     <   加工 6   >

コチラは、ポートのバリ取りの様子。
上の写真は純正シリンダー。
さすがメーカーというか、寿命に関わりそうな部分は
きっちり処理されています。



コチラはKITAKOの新品未加工品。 ・・お粗末・・・。
価格のせいか・・・バリを取ってないも同然の状態ですね・・・。
ピストンリングは引っかからないまでも、寿命を縮めることは
必至だと思います・・。



そんな訳で、バリ取りも一応丁寧に処理しておきました。
写真は稼動中のKITAKOシリンダーの物ですが、
新品も同様にしてあります。


     <   加工 7   >

コチラは吸気側(クランクケース側)の加工の様子。
スリーブは抵抗や乱流の原因にならないように前回同様、
鋭角仕上げにしておきました。

丸印のスリーブの形状・・・・気になりますね。
一応は、意味ある加工を施したつもり・・・です。
コチラは、次ページにて解説します・・・。


     <   加工 8   >

シリンダーTOPです。



コチラは、何処か有名どころの加工請負の業者に依頼しようと
思っていたのですが、シリンダーの加工為、
エアーを借りにMYリューターを持ち込んで
某製作所にお邪魔していた際、それとなく話してみたところ、

技術主幹の山ちゃんが「ウチでも出来るよ・・」と・・・。

シリンダーTOPとBOTTOMの水平を計測した後、
あっという間にフライスで削ってくれました。

ありがたや〜・・・。

きちんと終業後のお掃除を手伝って工賃を体で払ってきました・・。



ベースは亀のガスケットを使います。

シリンダーの加工はココまで。

次ページからは、ヘッド、ケースに注目していきます。

<Thanks. : 某製作所 アド通専属 技術主幹 山ちゃん さん>


 〜その4〜 集まった精鋭達(2) へ進みます。

 
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この期に及んで110エンジンに関しての私的ウンチク・
             読むには、かなりの覚悟と、くだらない戯言を聞き流す
             壮大な心が必要です。。。