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 月彦は瓢箪の中に閉じこめられていた。瓢箪は中央のくびれによって中の空間が二分されていて、月彦が入っていたのはその上の方だった。
 瓢箪の中は当然ながら暗く、しかし全く視界が利かないというわけでもなく、薄ボンヤリとした闇の中で月彦は暇をもてあましていた。
 不思議と腹が減ることもなく、生理現象に見舞われるということもなかった。ただ、何もすることがないということを除けば、さして居心地の悪い場所というわけでもない。
 体が余程小さくなっているのか、窮屈と感じることも無く、中央の穴にさえ気をつければ、ちょっとした運動のようなことも出来た。
 中央の穴の下は、どうやら酒が詰まっているらしかった。そのせいで月彦が居る方の空間まで酒臭くなってしまうのは辟易したが、これも慣れてしまえば特に苦痛でもなかった。
 普通、人はこういった閉鎖空間に長時間閉じこめられると心身に何らかの悪影響を来すとされているが、月彦がそういった状態に陥らなかったのは腹が減らなかったり尿意を催さなかったりという事と同様、何らかの作用によるものなのだろう。原理は解らないが、とにかくそういうモノだということだけ、月彦は割と早めに理解していた。
 とはいえ、やはり暇だという事には変わりが無く、それ故突然瓢箪の栓が開けられ、中に光が差し込んできた時は驚喜した。だが、それは次の瞬間には悲鳴に変わっていた。
 酒が、溢れてきたのだ。くびれの下から途方もない量の酒が、月彦の居る空間を通って瓢箪から飛び出していく。当然ながら月彦の居る空間も酒で溢れ、月彦は危うくおぼれかけた。
 酒の噴出はほんの数秒ほどで止まったが、同時に瓢箪の栓もまた閉じられてしまった

 全身酒まみれ、普通の酒とは違うそれに心身を侵食されながら、月彦は自分をこのような目に遭わせた女への呪いの言葉を呟き始めていた。

 そういった経緯があったから、再び瓢箪の栓が抜かれ、解放された時は心中で狂喜乱舞した。やっと解放されたというのもあるが、それよりも真狐への恨み辛みをはらせるということの方が大きかった。だから―――
「真狐ッ! てめっ、よくも―――ッ……」
 べっ、と瓢箪から吐き出されると同時にその体が本来の体積を取り戻す。月彦は不格好ながらも着地するやいなや、真狐の方を振り返り、罵声を浴びせかけようとした。だが、その言葉は視神経を通して入ってきた情報によって途絶してしまった。
 まず飛び込んできたのは、見慣れぬ薄暗い部屋。天井は割と高く、畳敷きの二十畳ほどの広さで真ん中に大きな白い布団が敷かれている。その中心に真狐は居た。そしてその傍らに見覚えのない女が、あられもない恰好で伏せているのを見て、月彦は言葉を失っていた。それは、相手の方も同じのようだった。
「に、人間ッッッ!!!」
 布団の上にぐったりと寝そべっていた銀髪の美女が、月彦の姿を見るなりそんな声を上げる。ついでに逃げようと体を起こすが、巧く力が入らないのか、立つことすらできない――それを、真狐がくすくすと嗤って見ていた。
「は、母上ッ……これは何の真似だッ! に、人間を……連れて、来るなど……!」
 その声は大声ではあったが、しかし何処か不自然だった。さながら、“必死に取り繕おうとして、見事に失敗した”かのような、そんなうわずった声。
 はてな、と。月彦は思った。
「母上……?」
