銀杏の黄葉

二日続けて美術館。昨日は一人。今日は母と妻とで三人。そぼ降る雨の中、東京駅で待ち合わせ。

まずは60年前に母がよく来ていたという丸ビルでランチ。昔のデザインは下層階に面影を残すだけ。向かいにあるのは三菱本館。かつてNYでロックフェラー・センターを買った三菱グループの総本山は今ではGAFAに軒下を取られている。

贅沢なランチのあと、上野へ。


コートールド美術館へは行ったことがある。しかも、かなり強く記憶に残っている。それは初めてヨーロッパへ行ったときに最初に行った美術館だったから。

ロンドンに着いて真っ先に行ったのはもちろん大英博物館。そのあと、ナショナル・ギャラリーやテート美術館も見た。でも、一番印象に残っているのはコートールド。

今回、はっきりそれがわかったのはアンリ・ルソー「税関」を見たとき。これは見たことがある。絵葉書も買った。

昨日見た「工場のある町」と同様、お得意の奇抜さはあまり前面には出ず、そつない作品に仕上がっている。この作品を気に入ったのは色合いのせいだろう。

絵を見るとき、私はいつも色から観る。

スーラを好きになったのもコートールドで「クールブヴォワの橋」を見たからだろう。解説にも点描画の初期作品と書かれている。この作品で点描画に興味を持ち、だんだん他の作品にも惹かれていった。


19歳でアメリカ東海岸を旅したときにも美術館は見て回った。ワシントンのナショナル・ギャラリー、ボストン美術館、NYでメトロポリタン美術館、MOMA、グッゲンハイム。

確かに見るには見たものの、あのときは受験の世界史で覚えた作品が実在することを確認することで精一杯だった。

ヨーロッパへ行きようやく美術を鑑賞する楽しみを覚えたような気がする。その出発点がコートールド美術館だった。

それほど有名でない美術館へ足を運んだのは、ガイドブックか何かで強い推薦があったのだろう。


今回の展覧会では解説が詳しかった。有名な作品は図解で画家の視点や技法について説明するほか、X線撮影でわかった創作の経緯なども書かれていた。

この図解は図録にも掲載されている。原画の上に透明なフィルムで解説のページをかぶせた凝った造り。

自分の感性だけで見たいのでふだん音声ガイドは聞かない。でも、こうしてきちんと解説を読むと作品のことがよくわかる。感じるだけでなく、わかるようにもなりたい。

いつか美術についてもきちんと勉強したい、そう思わせる展示だった。

ヨーロッパ旅行の思い出が溢れてきて、またヨーロッパへ行ってみたくなった。石造りの街並み、並木道、石畳、郊外の緑、陽の長い夏の夜⋯⋯。

そして、「世界一美しい広場」にも、もう一度行きたい。

俗っぽい夢や目標を持つのは、生き残るためには悪くない。少なくとも、何もかもつまらないと思うよりはいい。


帰る頃には雨は止んでいた。東京駅で散会して、私は家族のためにサンタクロースにお願いする贈り物を探しに行った。

下の写真は、丸ビルの35階から見下ろした東京駅とApple Store。

丸ビルから東京駅を見下ろす Apple Store

さくいん:アンリ・ルソージョルジュ・スーラ