エンジンのオーバーホール
〜その2〜 エンジン分解編
< 能書き >
さて、〜その1〜 で、エンジンの疲労具合を確認したところで
いよいよ本題。
エンジンの分解に入ります。
これが、クランクを割るのに一苦労。
現役というか、昔は少し温めてやるだけで後はプラスチックハンマー
で叩きながら何とか力ずくで割れたんですけどね・・・・。
110エンジンの精度が悪いのか、10年以上も歳を取ってしまった
私がヘタレたのか・・・・(涙)
そんな訳で、プーラー+専用工具(専用治具だなこりゃぁ)を
借用してきてしまいました。
< 内 容 >
< 分解 1 >
クランクを割るには、先ず、空冷ファンを外します。
そのまま外そうとしても、クランクが回ってしまい、
作業し難いですね。
そんな時にはコレ。
駆動系のパーツ、キックスタータ用のナットです。
コレを反対側に取り付けて、レンチで押さえると
クランクが回りません。
ちなみに、「クランクがよじれちゃう??」と心配している方。
空冷ファンを止めているボルトのトルクはそんなに強固でないので
平気ですよ。
ちなみに、センタースタンドや、エンジンハンガー等は
エンジンを立てておいたり、移動したりする際に
便利なので、極力最後に外すことをお勧めします。
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< 分解 2 >
次にマグネットローターを外します。
ここのボルトは固いです。
私はクランクを再利用しないので、前項の空冷ファン同様の
外し方をしますが、クランク再利用の場合は、チョット危険信号。
その場合は、セカンダリーを分解する為の工具
「シザースホルダー」をマグネットローターの穴にぶち込んで
クラッチアウターを外すのと同様の作業を行います。
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< 分解 3 >
マグネトローターのナットが外れたら、ローターを外す訳ですが、
ローターはテーパー状のクランクシャフトに圧入状態で入っていて
とてもじゃない無いですが素手では抜けません。
プラハンなどで軽く叩いて見ましたが、びくともしないご様子。
ホンダ車なんかは簡単に外れるんですけどね・・・・・。
そんな訳で、ローター用のプーラーを自作です。
買うと、馬鹿にならない価格です。。
センターにはM10でネジ穴を立て、サイドの穴は空冷ファンの
ボルトが入る穴に幅を合わせてM6の長穴を開けておきます。
装着してセンターのボルトをねじ込んで行きます。
「パキンッ!!」と鈍い音と共に、ステータコイルとご対面です。
ステータコイル、ピックアップコイルはそれぞれ2本ずつの
キャップボルトで固定されているので、外してしまいます。
ちなみに、マグネットローターはクランクシャフトとキー溝により
位置決めされ固定されており、当然、キー溝に入るキーも
存在します。
ローターを外した後、「ポロッ・・・」とやり易いので、気をつけて下さい。
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< 分解 4 >
さて、いよいよクランクご開帳です。
っと、その前に、センタースタンドとエンジンハンガーを外す必要が
ありますね。
ハンガーは、ボルト一本なので迷うことは無いと思います。
センタースタンドは、バネを外し、シャフトの割ピンを抜いて
外しますが、バネが固くて外せない場合は、一度スタンドを
アップした状態にして、先にスタンドのシャフトを抜くと
楽に外せます。
そして難題がコレ。
センスタロックのユニットですが、盗難防止装置と言うことも有り
「トルクス」という特殊なボルトで固定されています。
コレは、ホームセンター等でビットだけで売っているので
該当のサイズだけ購入すれば問題無いと思います。
サイズ「T30」で、ビットのみなら、150〜250円程度で
購入できると思います。
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< 分解 5 >
クランク自体はマグネットローター側から7本のビスで
固定されています。
このビス、+ビスで、しかも結構なトルクで締まっています。
うっかり油断すると、なめてしまうので慎重に作業します。
ビスを外したら、ついに専用工具の登場です。
よく、メーカーツール等に見られる、2〜3本の腕のついた
クランクプーラーではありません。
アドのエンジンは稀に固すぎる物があり、
プーラーが曲がってしまう物まであるみたいです。
暖めて力ずくで抜けなかったウチのエンジンは
どうやらその類のご様子・・・。
コチラの工具は、分厚い鉄板を加工してクランクケースの
エアシュラウド用の穴に固定。
ギアプーラーを引っ掛けて抜くという強力な物です。
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< 分解 6 >
