平成20年2月(如月)の短歌
写真:
濃いピンクの雪割草
もがり笛激しき夜はストーブの点火のタイムを早めて眠る
(もがりぶえ はげしきよるは ストーブの てんかのタイムを はやめてねむる)
寒の水ワカメほどよく膨らみて夕べ厨に磯の香放つ
(かんのみず わかめほどよく ふくらみて ゆうべくりやに いそのか はなつ)
やわらかき春のキャベツを刻みおり今日立春のサラダにせんと
(やわらかき はるのキャベツを きざみおり きょうりっしゅんの サラダにせんと)
ゆでるには惜しき菜花の一束を雪降る夕べの卓に飾れり
(ゆでるには おしきなばなの ひとたばを ゆきふるゆうべの たくにかざれり)
黙しつつジャガイモの芽を欠きてゆくその秘められし命の哀し
(もだしつつ じゃがいものめを かきてゆく そのひめられし いのちのかなし)
柔らかき芽をすっくと伸ばしつつ穴倉の隅にたまねぎの生
(やわらかき めをすっくとのばしつつ あなぐらのすみに たまねぎのせい)
うらうらと注ぐ日差しにゆるゆると雪の溶けゆく寒暖かし
(うらうらと そそぐひざしに ゆるゆると ゆきのとけゆく かんあたたかし)
朝の雪足裏にざくざく崩るるを春に急かるる思いに歩む
(あさのゆき あうらにざくざく くずるるを はるにせかるる おもいにあゆむ)
日溜りを歩めばしいし吾の眼に明るさ増しぬ 春めきにけり
(ひだまりを あゆめばしいし われのめに あかるさましぬ はるめきにけり)
出かけたる夫の忘れし携帯が戸口に奏でるアメージンググレイス
(でかけたる つまのわすれし けいたいが とぐちにかなでる アメージンググレイス)
母がよく言っていたっけ「二月は逃げていく月」だと。そんな言葉がしみじみと迫ってくる年代に私も達したのだろう。いや、達したのである。
最初の6首までは、昭和のころに詠んだ主婦としての作を載せてみた。そのころは、育ち盛りの子どもたちや雑用に追われくたくたになって床に就いたものだった。食事の支度をしながら短歌を作ったり、考えごとをしたりして台所仕事は格好な至福タイムだったのだ。この6首を選んでいるうちに、そのころの想い出が頭を占領してしまい文がなかなか書けそうになくなって・・。
気を取り直して後の4種は最近の作からにした。これらは大切なパートナー・盲導犬の存在なくしては詠めない。そして、それは今の私に至福のひとときを与えてくれているのだ。
寒さが緩んだのを見計らい我が家の散歩も開始となった。今朝の散歩で夫が独り言のように「二月は逃げて行くんじゃない。あったかい春を探しに一足早く発つんだよな、ターシャ」と。夫の独り言の最後はいつも「ターシャ」で終わるのだから・・・。
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