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夢か現か。
紅い光がふわふわと浮いていた。
湖底のわき水から気泡が登るように静かに、緩やかに。球状の光は徐々に数を増し、やがては“それ”を包み込むようにして旋回し、収束していく。
「ん……っ…」
うめき声を漏らしても、それがはたして己の口から漏れたものなのかどうか、しばしの間、区別が付かなかった。
一分か二分か、ボンヤリとただ天井を見つめたり、周囲の壁を見回したりとした後、意識は唐突に覚醒した。
「……―――ッ!!!」
飛び起き…ようとして、ツクヨミは初めて、己の両腕が体の後ろで縛られている事に気がついた。さらに、着ていた着物は脱がされ、襦袢姿になっていた。
「……あら、もう起きたの。さすがに早いわねぇ」
にたにたと意味深な笑みを浮かべながらツクヨミを見下ろしているのは他ならぬ真狐だった。その体から、仄かに赤い、綿毛のような球体が立ち上っている。それらはふわふわと、真狐の周囲を浮き上がったり沈んだりしながら旋回し、傷ついた箇所を見つけて着床していく。
初歩的な治癒促進の術。真狐はツクヨミが気を失っている間、そうやって傷を癒していたのか、全身の傷は殆ど治っていた。
周囲を見る。薄暗い室内、見覚えのある天井、壁、装飾品の類を見るに、自分の寝室であることは間違いないようだった。ツクヨミが寝かされていたのも、普段から愛用している布団に相違なかった。
「これ…は………ッ…何の、真似…だッ…!」
“呪”の効果がまだ残っているのか、舌が妙にもつれた。気づけば、四肢にもまだ強く痺れが残っており、巧く動かせない。
「ただの座興よ、意味なんて無いわ」
全身から霧のような光を立ち上らせながら、真狐はとびきり意地悪な笑みを見せる。
「……しいて言うなら、あたしをここまで手こずらせた事への御褒美って所かしらね」
「ッ……褒美ッ…だと…!」
何を馬鹿な―――ツクヨミは真狐を睨み付けながら、鼻で笑う。
「気に入らないなら、“あたしに刃向かったお仕置き”って言い換えても良いわよ? ……ふふっ、どうせすることは同じなんだから」
媚笑を浮かべ、ふわさっ…と尻尾を一振り。
ツクヨミが反論をしようと言葉を紡ぐよりも早く、真狐はしゅるりと布ずれの音を立てて被さっていた。顔を、寄せる。吐息がかかりそうなくらいに、近く。
「なっ……何っを―――!」
「……ほんッッッッと、随分手こずらせてくれたわね。お陰でこっちは縮地の使いすぎと妖刀の制御でもークタクタよ」
ツクヨミを見下ろす眼が、キラリと妖しい光を放つ。同時に、その左手がさわ…と襦袢の上から胸元の辺りを這い始める。
「ッッッッッッッ!!! さ、さわッ…るなッ!」
ツクヨミは咄嗟に体をよじり、寝返りをうつようにして真狐の左手から逃れようとする。が、しかし叶わず、右手で肩を押さえつけられ、その間に左手はするりと着物の内側へと潜り込む。
「ひっ……!」
怖気が、走った。
襦袢の隙間から侵入した手は、まっすぐは進まず、小さく円を描くように、遅々とした動きで奥へと潜り込んでくる。
やがて、その指先が素肌に直に触れる。指先は僅かに冷たく、ひやりとした感触をツクヨミに与えた。
「は、母上…ッ…何を………ぁ…っ…!」
差し込まれた指先が、緩やかな傾斜を登り、その頂へとたどり着く。つん…と、中指の先で軽く突いた後、今度は掌全体で、その小振りな乳房を包み込むようにして撫でる。
咄嗟に、ツクヨミは唇を閉じ、貝のように固く結んだ。
「……なるほどねぇ、これじゃあ隠したくなるのも無理無いか」
「ッッッ! だ、だまッ…れ…………ッ!」
ツクヨミが口答えをしようとすると、すかさず真狐の左手が動く。その中指が僅かに、丘陵の頂を撫でただけで、ツクヨミは無理矢理に唇を閉じた。
「…なぁに、何か言った?」
くにくにと中指の先で突起を弄りながら、確信犯的に笑う。ツクヨミが少しでも口を開こうとすればすかさず指の動きを早くし、あるいは突起を摘むようにして刺激する。
その都度、ツクヨミはキュッと唇を閉じ、声という声を押し殺した。胸元をまさぐる指の動きは巧みであり、思わず何度も声を上げてしまいそうになるのを唇の肉を噛んで無理矢理押さえつける。
揉む、というわけではない。ただ、撫でる。緩やかな丘陵を愛しむように、さわさわと。…突起が、徐々に堅く、屹立し始める。
「…勃ってきたわね」
真狐は指先で弄りながら、わざと甘い声で囁きかける。ツクヨミの狐耳の中に唇を差し込むようにして、そっと。
「ッ…き、貴様が、触るからッ……ッ! ただの、生理、…現象ッ…ッ…ッッ…ひゃっ…!」
ぬろりっ。
突然耳の内側を襲った感触にツクヨミは思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。さらに、くすくすと、耳の内側から嘲笑う声。
「……ちゃんと可愛い声も出せるんじゃない。ふふふっ…」
「ッッ…! やっ…めろ…ッく……み、耳……はッッ……ッ! ぁっ…ッ!」
ぬろりっ、ぬろぉっ、ぬっ…!
