さわやかな朝がゆの味 高橋和巳コレクション5 巻末エッセイ、増田みず子、青春時代と高橋和巳、河出書房新社、1996


駒場、近代文学館で「高橋和巳展」を見た。

高橋については、「邪宗門」「悲の器」の著者という知識しかなかった。作品そのものは読んでいない。

手に取った評論は60年代らしい熱い文章だったけれど、「失明の階層」で予言された中間層の崩壊、「孤立無援の思想」で宣言されている、政治や経済が生み出す情勢論に抗う「個」の闘争という問題意識は、現在までもとどく長い射程をもっているように感じた。


高橋のように極度に同時代的な小説や評論を書いていると、その底辺に流れている普遍的な問題意識は見過ごされて、時代が変わったとたん、ベストセラーと一緒に投げ捨てられてしまうことがあるのかもしれない。

帰りに古書店を何軒かみたけれど、高橋の本はほとんどなかった


碧岡烏兎