平成20年4月(卯月)の短歌
写真:上堰潟(うわせきがた)公園の桜と菜の花
自転車の子ら一列に通り行く春日に軽きブレーキの音
(じてんしゃの こらいちれつに とおりゆく はるひにかろき ブレーキのおと)
雨の中自転車に子はもどり来し荒き息して玄関に立つ
(あめのなか じてんしゃにこは もどりこしあらきいきして げんかんにたつ)
登校の自転車の子はそそくさと角なる吾に風残し行く
(とうこうの じてんしゃのこは そそくさと かどなるわれに かぜのこしゆく)
会社にて事のありしか帰りたる子を物言わず部屋にこもりぬ
(かいしゃにて ことのありしか かえりたる こはものいわず へやにこもりぬ)
春浅き空をしきりに鳴き交わすウミネコ幾つ高く舞いおり
(はるあさき そらをしきりに なきかわす うみねこいくつ たかくまいおり)
ふきのとう日向に向きて並びいる中の一つが大きく開く
(ふきのとう ひなたにむきてならびいる なかのひとつが おおきくひらく)
鍵をあけ一人戻れる玄関ににおいスミレのほのかに匂う
(かぎをあけ ひとりもどれる げんかんに においすみれの ほのかににおう)
カンアオイ片栗の花登り来てメシイの指に春確かむる
(カンアオイ カタクリのはな のぼりきて めしいのゆびに はるたしかむる)
ミスミ草と聞きて触れる眼裏に薄紫の小花が揺るる
(ミスミそうとききて さわれるまなうらに うすむらさきの こばながゆるる)
桜花咲き初むるらし微かにも花の香の風髪揺らし過ぐ
(さくらばな さきそむるらし かすかにも はなのかのかぜ かみゆらしすぐ)
ケキョ ケケキョようやく初音の調いて枝移りゆく卯月の三日
(ケキョ ケケキョ ようやく はつねのととのいて えだうつりゆく うづきのみっか)
チューリップ精一杯に膨らんで日に向きいるは何か言いたげ
(チューリップ せいいっぱいに ふくらんで ひにむきいるは なにかいいたげ)
いつも歩いている遊歩道の一角に桜の木が10本ちかく植えられていて、ベンチが置いてある。今年は例年より一週間ほども早く開花し、しばらく楽しませてくれた。雨上がりの朝、いつものように歩いているとターシャが立ち止まった。「花びらがじゅうたんみたいだぞ」と夫も立ち止まった。「そうか、桜前線も無事に通過したのだ」と私も納得。その花びらのじゅうたんの上をそうっとそうっと歩いた。「私もこんな風に潔く終わりたい。
平成20年5月の短歌へ。
平成20年3月の短歌へ。
平成19年の短歌へ。
限りなく透明な世界のトップページへ。
すずらんのトップページへ。