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それはかつて見た事がない程に、蠱惑的な光景だった。真狐に頭を押さえつけられる形で俯せに伏せ、月彦に向けて尻だけを持ち上げるような格好をさせられているツクヨミの姿は、これ以上無いほどに月彦の中の牡を刺激した。
秘裂を隠すように垂れたその尾。ふっさりとした銀狐の尾は一本一本の毛が従来の妖狐のものよりも遙かに細く、その色合いも相まってなんとも気品に満ちた輝きを放っている。――汚してやりたいと、月彦の中に黒い欲望が沸々とわき起こる。
「止め、ろっ……貴様っ、貴様等っ……自分たちが何をしようとしているのか解っているのか……!?」
当然のようにツクヨミは暴れ、抵抗をする――が、その尾の付け根が真狐に握られるなり、たちまち尻を震わせて大人しくなる。真狐はくすりと口元を歪めながら、ゆっくりとツクヨミの尾を扱き始める。
「ぁ、ぁぁっ……や、やめっ……」
ぶるりとツクヨミが体を震わせ、次第に垂れていた尾が高々と持ち上がる。至極、月彦の目の前に、濡れた秘部を晒す形になる。
「確かに、真狐の言うとおりだ。……甘やかすのは良くないな」
さも、躾の為に仕方なく――そういう体を装っているが、ただの建前であることなど、ギン勃ちした股間を見るまでもなく明らかだった。
「ひぁっ……」
ツクヨミの尻を掴むや、そんな生娘めいた声が漏れる。真央を攫った首謀者でもある憎き相手のそんな声に、月彦はますます嗜虐心を刺激され、指で割り開きながら覗き込む。
「……凄いな…。触ってもないのに、もうこんなに……」
割り開いた媚肉に息がかかるほどの距離で、わざと声を上げる。ギリッ、とツクヨミが歯を食いしばるのが、気配でわかった。
「止め、ろっ……そんな、所……見る、なぁ……!」
ツクヨミが尚も暴れようとする――が、真狐が尾を握ってそれを許さない。ツクヨミに出来ることはただ尻を上げたまま左右に振ることのみであり、それは皮肉なことに本人の意向とは真逆の、男を誘う効果しかもたらさなかった。
「っ……貴様、らっ……いい加減に――ひゃんっ」
割り開いた媚肉を、れろりとひと舐めするなり、ツクヨミはビクンと体を硬直させ、甲高い声で鳴く。くつくつと、二人分の押し殺したような哄笑が室内に響く。
「いい声を出すじゃないか。普段はわざと低い声を出してるのか?」
「案外、“そっちの声”の方が支持率が上がるんじゃない? いっそ、アイドルに方向転換でもしたら?」
「っっっ……う、うるさっ――ひゃあっ……! あンッ!」
恐らくは、“支配者然とした声”を普段から意識しているのだろう。しかし一度その牙城が崩れれば、なんとも男の心を擽る甘い声を上げ始めるのだから月彦としては堪らない。
(このまま、たっぷり――)
舌で舐め回し、さんざんに鳴かせてやろうかと。月彦が思った瞬間、意外なところから横槍が入った。
「こーら、月彦。そういうのは、さっきあたしが散々やったから」
ぐいと、真狐に頭を掴まれ、ツクヨミの尻から引きはがされる。
「あんたの取り柄はそれじゃないでしょ? ほらぁ、早くぅ……グズグズしないの」
ぺろりと舌なめずりしながら、真狐は手を伸ばし、自らの指でツクヨミの秘裂を割り開いて見せる。自分の指ではなく、女の指によって開かれた秘裂はこれはこれで興奮するものがあると、月彦は自分が生唾を飲んだことで思い知った。
「ああ……解ってるって」
目を爛々と輝かせている真狐を見て、月彦は苦笑する。これほど熱心に、自分の娘を犯す手伝い、手ほどきをする母親はまず居ないだろうな――そんな事を思いながら、月彦は両手を滑らせ、ツクヨミの腰のくびれをグッと掴む。
月彦の行動の意味がわかったのだろう。ツクヨミはいっそう体を硬くして、尻を引くような素振りをする。………が、それも月彦が両手に力を込め、ツクヨミが逃げられないようにすれば済むことだった。そして、剛直の先端が濡れそぼったクレヴァスをつんと軽く突くと、ぁっ…と押し殺したような声が漏れた。
「ひっ……!? ッ……くっ………や、やめ、ろ………貴様ッ……人間の、分際で……ぁッ……!」
「何だ、同じ人間でも口に咥えるのは良くて、下に挿れられるのはダメなのか? 我が儘なお姫様だな」
ツクヨミの矛盾を嬲りながら、月彦は剛直の先端をぐいぐいと押し込んでいく。既に濡れそぼってはいるものの、しかしすんなりというわけにはいかず、強引に押し広げるようにして、月彦は腰を進ませていく。
「い、嫌ッ! くっ…はッ……っ……そんなッ……やっ……お、大きッッ……ンッ……!」
ぐぐぐと押し込んでいくと、ツクヨミは背を丸めるようにして悲鳴を漏らす。布団を握りしめ、変に力んでいる為か、呼吸も覚束ないようだった。
「あーらら、ツクヨミ。“人間ごとき”にヤられちゃったわねぇ……ふふふ……」
さも愉快そうに。まるで自分の娘が人間の男にヤられるというその光景自体に興奮でもしているかのように、真狐は瞳を輝かせながら呟く。
「お前って奴は………」
真狐という女は、徹頭徹尾真狐なのだと。月彦は呆れ気味に呟いて、視線を眼下にある白い背中と尻へと戻す。
「……………まさか、初めてとかじゃないよな」
ツクヨミのあまりに不慣れな様子に月彦はやや怪訝そうにするも、さすがにそれは無いだろうと思って挿入を再開する。ツクヨミの中は確かに、潤いすぎる程に潤っていたが、窮屈であるという事には変わりが無く、剛直を突き進めるにつれて途方もない摩擦が生じ、月彦は思わずうめき声を漏らしてしまう。
