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―――月彦と真央が春菜の屋敷に来てから、かれこれ三日が経過した。
「月彦さん、塩加減の方は如何ですか?」
すりりっ……と春菜が身を寄せてくる。月彦はやや体を引くようにしながら、
「え、ええと……丁度良い……と思います」
やや引きつったような笑みを浮かべた。
朝食中である。
月彦の前には一人前の膳があり、御飯にみそ汁、たくあん、焼き海苔、佃煮に紅ジャケ塩焼き温泉卵等が乗っている。
春菜は箸先で器用に鮭の身を切り、小指の先ほどの塊にしたものをつまみ上げ、そっと月彦の口元へと運ぶ。
「ど、どうも……」
月彦は照れながらも口を開き、それを食べる。春菜も嬉しそうにふふふと笑みを零す。
春菜は足を崩したまま、上半身をくったりと月彦の方にもたれさせ、尚かつ接している右手をほぼ強制的に月彦の左腕に絡めていた。そうでもしないと月彦がすぐ逃げてしまうからだ。
「遠慮なさらないで、いっぱい食べてくださいね……?」
濡れた目で月彦を見ながら、そんなことを囁いてくる。“いっぱい”の部分が妙に強調されたように感じたのは果たして気のせいなのか。
「は、はは……」
ぎゅうっ、と右腕に力を込めてくる春菜に空笑いを返しながら、月彦はずずずとみそ汁を啜った。具は大根と豆腐と油揚げと椎茸だった。塩加減もほどよく、まさしく“家庭の味”の見本のような味付けだった。
加えて言うなら、紅ジャケも佃煮もたくあんも、どれもこれも美味だった。豪勢な材料こそ使っていないが、よくよく材料を吟味し、調理に手をかけなければこの味は出ないのではないかと月彦には思えた。
が、そういう“ごちそう”を食べている当の月彦自身はまるで砂でも噛んでいるかのように表情が苦い。
時折機嫌を伺うように、ちらり、ちらりと春菜の方に視線を走らせては目が合ってしまい、空笑いをするのである。
春菜が、さらに右腕に力を込めてくる。絡め取られている左手の肘から先の辺りが痺れてくるほど強い力だった。
それは、“朝食なんて、さっさと食べてしまえ”という春菜の意思表示に他ならない。
「―――それなら、屋敷に居る間だけ……私の亭主になって頂けませんか?」
これが、春菜の出した、月彦を“許す”条件だった。
二人が顔を合わせた初日の、“暴行”の後のことである。正気に戻った月彦は、それこそ畳に顔を埋めんばかりの勢いで春菜に謝罪をし続けた。
正常な判断力を失い、ある意味正気を失していたとはいえ、暴行を行っている最中の記憶は確かに月彦の中に残っていたのである。弁解の余地は無かった。
延々と頭を下げ続ける月彦に対して、春菜は力無く笑い、『お互い忘れましょう』と返した。が、そうやって微笑まれれば微笑まれるほど月彦の中の罪悪感は増した。
償いをしたい、自分にできることならなんでも言ってほしい―――そう詰め寄る月彦に対して、春菜の出した提案が上記の事柄だった。
当初、月彦はそんなことでいいんですか、と些か不満そうな顔をしたものだが、彼女の亭主になるということがどれだけ恐ろしいことか、彼はその日のうちに痛感することになったのだった。
「……ごちそう、さまでした……」
米粒一つ残さず朝食を平らげ、渋々……と言ってもいいくらいの慎重さで月彦が箸を置く。
「はい、お粗末様でした」
春菜も微笑み返して、そしてすっ……と、左手で膳を遠ざけるような仕草をした。膳の足が微かに畳を擦る音がする。その音に呼び込まれたように、絶妙なタイミングで桔梗が室内へと入ってきて、膳を片づけるのである。桔梗は無言で、すぐに部屋を立ち去った。
すりっ……。
春菜の体が寄ってくる。
すりっ……すりっ……。
月彦に対して自分の匂いを擦りつけるような動き。ぴったりと寄り添い、月彦の左手の甲に自分の左手をそっと添えて、かくんっ……と頭を肩に載せてくる。
