その頃

マカロニほうれん荘のキャラクター変質

マカロニほうれん荘の画風が変化していったことは周知の事実だが、多かれ少なかれ、どんな漫画も画風は変化する。おばけのQ太郎も、ゲゲゲの鬼太郎も、奇面組も、最初は不気味な外見だったものが、丸っこくなり、目が大きくなり、三頭身になるなど、かわいさが増してきている。それはマカロニほうれん荘も同じだった。
ただ、マカロニほうれん荘では、そういった外見上の変化だけでなく、性格的な変化やキャラクター設定上の変化、いや、変化というより変質を見ることができる。ここでは、そんなキャラクター変質をキャラごとに見てみることにする。
(変質の少なかったキャラクターはスルーしています)

膝方歳三(トシちゃん)

膝方歳三 膝方さんは一番最初は「準主役」のような位置づけだったはずだが、第2話か第3話で早くも「主役」になり、ストーリーを完全にジャックしている。
登場時には、ツギだらけの学ランに下駄を履くバンカラ学生で、無口な男でありながら、女子学生のスカートをめくるなどハレンチな性格も併せ持っていた。それが間もなく自らギャクマシーンとなり、性格的には幼児性を高めてゆく。
対女性関係でいえば、初期にはブルマー姿の女子に発情してサングラスがハート形になってしまったり、ブラウスから透けるブラジャーのホックを望遠鏡のように眺めたりしていたのが、後半でルミちゃんに告白されるような場面では、そういうことがよく分からないカマトト男になってしまっている。もちろん、ここで膝方さんが初期のようなエッチな男を演じてしまったら、ギャグ漫画は成立しないわけであるが。

金藤日陽(きんどーさん)

金藤日陽 キンドーさんは、膝方さんの相方で、40歳の気持ち悪い中年男。中年男なのに、少女マンガのようなきらめく瞳と分厚い唇を持つオカマのような気味悪さを持つ。しかし、見た目の気味悪さはすぐに影を潜め、小さくて丸っこいオバQのようなかわいい外見に変わる。
また、性格は、外観に応じて「やーねぇ、あたしはきんどーちゃんよ」などと言わせるかわいいキャラに一旦はなるのだが、徐々に意地悪な姑的性格が強まってゆく。そして幼児化した膝方さんより上に立ち、コンビのリーダーに成り上がってゆくのだ。

沖田そうじ(そうじ君)

沖田そうじ 多分第2話まではそうじ君が主役のはずだった。高校に進学し、一人暮らしを始める期待と不安な日々の始まりが、この物語の幕開けだったのだから。しかし、早々に主役の座をトシちゃんときんどーさんに奪われる。自らは、この二人の異常な行動に「いーかげんにしてください!!」と突っ込みを入れる立場に落ち着く。
もちろん外観も若干は変わってゆくが、髪型も変わらず、他のキャラクターに比べれば変化は少ない。性格的にも、真面目で常識的感覚を持ち合わせている状態のまま、最後まで押し通すことができた。

姫野かおり(かおりさん)

姫野かおり これも外見的にはほとんど変化のないキャラクター。ショートカットのしっかりした年上のお姉さん。
そうじ君が初めての一人暮らしをする下宿の管理人の娘で、初対面でそうじ君が「わっきれいな人!」と思ったり、第2話の冒頭でそうじ君がかおりさんの下着姿の夢を見ることなどから、当初はそうじ君にとってのマドンナ的な描かれ方をされる予定だったと想像できる。
しかし、トシちゃんたちの暴走がエスカレートすると、それに強烈な怒りをぶつけるヒステリー的な面が強調され、ロマンスは描かれなくなる。そのうちそうじ君は同級生の益田弘美ちゃんと仲良くなってしまう。
もっとも、そうじ君とかおりさんの恋愛話が進んでしまうと、めぞん一刻のような話になってしまうので、それはちょっと想像できない。

後藤熊男(クマ先生)

後藤熊男 トシちゃんたちが通う高校の先生。ある面、最初から最後まで一貫して変わらないキャラクターではあった。そしてまた登場回数の多い主要レギュラーの一人でもある。
第1話の冒頭で「ウホン。私語はやめる」などと堅物なセリフで登場するが、第3話でトシちゃんたちの悪ふざけに手を焼きつつ、結局乗せられてストリップスターの「チューリップ熊美さん」に変化(へんげ)する。キャラクターの変質ではなく、人格の変質を遂げたキャラなのである。
口癖は「ノォッ」。

八千草文子(あやこ先生)

八千草文子 トシちゃんたちが通う高校の先生で、お人形のように綺麗で優しいキャラクター。トシちゃんも文子先生の前では素直になってしまう。
しかし、だんだんと文子先生も逞しくなってきて、トシちゃんを厳しく指導したり、不良グループとも対等に対峙したりするようになる。
少女マンガのような髪型と服装やおとなしいキャラクターは徐々に解消されてゆく。途中で髪型も変わったときは、別人のようだったが、口元のほくろで文子先生だと判断できた。後半では一応髪型だけは元に戻る。
トシちゃんがこの先生にだけ弱いのは変わらずだった。

前田馬之助(なんだ馬之助)

前田馬之助 キャラクターの変化ではだれもが認める大変化を遂げたのがこの人。
単行本でいう3巻の終わりにほうれん荘に引っ越してくるが、鼻を垂らし、のろまで「あれっ」「なんだぁ」などと言っているだけで話が進まない。きんどーさんもかおりさんもイライラが極度に達する。結局一晩でまた引っ越して行ってしまった。
ところが単行本でいう6巻の終わりごろ、画風がアメリカ漫画っぽくなるあたりから再度登場するようになる。相変わらず鼻は垂らしているが、だんだんと色々と風変わりな技術をもつ器用なキャラクターへと変わってゆく。体型もスリムになり、口癖の「なんだー」はそのままに、奇怪な存在に変わり、あんなに嫌っていたきんどーさんからも一目置かれるようになる。
最終回では、トシちゃん、きんどーさんと新しい3人組を組んで、そうじ君たちの前から姿を消してゆくのだ。一読者として、この変化には「なんだー」と思わずにはいられなかった。

雅子さん

雅子さん 最後に全く存在感のない地味なキャラクターを一つ。
かおりさんが経営している「アップルハウス」という喫茶店でアルバイトする一児の母。
たまにしか出てこないので、それが同一人物であるかどうかもどうでもいいくらいなのだが、そのたびに髪型が変わっており、別人のように見えてしまう。唯一のアイデンティティは左目の下のほくろ。あと、胸が大きいようだ。
ソバージュが特徴かと思いきや、途中で普通の黒髪になり、最後の方でアメリカ漫画風の画風の時には全体にパーマがかかり、バーのママのような感じになっていた。

岩手県のバス“その頃”



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