それはツクヨミの方も同様らしく、苦しげに悪態をついてはいるものの、徐々に色っぽい息づかいをし始めていた。
「くっ……ぁ……ッ! に、人間にッ……あ、あぁッ……あ、あんッ!……あぁっ……やっ…ふ、深っ……い……んうッ!」
つんっ……と、最奥まで小突かれ、ツクヨミは悲痛めいた声を上げる。その後ろから、ふうぅ……と、ケダモノじみた息を漏らし、月彦が被さる。
「ありゃ……?」
胸元に伸ばした両手が、すかっ……と空を切って、月彦は思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。真央や、最近では春菜を抱いた時などは背後から貫き、被さり、豊富な乳房をむにゅむにゅするのが月彦は好きだったのだが、ツクヨミ相手ではその欲求が満たされなかった。
「うーん……」
仕方なく、やんわりとだけ肉付いているそこをふにふにしてみるが、やはり満たされない。
「きッッ……貴様ッ……何が、言いた―――……ぁッ……いぃッ!?」
さも不満そうに胸を触る月彦に、ツクヨミは真っ赤になって吼える。が、それは月彦が腰を動かし始めた事で途絶え、甘美な声に変わった。
「ん……こっちは良い具合だ。さすがは、真央の姉ちゃんだな」
背後から抱きしめるような体勢のまま、くいくいと腰を小刻みに動かす。二人の体にサンドイッチされた尻尾がもぞもぞと動いて、月彦は少しこそばゆかったが、これはもう慣れっこだった。
「んぁッ……ッやっ……う、動かす、なっ……ぁ……あっ……ぁッ! ……あっ……んッ! ぁっ……ぁっ……くぅぅッ……!」
人間の男に犯されて声を上げるなど屈辱の極み――だとでも思っているのか、ツクヨミは必死に声を押し殺していた。そんなツクヨミを普段ならば小賢しいと感じ、意地でも声を上げさせてやろうと考えるのが月彦という男なのだが、今回に限ってはあえてゆるやかな責めのままに甘んじた。
何故なら、そんなことをしなくてもいずれツクヨミが声を抑えられなくなるであろうことはわかりきっているからだ。
(なんたって、真狐の娘で、真央の姉ちゃんなんだからな)
月彦はただ、ツクヨミの矜恃が快感に屈服する瞬間が来ることをニヤつきながら待つだけで良かった。
「……ぁ、やっ……んぁぁあああッ! ぁッ! だ、だめっ……あっあンッ!」
こちゅ、こちゅと優しく突いているだけ――であるのに、ツクヨミは徐々に声を荒げはじめる。
「くぅぅッ………………ンッ………………ンンッ………………!!!!」
しかし、折れない。己のみだらな声を恥じるように枕を引き寄せ、その生地を咥えこむように声を押し殺す。枕を取り上げることは可能ではあったが、あえてそのままにする。理由は、前に述べた通りだ。
月彦は苦笑して上半身を起こし、再び両手をツクヨミの腰のくびれに添える。そしてやや強めに腰を動かし始めると、ツクヨミの嬌声と共にたちまちゾゾゾと尻尾が勃起し始める。
「いい眺め、だな」
まるで、屈服して土下座しているかのような姿勢のツクヨミを背後から犯す――それは月彦の支配欲を満たすに十分すぎる光景だった。そんな月彦に、まるで媚びるようにさわさわと、さも柔らかそうな毛を揺らしながら尻尾がそそり立つ。が、それも月彦がずんっ、と奥を小突くと途端に芯が通ったように堅く直立し、また腰を引くとふにゃりと萎れる。
銀狐特有の細く白い毛はそれ自体が発光でもしているかのように、白く輝いて見える。その毛先に鼻先を擦りつけると、微かに何かの香のような香りがした。
「さすがは妖狐の姫だ。毛並みからして気品がある」
感心しながら、月彦は両手でツクヨミの背中を撫で回す。見れば、その素肌も尻尾に負けじと純白の色をしている。今でこそしっとりと汗ばみ、薄く紅色になっているが、普段はそれはもう雪のように白い肌をしているのだろう。
改めて、自分は妖狐の姫を、本来ならば高嶺の花となるべき相手を犯しているのだという実感が湧いてくる。さらなる興奮と高揚感で月彦は鼻息荒く、剛直を益々強ばらせてツクヨミの体を貫く。
「ひっ……やっ……グンって、反っ…………お、大きくッ……んんぅぅう!」
ツクヨミが一際大きく鳴き、背を反らせる。まさか、己の気品さ故に月彦が必要以上に興奮しているのだとも知らず、ツクヨミは怯えたような声を上げ、ただただ尻を差し出すように持ち上げたまま声を押し殺し続ける。
「くすくす……どう? ツクヨミ。“ただの人間”に犯される気分は」
しばし傍観を決め込んでいた真狐が、つつと背骨の辺りを撫でながら尋ねる。んっ、と唾を飲むような仕草をして、ツクヨミは首だけを動かして何とか真狐の方を見る。そして、睨み付けた。
「う、五月蠅いッ……貴様、等……妾にこのような……ッ……狼藉ッ……ただで、済むとッ……あふっ……ン!」
なんとも聞いても現実味を帯びない、心に響かない口頭だけの言葉。最早ツクヨミが口だけの拒否をしているのは明白だった。
「月彦、ツクヨミは後で仕返しするつもりらしいわよ」
「……そりゃあ怖い。今のうちに謝っておいた方が良いかな」
月彦は真狐に合わせておどけるように言い、その言葉とは裏腹に腰の動きを大きく、激しいものにしていく。ツクヨミの腰を掴み、自分の方に叩きつけるようにしながら、自らも腰を突き出す。……ツクヨミの悲鳴めいた声と連動して、その尻尾の毛までが逆立ち始める。
「んッ! ぁッ……あっ、あッ! あぁッ……あっあっ、あッ! やっ……やめッ……あッ……あぁッあッ!!」