「月彦さん……」
呟き。
熱っぽい吐息を漏らしながら、催促するように月彦の左手の甲をさすってくる。
「あ、の……春菜、さん……。その……やっぱり、朝から……こういうのは……」
春菜のそういったアプローチをいつまでも無視するわけにはいかず、月彦はそこはかとなく異を唱えてみる。
「さ、昨夜だって……あんなに―――」
「……月彦さんは、お嫌……ですか?」
月彦の言葉を切るように、春菜が呟く。
切なげで儚げなその口調とは裏腹に、月彦の左腕にぎゅうと込められる力は強くなる。
左腕の肘関節を万力に挟まれ、ギリギリと締め上げられているような力だった。春菜の細腕から生まれる力とは、到底思えない。
もしここで『嫌です』とハッキリ断ろうものなら、そのまま肘関節を潰されてしまうのではないかと思えた。春菜の右腕から伝わってくる力は強大だが、まだまだ余力があるように感じるのだ。
「い、いえ……全然嫌じゃないです。……嫌じゃ、ないんですけど……あんまり続けてすることでもないかな……と……」
春菜の方を見ないようにしながら、月彦は食い下がる。
月彦の意見は、常識的な視点から見れば至極当然のことだった。
昨夜は、それこそ空が白み始めるまで絡み合っていたのだ。そして二人して泥のように眠り、起きたのがついさっき、朝食をとってまたすぐ……というのは体力的にも精力的にも辛いはずなのだ。
ついでに言えば、昨日の昼も、その朝も、その前の夜も昼も朝も、月彦が亭主になると言った即日から、昼寝や食事、散歩の時間以外は殆ど体をまさぐり合うような生活が続いているのである。
そこまでのハイペースは、真央と暮らし始めてから一度もないことだった。さすがに体にもガタが(特に腰が)くる筈なのだが、そこがまたおかしいところでもあった。
毎日、湯上がりに春菜がマッサージをしてくれるのだが、これがまた眠気が爆発して意識を失してしまいそうになるほど気持ちよく、おまけに体中のこりというこり、疲れという疲れが吹っ飛んでしまう神業なのである。
さらに、極めつけはマタタビ酒だ。飲めば滋養強壮、体の内側からがっしりと強化されていくような感覚。一種の強壮剤であることは月彦はもう悟っていたが、しかし真狐の薬のように体に負担をかけるような代物ではないようだった。
春菜と睦み合った後、謎の頭痛に襲われることも体重が数キロ一気に落ちたりということも、眩暈を覚えることも平衡感覚がおかしくなることもない。むしろ、屋敷に来る前より体の調子はいいくらいなのだ。
が、それでもやはり辛い。理屈ではなく辛いと感じる。
普通に抱いて、普通に終わるのならまだ良い。が、春菜はそれこそ、真狐並かそれ以上と言っても良いほどに貪欲だった。
彼女の主人、虎鉄という人物が亡くなって何年が経つのか、月彦は知らない。だが、春菜はその間の空虚さえ埋めてしまおうとするかのように、執拗に迫り、どこまでも貪欲に求めてくるのである。
男と肌を触れ合っているだけで火照り、潤い始める体。豊満に熟した、自らの肉体とわき上がる性欲をもてあましているようにも見える。
それはどこか、枯れた大地を彷彿とさせた。カラカラにひび割れ、空気さえ乾燥しきった土地―――三日間という時をかけて牡の精を注がれて尚、潤わない枯れた土地なのだ。その渇きに喘ぐように、春菜が体を預けてくる。
「月彦さん……」
そっと、月彦の左手を握りしめてくる。春菜の掌は熱を持っていて、僅かに汗ばんでいた。
掌だけではない、見れば、彼女の顔も、首も、僅かに見えている胸元さえもほんのりとピンク色に染まり、上気していた。耳を澄ませば、やや荒い呼吸音も聞こえる。
「あ、の……春菜、さん……その……」