 同じく全裸だった月彦が、体を隠す物を探しながらも怪訝な声を出す。……はっ、と銀髪の美女――ツクヨミが口を手で覆ったが、もう遅い。
「あーあー……、言っちゃったわねぇ。隠しときたかったんじゃないの?」
 ねぇ、ツクヨミ―――語尾にそうハッキリと付け加えて、真狐は月彦の方を見る。
「つ……ツクヨミって……まさか……」
 月彦は文字通り絶句した。何度も真狐とツクヨミの顔を交互に見比べる。
「……俺はてっきり、ツクヨミってのは男だと……女、だったのか」
 納得するように頷く月彦を見て、半ば放心状態に陥っていたツクヨミは再びハッと、今度は真狐の方を振り向いた。
「母上ッ……!」
 貴方が名を呼ばなければ!―――さもそう言い足そうな顔だった。その背後でニヤニヤしている真狐の顔を見るに、恐らく知ってて名を漏らしたのだろうなと、月彦は推測する。
「ッ……て、ちょっと待て! 一体何がどうなってんだ!? ツクヨミが真狐の娘って事はつまり真央の姉って事だろ? そのツクヨミが何で真央を……」
「そうねぇ。もーこうなったら喋っちゃっていいわよねぇ」
 真狐はおどけて言い、そして順を追ってツクヨミとの事を簡潔に説明した。真狐の説明はかなりかみ砕かれていて、乱暴なものだった。それ故―――
「つまり、ツクヨミはお前が本当の母親だって事をバラされたくなくて、お前を捕まえようとしてたッて事か」
 月彦はこんな当たらずとも遠からずという結論を得てしまった。
「でも……だからって……」
 自分や真央まで巻き込もうとした事は許し難い―――と、月彦は思う。確かに、ツクヨミの気持ちもわかる。折角妖狐の頭領格の地位まで上り詰めても、母親がアレでは隠したくもなるだろう。その点だけは同情を禁じ得ないが、しかし―――。
「……母上、この男は―――」
 押し黙る月彦を一瞥して、漸くにツクヨミが口を開く。答えたのは真狐だった。
「見ての通り人間の牡よ。名前は紺崎月彦。アンタの部下が攫おうとしたあたしの娘の父親」
 ツクヨミが露骨に怪訝そうな顔をする。ただの人間を何故この場に呼んだのか――そう言いたげな顔だ。
「真央の仇を討ちに来たのよ。そーでしょ?」
 まるでツクヨミの疑念を見透かしたかのように、真狐が答える。が、しかし、肝心の月彦がえっ……と素っ頓狂な声を上げて反応が遅れた。
「た、確かに……真央の仇は討ちたいって思ってたけど―――」
 そもそもここ―――多分、ツクヨミの居城、御那城山とかいう所だろう―――に来たのだって、半分以上真狐に攫われたようなものだから仇を討ちに来たという表現は正しくない。それに、肝心の“仇”がこんな小娘だと解ってしまえば月彦には最早どうしようもなかった。まさか殴るわけにもいかない。
「妾を討つだと? たかが人間の分際で妾に勝てるとでも思っているのか」
 ツクヨミは襦袢で前を隠したまま、ギロリと月彦を睨む。それは、ほんの数分前までの、快感の虜となりつつあったツクヨミではなく、普段通りの冷酷な支配者然としたツクヨミそのものだった。
「こーらっ」
 なぁに気取ってんのよ―――真狐が茶化しながら、スッとツクヨミの背後から抱きしめるようにして、両手を襦袢で隠している体の前面へと伸ばしてくる。虚を突かれたツクヨミはひっ……と小さく声を上げ、咄嗟に抵抗をしようとするも、余程月彦に体を見られるのが嫌なのか、襦袢からは手を離さない。結果、真狐には好き放題される形になる。
「はっ……母上っ……何処触ッッ……やッ、ぁッ……ひっ……や、やめっっ……ああああァッ!」