ツクヨミが、とうとう枕から顔を上げ、喘ぎ出す。両手で布団を握りしめたまま、尻尾を勃たせ、背骨が軋むほどに背を反らせながら。剛直に突き上げられる度に、はしたなく声を上げ始める。
ほらな――そんな思いと共に、月彦はにぃと口の端をつり上げる。気位の高い妖狐の姫が快楽堕ちする瞬間を目の当たりにし、月彦はあまりの興奮に身震いする。
「そういや―――」
興奮の極みを感じて、月彦は腰の動きを緩やかにする。合わせて、断続的に聞こえていたツクヨミの声も止まった。
「このまま、中に――で、いいのか?」
真狐?――と、月彦はツクヨミではなく、真狐に尋ねる。口の端が僅かに緩んでいるのは、この二人が奇妙な連携を発揮する前兆である。
「そうね、別に発情期って訳でもないし」
案の定、真狐はあっさりと承認する。
「それに、万が一デキちゃっても、それはそれで面白そうだし。……ねぇ、ツクヨミ?」
「なっ……中ッ……て、まさか――」
ワンテンポ遅れて、怯えるような声を出したのはツクヨミだった。はあはあと呼吸を整えながら、必死に真狐と月彦の顔を視界に入れようとする。そして、意地の悪そうな母親の顔と、ケダモノのように息を荒くする人間の男を見て、ツクヨミは己の推測が間違いでない事を知った。
「いっ……嫌ッ……だッ! な、中に、など……外っ……外、にっ……!」
ツクヨミは暴れる。快感の虜にはなっても、こればかりは譲れないのか、必死に月彦の下から脱出しようと試みる。が、両手でしっかりと腰を掴まれている為、ふりふりと尻を振るような事しか出来ない。
「そんな事して……“暴発”しても知らないわよ?」
くすくす真狐が笑って、ツクヨミもその可能性に気づいたのか、すぐに動くのを止める。
「……そうだな、真狐。きちんと敬語で“止めてください”って言えたら止めるってのはどうだ?」
「良いわね、躾っぽくて。……ツクヨミ、わかった?」
真狐は確認を取るように、ツクヨミの顔を覗き込む。悪意のたっぷり混じった笑みに、ツクヨミはくっ、と唇を鳴らす。クヨミを屈服させ、従わせるのが楽しくてたまらないと言う顔だ。逆らえばどうなるか、この場合は火を見るより明らかだった。
「…………止めて、くだ――」
「聞こえないわ」
小声で呟くツクヨミの声を覆い隠すように、真狐が声を出す。くっ、とツクヨミが口の中で呻く。
「止めて……くだ……さい………」
「何をかしら?」
これまた即答。真狐は態とらしく首を傾げて、解らないという顔をする。なっ……と、ツクヨミが大声を上げそうになると、今度は月彦が動いた。
「あんッ! あッ……やっ……やぁッ……う、動かッ……なッ……ぁぁっあッ! あァぁッッ!!」
数回。大きなストロークで突かれ、油断していたツクヨミはつい大きな声を上げてしまう。萎えかけていた尻尾が一気に勃起し、毛が逆立つ。
「言うなら早くしてくれよ、焦らされるのは嫌いなんだ」
このまま出しちまうぞ――ツクヨミに被さり、耳元に囁きかける。真狐に比べて、月彦は演技が下手だ。だが、普段ならば明らかに悪ぶった口調だと解るそれも、快感で正常な思考力を失いかけているツクヨミには効いた。
「……っ………な、中に……出すのは……止めて、下さい……」
「よく聞こえないわ、もう一回」
ツクヨミは唸る。が、間髪入れずに深く息を吸い―――
「中に出すのは、……止めて……下さい」
ハッキリと、聞き取れるような口調で言った。途端に、真狐はにんまりとしたり顔をする。
「よく言えたわねぇ、ツクヨミ。……御褒美、あげなきゃね」
そうだな、と頷いたのは月彦だ。真狐と同じく、意地悪な笑みを浮かべている。
「褒美?――ひっ……ぁッ……ぁ!」
月彦に突然動かれ、またしてもツクヨミは素っ頓狂な声を上げてしまう。深々と差し込まれたそれがぐりぐりと抉るように撓りながら、ゆっくりと前後し始める。
「御褒美を……たっぷりと、な――」
白い狐耳に囁き、体を起こす。両手でしっかりと腰のくびれを掴むと、欲望のままに、本能の赴くままに肉柱を突き込む。…月彦のその行動の意味をツクヨミが理解したのはすぐだった。
「ま、まさか……んっぁッ! そんなッ……約束が、ちッ……違ッ……んんんン! ぁッ……ひっ……あんッ!」
いまさらのようにツクヨミは暴れる。だがそれは先程同様、月彦の手の中から逃れる事も出来ず、ただ背後に居るケダモノの興奮を高める作用しかもたらさなかった。
悪あがきをするツクヨミを嘲笑うように、真狐がくすくすと声を漏らす。
「あら、あたし達を責めるのはお門違いよ? だって、昔の狐も言ってるじゃない。――“万事、騙される方が悪い”ってサ」
真狐が言うのは狐の理屈。人の社会では詐欺師は罪だが、狐の社会ではそれは有能の証、一つの才能として認められる――のだが、無論月彦はそのような事は知らない。知らないが、目の前の妖狐の姫に己の子種を刻みつけてやりたいという想いが、憎き真狐の言葉すら肯定させる
「ッ……そんなッ……ぁぁッ……あッ! ぁっあんっ! あぁっ……い、嫌っ……やめっ……本当にっ………やめっっ―――ひんっ!」
「ほら、もっと色っぽい声出さないと、月彦がイけないでしょ?」
真狐の手が伸び、結合部、その少し上の突起の辺りを撫で、弄り始める。あァァッ―――途端に、ツクヨミは大声を上げる。
「ッ……一気に、締まるなッ……」
月彦は眉を寄せながら、さらに突き込む。真狐が指先で淫核を愛でるたびに窄まるそこを無理矢理に押し広げ、奥を小突く。呼吸が、ますます荒くなる。
