THE SECRET ROOM (1993), Uri Shulevitz, A Sunburst Book / Farrar Straus Giroux, 1996


The Secret Room

6月7月に続き、三たびシンガポールへ。正直なところ、シンガポールという街にそれほど思い入れはない。けれども、シンガポールへの旅には、特別な思いがある。シンガポールへ行くときは、いつも何かしら転機と重なる。今回も、また。

前回も夜行便で帰国する直前、大きな百貨店のなかにある大きな書店をのぞいた。そのときこの作品を立ち読みしたのだけれども決心できずに帰ってしまった。再び来てみると幸いもう一度見つけることができた。


絵本には昔話をはじめとして寓話的な物語が多い。シュルヴィッツの物語も寓話的であるけれども、通俗的な教訓よりもさらに深い意味が込められている。その意味は明示されてはいない。絵にも文にも、はっきりとは描かれていない。

これは何だろうか、どんな意味が込められているのだろうか。読み終えて、もう一度初めから読み返したくなる。“The Treasure(1979)”もそうだった。何度も読み返すうち、ようやく自分なりに理解したつもりになれた。今回、同じ書店で見つけて手に入れた。


本書では、“clever”と“wise”が対比されている。そして、“wise”の内実として、絶えざる反省と不断の自己批評とが示されている。clever は利巧、wise は賢明。利巧とは、頭の回転が早いこと。賢明とは、頭の判断が正しいこと。

何が正しいかなど決められない、そう考えるのは頭の回転が早すぎる人。早合点の宰相は、王の信頼だけでなく職まで失った。では、正しいことはあるのか。白髪で黒髭の男なら何と答えるか、問いかけてみたい。

どこかにヒントはないか。そう思いながら、もう一度はじめから読みなおす。