 真狐の両手が襦袢で隠されている部分に潜り込むや否や、ツクヨミはあられもない声を上げて体を不自然に震わせてしまう。先程までならばこのまま素直に快感の虜と化してしまう所であるが、今度は事情が違っていた。
「ッ……き、貴様ッ……何を見っっっ……あ、やっ……わ、笑う、なッ……あぅッ……ッッ……は、母上、や、やめっっ……!」
 月彦の視線から逃げるように、ツクヨミは必死に身をよじろうとする。が、背後から真狐に抱きすくめられるようにしてまさぐられている為、自由度は極めて少ない。
 見るな、見るなと声高に叫ぶツクヨミを、月彦は初めこそ呆気にとられたものの、すぐに微笑ましそうにしげしげと凝視し始めた。真狐がこういう悪戯が大好きだというのは百も承知だから、今更突発的とも意外だとも思わない。
 恐らくは、自分が出る前にもたっぷりとツクヨミを可愛がっていたのだろう。なるほど、確かにこういう勝負では真狐に敵う相手はそうそう居ないのでは無いかと思う。こういう得意分野に引きずり込む自信があるのならば、万対一の戦力差もあって無きがごとしかもしれない。
 月彦がそうして感心している最中も、真狐は両手を忙しく動かし、何度もツクヨミに声を上げさせる。ツクヨミがそうして漏らす声は先程月彦に向けられた氷礫のようなそれとはうって変わって、男を昂らせ、駆り立てるような声だった。月彦もその例外ではなく、ツクヨミの喘ぎを聞いているとなにやらムラムラとしたものが湧き上がってくるのを感じていた。
 そんな月彦の様子を真狐は横目で見ながら、くすりと含み笑いを漏らしてより一層両手の動きを大胆なものにする。その両手が動く度に水の弾けるような音がして、月彦は真狐に復讐することも忘れてごくりと喉を鳴らしていた。
「……食べてみる?」
「はっ……?」
 血走った目で二人の絡みを見ていた月彦は、突然声をかけられて素っ頓狂な答えを返す。
「た、食べるって……」
「決まってるじゃない」
 コレよ―――と、真狐が右手を動かすと、ツクヨミが一際甲高い声を上げ、仰け反る。
「アンタとあたしとで、この跳ねっ返りが二度とあたし達に手出ししないように、徹底的に躾直してやるのよ」
 好きでしょう? そういうの―――と、また悪い笑みを作る。はあ……と大きくため息をついたのは月彦だ。
 どうやらこのために自分は連れてこられたらしいと、漸く理解する。そして改めて、ツクヨミを見た。
 桔梗や春菜から聞いた情報によれば、ツクヨミというのは現在、事実上の妖狐の頭領らしい。月彦が見た時は既に裸同然の姿だったが、普段は余程豪奢な格好をしているであろう事は辺りに散らばっている着物で容易に想像がつく。
 そう思って顔を見てみると、確かにどことなく気品のようなものも感じられる。妖狐の女王―――というよりはお姫様、といったほうが近いかも知れない。が、しかし姫という程淑やかで優しいというわけでもないらしい。
「ッ……い、今更何が躾だッ……は、はなっ……せ……ッ!……ぁっ……やんっ……!」
 ギリギリと犬歯をむき出しにしながら憎まれ口を叩く。だがそれも真狐の両手がもぞもぞする度に大人しくなったり、声が色っぽくなるのでは説得力に欠ける。……どうやら、既に弱いところを全部真狐に知られているらしかった。
「いや、しかし……いくらなんでもそんな節操のない―――」
 月彦は逡巡する。いきなり見たこともない場所に連れてこられ、さらには初対面の女を“教育”する手伝いをしろといわれても、そこはそこ、月彦とて普段は常識の中に生きる一般人であるから二つ返事で了承するわけはない。