「ツクヨミ……出す、ぞ……」
月彦はわざと、声に出した。恐らくは、“人間の男”である自分を見下しているだろうツクヨミに、お前はその人間の男に種付けをされるんだぞと。宣言――否、宣告をする為に。
「ひっ……い、イヤッ……嫌だっ……た、頼むっ……中だけはっ……止めっ……人間っ、の……子、など……い、イヤッ……は、孕みたくっ……無っ……ひぁっ!」
「ダメだ」
ズンッ、と。一際奥まで突き入れる。ツクヨミが体を逃がしたり出来ぬよう、その体を両腕でしっかりと固定する。
「イヤッ、いやっ……イヤッ、嫌ッ…………――イヤァァァアアアアアッッ!!!!!!!!!!!」
絶叫を上げるツクヨミの中へと、特濃の子種を注ぎ込んでいく。それは先ほどの口での奉仕の時よりもさらに濃い――まるで体が、高貴な身分である牝を孕ませることを望んでいるかのように――ものだった。
(……おやおや)
びゅぐり、びゅぐりとツクヨミの中を汚しながら、月彦は至福の快楽を噛み締めていた。同時に、口元に笑みが浮かんだのは、これほど嫌がりながら、絶叫すらしながらも、ツクヨミが“達している”からだった。
「ぁっ……ァッ…ぁっ……やっ……ぁ、本当に……中、に…………熱っ…ン…あッ……ぁ、ぁっ……」
びくんっ、びくっ――体を震わせながらぐったりと伏し、放心したようにツクヨミが呟く。そんなツクヨミの中に、月彦は最後の一滴まで絞り出す。
「ふぅ……う……」
月彦は満足げに息を漏らし、そしてゆっくりと、腰を前後させ始める。月彦のその動きに、絶頂後、ふにゃりと萎えかけていた尻尾が再びそそり立つ。
「んぁぁッ……や、やめっ……はぁんっ……う、動かさッ……あんっ! ぁっ……ぁっ……や、ぁ……塗りつけ、ない、で……ぁっ……ぁぁっあッ……ぁぁぁぁっ!」
まるで、動物が己の匂いを擦りつけるような動き。白濁とした牡液のマーキングを強制的にされながら、ツクヨミは再び声を震わせる。
「“塗りつけないで”か。……“塗りつけるな”じゃないのか?」
くつくつと笑いながら囁くと、たちまちツクヨミは顔を赤くした。
「き、貴様ッ……調子にっ……ひっ…………」
「中出しされてイッたクセに、まだキャンキャン吠えるのか?」
「だ、誰がッ――」
「イッてたわねぇ、間違いなく。いやぁーって叫びながら、本当は興奮してたんでしょ?」
「母上……ちが、違うッ……興奮、など……」
狼狽えるツクヨミの腹部へと、真狐が手を伸ばしてくる。そしてその辺りを優しく、円を描くように撫でつける。
「ココに、濃くて熱いのをびゅっ、びゅってタップリ出されて、ゾクゾクって来ちゃったんでしょ? 相手が人間の男なのに、本気で感じて、イッちゃったんでしょ?」
「ち……違うっ、違う違う違う! わ、妾はッ……!」
「……月彦、この子まーだ素直になれないみたい。……ねえ、どうする?」
ニヤリと。ツクヨミの反論すらも予想済みだと言わんばかりの、意地悪な笑み。
「やれやれだな。……本当は俺だって、こんな心が痛むことはやりたくないんだが、素直に反省してくれないんじゃしょうがないよな」
この世に信用ならないものは数あれど、ニヤつきながらの「仕方がない」ほど信用できないものはそう多くは無い。
「なっ……貴様、等……まさか……」
仕方ない、仕方ないと呟きながら、月彦は抽送を再開させる。
「くっ……やっ……止め、ろっ……ッ……!」
勿論、ツクヨミの嘆願など聞き入れるわけもない。ただのうわべだけの言葉などまるきり無視して、月彦は一度イッてさらに具合の良くなったツクヨミの膣内を堪能する。
「ちょっと、月彦」
そんな月彦の意識が、真狐の言葉で引き戻される。
「あんたが“後ろから”が好きなのは知ってるけど、そうじゃないでしょ?」
月彦には解る。この女が“この種の笑み”をしていることは、何かろくでもないことを考えている時だ。そのことを、月彦は身に染みて知っている。
「躾なら、こうしなきゃ」
そう言って、真狐は月彦の耳へと唇を近づけ“悪巧み”を囁いてくる。
「……お前ってやつは……」
どこまで悪魔なのだと。真狐の考えを耳にするなり、月彦は呆れたように呟いた。そして、真狐の子として生まれてしまったツクヨミを、少しだけ哀れんだ。
「……しかし、乗った。確かに、“躾”ならそのほうが良さそうだ」
“乗る”時点で同類だという自覚は、月彦には無かった。故に、月彦は“躾のために仕方なく”という免罪符を高々と掲げて、ツクヨミの片足を持ち上げ、潜るようにしてその体を反転させる。
「…………っっっっ!」
仰向けにされたツクヨミは一瞬惚けたように目を丸くし、そして慌てて胸元を両手で隠した。その手を、ツクヨミの頭側に回った真狐が掴んで引きはがす。
「なっ……母上ッ……ぁっ……!」
ツクヨミに二の句を継ぐ間を与えず、月彦が腰を使い始める。たちまちツクヨミは甘い声を上げ、行き場を無くした白濁汁が抽送の度にごぷり、ごぷりと漏れ出してくる。
「あらあら。随分一杯注いでもらったのね。……この幸せ者」
「っっ……何が、幸せッ……くっ、止め、ろ……あぁぁぁぁっ……」
「……うーん、予想できたことだが…………やっぱり揺れないな」
「っっっっ…………き、貴様ぁあああああああああ!」
くんっ――ツクヨミの手が一瞬だけ跳ねる。真狐が手を押さえてなければ、張り手か拳かが月彦の顔面を捉えていたことだろう。
「止めろっ……止めろっ……見るな、見るなぁっ……」
「なんだ、さっきので大分慣れたんじゃなかったのか?」