月彦はあくまで食い下がろうとする。が、その矢先、ふわりと鼻先をかすめたものがあった。もはや嗅ぎ慣れた、桜花の香りである。ジン……と、後頭部の辺りが痺れる感覚。
ああ、まただ―――月彦はそんな、諦めるような呟きを心の内で漏らした。“交代”の合図なのだ。
「ぁっ……」
微かな声を出して、春菜が僅かに体勢を崩す。今まで退き腰だった月彦が一転、覆い被さらんばかりに身を乗り出す。
先ほど、左腕の肘関節に加えられていた力は何だったのか―――そう突っ込みたくなるほど、春菜は弱々しく押し返される。畳の上に寝そべってしまいそうになるのを、月彦が腕を回して、抱きとめる。
「んっ……」
くったりと体の力を抜きながら、春菜が潤んだ瞳で見上げる。何も知らない者が遠くから見れば、医者が患者を抱き起こして薬でも飲ませているような体勢である。尤も、今の時勢、浴衣を着て患者を介抱する医者はそうは居ないだろうが。
春菜は、始めて会った時と同じ、桜色の着物を着ていた。胸元、うっすらと上気した肌に挟まれた場所。その豊満な双乳の合間の闇の辺りから、香しい桃のような香りがした。
「あ……ふ……んっ…………!」
春菜が、微かに声を漏らす。香りに誘われるように、月彦は右腕をその膨らみにあてがう。
強く掴んだりはしない。揉んだりもしない、ただ、着物の生地の手触りでも確かめるような手つきで優しく撫でるだけだ。
月彦のそんな愛撫に、春菜は小さく声を漏らしながら少しずつ息を乱していく。
濡れた唇が、微かに震え、誘う。
「んっ……っ……」
唇が触れ合うも、ちっ……と小さな音を立ててすぐに離される。あっ……と春菜が物足りなげな声を出した途端、再度月彦は食らいつき―――
「んんっ……!」
ちゅぷ……ちゅぷ……ちゅくっ……。
濡れた唇を吸い、唾液を啜る。啜りながら、右腕の動きを徐々に荒々しいものに変えていく。
「んっ……ぁっ……ふっ……」
噎ぼうとする春菜の口を塞ぐように、しばし密に唇を重ねる。狭い、密閉された空間でちくちくと音を立てて絡む舌と舌。
ちゅぷりっ……っちゅ、んちゅ……。
春菜の、柔らかい唇。それを優しく、歯で食む。軽く圧力を加えた後に、つぷんっ、と肉の表面に沿って歯を滑らせ、そのまま吸う。
「んっ……ふっ……ぁっ……んんんんッ!!!」
着物の上から、ぐにっ……と胸を掴まれ、咄嗟に春菜が声を上げるのを、塞ぐ。
ぐじゅ……ぐじゅっ……ぐじゅっ……!
いつのまにか、春菜の右手が月彦の右腕の手首の辺りに添えられていた。掴む、というより指先を引っかけているという手つきだった。
月彦が強く揉むと、微かにくっ……と指先に力が籠もり、手首の辺りに爪を立ててくる。
「っ……ぱぁっ……ふっ……んっ……ぁ…………月彦、さんっ……」
漸くの事で唇を解放され、そんな呟きを漏らしたのもつかの間、月彦は今度はその耳の当たりへと唇を這わせる。
「ひゃんっ……!」
ぴくんと背を反らせて、春菜が甲高い声を上げる。月彦は春菜の反応に満足そうに口の端を歪めながら、そのままゾゾゾと猫耳をなめ回す。
「ぁっ……やっ、ぁっ、ぁっぁっ………………!」
猫耳を震わせながら、春菜が噎ぶ。ぴんっ、ぴんと、まるでハエか何かでも追い払うように震えるのを、月彦の唇が咥え、ぬろぬろとなめ回す。月彦の舌が動く都度、春菜は高い声を上げてぶるぶると何かに耐えるように体を震わせる。
同時に、胸元へと手が這う。
さわさわと衣擦れの音を立てながら、両方の乳房を交互に。月彦の右手は、表面をただ滑るように通り過ぎることもあれば、布地の下にあるであろう、突起部分を入念に刺激するようにこしゅこしゅと擦ったり、はたまた重たげなそれを持ち上げようとするように下からすくい上げてきたりと、春菜を飽きさせない。
「……春菜さんって、耳責められると……すっごく可愛い声上げますよね」
「ぇっ…………ぁっ、あぅぅううんっ!」
