平成20年7月(文月)の短歌
写真:
淡いピンクのバラの花
脱ぎ散らす履物を子に諭しつつ揃えて和む今日の終わりと
(ぬぎちらす はきものをこに さとしつつ そろえてなごむ きょうのおわりと)
川の面にネオンが映ると夫の言う吾の眼裏へ知りし色浮かべり
(かわのもに ネオンがうつると つまのいう わがまなうらへ しりしいろうかべり)
並びいる吾子の瞳に映れるは萌ゆる若葉か木の葉のさやぐ
(ならびいるあこのひとみに うつれるは もゆるわかばか このはのさやぐ)
風向きの今朝は変わりて鳩の声くぐもり聞こゆ梅雨じめりして
(かざむきの けさはかわりて はとのこえ くぐもりきこゆ つゆじめりして)
烏の声真似しつつ子ら駆けて行く雨の降り初む夕暮れの路地
(からすのこえ まねしつつこら かけてゆく あめのふりそむ ゆうぐれのろじ)
梅雨晴れにはさみの音を響かせて花終わりたる紫陽花を剪る
(つゆばれに はさみのおとを ひびかせて はなおわりたる あじさいをきる)
ふつふつと布巾を煮沸せる音をこもらせ長き梅雨の雨降る
(ふつふつと ふきんをしゃふつ せるおとを こもらせながき ばいうのあめふる)
梅雨晴れにさおいっぱいに広げたるすすぎ物ひるがえしつつ夏は来にけり
(つゆばれに さおいっぱいにひろげたる すすぎものひるがえしつつ なつはきにけり)
一人飲むグラスに氷入れるとき溶けゆく音の身にしみとおる
(ひとりのむ グラスにこおり いれるとき とけゆくおとの みにしみとおる)
落としたる氷片諸手に探りおり 溶けゆく物はすでに帰らず
(おとしたる ひょうへんもろてに さぐるとき とけゆくものは すでにかえらず)
寝不足のけだるき吾に清めたる両の義眼の冷えなじみくる
(ねぶそくの けだるきわれに きよめたる りょうのぎがんの ひえなじみくる)
ねじ花が咲いていますと結びたる点訳の友の文の親しき
(ねじばなが さいていますと むすびたる てんやくのともの ふみのしたしき)
奥只見の風はさ緑 タンポポの綿毛を遠く飛ばしてやりぬ
(おくただみの かぜはさみどり タンポポの わたげをとおく とばしてやりぬ)
銀山平の林道ゆるゆる上り行く吾をつつみて春蝉の声
(ぎんざんだいらの りんどうゆるゆると のぼりゆく われをつつみて はるせみのこえ)
野の香り雪の冷気を運びくる尾瀬沼渡る風は遥けし
(ののかおり ゆきのれいきを はこびくる おぜぬまわたる かぜは はるけし)
チングルマ サワラン キスゲ リンドウの花を揺らして尾瀬沼の風
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