見るなと言われれば、見たくなるのが男の性。月彦はツクヨミの控えめおっぱいをガン見下ろしながら、腰を使い続ける。
「くっ……き、貴様等っ……卑怯、な……二人がかり、で……はぁはぁ…………ンッ………………見る、なぁぁ…………あぁぁ……」
「ふふっ……だんだん良くなってきたみたいね、ツクヨミ?」
「う、うるさっ…………ンッ……はぁはぁ………………に、人間の男、などに…………あんっ……くっ…………」
ツクヨミの声が、徐々に熱に浮かされたようになる。先ほどまでひっきりなしに漏れ出していた白濁汁が、やがて透明さを増し、ぐじゅぐじゅと白く泡だったものに変わり始める。
「くっ……ンッ……はぁはぁ……い、いつまで…………も、もう………………」
「もう、何だ?」
口元を歪めながら、月彦は抽送を止める。そして、汗の浮いたツクヨミの腹部から胸元までを撫でつける。月彦の指が胸元へと到達するなり、いかにも気位の高そうな細い眉がつり上がり、睨み付けてくる――が、その恥辱にまみれた顔と相まっては、さらなる興奮を呼ぶ材料にしかならない。
(……この悔しそうな顔が、また……)
ゾクゾクと、背筋を走るものを感じながら、月彦は身震いを禁じ得ない。なるほど、確かに真狐の言う通りだと納得する。確かにツクヨミのような、はなから人間を見下しているような妖狐の娘をケダモノスタイルで犯すのもいいが、こうして屈辱に耐えている顔を見下ろしながらするというのも悪く無いと。
「高貴な銀狐様は、“人間ごとき”に犯されても感じないんだろ?」
「っっ…………」
「どうした、答えられないのか?」
月彦は指先でピンッ、と。堅く尖っている桜色のつぼみを弾く。
「……ンッ……!」
「あぁそうか。……“ツクヨミ様”はしゃぶらされるのが好きなんだっけか」
「何を、言……やめっ……んふっ……」
月彦はニヤつきながら、右手の人差し指と中指をツクヨミの唇を割り開くように差し込んでいく。意外なことに、ツクヨミはそれをあっさりと受け入れた。
(……歯を食いしばったりすりゃ、簡単に阻止できるだろうに)
月彦は、口元の笑みを止める暇が無かった。
「ひゃめっ……ふぁっ……ンンッ!」
しゃぶらせながら、腰の動きを再開させる。
「んふっ、んふっ……んぷっ……ンンッ!」
「言っとくが、噛むんじゃないぞ?」
腰を使いながら、指をゆっくりと抜き差しする。どうやら指をくわえさせるというのは思いの外効果があったらしく、ツクヨミは忽ちうっとりと目を細め、頬を上気させていた。
「んぁっ、んふっ、んんっ、んふっ……んんっ……ふぁぁっ……あふっ……あふっ……!」
トン、トンと膣奥を小突くたびに、ツクヨミが腰を跳ねさせながら喘ぐ。あらあらと声を上げたのは真狐だ。
「ちょっとぉ、月彦。甘やかすなって言ってるでしょ?」
「解ってるって」
にゅぱ、と指を引き抜き、ツクヨミの唾液で濡れた手で改めて腰を掴み、ズン、と突き上げる。
「あっ、あーーーーーッ!!!」
ビクゥッ――ツクヨミが体を持ち上げるように反らせ、大きく声を上げた。
「あひっ、あっ、あっ、あッ、あッ、あっッ!!」
「……どうした。もう声は抑えないのか?」
腰を使いながら問いかけると、ツクヨミは一瞬だけその金色の瞳に反抗の光を乗せたが、すぐに快楽に濡れて消えた。代わりに、自ら腰を持ち上げ、まるで“より良い場所”に剛直が当たる様、調節しているかのようにくねらせ始める。
「ふふっ……とうとう自分から腰を使い出しちゃった。チョロいわねぇ」
「まったくだ。誰に似たんだか」
呟きながらも、月彦は腰の動きを緩めない。それどころか抽送の速度を速めていくと、ツクヨミは電撃でも受けたかのように体を痙攣させ、慌てて月彦の手首を掴んできた。
「あぁっ、あぁっ、あぁぁッ! やめっ……やめ、ろっ……も、もう――……」
「ダメだ、止めない」
ツクヨミの嘆願を却下して、月彦は突き上げる。そして、ヒクヒクと剛直を締め付ける肉襞の間隔を計りながら、その強弱を調整していく。
「やめっ、やめっ、もっ、やめっ……あっ、あァァーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」
ビクビクビクッ――ツクヨミが腰を跳ねさせながら、イく。そんな娘の様を見ながら、真狐がぺろりと舌なめずりをしたのを、月彦は見逃さなかった。
「あらあら、イッちゃったわねぇ、ツクヨミ。今度こそ間違いなく、言い逃れが出来ないくらい激しくイッちゃったわね?」
「ッ……中、も……すげぇうねって…………くはぁっ……」
妖狐の姫が淫らに悶える様を、面と向かって見せられながら、射精を我慢しろというのが、そもそも無理な話だった。びゅぐり、びゅぐりと子種を吐き出し、注ぎ込みながら、月彦もまた嘆息をつく。
「やっ……な、中に、出す、なぁぁぁ………………あぁぁぁあッ!!!」
中出しを受けて、ツクヨミがさらに体を跳ねさせる。あはぁ、と嬉しげに声を上げたのは、見下ろしている真狐だ。
「中に出されただけでイくなんて、ほんと誰に似たのかしら」
真狐はぶるりと身を震わせる。
(まったく、こいつは……)
不本意に男に抱かれながらも、快楽落ちしていく娘を見ているのが楽しくて堪らないとでもいうかのように目を輝かせる真狐に呆れながらも、月彦は逆らうことが出来ない。
何故なら。
「ひあぁっ……またっっ……」
グンと、剛直に血が集まるのを感じる。自分はまだまだ、この牝を味わい足りないと痛感する。