ボソッ……と囁かれるや否や、春菜はたちまち顔を真っ赤にしてしまう。隙アリ、とばかりに月彦は春菜の耳を口いっぱいにしゃぶり、ぬらぬらと唾液を塗りつけるように舌を入念に這わせた。
敏感な部位への愛撫に、びびびっと春菜の体が震える。
「ぁっ、ぁっ……やっ……つ、月彦、さん…………ぁっ、……やっ……耳っ…………」
春菜は微かに首を振って、耳への愛撫をイヤイヤする。“可愛い声”と言われたのを恥ずかしがっている傍から、より一層“可愛い声”で鳴かされたのだ。その顔は羞恥に染まり、湯気が出そうなほど真っ赤になっていた。
「……別に、嫌味で言ったわけじゃないです。…………春菜さんのそういう声、もっと……聞かせてください」
「そ、んなっ……ぁ、あっ、ぁ…………あっ、んっ、ぁっ……ぁッ……あっッ!」
震える春菜の体を抱きしめながら、猫耳に入念に舌を這わせていく。中に生えている白い毛も舌先で撫で回し、耳の先端から銜えてしゃぶり、吸い、両方ともふやけてしまいそうな程に唾液に濡れてようやく月彦は止めた。
「はぁ……ふ…………」
脱力。
くたぁ……と以前にも増して体の力を抜き、春菜は上半身を月彦の左腕にもたれさせた。
既に着物もだいぶ着崩れ、胸元ははだけ、乳房が半分近く露出していた。……そこに、月彦の右手が潜り込む。
「ぁっ……やんっ……」
蛇のような動きで、月彦の右腕は着物の内側へと潜り込み、そして重たげな乳房を下からすくい上げるようにこね始める。
月彦の右腕の動きは、直接は見えない。が、代わりに着物の皺がもぞもぞと動き回る。それが手の動きを具に表していた。
ぐにっ、ぐにぃっ……と、有り余る質量をもてあますように。ふーっ……ふーっ……と荒々しい春菜の呼吸音に会わせるように、ゆっくりと揉む。
手つきが、ひどくいやらしい。
女性を辱めるような捏ね方、と言ってもいい。ほら、貴方はこんなに大きくて、いやらしい胸をしてるんですよ―――そんな囁きが聞こえてきそうな手つきなのだ。
それが解るのか、春菜の顔がまた徐々に紅く、そして漏れる声も控えめになっていく。
「ぁっ……っ……んっ……っ……あ、ふっ…………っんッ…………!」
すくい上げるように乳房を捏ねながら、春菜の首の辺りに舌を這わせる。ぬろりっ、ぬろりと、まるで味でも確かめるような動きだった。
やがてするりと月彦の手が着物の中からはい出てくる。と、同時に―――
「きゃっ……!」
着物が左右に強引に割り開かれ、腰帯から上が瞬く間に露わになる。たぷんっ……と、そんな音が聞こえそうな程、豊満な双乳が弾けるように飛び出し、月彦の目の前でたゆたゆと踊った。
春菜の乳房は大きく、柔らかい。そして重く、張りがある。例え仰向けになろうと俯せになろうと、人の目に美しいと映る形しかとらないそれはある種の芸術品だった。
「あ、んっ……ぅ……」
春菜の媚声に耳を擽られながら、月彦はそれを捏ねる。指を広げて、楔のように乳房に埋没させ、握りしめる。
喉の奥から絞り出されるような、春菜の声。びくっ……びくっ……と時折小さく痙攣でもしているかのように震える体。どれも月彦の中の“牡”を満足させると共に飢えさせるものでもあった。
「はぁぁぁ……ぁっ、んっ……月彦、さんっ…………」
甘ったるい声を上げて、春菜が左手を月彦の首に引っかけてくる。その春菜の腕に促されるように、月彦は春菜に完全に被さり、彼女の体を畳の上に横たえた。
月彦は自由になった左手も使って春菜の双乳をまさぐる。下からすくい上げるように揉み、勃起し始めた乳首を親指と人差し指で挟み、くりくりと捏ねる。春菜の漏らす声を聞きながら、それがより甲高く、切なくなるように摘み、力加減を調整する。
くりっ……こりこりっ……きゅッ!―――優しい愛撫だったそれが、急につねるような、痛覚を伴うものに変わる。ピンッピンに固くなった突起を摘み、引くと、首にかかっている春菜の左手が微かに、爪を立てた。
