烏兎の庭 第一部
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8.10.02

荒川洋治全詩集、思潮社、2001


毎週火曜日朝、彼のラジオ・コラムを楽しみに聞いている。文章や詩もそうだが、しゃべりかたも柔らかで、引っ込み思案にみえていながら、突然ぐさっと鋭いことを言う。聞き役の森本毅郎も文学の素養があるため、この詩人に面白いことを言わせようとするつっこみも愉快だ。

荒川洋治は自分を現代詩作家と呼ぶ。詩人とは尊称であって、自らそう呼ぶのは傲慢だと言っていた。謙遜の裏にある厳しい批判。「美代子」には彼の批判精神が結実している。


「美代子」のテーマである文学におけるブームについて。文学や批評も芸術作品であると同時に、いや、現代ではそれ以上に流通され、消費される商品である。だから時にその読まれ方、伝わり方のほうが内容より影響力をもってしまうことがある。賞や批評などによって作品は一人歩きをはじめ、市場でのポジションを獲得する。

以前、荒川洋治はラジオで源氏鶏太と山口瞳を例に取り、似たようなスタイルの小説が現れると急速に読まれなくなる小説があると指摘していた。つまり文学も市場性を避けられないということ。

読まれ方の影響力の悪い例が、司馬遼太郎と塩野七生だと思う。「社長が夏休みに進める本」などに人気のある作品はどうも読む気にならない。



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