「……悪いな、ツクヨミ“様”」
腰のくびれを掴み、ずんと突き上げる。
「今夜は、トコトン付き合ってもらう」
「んぁぁぁああッ! も、もう……やめッ……ひゃうゥッ!!!」
ツクヨミは舌を突き出すようにして声を上げ、布団を掻きむしる。だが、ツクヨミのその叫びを聞き入れる者はこの場には居ない。傍らには女の、くすくすという嘲笑があるのみである。
「はーっ……はーっ……んッ……! ぁぁぁッァ! ひぃっ……はッ……あぅうううッ! ぁっ…ぁァ……んっ!」
剛直が動く度に、ぐぷぐぷと汚らしい音が響く。それは幾度となく行われた膣内射精の残滓と、ツクヨミ自身の蜜が攪拌され、泡立つ音だった。まるでその音自体を恥じているかのように、ツクヨミはパフンとその白い耳を伏せ続けているが、自身の口がそんな音など問題にならぬほどに喘ぎ声を上げているのだから、本末転倒だった。
「ぁぁぁあァッ!……あんっ! あっ……ぁぁあっ……んくッ……ふっぅッ……だ、ダメッ……もうっ……中っ……はぁっ…………んぁッ…! あっ、ぁっあんッ! あっ……、あっあッ……あッ……あっぁぁッ…ぁぁぁあァ!!!!!」
ツクヨミが、ギュッと布団を握りしめ、膣内を窄める。ツクヨミのそんな仕草に、月彦はおやおやと思わざるを得ない。
(……さすが真央の姉ちゃん、ってことなのか?)
こちらの射精が近いことを悟って、それに合わせての事だと知って、月彦は少なからず驚いた。無論、ツクヨミとしては無意識――少なくとも、問いただしたところで絶対に認めないであろうが、その体はどうすればより男から精液を搾り取ることができるのかを学んでしまったらしい。
ならば、ツクヨミの“体”に新しい経験をさせてやろうと、月彦は口の端をつり上げる。
「ッ………え……?」
射精の寸前、月彦はあえて剛直を抜いた。ツクヨミの背に、後頭部に、尻へと盛大に
射精を行うと、ツクヨミは露骨に不満めいた声を出した。
「ふぅ……ぅ……」
さらに、フリフリと不愉快そうに左右に揺れる銀色の尾に、剛直を擦りつける。誇り高い銀狐の尾を、さながら箱ティッシュかなにかのように使うその行為は月彦の中にさらなる興奮を呼び、剛直の硬度を上げたが、無論そんな事は背を向けているツクヨミには解らない。
「……何で……外、に……」
くたぁ……、と頬を布団に付けたまま、ツクヨミが漏らす。その不満そうな物言いに、思わず真狐も月彦も苦笑する。
「何だ、ダメって言うから、外に出してやったんじゃないか。……それとも、中に出して欲しかったのか?」
「ッッッッ……何を……ば、馬鹿な……事を―――」
「クセになっちゃったのよねぇ、ツクヨミ?」
「ち……違ッ……んんぅッ!」
吠えるツクヨミの体を仰向けにさせ、再度挿入。さらにその身を抱き起こし、自分にしがみつかせるようにして、手をツクヨミの尻へと回す。すっかり快楽の虜となっているのか、それらの間にツクヨミは一切抵抗らしい抵抗をしなかった。
「あッ……ぁあッ……ァッ!」
尻を掴んだ手を揺さぶると、ツクヨミは早速甘い声を上げ、自ら月彦の体にしがみついてくる。同時に、キュッと膣内がすぼまるように肉襞が密着してきて、思わず声を上げてしまいそうになる。
「ぁッ……く、ぅ…………ん、ぁ……いつまで、こんなッ………」
月彦にしがみついたまま、寝言のような声でツクヨミが漏らす。瞳は潤み、とろけ、最早月彦に対する敵意など微塵もない。ましてや、愛しげとも見れる仕草でしがみついているその様を見れば、恋仲の二人が睦み合っているようにも見えるから不思議だった。
「やめて欲しいのか?」
「………あ、当たり前、だ……!」
ツクヨミの返答には、僅かばかり間があった。それを、背後から眺めている母狐がくすくすと笑う。
「なら二つ、確約して欲しいことがある。一つは、今後一切、俺達には手を出さないこと。もう一つは、真央にかけた術とやらをすぐに解いてほしい」
「マオ……というのは、貴様の娘の名か? ならばそれは、妾の預かり知らぬ事だ。綱牙辺りがかけた下手な術なら、……放っておいても……そのうち消え失せよう」
「それは変な話だな。春菜さん……妖描族の偉い人らしいんだが、その人が言うには真央にかけられた術を使えるのはツクヨミ、あんたしか居ないって聞いたんだがな」
月彦はやや威圧をするようにツクヨミを見る。その視線だけでも、今回の事件に娘が巻き込まれてどれほど腹を立てているかがうかがい知れる程に。
「し、知らぬッ……何度も言うが、妾はその娘とやらに会った事も……ない。第一、その術というのは―――」
「四禁、限身の呪……っていえば、解るかしら?」
口を挟んだのは真狐だった。げんしんのじゅ……と、ツクヨミがその言葉を反芻する。
「……確かに、おいそれと使い手の居ない術ではあるが……しかし妾ではないッ! 大九尾に誓って言う、妾の仕業では――ッ!」
ツクヨミの訴えは唐突に途絶えた。悲鳴とも取れるような声を漏らして、月彦の背中に回した手が爪を立てる。ぁっ、と色めいた声を聞いて、やっと真狐が尻尾をさすっていると解った。
「強情ね、アンタ以外下手人は考えられないんだから、意地張っても無駄なのにねぇ。ああ、それとも……もっとシて欲しいから、態と惚けているのかしら?」
白い狐耳に唇を触れさせるようにして囁きながら、真狐の白い指が尻尾を愛撫する。違う、というツクヨミの言葉は掠れ、途中から甘い喘ぎに変わった。
「ち、違……う、本当に、妾じゃ……あんっ!」
「そういう事が。危うく鵜呑みにするところだった」