敏感な耳の内側を真狐の舌が這い回る。ツクヨミはたまらず、体をくねらせてなんとか真狐の舌から逃れようとするも、しっかりと組み敷かれ、しかも足を絡められているためそれも叶わない。
懸命に耳を伏せようとしても、ツクヨミの努力を嘲笑うように、真狐は耳の端をついとつまみ上げ、より奥まで舌を差し込んでくる。耳の内側の白い、柔らかい毛が唾液でてろてろになるまでたっぷりと舐めしゃぶった後はキスでもするように、ちゅっ…と音を立てて吸い付き、毛を食む。
「ッ……うっ……ぁっ…ッ!」
仰け反る。
ぞぞぞッと背筋に電流のようなものが奔り、思わず声が漏れる。だが、それでも真狐の攻めは緩まない。
指が、動く。
小ぶりに膨らんだ乳房を、優しく、撫でるようにして揉む。
既に、先端の突起は堅く尖り、人差し指と親指でそっと摘んだだけで、ツクヨミは小さく呻いた。
「んふっ…んっ…ちゅっ………っはぁ………耳、いいんでしょ?」
れろりっ。
銀色の糸を引いて、舌が引き抜かれる。
「ッ………く、…くすぐったい…だけ、…だ……ッぁッ…ひッ……ッッ!」
僅かに、瞳を潤ませながらも、ツクヨミはキッと気丈な視線を真狐にぶつける。が、それもすぐに、食いしばった歯の奥から漏れる声によって崩れ去った。
ふぅ…と、一吹き。なまめかしい動きをする舌と、唾液によって蹂躙され、すっかり濡れそぼった内耳を、優しく一吹きされただけで、ツクヨミは仰け反り、声を上げていた。
「くすぐったいだけ、ねぇ…」
ツクヨミの過剰な反応が余程面白いのか、真狐は何度も何度もふっ…と息を吹き込む。無論、ツクヨミが耳を閉じられないように端を摘んで、奥まで吐息がかかるように、その辺は抜かりがない。…ふわさっ、また尻尾が振られる。
「ひっ……ぁ、やっ…やめっっ……ぁっ……ッ……ッ……くッ……ぅ…あっ…ッ!」
真狐が一吹きする度に、ツクヨミは悶える。が、それでも懸命に唇を固く結び、少しでも声が漏れないようにと努める。…その様が、真狐の加虐心を余計に煽るとも知らずに。
耳の中に吹き込んでいた吐息が、僅かに逸れ出す。それは徐々に南下し、やがてツクヨミのうなじの辺りを優しくなで始める。ひっ…という声が、ツクヨミの口から漏れた。
「は、母上……っ…!」
体がさらに強ばる。襦袢の襟が広げられずり下げられ、露出した肩口にちゅっ、と吸い付くような音。それが立て続けに、数回。
首筋やうなじ、鎖骨の辺り等々。真狐が口づけをする都度、襟口は広げられ、肌の露出が多くなる。やがて、膨らみの麓の辺りまで見え始めて、ツクヨミは焦り始めた。
なんとか両手を動かそうと試みる。どうやら両手の手首を重ねられて、それを着物の帯か何かで縛られているらしかった。よほど巧みに結ばれているのか、さしてきつく結ばれているわけでもないのに全くと言っていいほど解ける気配が無い。
「…っ…やっ……ッ、くッ……やっ…やめッ……!」
ちうぅぅっ…!
その、麓の辺りを真狐の唇が強く吸うと、ツクヨミは背を反らせて声を漏らした。…ずり…と、また襦袢がずり下げられる。
既に、その胸元も半分近く露出している。後僅かでも襦袢をずり下げれば、堅く尖った先端まで露出してしまうという所で、真狐は一旦手を止めた。
「……脱がされるの,そんなに嫌?」
ツクヨミの右頬をそっと左手で撫でながら、呟く。優しい、さも“嫌なら止めてあげる”―――そんなニュアンスを含んだような声だった。
ツクヨミは一瞬だけ、キッと睨むような眼をした後、ばつが悪そうに視線を余所に逃がしながらも小さく、僅かだが確かにそれとわかるほど、首を縦に振った。
「そう、それなら―――」
襦袢を掴んでいた手が離れる。ほんの一瞬だったが、ツクヨミが気を抜いたその瞬間、真狐はニヤリと口元を歪ませた。
「ひっ………!」
ツクヨミの悲鳴と、襦袢が腰まで一気にずりおろされるのはほぼ同時だった。
あまりに突然、ツクヨミの顔は羞恥の赤とは対照的に、むしろ逆の白、青ざめていた。
「……丁度良かったわ。あたし、人が嫌がるコトするの大好きなのよ」
くすくすくすっ。
これ以上ないというくらいの、意地悪笑みを浮かべて、ツクヨミを見下ろす。既に、その上半身はほぼ完全に露出。両手の肘と腰帯でかろうじて引っかかっているものの、小ぶりな胸も、その頂から麓まで何ら隠されることなく真狐の眼下に晒されていた。
白い肌。それは、薄暗い室内において仄かに発光しているようにも見える。髪の白、尻尾の白とはまた違う、純白の白。唯一、胸元の先、尖ったそこだけが桜色を示していた。
着物を何枚も重ね着していたのは、華奢な体を隠すため。決して肉付きの良い体とはいえないものの、それは逆に言えば無駄な肉がほとんど無いという事。真狐のように男好きのする体ではない代わりに、ある種の美術品のような気品と完成度を兼ね備えた裸体だった。
しかし、当の本人が眼前の女の体こそ至高であり、自分は貧相極まりないと錯覚している事が不幸といえば不幸だった。ひたすら隠し続けたそれを晒されてしまい、ショックのあまり軽い放心状態になっていたツクヨミは、真狐が微かに嫉妬の目で見下ろしていたことに気がつけなかった。
「…随分と貧相な体ねぇ。これじゃあ、伽の男達も興覚めなんじゃない?」
棘を含んだような物言いは、嫉妬の裏返しと取れなくもない。真狐自身そのことに気がついているのかいないのか、相変わらず意地の悪い笑みを浮かべて、つつとツクヨミの腹の辺りを人差し指でなぞる。
「それともお堅いツクヨミ様は配下の男に伽なんかさせないのかしら。案外、まだ生娘だったりして……ふふ、さすがにそれはないか」
キッ…と、ツクヨミが襦袢をはだけられて初めて、反応らしい反応を返す。無言で、鋭利な刃物のような視線を真狐に突きつけて、白い歯を食いしばって恥辱に耐えていた。
「…貴様の様な淫婦と一緒にするなッ、……妾は…ッ悪戯に男と寝たりはしないッ…!」
「…言っとくけど、アンタにだってその“淫婦”の血が流れているのよ。…ふふっ、アンタはその事を隠したくて必死らしいけど―――」