 しかし、目の前の意地悪な母狐は月彦のそんな偽善めいた建前など予測済みであったのか、それらの気後れを簡単に打ち崩しうる言葉もまた、用意されていた。
「なぁに遠慮してんのよ。真央の仇を討ちたくないの?」
「真央の……仇―――」
 言われて、ハッと月彦は思い出した。狐の姿に変えられた真央。それもそもそもはツクヨミが手を下した事では無いのか。少なくとも、月彦はそのような事を聞かされている。
 だとすれば、真狐の言うとおりツクヨミを“教育”することは真央の仇を打つことになるのではないか。それでいて今後似たような自体が起きる事を防止するという意味でも真狐の言葉が正しいような気がしてくる。―――こうなってくると、“真央の仇”という言葉が月彦を欲望のままに走らせる事に対する免罪符のように働き、月彦は徐々に“正直”になる。
「……そうだな、真央の仇、だ―――」
 ぎらりと、目の光が変わる。困惑や戸惑い、そういった人間らしさのようなものが消え失せ、まるで獲物でも見るような目をツクヨミに向ける。その露骨な変貌が、ツクヨミを僅かにたじろがせた。
「ち、違うッ……その娘に手を出したのは、妾の命令じゃ……んくッ……!」
「アンタは余計なことを言わなくていーの」
 黙れ、とでも言わんばかりに、真狐の指がツクヨミの唇に滑り込む。人差し指と中指が、つぷつぷと音を立てて出し入れされ、みるみるうちに唾液に濡れていく。
「んんンッ!……んっ……ん、ふっ……ん!」
 ツクヨミは眉を寄せながらも、真狐に目立った抵抗はしない。否、むしろ徐々に大人しくなりつつあった。唇をふさがれている為か、鼻息は荒く、口腔内で真狐の指が動くたびに黄色い瞳がとろんと蕩けてくる。
「くすっ……アンタって……しゃぶるの好きよねぇ」
 真狐が耳元にそんな事を囁くや否や、ツクヨミがハッと頬を赤くし、瞬時に首を振って指の抜き差しから逃げる。
「だッっ……誰がッ! なっ……何を根拠にッ……!」
「……さっきだって、うっとりした顔であたしのおっぱい吸ってたじゃない。……好きなんでしょう? しゃぶるの」
 真狐がからかうように嗤うと、ツクヨミはますます顔を赤くした。なっ―――と、絶句したまま、反論も浮かばないのか、ふるふると震えている。そのツクヨミの唇に、再び真狐の指が当たる。
「あっ……」
 ぴくんっ、と、微かにツクヨミの体が震える。真狐の人差し指はそのまま、ツクヨミの唇を辿るように往復する。ツクヨミは、抵抗をしない。
「嫌なら、噛んだっていいのよ」
「っ……や、やめっ……んっふ……」
 言葉だけの拒絶をして、ツクヨミは再び差し込まれた真狐の指をあっさりと迎え入れてしまう。が、しかしそれは二、三度往復しただけですぐに引き抜かれて、そのままツクヨミの体を滑って襦袢で隠されている所へと潜り込んだ。
「あッ……やん……ッ!」
 ツクヨミが身を強ばらせ、キュッと太股を閉じるような仕草をする。だがそれもさしたる障害とは成り得なかったのか、真狐は平気な顔で愛撫を続行する。
「いやらしい娘ね。指をしゃぶっただけでこんなに濡らして……」
「ぁッ……ぁっ……あッ……ち、違っ……それは、……っ……さっき、母上が……ぁぁあッ!」
 くち……くちゅ……くちゅっ……。
 何かをかき混ぜるような音を立てて、真狐の指がもぞもぞと動く。それが漸くに引き抜かれた時はツクヨミはぐったりとして息も絶え絶えになっていた。
「じゃあ、本当に好きじゃないかどうか試してあげるわ。―――月彦っ」
