最後の手紙

烏兎の庭 - jardin dans le coeur

第五部

バーミヤン壁画 空を飛ぶ太陽神

10/8/2017/SUN

素心伝心 - クローン文化財 失われた刻の再生 - シルクロード特別企画展、東京芸術大学美術館、東京都台東区

法隆寺釈迦三尊像 クローン

三連休の初日、今まで行ったことのない東京芸術大学美術館とトーハクをハシゴするつもりで朝早く家を出た。都営地下鉄と都バスを乗り継ぎ、千代田線根津駅で下車。「旧岩崎邸庭園」への案内板があったので行ってみると大規模な修繕工事中。気を取り直して都立上野高校沿いを歩いて美術館へ。

芸大美術館の展覧会は素晴らしかった。たっぷり時間をかけて見た。学芸員の解説も聞いた。カフェでサンドイッチを食べて外へ出るともう2時を過ぎている。

腹も心も満腹になったので、トーハクは取り止め。「フランス人間国宝展」は日を改めて。


本展で驚嘆したのは、法隆寺釈迦三尊像。消失した金堂壁画が囲む釈迦三尊像は、一方で千年を経た風合いを再現し、他方で剥落した螺髪を補充し、破損していた光背を復元、脇侍は創建当時を推察して左右反対に配置。 読経が聴こえ、香が炊かれている。

過去と現在が融合し、空間まで再現されている。クローンというので、簡単な複製を想像していた。そうではなかった。材料や制作技法は飛鳥時代と同じ。クローン文化財には研究と技芸の継承、二つの意味がある。似たようなものでは、顔料から研究し再現した江戸時代の絵図を目黒美術館「色の博物誌」展でも見たことがある。

展示の裏では再現過程を記録した映像を見ることができる。

3Dプリンターで原型を制作、高岡の鋳物工房で鋳造。その後、東京へ運び芸大で彩色。金堂から出せない秘仏の代わりに今後、古代文化と現代技術を海外で紹介していくと言う。

匠の技を継承する意味もあるのだろう。


クローン文化財にはもう一つ意味がある。それは失われた文化財の復元。今回、タリバンによって破壊されたバーミヤンの大仏の天井壁画「天翔ける太陽神」が展示されていた。

壁画は何より空の青が美しい。アフガニスタン特産の鉱石、ラピスラズリを砕いて顔料にしているという。

この壁画は壮大な世界を描いている。

マントを広げ風神の風に乗り空を飛ぶ太陽神ミスラ。従えているのは四羽の白い鳥、ギリシア神話のアテナとニケ、さらにはゾロアスター教の神官。大仏を拝観している高貴な人々。図録の解説によれば、「ギリシア・ペルシャ・インドといったユーラシアの様々な文化が融合した極めてユニークな」世界。

年恰好からみると館長らしき学芸員の解説を聞きながら、身長30メートル以上という巨大仏の頭上に浮かんで天井画を見上げている自分を想像した。

いつかラピスラズリのブレスレットを手に入れたい。


さくいん:法隆寺