くすっ…。笑みを浮かべて、真狐はツクヨミの肩を、腕を、腹の辺りを撫でる。僅かに火照った体はそれだけで敏感に反応し、ツクヨミは喉を震わせて微かに噎ぶ。
掌が、五指がまるで生き物のように、白い肌の上を這い回る。真狐のその愛撫は暗にこう物語っていた。“体の方は随分正直ね”―――と。
つつ…と、人差し指が腹から胸の方へと這う。やがて緩やかな傾斜にさしかかり、真狐は指のスピードを僅かに緩める。まるで、その傾斜のなだらかさを嬲るように。
「…ッ…………!」
ツクヨミもその意図がわかっているのか、ギリッ…と歯を食いしばりながら恥辱に耐えていた。青ざめた顔を再び朱に染め、濡れた満月のような瞳を、真狐の指の先に釘付けにして。
指が、這う。ぞぞぞと、頂に近づくにつれて、徐々に背が反り、まるで触られるのを待ち望んでいるかのように、先端の桜色が堅く、痛いほどに尖り始める。
それは、無意識。少なくとも、ツクヨミの自我は真狐に触られることを、弄られることを望んではいない。だがしかし、真狐の指先が動くにつれて、徐々に鼓動が早まる。呼吸も僅かながら荒くなり、湿り気を帯びた吐息が唇を濡らしていく。
「―――……っ…!」
真狐の指が、尖った先端に触れる刹那、ツクヨミは目を瞑って体を強ばらせた。視界に闇の帳が降りると同時に、どくどくと耳に響く鼓動の音。そして、自らの呼吸の音。
眼を閉じて改めてわかる、その荒々しさ。ふうふうと、まるで手負いの獣のそれのような音が、唇から漏れていた
ツクヨミは体を硬くして、耐えていた。否、それは待っていたと言った方が正しいかもしれない。だが、いつまで待っても、“その刺激”は訪れる事はなかった。
恐る恐る、瞼を開く。指はツクヨミの胸を離れて、くすくすと笑みを漏らす真狐の口元へと移動していた。
「なーに期待してんのよ、スケベ」
「っっっなッ………っ!」
誰が期待を…!―――瞬時に顔を真っ赤にしてそう言いかけるも、その言葉は喉を出る時には全く別の言葉に変わっていた。
「やっ…ひぁ…ッ!」
再び、耳。さんざ舐められ、しゃぶられ尽くした左耳ではない、右耳を唇に含まれ、れろりと舐められる。だが、それだけだった。意外なほどあっさりと、真狐は唇を離し、右耳を解放する。
「あっ……」
てっきり、先ほどのように徹底的に舐めしゃぶられると思っていたのか、真狐が口を離した途端、張りつめていた糸が切れたようにツクヨミは体の力を抜いた。今の今まで反り返っていた背を白い、埋まるような敷き布団に押しつける。その時の布団のひんやりとした感触で、どれほど長い間、背を浮かせていたのかを知る。
否、布団を冷たいと感じたのは、何も背を長時間浮かせていた為だけではない。先ほどとは違って、仄かに色づき始めた肌。それは、不本意ながらも、体が本格的に火照り始めたことを如実に表していた。
色づき始めたとはいえ、それはまだ僅か。桜の花びらほども染まってはいない。当然ながら、当の本人には自覚は無く、気づいているのは見下ろしている真狐だけだった。
「ふふっ……」
真狐の笑みの意味は、ツクヨミにはわからない。ただ、自分を見下ろすその視線の先が、肉付きの薄い胸元であるということは重々承知していた。
胸を見られる。何をするというわけでもなく、ただ、ジッと凝視される。舐めるような視線で、具に観察される。…ツクヨミは、唇を噛みしめた。
「……っ……ぁ…」
一瞬だけ、何かが胸に触り、ツクヨミは僅かながら声を上げてしまう。…触れたのは風、吐息だった。
真狐の吐息が、僅かに胸の、堅く尖った先端を撫でた。たったそれだけのことで、ピリッ…と、電流でも走ったかのような刺激が走った。
初めての経験だった。ツクヨミ自身、多少なりとも自分の体に興味を持ち、小さな胸も触れば自然に、その先端が堅く尖るという事は知っていた。が、しかしここまで敏感になるというのは経験に無かった。
「ぁあッ………ぁッ…!」
先ほどよりも強い摩擦に、ツクヨミはやや大げさに声を上げてしまう。同時に、バネでも入っているかのように背を撓らせ、そして再び脱力。
くすくすという笑い声を聞いて、意図的に息を吹きかけられたのだと言うことを知った。
さすがに敏感なのね―――真狐は含み笑いを漏らすようにして、呟く。その明らかに見下したような物言いから逃げるように、ツクヨミは顔ごと真狐から視線を逸らした。その顎を真狐は掴み、無理矢理に自分の方を向かせる。
「……いい目ね、…ゾクゾクするわ」
顎の辺りを撫で、顔を近づけたかと思えば、その左頬の辺りをぺろりと舐める。そのまま舐め、あるいは吸い付きながら、首、その付け根の辺りへと下がっていく。
右手が、腹の辺りをまさぐっていた。それだけで、僅かに背が浮く。指の腹が、膨らみの麓を触る。声が、出る。
「…っ……う、あ、ぁ…ッ…!」
ぞぞぞと、背筋を登ってくるものから逃げるように、ツクヨミは両足を伸縮させて、体を上へずらそうと試みる。その首の後ろに真狐は左手を回し、ツクヨミの左肩を掴んで逃げられないようにしながら、さらに唇を這わせる。
ちゅっ…ちゅっ…ちゅっ……。小刻みに口づけをしながら、徐々に右の乳房に唇を寄せていく。腹を這っていた右手は、逆の膨らみへと、円を描くようにして撫でさすり、近づいていく。
「ッ……く、あ、……や、やめっ…………ッ………ぃッ…!」
ちゅ…、と小さな音を立てて、真狐の唇が柔らかい果肉に吸い付く。そのまま、ゆっくりと持ち上げていく。
「…………っ………ぅ、ぁ、ぁッ…!」
真狐に吸われるままに、ツクヨミの背が反り、背骨が折れそうな程に撓っていく。
ちゅはっ…、そんな音を立てて、漸くに唇が離されると、ツクヨミの体も、まるで今の今まで糸で吊られていたかのように、がくんと力が抜けて布団に背をつけた。
白い果肉が、ぷるんと、ゼリーのように揺れる。あふぅ…、小さくそんな声を漏らして、ツクヨミが脱力しかけた時、今度は桃色の蕾そのものが吸われた。
「いッ……あッ…!」
びくんっ!
