平成20年9月(長月)の短歌
写真:
白い彼岸花
階段を数えつつ上れば駅のポームに友の声ひろがる「大夕焼けよ」
子には子の世界あるらし耳かさず雨降る中に賭けて行きたり
亡き友の夢に目覚むるこの夜半を物の音消し雨しきり降る
(なきともの ゆめにめざむる このよわを もののおとけし あめしきりふる)
編みかけてしまい置きたるセーターを取り出してみる チチロ鳴く夜に
時おきて途切れては鳴く蟋蟀に音をひそめて明日の米とぐ
(ときおきて とぎれてはなく こおろぎに おとをひそめて あすのこめとぐ)
草木一面ムシ時雨する朝まだき散歩の足の吸い込まれそう
(くさきいちめん むししぐれする あさまだき さんぽのあしの すいこまれそう)
パソコンに今日の想いを詰め込みて夜更け静かに電源を切る
(パソコンに きょうのおもいをつめこみて よふけしずかに でんげんをきる)
この年も過ぎ去った猛暑が恋しい季節にと・・・年月の移ろいに戸惑っている。
そんな朝のこと、サンスベリアの鉢の周りに砂がこぼれていることに気づいた。夫が鉢をひっくり返したに違いないと安全な場所に移して置いた。数日後、また砂がこぼれていた。不思議に思い鉢の中を注意深く触ってみて驚いた。なんと、針のような小さな芽がいくつも砂を突き破って出ていた。その新芽たちは、鉢すれすれに敷いてある飾り砂を押しのけてのぞいていた。また砂が盛り上がって今にもこぼれそうな箇所もいくつか触れた。
このサンスベリアは円錐形のタイプで数年前に娘と一緒に買ったものだった。お盆に来た彼女は我が家の鉢を見るなり「まだあるのね。私のなんかとっくに枯れてしまったのに」と驚いていた。朝日の当たる窓際に置き、忘れたころに液費を薄めた水をやるだけで育つ手間のかからない観葉植物。平たい葉の形をしたものなど、その形状もいろいろあるが、いずれも直立して造花のような感触である。この円錐形のタイプのサンスベリアを繁殖させたのは初めてだった。さっそくこの喜びを娘に電話したのは言うまでもない。
サンスベリアの根元の土を盛り上げてつんと触れるは新芽の幾つ
鉢の砂こぼして新芽の出できたりサンスベリアはツンと尖りて
(はちのすな こぼしてしんめの いできたり サンスベリアは つんととがりて)
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