「あふぅっッ……! ぁ、っくっ……ん、ぁっ……っ………………や、ぁ、んっ!」
ぴんっ、ぴんっ……と乳首が摘まれ、引っ張られる。さらに、人差し指と中指の間に挟まれ、親指の腹で擦られた。指紋の細やかな波がざりざりと乳首の先を刺激し、春菜は甲高い声を上げてそれに応じた。
弄ぶような愛撫だった。実際に、月彦の口元には意地悪な笑みが浮かんでいた。始めて春菜を犯したときの、あの顔だ。
月彦も息が荒い。当然だ、眼前にはさも美味そうな白い肉。肉付きの良い春菜の肢体を見ているだけで、食欲にも似た情欲が沸々とわき上がってくる。むせ返るような媚臭と相まって、月彦はますます昂っていく。
開きっぱなしの口から、唾液が糸を引いてしたたり落ちる。ぴたぴたと、ぬらついたそれらが巨乳の上に降り注ぎ、汚していく。ツンと勃ったピンク色の突起さえも光沢を放ち、春菜が呼吸をする都度、誘うように揺れた。
大きい。腹立たしさすら感じるほどのそれを、月彦の左手が握りしめる。
「あんっ……!」
にゅむりっ、唾液がローションのように滑り、心地良い。にちゃにちゃと音を出しながらこね回し、唐突にその頂に吸い付いた。
ちゅぱっ、っぷ、つつぅぅっ、っぷ……!
固く勃起した乳首を吸い上げ、舌でこれでもかと舐め上げる。春菜が僅かに身を固くして、体を上方に逃がそうとするのを、肩を押さえつけて阻止する。
「……んっ……!」
くいくいと乳房を持ち上げ、銜えた突起を優しく食み、なめ回す。ちゅぱっ、と唇を離した後は両手で双乳を寄せ、左右両方を同時に吸い上げ、舐める。
「んっ…………ぁ…………月彦さん……おっぱい、好き……なんですね」
愛しげに月彦の髪を撫でながら、春菜が呟く。
「―――少し、違います」
にゅっ……と右手で捏ねながら、唇をそっと猫耳の中に偲ばせて、
「俺が好きなのは、春菜さんみたいな……大きくて、いやらしいおっぱいだけ、です」
囁きながら、ぬろりと猫耳の内側を舐め上げる。ぁっ……と春菜が声を出すのも構わず、今度は唇で耳の先端の方を食み、唾液を塗りつけてしゃぶる。
同時に指が腰帯の下をまさぐり、潜り込んでいく。下着はなく、月彦の指は僅かに湿った恥毛をかき分け、すぐに目的の場所へと到達した。
「春菜さんのここ……凄く、熱くなってますね」
「っっ……ぅ…………」
囁きながら、人差し指と薬指でぬっ……と割り開く。たっぷりと蜜を蓄えたそこに中指を這わせ、優しく掻き回す。
「あっ、あっ……あッ…………!」
春菜が太股を閉じようとするのを、月彦は許さない。股の間に足を置き、さらには体を割り込ませるようにして、春菜の腰帯の下をも割り開いた。
滞っていた湿気が一気に拡散し、淫らな蜜の香りが鼻腔を突く。ちゅっっ……っぱっ、月彦は胸の先端を吸っていた唇を名残惜しげに離すと、そのまま春菜の股ぐらに潜り込んだ。
「やんっ……月彦、さぁんっっ……ぁっ……!」
春菜はたちまち声を荒げ、月彦の後ろ髪を掻きながら上体を反らせた。
ぴちゃ、ぴちゃ、ちゅっ……。
舌の這い回る音が、室内に木霊する。春菜は顔を染めながら、手の甲に唇を当て、声を押し殺すようにした。
「ぁっぅ……つ、月彦、さんっ…………ぁっ……んっっ……んっ………………」
瞳を潤ませながら、春菜が身をよじる。しかし下半身、両足の付け根を月彦の両腕でがっしりとロックされているため、舌の動きからは逃げられない。
蜜泉。
牡を引きつけ、高ぶらせる場所。
淫らな液のあふれ出るクレヴァスに沿う様に、月彦の舌が這う。
ぬっ……ぬっ……、舌の先が抉るように、下から上へ。わき出る愛液を舐め取り、代わりに自らの唾液を塗りつけるような舌戯。
ずっ……じゅっ、じゅるっ、ずじゅるっ、ずっ……ずっ、じゅぶぶぶぶっっ……!