一気に背が反り、踵が浮く。拘束されている両手が、腰の下で敷き布団のシーツを掴み、ギュウと握りしめる。
「んふふっ」
真狐は果肉の先をくわえ込んだまま、喉を鳴らして笑い、そのまま堅く尖った蕾を舌先でてろてろと転がし始める。
「あッ…! あ、ぁっ、あっ…ああっぁ…ひっ…あッ…!」
ぎこちない声で喘ぎながら、ツクヨミは全身を強ばらせる。堅く屹立し、敏感に尖った先端を容赦なく刺激され、その声は半ば悲鳴に近い。
だが、真狐はツクヨミのその声が余程心地よく、耳触りが良いのか、大きな耳を嬉しそうに震わせながら、ちゅはちゅはとますます唇の動きを大胆にしていく。
右手は、既に逆の方の蕾を摘みあげ、くりくりと固さを弄ぶように愛撫していた。掌で柔らかい果肉に押しつけるように潰したり、そのまま擦るように撫でたりすると、一際高い声でツクヨミは鳴いた。
「ふふふッ…イイ声で鳴くじゃない」
ツクヨミが声を上げる様を上目遣いで楽しそうに見上げながら、真狐はゆっくりと唇を離す。その途端、かくんと脱力するツクヨミの体を支えるように、両手を脇腹から背中に回して抱える。
「やっ……あいぃッ!」
ツクヨミが悲鳴を上げるのも構わず、その舌を白い果肉へと這わせる。まるで味でも確かめるように、執拗に、たっぷりと、唾液を塗りつけるようにしてなめ回す。ツンツンと尖った先端を時折唇で挟んでは軽く吸う。
「あっ…、ひぃ…やっ…ッ…す、吸わなッっっ…でぇッ…! やッ…! あっ、ぁ、ぁっ…あんっ…あッ……ひっ…いっ…ぁッ………!」
ツクヨミはかぶりをふって、甘い悲鳴を漏らし続ける。両手を背中に回され、抱えられるようにして吸われているため逃げることも出来ない。
ちゅっ…ちゅっ…ちゅぱっ…ちゅぷっ…ちぅぅぅぅっ…ぱッ……ちゅぶっ。
汚らしい音が一つ響く事に、それ以上の嬌声が、喉の奥から飛び出ていく。既に声を押し殺す余裕は皆無。弄られるままに、ツクヨミは媚声を上げる。
普段の、氷礫を思わせるような声ではない。熱を帯びた、何とも艶めかしい声を惜しげもなく、仰け反りながら漏らし続ける。
「んふふ…ほんっっと、敏感なのねぇ。じゃあ…」
こんなのはどう?―――そう言いたげな仕草で、真狐は再び白い果肉を、そしてその蕾を唇に含む。てろっ…先端を軽く舐めた後、きゅっと唇を窄めながら―――
「ひゃっ…あッ…! は、母上ッッ…………あ、あああぁッ…あッ…や、いィイッ……っっっッッッ!!!」
仰け反り、そして痙攣。
びくんっ、びくんと、まるで陸に上がった人魚のように体を震わせ、暴れた後、唐突に脱力。真狐も媚笑を浮かべながら、両手を離す。
「ぁっ……ぁっ……ッ………」
ツクヨミは脱力して尚、小刻みに体を震わせ、胸を大げさに上下させて荒く呼吸をしていた。そのツクヨミに覆い被さるようにして、真狐が唇を寄せてくる。
「………ツクヨミ、今…イッたでしょ?」
「……………っっっ………!」
朱に染まっていた顔が、さらに真っ赤に染まる。
「なっっ………―――」
何を馬鹿な事を!―――そう否定する筈だった。だがしかし、舌がもつれて呂律が回らない。顔は益々赤くなり、得体の知れぬ罪悪感にも似たものがふつふつとわき上がってくる。
「ッ………い、イッて………など、いな、い………」
ほぼ条件反射的に、ツクヨミは否定していた。嘘をつく後ろめたさの為か、真狐の方を直視できず、さらに声は震えていつものクールさは欠片も無いという有様。…当然、真狐の失笑をかった。
「ふぅん…」
真狐はジト目でツクヨミを見下ろしながら、右手の人差し指をつん…と、唾液に濡れて光沢を放つ桜色へと宛う。ン…と、僅かにツクヨミの喉が鳴る。
そのまま、ボタンでも押すように、指先を押し込む。ッ…!―――微かにツクヨミの顎が上がる。真狐はそのまま、円を描くようにして、くりくりと弄る。ぁっ、ぁっ、ぁ…ツクヨミの口から、小さく、声が漏れ始める。
「は、母上…ッ……や、やめっ………!」
何かに追い立てられる様に、ツクヨミが声を出す。真狐はにんまりと笑みを浮かべたまま、指の動きを僅かに遅くした。…ふわさっ、尻尾が揺れる。
「気持ちいいんでしょ?」
意地悪く、聞く。ふふんと鼻を鳴らして、得意げに尻尾を揺らしながら。
「き、…気持ちよくなど―――……ぅっ…ぁっ、やっ……あんっ…!」
ツクヨミはあくまで気丈に、毅然とした態度で否定の言葉を口にする。が、しかしそれは、皮肉にも半ばでなんとも甘い、艶のある悲鳴に変わった。真狐が指の動きを強め、さらにおまけとばかりに空いている方の先端を指で弾いたのだった。
「あっ、あ…! やめっ…母上ッ……やっ……指っ……ひゃっ…な、舐めッッ……ひあッ…ぁッ…!」
再び仰け反り、背を反らせて喘ぐ。構わず、真狐は指先で先端を転がし、膨らみを愛撫しながら、時折舌を這わせてツクヨミを再び追い込んでいく。
ちゅはっ…と、漸く蕾が解放されたかと思えば、休む暇なく右耳がしゃぶられる。同時にきゅっ…と、唾液に濡れたしこりを指先が転がし、つまみ上げる。
「ほらぁ…気持ちいいんでしょ? 素直にならないと、続きしてあげないわよ」
「っ…ふっ、ふざけるなッ! …ッ、妾がいつっ…続きなど欲っ…―――!」
ハッとして、ツクヨミは途中で口を噤み、さらには呼吸まで止めた。だがしかし、時既に遅く…否、元より不可避の事態であったと言わざるを得ない。
うっすらと見える、桜色の粒子。何かの花粉のようにも見える無数のそれが室内を舞っていたのだ。
ふわさっ…。真狐が尻尾を振ると、それらが一層濃く、室内に充満する。……ツクヨミは呼吸を止められなくなり、荒々しく息を吐くと同時にそれらを胸一杯に吸い込んでしまう。
毒ではない。が、しかし、ツクヨミにしてみれば毒に等しい粉。真狐の尻尾から発散されるそれは誘惑の術という名の魔性の媚薬。当然、吸えば吸うほど、その効果は如実な物となる。
目には見えるが、しかし質量のない毒紛。それらは例え呼吸をしなくても、微量ながらも皮膚から浸透していく。そして、呼吸をすれば尚のこと、心身は媚粉の毒気に冒されていく。
「くっ……ぁっ…!」
誘惑の媚粉から逃げるようとするかのように、ツクヨミは顔を背ける。真狐はそんなツクヨミの体を両手で抱き、まるで添い寝でもするように体を寄せてくる。ツクヨミの右腕が、深い谷間に埋もれ、挟み込まれる。
「ふふっ、こんなに火照らせて…、熱でもあるの?」