 名を呼ばれ、ぴくんと月彦は反応する。既にだいぶ興奮しており、息づかいからしてケダモノそのものだった。もはや膨れあがった剛直を隠そうともしていない。
 単純に、妖狐の姫ツクヨミの痴態に興奮しているというのもある。だが、それ以上にこの空間、室内にたっぷりと散布されている媚粉―――真狐の誘惑の術の効果もまた少なくない。
 そして極めつけは瓢箪に入れられている間中、吸い続けた空気である。春菜の酒が揮発したそれを延々吸い続け、さらには酒そのものも全身に浴び、飲んでもいる。これがただの酒であれば、酔っぱらうだけで済んだかも知れない。が、生憎と月彦は春菜の屋敷でさんざんにその手の酒を飲まされ、それがある種の精力剤のような働きもすることを知っている。
「……何をすればいい?」
 真狐とは長いつき合いではない。特別中が良い訳でもない。それどころか基本的には疎んでさえいるというのに、まるで理解ある協力者のような言葉を吐いてしまうのは、既に内心では眼前の妖狐の姫を犯したくてウズウズしているからだ。
「ほら、ツクヨミ。月彦がもう我慢できないってサ」
 真狐はぐいとツクヨミの頭を掴んで無理矢理月彦の方を向かせる。ツクヨミの眼に、見慣れぬ物体が飛び込んで来、ほぼ同時に小さく悲鳴を上げていた。それはあまりに、ツクヨミが知っている男性器の姿と異なっていた。
「アンタの大好きなお口で奉仕したげなさい」
 真狐はツクヨミを抱きしめたまま膝立にさせ、ぐいぐいと月彦の方へと押しやる。ツクヨミは顔を引きつらせながらも真狐に押され、月彦の目の前まで押しやられた所で弾けるように大声を出した。
「ふっ……ふざけるなっ! 何故、妾が、に、人間の男、などに―――!」
「嫌なら別にいいのよ。その代わり、アンタが内緒にしたがってた事全部バラすけど」
 にやあ……と、真狐が口の端をつり上げる。
「勿論、その時は月彦が証人になるわけだけどねぇ」
「ッ……わ、妾に、口止めをしろと……言うのかッ……!」
「黙るかどうかは、アンタの頑張り次第よ。ねえ、月彦?」
「……そうだな。ちゃんと出来たら、黙っててやる」
 月彦の声は冷徹で、些か乱暴だった。それが、ツクヨミの燗に障ったらしい。
「きッ……さまッ! 人間の分際で……妾にそのような口ッ……」
 声を張り上げる―――が、すぐに噤まざるを得なかった。焦れた月彦が自ら剛直を握り、ツクヨミの顔に押しつけてきたのだ。
「ッ……や、めッ……ろ……っ!」
 ツクヨミは必死に顔を背けようとするが、真狐に体を押さえられているため当然避けきれるわけもなく、その白い頬に幾度と無く肉柱の先端が押しつけられる。にちゃっ……そんな音がして、先端から漏れていた透明な液が頬に塗りつけられ、肉柱が離れると名残惜しげに糸を引いた。
 ツクヨミの両手は、既に真狐に押さえられていた。力任せに振り解こうとしても、単純な筋力の差でツクヨミは真狐には敵わないようだった。
「んはッ……あ、やっ……んんッ……ぷふっ……!」
 ツクヨミの抵抗に業を煮やした月彦は、左手でその鼻を摘み、開いた口に強引に剛直をねじ込む。噛まれる―――かと思いきや、意外なほどあっさりと、ツクヨミは肉柱を受け入れていた。
「はあ……ぁッ……」
 ため息に似た声を漏らしたのは月彦だ。鼻を摘んでいた手を離し、今度は両手でツクヨミの頭を掴んでゆっくりと前後させる。妖狐の姫、ツクヨミ。その唇に肉柱を咥えさせ、しゃぶらせているという事実に、月彦はたまらない興奮を憶えていた。