時折態と汚らしい音を立てて恥蜜を吸うと、春菜は月彦の髪を掻きむしりながら嬌声を上げた。まるで、自らの恥蜜を啜る音を覆い隠そうとするかのような大声で、はしたなく……。
「んっ……ぷ、ふぅ…………いくら吸っても……後から後から溢れてきて、キリがありませんね」
月彦は苦笑しながらも、すぐに舌の動きを再開させる。両手の指で秘裂を開き、谷間沿いに舐め上げ、そのまま舌先で優しく、淫核をちろちろと舐める。
「ぁっ……あ、ァッ! んっ……やっ……そこっ……んっっ…………ぁっ、ぁっ、ぁっ…………」
ぴくんっ、と仰け反りながら、またカリカリと髪を掻きむしってくる。ブリッジをするように、春菜が腰を浮かせようとするのを、ロックしている両手でぐいと押さえつける。
沸き立つ媚臭を肺一杯に吸い込みながら、月彦は舌戯を続ける。ピンッピンに勃起した淫核をちょんちょんと舌先で突くように舐めた後は、今度は舌を広げ、れろり、れろりとなめ回す。
「ぁっ……そ、……っな、やぁんっ……ぁっ、くっ……ああぁうぅウッ!!!」
びくんっ、びくんっ!
二度、春菜は大きく腰を跳ねさせた。構わず、月彦は淫核に唇を当てた。ちゅっ……と軽く吸い上げながら、唇に銜えた部分をちろちろと舌先で舐める。
あァあぁッ!―――春菜の上げる声がなんとも心地よい。こんなに良い声で鳴いてくれるのなら、何時間でも舐め続けてやりたいと思う。……尤も、それも己の股間にわき上がる欲望を無視することが出来れば、の話だ。
既に、浴衣の下でははち切れんばかりに膨張している。先端に滲んだ液が糸を引いて滴り、畳を汚している程だ。
月彦は名残惜しむように、敏感な粘膜、突起にちゅっ……ちゅっ……と何度かキスを浴びせ、唇を離した。春菜の太股も解放して、再び覆い被さる。
「……春菜さん、もう……我慢できません」
獣のように息を荒げ、囁きかけながら、春菜の手を誘い、自らの股間へと宛う。春菜は一瞬だけ、戸惑うように瞳を揺らした後、
「はい……、私も……もう…………」
すっかり膨張しきったそれを慈しむように、優しく掌で撫で、さする。瞬く間に、春菜の指はにじみ出ていた透明な液に濡れ、にちゃにちゃと汚らしい音を立て始めた。
「っ……」
月彦が、僅かに眉を寄せる。春菜の指使いは巧みで、そうされているだけで今にも放ってしまいそうなのだ。
それを察したのか、春菜の指の動きが穏やかなものになる。そして、導く。
「ぁ……っ……」
ちゅっ……と、肉茎の先端が春菜の媚肉に触れる。その瞬間、もう月彦は我慢できなくなった。春菜の肩を掴み―――
「あっ、……くっッ、ぃぃいいいィッ!!!」
挿れる。
巨塊が強引に下腹を押し広げていく感覚に、たまらず、春菜が悲鳴を上げる。が、それも聞こえていないのか、月彦は構わず両手を背中側から春菜の肩に当て、逃げられないようにしながら腰を突き出し、剛直を押し込んでいく。
「あっ、あっ……あっ…………!」
春菜は月彦の下で、体をくの字に折り曲げ、苦しげに喘ぐ。月彦の背中に回した両手で、浴衣の生地を掻きむしり、爪を立てる。
体の中のものが、下腹部から突き上げてくる肉の塊にぐいぐいと押し上げられる感覚。咄嗟に体を逃がそうとするも、月彦が両肩を押さえているからそれも出来ない。
猫耳のすぐ傍に、フーッ……フーッ……と、ケダモノの息づかい。高ぶった“牡”を抑えきれず、些か暴走気味―――そんな呼吸音だ。
「っ……春菜さんの膣内《なか》……凄く……気持ちいい…………」
うわごとのように呟きながら、月彦は少しずつ腰を動かし始める。初めは、ゆっくりと前後に。やがては捻りを加えたものに。
「くっ、ふっっ…………ぁっ、んっぅ……!!」