真狐は惚けて嗤う。体を寄せたまま、うなじに息を吹きかけると、それだけでツクヨミは小さく声を漏らし、震えた。
「ひっ……卑怯っ…な、……こんな、術っ…をっ…ひゃあぁっあッ!!」
ぬっ…と、首の辺りを真狐の舌が這う。体が火照っている為か、舌が、唾液がいつになく冷たく感じられ、素っ頓狂な声が出てしまう。…ふふふ、と真狐が喉の奥で嗤う。
それきり、真狐は何もしてこなくなった。ただ、ツクヨミの体を抱きしめ、濡れた目でジッと見ている。それはまるで、ツクヨミの呼吸の回数を数えているようにも見えた。
ツクヨミは真狐に抱きしめられたまま、荒い呼吸を繰り返した。小さな胸を大げさに上下させては、白く濁りそうな程に湿気と熱を帯びた息を吐き出す。
降り積もったばかりの雪のように純白だった肌は湯上がりのそれのように上気し、火照り、うっすらと汗すら滲んでいる。さらには、しゅっ…しゅっ…と、衣擦れのような音。自由が利かない筈の両足が時折不自然に硬直、伸縮を繰り返している音だった。…太股の間からは、さらに別の音も微かに聞こえ始めている。
「ッ……ぁッ……くッ………あッ…………ふっ…くッ……んっ………!」
言葉とも、吐息ともつかない声を上げて、時折背を反らせて仰け反っては、寝返りを打とうとするかのように首を激しく振る。拘束されたままの両手をさかんに動かし、両手の指は布団のシーツをたぐり寄せるようにして握りしめ、離さない。
足を、しきりに動かす。その仕草は、まるで尿意を我慢している様に見えなくもない。事実、ツクヨミは我慢をしていた。ただ、それは尿意ではなく―――。
「………ッ…………て………ッ……」
ふいに、掠れた声が漏れて、真狐は耳を震わせて首を傾げた。無論演技だ。
「ん、何か言った?」
「ッッっ……つ、ッ…つづ、き…を―――」
そこで、一旦言葉を切る。しばしの沈黙の間、ツクヨミはずっと唇を噛みしめていた。だが、それも長くは続かず、体に灯った焦燥の炎にせき立てられるように、次の言葉を紡ぎ出す。
「つづ…きを……し、………て………………ッ…」
顔は背けたまま、視線は決して真狐の方へはやらず、今にも消え入りそうな声で呟く。だがしかし、その言葉の意味することは重々承知しているのか、顔は火照った体よりもさらに数段赤く染まっていた。
「…何の続き?」
真狐の、楽しくて仕方のないという声に、ツクヨミは咄嗟に怒りの眼差しを向ける。だがしかし、真狐はその視線すら弄ぶように、ツクヨミの顎の下を、まるで猫にでもそうするようにして撫で、挑発する。
「ほら、言ってみなさいよ。何を、どうして欲しいの?」
「っ……くッ………!」
反論―――しようとして、キュッと口を噤む。真狐の言葉に逆らうには、体の芯に灯った炎は些か熱すぎだ。既に、身を焦がしそうな程に熱を帯び、喉の渇きにも似た衝動が加速度的に増していた。…それらは、ツクヨミの中にある自尊心という氷を溶かしきるには十分すぎる熱量を持っていた。
「……む、胸…を…………さ、……さわっ…………て……―――ッ……」
度を超した羞恥のためか、それとも同じく度を超した焦燥の為か、唇は不自然に震え、言葉が辿々しくしか発せない。…だが、それで十分だった。
「胸、ねぇ。……こんな感じ?」
真狐が包容を解き、すす…と胸元の辺りに掌を這わせる。火照った肌の上を滑るように、膨らみの上を、尖りきった先端を撫でると、途端にツクヨミは甲高い声を上げて、背を反らせた。
真狐はツクヨミの嬌声に満足そうに笑みを浮かべると、そのまま手を喉元、顎を通り過ぎ唇まで持ってくる。湿った吐息と唾液ですっかり濡れた唇をしばし、人差し指で撫でた後、つぷとその渓谷へと潜り込ませた。
「ん…むっ…!」
ツクヨミは僅かに首を逸らすような仕草をしたものの、意外なほどあっさりと真狐の指を受け入れた。噛みつくわけでもなく、舌で追い出すわけでもない。むしろ、好意的とも言える仕草で、真狐の指を緩慢にしゃぶる。
人差し指に続いて、中指までが差し込まれる。二本の指はツクヨミの口腔内で蠢き、舌を撫で歯の先を撫で、ひとしきり唾液と戯れた後ちゅぷと引き抜かれた。その後を、名残惜しむような白い糸が追従する。
「は、ぁふ……んっあッ……っ!」
唾液に濡れた指が再び胸元へと戻る。ツクヨミの口腔内で絡め取ってきたそれらをピンピンに尖った先端に塗りつけるようにして這い回り、火照った肌をてろてろに汚していく。
「は、母上ッ…ぁッ! ひっ…あッ! ぁぁあっあァッ!!」
腰が、浮く。
指先が堅くしこった蕾を弾くようにして擦り、つまみ上げると同時に右耳の中に舌が入ってきていた。白い毛を舐め、しゃぶりながら、さらに空いている左手が背中と拘束されているツクヨミの手の間を通り、体ごと抱き込むようにして向かって右の乳房をとらえ、弄る。
つつ…と、内耳をなめ回しながら、さらに耳の縁、先端の辺りを軽く食み、しゃぶる。同時に、ピンピンにしこった突起をつまみ上げ、くりくりと転がす様にして弄りながら、薄い肉を弄ぶように揉む。…徐々に、ツクヨミの声が甲高く、切なさを帯びてくる。
「くす…、ツクヨミ、イきそう?」
すっかり濡れそぼった右耳の中に、ぼそりと囁きかけてやる。それだけでも、ツクヨミは悲鳴のような声を上げて腰の辺りをびくんと震わせた。
舌を、耳の中から抜き、ツクヨミを見下ろす。両目はすっかり潤み、涙が今にもこぼれ落ちそうなほど目尻に溜まっている。唇は僅かに開き、湿った吐息が真狐の頬にまでかかる程だった。
ツクヨミは、言葉では返事を返さなかった。ただ、こくん、と顎を僅かに上下させた。…それで十分だった。
「んんっ…!」
次の瞬間、ツクヨミは唇を奪われていた。まずは上唇、次に下唇。順番にちゅっ、ちゅっ…と軽く吸われた後、何かが口腔内にぬるりと侵入してきた。舌…だとすぐにはわからなかった。あまりになまなましい、まるで別途の生き物のような動きだったからだ。
「んっ…ふっ…!」
ツクヨミは噎びながら、咄嗟に体を、頭を後方に逃がすような動作をした。が、それよりも早く、真狐の左手がツクヨミの後頭部を押さえた。…んふふ、と真狐が喉の奥で笑い、細く目を尖らせる。
ちゅくっ…ちゅっ…。
唇が、舌が蠢き、唾液と空気が弾ける音が口腔内で木霊する。ン…、ツクヨミは微かに喉を鳴らしながら、無意識に体の力を抜き、脱力する。