 一方、少し前まであれほど声高に叫び声をあげ、抵抗をしていたツクヨミは奇妙なほど大人しくなっていた。敵意に満ちていた眼は潤み、まるで飼い主に顎を撫でられている家猫のようにうっとりとしている。
「んく……んっ……ぅ……」
 肉柱のカリが唇を引っ掻く度に、ツクヨミが微かに喉を鳴らす。それが暫く続くと、今度は自分から頭を前後させ始める。ちゅば、ちゅっ……そんな音まで聞こえ始め、月彦は己の先端にツクヨミの舌が触れるのを感じた。
「ッ……ぅ、く……」
 微かに腰が引ける。だが、それを追うようにして、ツクヨミが身を乗り出してくる。一体いつ真狐が解放したのか、ツクヨミの両手は自由になっていて、その右手が肉柱の根本を握りしめていた。
「んっ……んはっ……んっむ、ふっ……」
 とろんと蕩けた瞳。ツクヨミは微かに頬を上気させて、人が変わったように口戯に没頭していた。ちゅばちゅばと音を立てて剛直をしゃぶる、唾液を搦め啜る。舌先で抉るようにして舐める。さらには右手で扱きながら、裏筋を辿るように舌を這わせてくる。
 ツクヨミのそんな変貌ぶりを真狐は一歩引いた所からさも楽しそうに眺めていた。既に、無理矢理押さえつける必要がないのだ。
「ッ……ぁッ…………っくッ……!」
 苦痛めいた声を上げて、月彦がさらに腰を引く。ツクヨミは膝立ちのまま一歩進んでさらに食らいつく。じゅぷちゅぶと汚らしい音を立てながら、貪欲にむしゃぶりつき、離さない。
 月彦にしてみれば、カウンターパンチを受けたような気分だった。鼻持ちならない妖狐の姫の唇を無理矢理犯す―――そんな快楽に浸っていられたのは正味一分も無かった。
 後は、圧倒されるだけ。剛直をしゃぶりながらツクヨミは徐々に変貌し、音を立てながら吸い上げ、いやらしく舌を使う様に月彦は腰砕けになっていく。
 真央や真狐、春菜のそれとは違う類の快感だった。ツクヨミが、“あの”ツクヨミがこうも乱れ、うっとりとした顔で肉柱を舐めているその図が、シチュエーションが与えられる快感を倍加しているのだ。
 気がつくと、月彦は肩で息をしていた。ただ、単純に立っている事すら難しい程に、ツクヨミから与えられる快感は途方もなかったのだ。だが、それも限界が近づいていた。月彦は、ツクヨミの頭に宛っている両手に俄に力を込めた。
「ッ……ッ……く……ッ……ぁ……ッっ!」
 呻き、いつものクセでぐっ……と両手でツクヨミの頭を抑えるかのような動きをする。刹那のうちに、痺れるような快感が走ってどくんと体が震える。濃い塊が、吐き出されるのを感じた。
「んッッッ…………!?」
 ツクヨミの口の中に、苦い味が満ちる。それは瞬時に、ある違和感となってツクヨミの頭を冷やした。
「んぷっッ……はッ…………!」
 月彦の手を押しのけ、強引に唇を離す。びちっ……と、熱い塊が鼻面に張り付く。さらに体を引く。ねっとりとしたものが髪に、体にかかってくる。
「はあっ……はあっ……ふう…………」
 ツクヨミは肩で息をしながら、正座を崩したような格好で呆然としていた。その頭を、再び月彦の左手に掴まれる。
「ッ……やっ……あ、ッ……な、何、を……ひっ…………」
 抵抗する間もなく、顔面に肉柱を擦りつけられる。その際、びくりと先端が震えて、僅かに吐き出された白濁が唇のあたりに降りかかった。見上げると、ケダモノのような顔をした月彦がさも満足そうに荒い息を吐いていた。
 ツクヨミは数秒、一体何が起きて、自分が何をされたのかが解らなかった。そして、それを理解するや否や、怒りが込みあげてきた。
「きっ―――」
 顔が引きつる。とろりとしたものが、髪の先端から垂れて布団の上に零れた。