それに合わせて、春菜が噎ぶ。苦しげに、剛直を差し込まれる都度肺の空気を絞り出されるような声。呼吸のペースすら左右させる程、春菜を貫いている肉槍は太々しい。
「あっ、あっ、あぅんッ……! あふっ……ぁっ……んっ、んんっ、んっ……!」
抽送。
媚肉を割り開き、押し広げる熱い肉塊。固く、充血したその肉の塊が出入りするたびに、稲妻のような快楽が春菜を貫く。
春菜の声の響きが、徐々に変わる。苦痛めいたものだったのが、快楽そのままの声に。天上の音楽のような嬌声。肉の杭が打ち込まれる都度、雅さが増していく。
「っ…………春菜、さん……!」
ズンッ……ズンッ……と、体重をかけて腰を打ち下ろす。打ち下ろしながら、腰をくねらせる。春菜の膣の中で、ぐりぐりと肉の竿が歪み、撓る《しなる》。
「はっ、あぁぁっ、あっ……あんッ……! ぁっ……っ……つ、き、ひこ、さっ―――んんっ……はぁ……ふっ、んんんっ、ぃいィうッ!」
甘ったるい声を上げて、春菜が声を荒げる。声を上げながらも体を開き、しっかりと月彦を抱きとめる。涙の溜まった瞳を細め、うっとりと見上げる。
「んっ……!」
物欲しげな唇。月彦は腰を使いながら、そこに吸い付いていた。啄むような、浅いキス。互いに短く舌を出して、ちろちろと絡め合う。
ちゅっ……ちゅっ……っぱっ……。
音を立てて春菜の舌を、唇を吸い、月彦は春菜の背中へと回していた腕を戻して上半身を起こした。腰の動きを止めて、改めて春菜の体を見下ろす。
慎ましやかに着こなされていた着物は無惨に剥かれ、辛うじて腰帯の辺りだけがその名残を残している。白い肌はすっかり桜色に染まり、牡を引きつける淫らな肉の塊が二つ、頂が小さな塔のようにピンと立ち、唾液に濡れてぬらぬらと光沢を放っていた。
濡れた瞳が、怯えがちに月彦を見上げている。
「……心配しなくても、ちゃんと続きはしてあげます」
月彦は苦笑しながら、両手を春菜の腰帯の裏の当たりに回し、ぐいと持ち上げるようにした。春菜の腰を僅かに浮かせ、自分は正座から両足を開いたような体勢で、再び抽送を開始する。
「ぁっ、やっ、やんっ……! あっ、んんっ、ぁっ、あッ、あっ、あぁッ! ……っ……あッ!」
先ほどの体勢よりも動きやすくなった為か、抽送もよりダイナミックなものになる。肉槍の動きもそれまでの倍ほどのスピードになり、自然と春菜の声も小刻みに、早鐘を打つようにとぎれとぎれに漏れ始める。
春菜の背が、弓のように反る。双乳がたぷたぷと揺れ、先端の突起が薄い残像を残して上下する。
室内には、肉と肉がぶつかり合う音が響く。肉杭が打ち込まれる都度、カリ首によって大量の恥蜜が掻き出されているのだ。それらが、腰と腰がぶつかり合うたびに弾け、飛び散る。畳を濡らす。
「つ、月彦さっッ―――そ、んなっ……やっ、ぁんっ……んぁっ、ぁっ……あっぅんっ……!わ、……私、も、うっ……もうっっ…………っっっ……!」
“もう”―――その言葉の後、春菜は唇だけを動かし、掠れたような声を出す。何かを言おうとしているのを、躊躇っているような仕草だった。
「“もう”……なんですか?」
月彦はクスリと笑みを浮かべて、腰の動きを緩やかなものにする。あぁぁ……と、切なげな声を出して、春菜は左手の甲を唇に当てて咄嗟に月彦から視線を逸らした。
「ほら……春菜さん、ちゃんと……教えた通りに言ってくれないと……続きをしてあげませんよ?」
「ぁっ……ぅぅ………………」
春菜は上気した頬をさらに紅くして、瞳を泳がせる。ちらちらと、機嫌を伺うように月彦を見ては、すぐに天井へと戻すような動きだ。黒と茶色の入り交じった美しい瞳、その奥では紫色が怪しい光を放っている。
「…………う………………です…………」
「聞こえません」