いや、固い・・・。マジで固いです。
屈せずに、プーラーをねじ込んで行くと、
「バキッ・・」という鈍い音と共に、ようやくご開帳です。
一見、綺麗かと思われたケース内ですが、流石は30000km。
汚れています。
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< 分解 7 >
反対側からも同じ作業を行いクランクを抜き去ります。
反対側からは、何故か軽く抜けました。
スズキの意図した事なのか?それとも・・・・。
ちなみに、クランクシャフトの駆動系側には写真のような
クランクケースとクランクシャフトの隙間を調整する為に
シムと呼ばれる物が入っています。
コチラは再利用するか、サイズが合わず他の物を使う事に
なるか判りませんが、一応保管しておきます。
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< 分解 8 >
シャフトを抜いた後はベアリングも外します。
コチラは駆動系側のケース。
走行距離が若ければベアリングを抜かずに、
そのまま再利用出来なくも無いですが、ここまでばらしたのなら
部品代もたいした事はないので、交換した方が無難でしょう。
サービスマニュアル上では、特に「焼き嵌め」の指示が無い様なので
常温で作業します。
ベアリングプーラーで簡単に抜けました。
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< 分解 9 >
そして嫌な予感のマグネットローター側。
やはり・・・というか、クランクシャフト同様、固い・・・・。
プーラーがヤバそうなので、一時作業を中断します。
そんなときはコレ。
ガスコンロで暖めてベアリングとケースの膨張率の違いを
利用してベアリングを抜きます。
ココで絶対的な注意を一つ。
「暖め過ぎない事」です。
特に、サービスマニュアルに「焼き嵌め」の指示が無い物は
要注意で、常温で作業しろっつー事なのですが、
「焼き嵌め」指定のある物はその指示温度に従います。
アルミは熱膨張し易い反面、熱による変形も鉄などに比べ
発生し易いのです。
目安としては100℃前後で、「焼き嵌め」指定のある物も
アルミの場合は大凡100℃〜130℃になっています。
どのくらいで歪むか?といいますと、形状にもよりますが
200℃付近からは赤信号のようです。
参考までに、アルミの溶解温度は約660℃。
鉄は約1530℃。
いかにアルミが熱に弱いかが判りますね。
赤外線温度計で、ケースの温度を測りながら
ゆっくり弱火で暖めました。
直接火の掛からない部分で約110℃。
火の当たっていた部分で約119℃
コレだけでも十分効果はあり、冷める前にプーラーをセットして
作業を行ったら、簡単にベアリングは抜けました。
ちなみに、赤外線温度計が無い場合はどうするか?と言いますと
加熱中に、水(ツバでも良いかも)を数滴たらします。
垂らした水がそのままですとまだ温度がは足りません。
水滴が、「すぅ〜」とか「しゅわ〜」っと言う感じで
蒸発するようになったら適温です。100〜130℃位だと思います。
「ジュ〜ッ!!」と激しく蒸発するようでしたら行き過ぎ。
大体150〜200℃付近になっていると思います。
更に行き過ぎると、ケース自体から「カーン」とか「キーン」とか
「パキッ!ピキッ!」と小さい音が発生し、
最悪は内部でヒートクラックが発生する可能性もあります。
大体200〜250℃以上になっています。
折角、クランクシャフトを芯出ししたり、ベアリングの精度を上げても
ココまで遣ってしまうとそれも台無し・・・。
運が悪いとケースその物の変形で組んだ後のエンジン精度が
落ちてしまい、動くものの、妙に重かったり、回らないと言った
エンジンになる可能性があります。
尚、シリンダーやヘッドも高温にさらされていますが、
シリンダーはスリーブが入っているのでそれなりに歪みに対して
強度があったり、また、温度が上昇しているのは、
爆発に面している表面だけで、全体的には空冷ファンや
冷却水のお陰で100〜130℃で保つように作られているので
平気な訳です。
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< 分解10 >
ベアリングを抜いた後は、各シール類を取っ払い、
洗浄に備えます。
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< 分解11 >
洗浄は、パーツクリーナーでも良いのですが、
何とももったいない気がしたので私は灯油&タワシで洗いました。
ご覧の通り、ピカピカ?です。
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〜その3〜 集まった精鋭達(1) へ進みます。
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