「貴様ッ……よくもっ……、よくも、ッ……―――!」
「なーに怒ってんのよ。さっきまでアンタもノリノリだったくせに」
 怒りと屈辱に震えるツクヨミを制したのは、やはり真狐だった。先程のように、再び背後から抱きすくめる。
「それより、いいの? さっきから丸見えよ」
 真狐は得意げに口の端をつり上げて、他の二人の視線を誘導するようにツクヨミの胸元を見る。
「やっ……!」
 そう、口戯に夢中になるあまり襦袢は既にその手の中には無く、少し離れた布団の上に落ちていた。慌ててそれを拾おうとする―――が、間一髪の所で真狐に先に取られてしまう。
「か、返せッ……!」
 左手で胸元を隠したまま、ツクヨミは手を伸ばす。だが真狐の方が機敏で、ひょいとかわされ、さらには襦袢も部屋の隅に放り投げられてしまう。
「へえ……、真狐の血を引いている割りには……小さいんだな」
 妹の真央の半分も無いじゃないか―――月彦は呟き、まるで珍しいものでも見るような目でツクヨミを見る。
「なっ……だ、黙れ黙れ黙れッ! き、貴様……わ、妾を愚弄するかっ! む、胸がどうしたっ……そんなものっ……こ、これから……いくらでも……!」
「千年かかってもダメだったのに、今更ねぇ……」
 くっくっ……と含み笑いを漏らしながら、真狐が呟く。
「だッ―――」
 黙れ―――そう叫ぶより早く、ツクヨミの両手を真狐が捕らえる。両胸を隠しているそれを、力任せに開いていく。
「だからさぁ、いっそさらけ出しちゃいなさいよ。その方が楽かもよ?」
「な、何を言って……や、やめっ……み、見る、な…………」
 真狐に無理矢理両手を開かされ、そのまま背後に回され、両脇に腕を差し込まれる形で完全にロックされる。晒された両胸を月彦にしげしげと見られ、ツクヨミは暴れに暴れた。
「見るっ……なぁああっ! ……た、頼む…………見ないで、くれ…………」
  語気が、目に見えて弱くなる。最後は目尻に涙すら浮かべ、殆ど懇願するようにツクヨミは漏らしていた。
「確かに小さい―――が、これはこれで、来るものがあるな」
 が、当の月彦はといえばどこ吹く風。ツクヨミの正面に陣取り、屈むと、先程の射精など何でもなかったかのように屹立しっぱなしの剛直をツクヨミの薄い胸元に擦りつける。
「ばっ……馬鹿ッ……き、貴様、一体何を…………ぁッ……」
 泣きそうな顔から一転、顔を真っ赤にして叫ぶ。が、それも肉柱の先端が桃色の突起を擦った瞬間、押し殺したような声に変わっていた。
「あっ……ッ……ぅ、……っ……や、やめっ……ろ……ぁ、ン……」
 口では、そのようなことを言いつつも既に息は荒い。薄い乳肉に亀頭が押しつけられ、とろりとした先走り汁が塗りつけられる度に、微かに色っぽい声を漏らして身震いする。桃色の突起が、既に勃起し始めていた。
「なんか……ヤバい事してるみたいで……興奮するな……」
 そう言う月彦の息も荒い。小ぶりな胸に、屹立しきった肉柱を擦りつけるという慣れぬ行為が思いの外月彦は気に入っていた。まるで、幼女に悪戯をしているが如き背徳感も興奮を呼び、月彦を余計に昂らせる。
 ツンツンと勃起しきった桃色のそれに、肉柱の先端を擦りつけてそのコリコリとした感触を楽しむ。その都度聞こえる、ツクヨミの押し殺したような声がまた心地よかった。
「へえ……、月彦ってそういう趣味があったんだ」
 真狐はいかにも変質者でも見るような目をして、ぺろりとツクヨミの耳の中を舐める。
「はっ、挟めないんだから、仕方ないだろ」