先ほど、指を差し込まれた時と同様に不思議と不快さは湧かなかった。代わりに感じるのは安堵、安息、そういった物だった。無論ツクヨミは、己の中に湧いたそれらの感情を認めず、必死に否定し続ける。
だが、しかし唇を重ねる時間が募るにつれて瞳は益々潤み、尻尾の付け根の辺りからは痺れのようなものが広がり、同時にぞくぞくとした快感が背筋を登ってきては、ツクヨミに歓喜の声を上げさせようと声帯を擽る。
くちゅくちゅという舌の動きに呼応して、真狐の右手の指もまた蠢き、敏感な突起を弄り続ける。だがしかし、唇をふさがれているためツクヨミは喘ぐことも出来ず、ただ物憂げに喉を鳴らすことしか出来ない。
決して、意識しての事ではない。意識しての事ではないが、ツクヨミの舌までが、真狐のそれに合わせるようにして動き始めていた。辿々しく、引っ込み思案気味に動くツクヨミの舌を、真狐は巧みに誘い出し、いやらしく動いては唾液の味を確かめるようにして絡み合った。
「ン……ぁッ……!」
舌同士が絡み始めると、ツクヨミは益々脱力して真狐の成すがままになった。胸を触られても、その都度おどおどと、まるで快感を得ることに怯えるように体を引こうとしていたのが一転、自ら突起を真狐の指に押しつけるようにして体を擦りつけ始める。
ちゅく、ちゅっ…ちゅっ……ちゅくっ…。
唇の、舌の動きに次第に熱が籠もる。舌と舌を擦り合わせ、互いの味を確かめ合うたびに、体中がとろとろに溶かされて、蜂蜜かなにかになっていくようだった。…反射的に、ツクヨミは両足を固く閉じ,太股を合わせた。そうしていないと、際限なく溢れさせてしまいそうだったからだ。
だがしかし、ツクヨミのそんな思惑とは裏腹に、真狐の右手ははたと胸を触るのを止め、そのままするすると下り始めた。鳩尾を越え、臍を越え、ついには襦袢の腰帯の内側にするりと潜り込んでしまう。
その間、ツクヨミは何一つ抵抗らしい抵抗をしなかった。否、出来なかった。それどころか、真狐の手が臍の上あたりを通っていくのをもどかしいとすら感じてしまっていた。
手が、そこに近づくにつれて鼓動までが早く、ドクン、ドクンと大げさな音を立て始める。腰帯のさらに下、辛うじて襦袢に隠されたその場所は下着こそつけているものの、既に体の奥から溢れたものですっかり濡れそぼっていた。布地のほぼ全体がジットリと蜜を含み、尻の方にまで溢れたそれのせいで襦袢と布団まで濡らしてしまっているという始末だった。
そんな場所へ、手が近づいていく。腰帯をくぐり、やがて指の先が濡れた下着に触れる。…ツクヨミの顔は火が出そうなほどに赤い。だが、ツクヨミは拒否の言葉は漏らさない。その代わりに、舌をくねらせては真狐のそれに応じる。
ツ…。
指先が、とうとう下着の内側へと入る。体の奥から溢れるもののせいで、薄めの恥毛までがグッショリに濡れそぼっている。真狐の指はそこもかき分け、進む。
「………ンッ………!」
ツクヨミは微かに体を強ばらせ、ぎゅっと両手で、皺の寄った布団のシーツを掴む。…ちっ…と、小さく音を立てて一瞬真狐の唇が離れた。
「あっ……」
蕩けた瞳で見上げながら、ツクヨミはそんな呟きを漏らした。そして、ドクドクとけたたましくなる鼓動の合間に、己の秘部を愛でられる音を確かに聞いた。
「ぁッひぁッ! ……っあッ…あぁぁぁァアッ!!!!」
嬌声…否、叫声。
腰帯の奥に潜り込んだ手でくちゅりと水っぽい音を立てると同時に、ツクヨミは活字にならない声を上げ、両足の踵を跳ね上げていた。
立て続けに、びくん、びくんと体を震わせ、喉を震わせて小さく、小刻みに噎ぶ。真狐がゆっくりと右手を引き抜くと、その後を追うように透明な糸が引いた。くすっ…と、真狐は意味深な笑みを浮かべてその唇を再び奪う。
「あふっ………あむっ……んんんぅっ…」
ツクヨミは絶頂の余韻にすっかり酔いしれていた。全身の力を抜き、真狐にされるがままに、唇を奪われる。ちゅく…ちゅく…ちゅむっ…、音を立てて、唾液を吸われる。それが何とも心地よく、まるで秘裂から溢れるそれを吸われているような錯覚すら憶えた。
事実、ツクヨミは蕩けるような快楽に包まれていた。それは、ただ単に絶頂のあとに訪れるそれとは違い、今現在も進行形で与えられ続けていた。
そして、それと引き替えるように、ツクヨミの体は得体の知れぬ脱力感が募っていく。…真狐に妖力を吸われていると気づくのには、しばしの時がかかった。
「…んっ」
真狐が唇を離す。と同時に、体を包み込んでいた快楽と、脱力感が同時に消えた。
「妾の……妖力を……」
漸く、それだけの声を絞り出す。眼前の真狐の体はほんのりと赤く光を放っている。
「ふふっ、妖力を吸われるのって気持ちいいでしょ?……勿論、吸う方も気持ちいいのよ」
ぺろりと舌なめずりをして、ツクヨミに被さる。その両手をもぞもぞとツクヨミの背中の方に這わせる。…程なく、ツクヨミの両手が解放された。
えっ…と、ツクヨミが意外そうな声を出す最中、真狐は自らの着物をも着崩し、たわわに実ったそれをたぷんっ、とツクヨミの胸板に乗せてくる。…さらに、真狐が上半身を倒して体重をかけてくると、弾力に富んだ乳肉が潰れ、撓む。
「…羨ましい?」
勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、ツクヨミの頬を撫でる。ツクヨミは肯定も否定もせず、羨望の眼差しをちらちらと、盗み見るような形で向ける。
ふふふ…と、真狐の喉が鳴り、上体が僅かに動く。大きさは違えど、互いに尖った先端同士を擦り合わせるようにして。…再び、ツクヨミが声を出し始める。
「ほらっ…」
真狐はツクヨミの左手首を掴み、促すようにして自らの胸元へと持ってくる。ツクヨミは真狐の意図を計りかねたのか、真狐の顔と、その胸とを交互に見た。
焦れるように、真狐がさらにツクヨミの手を押しつける。むにっ…、背筋がゾクッと冷えるほどの柔らかさが、掌から伝わる。ツクヨミは指先を痙攣させるようにして、刹那のうちにそれを握りしめていた。
「ンッ…」
色めいた声を上げて、真狐の体が微かに震えた。ツクヨミは鼓動を早めながらも、左手の中にある質量をもてあますようにこね始める。ぁっ……小さく声を上げて、真狐の左手がツクヨミの後頭部の辺りに爪を立てる。
「っ……ぅ、ぁ………」