ズンッ……!と一際強く、剛直が打ち込まれる。あぅんっ……と春菜は悲鳴を漏らし―――
「……もう、ちょっと、で……イキそう、なんです……。だから…………やめ、ないで……ください…………」
かああと顔を真っ赤に染めながら、ぽつりぽつりと呟いた。それは何度目かの情事の際に月彦が促し、春菜に約束させた事だった。
「そう、イく時はきちんとイくッて言って下さいね。そしたらこっちも、春菜さんに合わせてあげられますから」
微笑みながら、月彦は抽送を再開する。ぐんっ……ぐんっ……とロングストロークだったそれとは違う、小刻みな動きへと変化する。
「あンッ……! あァッ……ぅんっ、あッ、あッ、っっっ……っくっ、ンッ……!」
春菜は肩を抱くようにして、剛直からの刺激に耐える。たっぷりの乳房が両腕の中で窮屈そうに歪み、抽送の振動で尚揺れる。
「あッ、あっ、あっ……あッ、あっッ……っっ……あっ、ッ……つ、月……ひこさ、っっ……わ、私っ…………私っっ―――イ、…………く…………い、っ…………イクぅゥッッッッ!!!」
びくんっ!
のけぞり、立て続けに、痙攣でもするように春菜の体が揺れる。
「ッ…………春菜、さんっ………………!」
月彦も、春菜の腰を掴んだまま遮二無二腰を振る。次第に腰の辺りに痺れるような感覚が走り、剛直の根本に何かが溜まっていく。
「ああァッああァあアッッ!!!!!……っ……ッ……ッさいっ……くださ、いッ……いっぱいっ…………いっぱいっっっ……!!!!!!!」
嬌声―――否、叫声。
春菜は月彦の浴衣を掻きむしり、屋敷中に聞こえるような大声でわななき、求める。
媚肉が、痙攣するようにヒクつき、締め上げてくる。
熱い蜜と、肉襞に締め付けられ、月彦もすぐに限界を感じた。
「くっ―――」
一瞬だけ、何かに耐えるように眉を寄せた後、月彦は春菜の膣内に滾りの全てを放っていた。
熱く、濃い、若い牡の精。それらが敏感な粘膜で出来た密室にこれでもかとぶちまけられていく。
春菜が、活字にならない声を上げる。悲鳴でもあり、嬌声でもある絶叫だった。
どくっ……どくっ……!
止めどなく注ぎ込まれる白濁、ねっとりと濃いそれらは、瞬く間に膣から溢れ、結合部から吹き出るようにして零れた。畳を、白く汚す。
「はーっ………………はーっ………………」
月彦は呼吸を整えながら、春菜の腰に当てていた手を退けて、畳の上についた。そうしないと上半身を支えてられなかった。汗が、幾筋かこめかみや額を伝って春菜の上にしたたり落ちる。
射精が、まだ続いていた。びゅっ……びゅっ……と、しつこく、少しでも春菜の膣を自分の色に、匂いに染めようとしているようだった。
「……月彦さん…………」
声をかけられ、月彦は顔を上げて春菜の方を向く。全身が、射精直後の気怠さで顔を上げるのも一仕事だった。
「もっと……欲しい、です。……もっと……いっぱい、……私の中に……注いでくださいまし……」
春菜は照れるような素振りをしながらも、貪欲にねだってくる。すっかり濡れそぼった瞳、その奥の紫色が爛々と強い光を出し始める。
月彦はその光に魅入られたように瞬きもせずにしばし春菜を見つめ、彼女の呟きに耳を傾け続けた。
くん……と鼻を鳴らす。桜のような、桃のような香りがした。嗅いでいると脳が痺れる
自然と、体に力が漲ってくる。剛直が膨れあがり、反り返る。むらむらと、牝の体が欲しくなる。犯したくなる。
たとえそれが、傀儡の意志だと解っていても、月彦には逆らうことはできない。
「はい……俺も、まだ……春菜さんを抱きたい、です」
そして、再び淫らな宴が始まった。
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