 月彦は微かに顔を赤らめ、そんな弁解をする。だが、その弁解で今度はツクヨミが真っ赤になった。
「う、五月蠅い! い、嫌なら……止めれば良いだろう!」
「嫌じゃないさ、こんな気持ちいいこと、止められるもんか」
 そう言って、月彦は開き直ったかのように大胆に動き始める。はあはあと息を荒げながら、ツクヨミの微乳に剛直を擦りつけ、先走り汁を塗りつけていく。
 己の胸をそのように扱われる事に、ツクヨミは屈辱を感じているようだった。 ツクヨミは下唇を噛みしめながら、行為に耽る月彦を睨み付けてくる。侮蔑の目。しかし、どこか期待を感じさせる目。後者の部分が誰かに似ていると思ったら何のことは無い、“妹”の目にそっくりなのだ。
「……あんっ……!」
 興奮が一気に高まり、白濁汁が弾けるように飛び、ツクヨミの胸元を汚す。
「はあ……っ……はあっ……ふっ―――」
 月彦は息を荒げながら、射精を続ける剛直をツクヨミの薄い乳肉に押しつけていた。濃厚な白濁汁が、きめ細やかな肌に弾かれるように散り、胸元から腹部、そしてツクヨミの顎の辺りにまでふりかかる。
「そん、なに……妾の胸が……」
 気持ちよかったのか―――ツクヨミは消え入るような声で呟く。その言葉に応えるように、肉柱の先端を押し当てられたまま、ひゅくっ……びゅくと弾けるような射精が続く。いつしか、ツクヨミは太ももを焦れるようにすりあわせ始めていた。
「また、口でしてくれるか」
 そんなツクヨミの焦れに気づいているのかいないのか、月彦がさらに促す。屹立しっぱなしなのは言うに及ばず、二度の射精を経て尚、まるで一ヶ月禁欲し続けた後のように透明な先走り汁を溢れさせていた。
「あぁ……や、やめっ…………んんっ……ふっ……」
 言葉だけの拒絶。剛直を唇に押しつけるや、自分から咥えこんだのではと思いたくなるほどにあっさりと、ツクヨミの口腔へと埋没していく。
「んふぅ……」
 ツクヨミはうっとりと瞳を濡らし、瞼を半ば下ろしながら剛直をしゃぶる。抜き差しされる剛直を愛しむ様に舌を絡め、トロリとした先走り汁をすすり上げる。
 見るからに気品漂う妖狐の姫が、目をうっとりと細めながら剛直をしゃぶっている――もうそれだけで堪らないと、月彦が思い始めた、まさにその時だった。
「ちょっと、月彦。すとーっぷ!」
 真狐の手が強引に月彦の腰を押しのけ、ちゅぽんっ……と音を立ててツクヨミの唇から引き抜かれてしまう。
「……や……ぁっ……」
 剛直が引き抜かれるや、ツクヨミは明らかに失望の声を漏らした。唇の先から剛直の先端へと伸びた銀色の糸を追うように体を泳がせかけて、その肩が真狐によって掴まれ、引き戻される。
「……あんまり甘やかしちゃダメじゃない。これは躾なんだから」
「甘やかすなって……じゃあ、どうしろって言うんだよ」
 月彦もまた、中途半端な所で中断させられ、不満たらたらに漏らす。そんな月彦に、真狐は馬鹿ねぇ……と呟き、右手を振り上げた。
 刹那。ツクヨミが悲鳴を上げ、途端に力無く、犬のように四つん這いに伏せる。真狐の右手には白銀の尻尾が握られていて、ツクヨミは無理矢理に上半身は伏せ、尻だけは尻尾で持ち上げられるような格好にさせられていた。
 露わになったツクヨミの秘裂を、真狐は人差し指と中指とでくぱぁ……と開く。既にトロトロに蕩けきったそこを、月彦に見せつけるように。
「次はこっち、でしょ?」



 


 


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