驚くような、怯むような声が、喉から飛び出る。ぐっ…と、力を込めれば、溶け込むようにして指先は白い肉の塊に飲まれてしまい、見えなくなる。その、途方もない大きさと掌にかかる重さ、そして決して張りを失わない弾力の良さ。全てがツクヨミには羨ましかった。
知らず知らずのうちに、両手を使い始めていた。右手も、左手も、初めこそ淑やかに、丁寧に触り、捏ねていたのが徐々に荒く、力の籠もったそれになる。嫉妬…も混じっていたかもしれない。が、それよりなにより、乱暴にこね回せばこね回すほど、真狐の口から漏れる吐息が艶を帯びてくるというのが一番の理由だった。
「…吸って」
吐息混じりに、そんな呟きが聞こえた。反射的に、ツクヨミは白い巨峰に釘付けだった目を、真狐の顔に向けた。まるで確認を、了承を得るかのようなその動作、真狐は頬に僅かに朱く染めながら、小さく頷いた。
促すように、真狐が上体を揺らすと、たぶんっ…と柔らかいそれが、ツクヨミの頬に当たった。その先に、桜色の突起がある。ツクヨミが少し顔を動かせば、すぐにでも唇のなかに含める距離だった。
だが、ツクヨミはそれをしなかった。何度か唇を近づけようとするも、寸前で引いてしまう。さらには、その顔までみるみるうちに真っ赤に染まっていく。その理由が、真狐にはわかっているようだった。
「…いまさら何照れてんのよ、昔はあんなに吸ってたじゃない」
「………………っ………!」
いつの話だ!―――とは、ツクヨミは言わなかった。それどころか、真狐の言葉すら耳に届いているかも怪しかった。
ふわりと、鼻を擽る香り。それは眼前にある、たわわな果実の芳香に相違なかった。永遠の安らぎを約束するような甘美な囁き。千年経って尚忘れることの出来ない、懐かしさを伴うそれがツクヨミを魅了していた。
「あっ……」
小さく、声を漏らした後、そのままの唇の形で、ツクヨミは吸い付いていた。
ちぅぅうっ…!―――音が聞こえそうな程に強く吸い、さらには右手に力を込めて白い果肉を搾るように揉む。それは、愛撫と言うより、母乳に飢えた子狐が懸命に食らいついているというのが正しい。
ちゅっ…ちゅっ…と音を立てて吸い付く。堅くしこったそれはいくら吸っても、かつてのように腹を満たしてくれることこそ無かったが、しかしそれでもツクヨミは吸い続けた。
「っ……ン………ぁ…ふ、うっ……んっ………!」
真狐は瞼を閉じ、両手でツクヨミの頭を抱えるようにして僅かに噎ぶ。その尻尾が、ぞぞぞとそそり立ち、腰の辺りが時折、小さく撥ねていた。
「っ……こっち、も……」
髪を掻きむしりながら、空いている方を促すと、一も二もなくツクヨミは吸い付いた。尖った先端を咥えるや否や、唾液を塗りつけ舌先で執拗に舐める。そうすると、僅かだが、甘いミルクのような味がした。
「んッ……ぅッ………はっ…あふっ…………」
真狐は心地よさそうに喉を鳴らしながら、その右手を徐々に下げていく。うなじを通り、薄い胸元を軽く撫でた後、襦袢の腰帯へと到達する。
しゅるりと音を立ててそれが解かれ、襦袢がはだけられる。その下には、すっかり濡れそぼった下着が一枚だけ。真狐はそこを、布地の上からそっと撫でる。
「…は、母上ッ………ぁッ…!」
吸い付いていた口を離し、咄嗟に体を硬くする。左手を伸ばし、真狐の右手を掴んで制止させるような、そんな素振りを見せるが…。
「あッ…ぁ、あッ…!」
つっ、つっ…。真狐の指先が下着の上から、うっすらとした割れ目を辿るだけで、ツクヨミの体から力が抜けた。真狐の腕を掴んでも、それはただ掴んでいるだけで、少しも力が入っていない。否、むしろ、僅かに動きを促すような気配すらある。
それに気がついたのか、真狐はくすっ…と小さく笑んで、指先を下着の中へと潜り込ませる。
くちゅっ、くちゅ、くちゅっ…!
下着の下で五指を巧みに蠢かせ、真狐の指が何かをするたびに、ツクヨミはより大声を出して体を痙攣させる。その、涎にまみれた嬌声の合間々々に真狐は唇を合わせては、少ずつ妖力を吸い上げていく。
「ぁあッ…あッ……やっ……ゆ、びっ……!」
真狐の中指が、クレヴァスの奥へと侵入してゆく感触にたまらず、ツクヨミは一際高い声を上げた。
「んふふ、ここはもうすっかりトロトロね」
白い狐耳の中に囁きかけながら、真狐はさらに右手を蠢かせる。熱く濡れた肉襞を指の腹で擦り、勃起した淫核を摘む。あァッ!―――ツクヨミは仰け反り、さらに熱い蜜を溢れさせながら、ぎゅっ…と、真狐の着物にしがみつく。
「ぁっ…ぁッ! ひっ…あァッ…! やっ……は、母上ッ……そこッ…ぁッ…ぁああァアッぁぁぁぁぁあァッ!!!」
両足を不自然な形で硬直させ、つま先まで反り返らせて、イく。真狐の着物を掴む手が震え、痙攣の都度がくがくと揺れた。
さらに、唇を重ねられる。とくん…とくんと、音を立てて妖力が吸われていく。それは絶頂の余韻と相まり、途方もない快楽をツクヨミにもたらす。…ツクヨミは、既にその虜になりかかっていた。
吸われる妖力の量は先ほどのそれよりも遙かに多い物だ。そしてその分、ツクヨミに与えられる快感も多くなり、ツクヨミはそうして唇を吸われているだけで軽く数回イッてしまった。
「んん……はっ……ぁッ………はあ…ふっ…………」
真狐が唇を離すと、ツクヨミは名残惜しむような吐息を漏らした。着物を掴んでいた手を離し、ぐったりと全身を弛緩させる。…既にその様は、真狐のすることに抵抗をしようという体を失っていた。
真狐の手が下着の中から引き抜かれる。それは、今の今まで蜜の入った壺にでも浸かっていたというのではないかという程に、びっしょりと濡れそぼっていた。
同じ手で、下着を降ろされる。ツクヨミは抵抗をしなかった。下着はあっさりと太股を、脹ら脛を通って片足を抜かれた。下着自体、よほど水気を含んでいたのか、降ろされた後の足すらもぬらりとした光を放っていた。
ちゅっ…。唇を吸われる。だが、それだけ。ツクヨミは咄嗟に、あの妖力吸引に伴う途方もない快楽を期待してしまっただけに、ただ唇を吸われるというだけでは焦れにも近いものを感じてしまう。
唇は、そのまま小刻みにキスを繰り返しながら、首筋、胸、腹、下腹へと下がっていく。ツクヨミは僅かに身じろぎし、右の手の甲を唇に当てた。
「ぁッ……!」
どうやら、恥毛の辺りを吸われたらしかった。ツクヨミは小さく喘ぎを漏らす。その後も、立て続けに、蜜を吸うような音。