ツクヨミの真に迫った言に耳を傾き賭けていた月彦は、自分の前に居るのが奸知に優れた妖狐の長であるという事を再認識していた。人を騙すことなど慣れたものであろうし、ましてやツクヨミも真狐の娘であるのだ。
「ぁっ……あッ……あッ……ぁッ……やっ……駄目ッ…ッ……っ…ひっ…!」
体を揺さぶられ、それを阻止しようとするかのようにツクヨミがしがみついてくる。腕を絡め足を絡め、きゅうきゅうと吸い付いてくるそこからは、幾度となく吐き出された白汁が音を立てて零れていく。
「はぁぁッ……あッ……あっ……んっ! や、めッ……ひぃッ……んんうッ……ごり、ごり当たっッて…………ぁぁああッ……そん、な、奥っ……ばっかりぃッ……」
無実を訴える言葉は消え、代わりに色めいた声を上げ始める。月彦が体を揺さぶる度、真狐が尻尾を弄るたびにそれらはだんだんと甘く、切なさと、僅かな怯えを伴った声に変わっていく。それはまるで、何処か途方もない程深い谷底に落ちていこうとするのを必死に堪えているようにも思える声だった。
「ああッ…ぁッ…あッ……駄目ッ……だめっ、だめっ……あッあぁぁッぁあァッ! や、やめッ……ッ! あッ…ぃぃッ……んっ…はっあッ……だ、ダメッ…本当に、クセに、な…るッ……!」
荒い声で悶えながら、尻尾の毛を逆立てて、ツクヨミがイく。
「ふぁぁっ…………ぇっ……ま、待――……あぁあんっ!」
惚ける間も与えず、月彦は再度尻を掴み、上下に揺さぶるようにして――突き上げる。
「クセになる? …………本当にクセになるくらいイかせてやろうか?」
「ひっ……!? やっ……も、もう――……ひぁああっ!」
「良いんじゃない? ヤッちゃえ、月彦」
真央の仇よ?――真狐に煽られるまでもなく、月彦はツクヨミの体を揺さぶる。
「あぁぁぁあっ! あぁぁアァッ! あぁっ、あぁっ……い、いい加減に…………あァァっっ……!!」
この期に及んで減らず口をたたけるのは大したものだが、そのくせ自ら腰を使ってくるツクヨミに、月彦は腹立たしさすら感じる。真狐の血というのは、ここまでド淫乱になってしまうものなのかと。
(真央は……大丈夫なのか)
しかしそんな危惧も、忽ち快感の渦の中に消えてしまう。真狐の血――ツクヨミの体は、確かに一級品であり、さらにはそこに“高貴”という属性が付随することで、それを汚し貶めるという行為に月彦はさらなる興奮を感じているからだった。
「んぁぁあっ、あっ、あっ、アァァーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
ツクヨミが仰け反り、声を荒げながら、イく。何度も、何度も、十度も突かないうちに、体を震わせ、叫ぶ。その都度、肉襞が精液をねだるように剛直を舐ってきて、次第に月彦の方も余力が無くなってくる。
「あぁぁァァッ……ゆ、ゆるひっ……へ……も、ゆるひっっ……あっ、あっ、あっ、アァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
「くっ………………!」
とうとう射精を堪えきれなくなり、ツクヨミの腰を強く握りしめながら、月彦はその膣内を汚し尽くす。
「あぁぁぁぁぁ………………」
射精を受けて、ツクヨミはさらに小刻みに体を跳ねさせ、イく。二度、三度、その回数は丁度射精の回数と一致していた。
「んっ……うぅ……はっ……ぁ……ぁ……ッ……」
恍惚の声。背中に回した手がぎりぎりと爪を立て、そして一気に脱力。体中から力という力が抜け、尻を握る月彦の両手に一気に体重がかかった。
「ん……失神した、のか?」
月彦はやや神妙にツクヨミから離れ、横にして問いかけてみるも、ツクヨミからの返答は無い。ただ、呼吸だけが荒く、緩やかな隆起が大げさに上下するのみだった。
「ふふ、アンタが出てくる前にも随分と可愛がってあげたから、さすがに疲れたみたいね」
と、そんなことを言いながら、真狐はツクヨミの頬を掴んで伸ばしたりしている。僅かに眉が寄ったものの、やはり目を開ける事はない。
「まあでも、これで骨身に染みたでしょ。あたしに手を出すとどういう目に会うか」
「そりゃあ……でも、真央のことはどうするんだ? 肝心のツクヨミがこれじゃ……確か、そのズイシンの術とかいうのはかけた奴にしか解けないんだろ?」
少なくとも春菜はそう言っていた。だからこそ、屋敷の猫達も、未だに元の姿に戻れていないのだ。
「限身の呪、ね。あんなもん、帰ったらすぐに解呪してやるわよ。もう、真央の役目も終わったわけだしねぇ」
目を細め、くつくつと狐の様に笑う。一呼吸ほど遅れて、えっ……という声が月彦から漏れた。
「そんな事は大したことじゃない――そう言ったでしょ?」
真狐が笑う。月彦は漸く、“真犯人”を知った。
「……お前が……真央に……術を!?」
月彦の声は裏返っていた。突然のことに思考は固まり、巧く頭が回らない。
「なんで――」
漸くそれだけの言葉を絞り出した。眼前の女は悪びれもせずにくすりと笑う。
「その方が運びやすかったからよ」
けろりと言う。だが、月彦には意味が理解できない。真狐はさらに言葉を続けた。
「だいたい、当て身をされて気絶してるアンタ達を誰が春菜の屋敷まで運んだと思ってるの? 瓢箪に入れられるのは一人だけ、あとは物しか入らない。アンタを入れて真央を背負う? そんな事をするより小さくして運んだ方が楽に決まってるじゃない」
それは解らなくもない理屈だった。だが、納得は出来ない。