「ッ……ぁっ……ひんっ…あ、うッ…!?」
“その感覚”に、ツクヨミは思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。それは、妖力を吸収される時独特の感覚だった。…それも、唇から吸われるよりも数倍強い。
「んっ……」
熱く潤んだその場所に、ひんやりとした吐息がかかるのが解る。否、吹きかけられた吐息も十二分に熱と湿り気を携えているのだが、ツクヨミの方がそれ以上に体を火照らせていたのだ。
っ…と、指で、ゆっくりとクレヴァスを開かれる。それだけで、じわっ…と、新しい蜜が溢れてくるようだった。そして、それを舐め取る舌の音。
ぴちゃ…ぴちゃっ…ちゅっ…。
敏感な粘膜を数回、舌が往復した後、唇が吸い付き、溜まった蜜を吸われる。―――刹那、ツクヨミは叫声を上げていた。
「あッ……………ぃぃぃッアッ!!!……ひっ……!?」
蜜を吸われる…と同時に、妖力も吸われた。それも、ちゅう…と吸われるのではない。もっと、どろりとした塊を、一気に掻き出されるような、そんな荒々しい吸飲だった。それは先ほどの吸飲量よりも数段上、ましてや口移し時とは比べ物にならない。
「は、…母上ッッ……ひぃぃッ…ィッ!!!」
両手で真狐の後ろ髪を掻きむしりながら、ツクヨミはあられもない声で喘いでいた。咄嗟に足を閉じようとするが、しかし間に真狐が体を入れているのでどうしても肩幅以上は閉じられない。
「やぁうッ!!」
腰が跳ねる。真狐の指が窮屈なそこへと侵入し、蜜を掻き出すように蠢く。それだけでも腰が溶けてしまいそうな快感であるのに、真狐は容易く、その上を与えてくる。
妖力の吸引。真狐との戦いでその殆どを使い尽くしたものの、時と共に徐々にではあるが回復はする。が、それすらも軒並み吸い上げられていく。そしてその都度、ツクヨミは背骨を撓らせて達した。
妖力を吸い出される快感は、男でいう射精のそれに似ていた。それが、立て続けに、真狐が蜜を吸う度にツクヨミに与えられる。何度も、何度も。ツクヨミが言葉にならない声を上げて仰け反り、後ろ髪を掻きむしりながら制止を懇願しても真狐は止めない。
「あっ……あ、あァっ!…も、もう…やめッ……ッ……―――あひぃィイッ!!!!」
また、イく。吸われても吸われても、肝心の妖力の方は一向に尽きる気配がない。一度に吸われる量もかなりのものだが、それでも尚尽きない。真狐も吸うのを止めない。体を逃がそうとするツクヨミを押さえつけ、両手と舌でたっぷりと愛撫する。
「ひぁッ……し、舌ッ…入れなッッ………ぁッ…あんッ…!!」」
舌を差し込まれ、肉襞を直接舐め上げられる。どろりと、妖力が吸われる。腰から下が溶けてしまい、同時に雷にでも撃たれたような快楽が背筋を駆け抜ける。ッッッ!―――ツクヨミは全身を不自然に強ばらせながら、叫ぶようにして喘ぐ。
「イイ声ね、…でも、まだまだ……」
声が聞こえた、が、しかしそれが真狐の声だという事までツクヨミが理解できたかは怪しかった。その体が、ぐるりとひっくり返される。これも、しばしの間、一体何をされたのかツクヨミには解らなかった。物事を思考するのが億劫になるほどに、快感に溶かされていた。
「ひっ……!?」
ぞくりと背筋が冷える。そうなって漸く、ツクヨミは自分が俯せに寝かされ、そしてその尻尾を触られているという事に気がついた。
「ぁッッ……やッ……!」
白い尻尾が、さわさわと撫でられる。火照った体は敏感、それは尻尾も例外ではないのか、撫でられるたびにツクヨミの意志とは無関係に膝が立ち、下半身が持ち上がっていく。…そう、丁度、尻を差し出すような、そんな具合に。
真狐の右手が、その尻尾の付け根の辺りを掴む。そのまま、ぞぞぞと先端の方まで、一気に撫でる。否、ただ撫でているだけではない。指に絡み付いたものを擦り付けるようにして、徐々に強く、扱いていく。
同時に、左手が濡れそぼった秘裂を愛でる。指を差し込み、あるいは突起を撫でると、白い尻尾に芯が通ったかのように勃起する。右手で、それを扱く。
「ひぃ……くっ…ぁッ……あッ…あっ、あ…あっ…あァッ………!」
両手で布団のシーツを握りしめ、悶える。上半身はぐったりと沈み、下半身だけが否が応にも持ち上げられ、恥部の全てが晒される。
にゅぷっ…にゅぷっ…ちゅっ…!
音を立てて、秘裂を指が出入りする。とろりとした蜜が糸を引いて布団に落ち、シミを作り、あるいは広げる。
尻尾も扱かれる。溢れる恥蜜を塗りつけられながら、徐々に強く、そして時折焦らすように。ツクヨミが漏らす声を聞きながら加減しながら、さらに高みへと、真狐は導いていく。
「ぁっ…あッぃッ…! しっ…尻尾……ひぁッ……やっ…やんッ…! くっ…ひっ…あ、……ァッ…ぁぁぁァ、ぁぁアッ!! ……ッ…やぁぁァッ!!!!」
びくんッ―――!
自らの恥蜜を、尻尾に塗りつけられながら、ツクヨミはあっさりとイく。だが、それでも真狐は手の動きを止めない。くすりと小さく笑みを漏らして、むしろより大胆に、指を、手を動かす。
「ッ……ぃッ…な、何ッ…ぁッ………くひぃッ…ッ!!」
尻を震わせて、ツクヨミは噎ぶ。
にゅぬっ…にゅぬっ…!―――恥蜜を塗りつけられた尻尾は擦られる度にそのような音を立て、指をくわえ込んだ秘裂はそれ以上に卑猥な音を立て続ける。
「やっ…やぁッ………やめッ…やっ…あッ、あんっ…! ひぃっ…ふっ…あッああァッ!!!」
懇願。 それでも指は止まらない。吹くようにして恥蜜を迸らせ、イッても尚、真狐は責め続ける。
まだまだイけるでしょ?―――そう言うような動きで、徹底的にツクヨミを責める、愛でる。そして、糸を引かせて蜜を零すそこに吸い付いては、貪欲に妖力を吸い上げる。
何度も、何度もイかされ、失神寸前にまで追い込まれて漸く、ツクヨミは真狐の責めから解放された。ぐったりと、尻だけを持ち上げた恰好で、はあはあと荒い息をつく。布団につけた顔の傍は零れた涎の跡がシミになっていたが、ツクヨミにはそれを気にする余裕は無いようだった。イく度に堅くそそり立ち、毛を逆立てさせていた尻尾もぐにゃりと萎れ、濡れそぼった秘裂を隠すようにして垂れていた。
「くす……頃合いね」
真狐はその様を見下ろし、そして…瓢箪の栓を抜いた。
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