「そ、それなら、何で……すぐに解かなかったんだよ! 春菜さんの屋敷に着いてすぐ戻せば……」
こんなややこしい事にはならなかった――そう言いかけて、月彦はハッと気づいた。全ては、仕組まれていたのではないか、という事に。
そもそも、今回の事件の発端は真狐の脱獄、それによる追っ手とのいざこざに月彦の真央が巻き込まれた事に始まる。気を失っている二人を前に、真狐がどのような事を考えたのか、真実を知った今なら容易に想像がつく。
まず、月彦と真央を春菜の屋敷に預ける事で、二人の身の安全を確保すると共に、機会があれば春菜の力まで利用することを目論む。これは実際に春菜の屋敷を襲撃した賊を春菜自身が撃退した事から、真狐の目論見通りに進んだと言える。
次に、真央の事。あのような姿にされていれば当然のようにツクヨミの仕業ではないかという事になる。まさか実の母親の所業とは夢にも思うはずがない。同時に、月彦にもツクヨミに私怨を抱かせ、己の手駒の一つとして狡猾に操る。
結果、真狐はツクヨミに一泡吹かせ、さらには負い目(?)も被せる事に成功した。当の月彦も、まさか共にツクヨミを言及していた真狐の仕業だとは夢にも思わず、真央の仇という理由を振りかざしてツクヨミに陵辱の限りを尽くした。
「なんて、事を――」
今頃になって震えが来る。それこそ、真央の仇だと言われてもツクヨミには心当たりなどあるはずもない。ツクヨミの訴えは真実、嘘偽りのないものだったのだ。それを――
「今更気にしたってしょうがないわよ。アンタも良い思いが出来たんだし、あたしもこれでのんびり出来るし、万々歳じゃない」
何が不満なの?――とばかりに、真狐が肩に手を置いてくる。それを、月彦は猛烈な勢いではね除ける。
「何が万々歳だ! ようはツクヨミは無実だったって事だろ! それを、あんな――」
「何を今更。あんただって、ノリノリだったくせに」
「そっ……それと、これとは…………」
ごにょごにょと、身に覚えのある月彦は語尾になるほど声が小さくなってしまう。
「だいたい、ツクヨミはこのあたしに牙を剥いたのよ。これは立派な大罪だわ」
まるで自分が神か王でもあるかのような口ぶりをする。月彦は目眩にも似たものを感じながらも、抗弁する。
「それは、お前が悪さばかりしてたからだろ!」
「悪いことって、何? 人を攫うこと? 男を食うこと? あたしの行動を人間の倫理観なんかで判断しないでくれない?」
真狐は不快そうに髪をかき上げると、ふんと鼻を鳴らす。
「ツクヨミは良い意味でも悪い意味でも人間にかぶれたわ。それはそれであの子の勝手だからいいとしても、それをあたしにまで強要されたんじゃたまらないわ」
それはあまりにも自分勝手な理屈ではないか、と言いかけて、月彦は止まった。真狐の言うとおり、自分は無意識のうちにこの狐女を自分の常識の範疇に治めようとしてはいないだろうか。
真狐はあくまで狐であり、人間ではない。それを人間の理屈に嵌めて責めるのは確かに不条理かもしれない。だが、しかし――
「あたしはあたしの好きにやるし、ちょっかいを出されたらやりかえすだけよ。あたしが気に入らないのならいつでもかかってくればいいわ。ツクヨミみたいに返り討ちにしてあげる」
キッ、と、真狐の瞳が獣のそれになる。普段からもあまり目つきがいい方とも言えないが、今のそれはまさに月彦を“威嚇”していた。
真狐は明らかに気分を害していた。それも、今までになく、少なくとも月彦が接してきた中ではこれはど敵意をむき出しにされたことはなかった。当然のように手足が竦み、凍り付いた様に動かなくなる。
それは、春菜に対して感じたものによく似ていた。理屈ではない、動物的な震え。月彦は改めて、自分が接している相手が人間とは異質なモノであるということを理解する。
「――その理屈で行くと、自分がやり返されても文句を言えぬ、という事だな」
不意に、余所から声がした。驚いたのは真狐も同様の様で、びくりと大きな耳を震わせるや、真っ先に咄嗟にテラスの方へと飛ぶ――が、声の主はそれすらも見越していた。
「逃すか――ッ!」
紫色の帯のようなモノがひゅっ、と真狐目掛けて飛び、その足に絡み付く。真狐は舌打ちをして腹這いに落ち、そのままずるずると引き寄せられていく。帯の先には、ツクヨミが襦袢を着、片膝を立てていた。
「つっ……」
月彦が思わず絶句したのは、勿論負い目があるからだった。だが、ツクヨミはちらりと月彦の方を見ると、さして興味もないとばかりにぷいと視線を真狐の方に戻す。
「ッ……あら、もう起きたの。アンタもタフねぇ」
真狐は苦笑し、ふんと鼻を鳴らす。体を起こそうとするも、左足首に絡み付いている紫色の帯のせいで巧く立てないらしかった。その帯というのもただの帯ではないのか、うっすらと発光し、しかもなにやら梵字のようなものが細かく書き込まれている。真狐がそれを引きはがそうと掴むと、帯と接触している部分がジリジリと赤い火花のようなものを散らし、その都度顔が苦痛に歪む。
「……話は全て聞いた。人間、貴様の所業は許し難いが、元はといえばこの女を逃がした妾の不手際。貴様の罪を許す代わりに、償いをしてもらうぞ」
「償い?」
月彦がオウム返しに尋ねると、ツクヨミは短く『手伝いだ』と答えた。
「性悪狐に仕置きをする。――妾は元より、貴様もこのままでは溜飲が下がるまい」
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