<後編>

 まさか、という思いで頭がいっぱいだった。催淫や精力増強ならまだ判る。しかし背が縮む――つまり若返ってしまうような食べ物など聞いたことがない。真狐の差し入れた食材のなかに年の数茸でも混じっていたのかと、月彦は混乱した頭で思考した。
「これ……絶対母さまのせい……だよね…………」
 真央はパジャマの裾をずりずり引きずりながら室内に入って来、うんしょとジャンプしてベッドに座った。その体躯は人の年齢にして決して二桁にはなるまいという状態にまで若返ってしまっている。“幼女”と呼ぶにこれほどふさわしい容姿は無いだろうという具合だ。
 困ったのは月彦だ。これから性欲の限りをぶつけてやろうと思っていた相手がこれでは空回りも良いところだ。これなのだ。これこそがあの女の、真狐の狙いだったのだ。自分を極限まで猛らせ、それでいて真央を若返らせ、行為が不可能な状態にする。何のことはない、とてつもなく手の込んだ、それでいてタチの悪い嫌がらせ以外の何者でもなかった。
「……こんな事をして、一体アイツに何の得が……」
 そんなものは無いのだろう。ただ、人が困っている様を見るのが愉快で仕方がないのだ。そういう女なのだ。分かり切っていた事ではないか――月彦は隣に座っている真央の頭を撫でながら長いため息をついた。
「畜生。こうなったら意地でもアイツを探し出してはけ口にしてやる。二度と悪さする気が起きないよう徹底的に――」
 と、月彦が腰を上げた瞬間、寝間着の裾をぐいと強く引っ張られてベッドに尻餅を突いてしまった。
「母さまに会っちゃ、だめ」
 引っ張ったのは勿論真央だった。むすーっ、と頬を膨らませ、不機嫌を露わにしている。
「会っちゃ駄目って、あのな……真央だってやられっぱなしは嫌だろ? ここでアイツをとっちめてやらないとまたいつどんな悪さをされるか――」
「どんな事をしたって母さまは懲りたりなんてしないよ。父さまだってそう思うでしょ?」
「そりゃあ……でもやってみないと――」
「母さまに会いたいの?」
 幼い声ながらも強い口調で言われ、月彦はつい口籠もってしまう。
「いや、会いたいとかそういうんじゃなくてだな……」
「母さまに会ったら……するんでしょ?」
「まあ、……こんなだしな」
 と、月彦は己の股間に視線を落とす。己の意志とは無関係に、そこは滑稽なまでに屹立していた。
「だめっ」
 真央はその小さな手で屹立しきった剛直を下着の上から掴む。
「こ、こら……真央」
「母さまとしちゃ、だめ」
 ぎゅうう、と両手で握りしめたまま真央は離そうとしない。月彦が無理に引きはがそうとすると爪を立てる気配すらあり、月彦は仕方なく折れる事にした。
「判った、真央。真狐は探しに行かない」
「本当?」
「ああ。よく考えたらこんなんで外なんて行けないだろ」
 どんなに厚着をしても誤魔化しきれないな、と己の股間を見つめながら月彦は思った。「となると……真狐の策にはまるようで癪だけど、今夜は真央とは別々に寝た方が良さそうだな。下手すると……真央がそんな姿でも襲っちまいそうだ」
 そう、今現在でも……この幼女然とした真央の衣服をはぎ取り、無茶苦茶に犯したい衝動にかられつづけているのを理性を総動員して抑え続けているのだった。決して我慢強い方ではない月彦がそうして耐えられるのには自分の元にやってきた時には既に己と同い年程度に成長していた真央の幼い姿が見れて少なからず感動しているという事もあった。
 月彦は思う。眼前の真央は今まで見たどんな幼子よりも可愛く、愛くるしいと。親ばかと言われようが知ったことか、間違いなく世界一可愛いと誰の前でも胸を張って言えそうな程に美しく月彦の目に映った。
 元々長かった髪は縮んでも背中まであり、最近では隠していることの方が多くなった狐耳や尻尾もまだ小さく、くりくりとした大きめの目も体躯のわりに早くもふくらみかけの兆しがある胸も何もかもが愛しくてしょうがなかった。
 だからこそ守りたい。だからこそ汚したい――その相反が心中でぶつかり合い、今はかろうじて前者が勝っている。だが、この先……真狐の持った食材の催淫効果がさらに強くなれば優劣が逆転するかもしれない。
 真央を遠ざけるのはまだ理性が勝っているいまのうちだと月彦は判断した。だが、それはあくまで月彦の判断であり、当然真央本人の意志は入っていない。
「私は……父さまになら……襲われても、いいよ?」
 照れるように狐耳を伏せながら、真央が呟く。その一言にズガーンと、月彦の理性は大幅に吹っ飛んだ。
「ま、待て……真央。いくらなんでも……さすがに俺はそこまで堕ちたくは……」
 幼女に手を出すのは変態の仲間入りだ――という認識が、月彦にはあった。それを言うなら実の娘に手を出すのは常識人のすることなのかという反論が来るという事にまでは頭が回っていなかった。
「それに、だな……いくらなんでもその体じゃするのは無理だぞ。だから――うっ……」
 言葉を遮って、思わず呻いてしまう。真央が月彦の下着をまくって剛直を取り出し、その先端をはむっ、と咥えこんだのだ。
「小さくなっても、口でなら……できるよ?」
「っ……ま、お……」
 最後の理性を振り絞って、真央を引き離そうと手を伸ばすも、それは結局真央の髪を撫でる為にしか使われなかった。
「ン……ぁ……父さまの、すごく熱い……ほっぺた、火傷しちゃいそう」
 剛直を舐め、頬ずりしながらうっとりと月彦を見上げる。真央のそんな仕草に、月彦は己の中に新たな属性が芽生えそうになるのを必死にこらえねばならなかった。

 自分はノーマルだと、ずっと思っていた。そりゃあ少しばかり……ほんのちょっとはアブノーマルな事もするかもしれないが、およそ人に変態と指さされるような行為とは縁遠いとずっと思っていた。
 それがどうだ。ベッドに腰掛け、自分の年の半分もいっていないような娘にしゃぶらせているという今の現状。第三者に見られたら間違いなく“変態”のレッテルを貼られ、同時に手が後ろに回る事だろう。
「ま、真央……やっぱりやめよう。こういうのは……っ……」
「どうして……? きもちよくない?」
 気持ちよくない筈がなかった。真狐のせいで精力はMAXを超えて、シたくてシたくてたまらない所をしゃぶられているのだ。気持ちよくないわけがない。わけがないが――。
「なン……か……すっげぇ、悪いことしてる、気分……だ…………」
 快感が膨れあがり、徐々に抗いがたいものになる。月彦は反射的に、絶頂前にはいつもそうするように真央の頭を抑えて剛直を突き出すような仕草をした。
「んんッ! んんんっんンーーーーーッ!!!」
 真央が呻くのも構わず、どぷっ、とその口腔内に思い切り白濁をぶちまける。どぷっ、どぷっ、ごぷっ……はき出される白濁の量は普段の倍以上、しかしそれを含み、嚥下できる喉は普段よりも小さい。ごくっ、ごくと喉を鳴らしながら、真央は目を見開き、苦しげに呻き続ける。白濁の勢いはすさまじく、飲んでいるというよりは流し込まれている、という形だった。
「っっっっぷはッ……けほっ、けほっ……」
 頭を抑えていた手が漸くゆるみ、噎せながら白濁の液体をどろりとはき出す。その顔にさらにどびゅっ、と白濁が降りかかり、髪、耳、服を汚していく。
「ごめんね、父さま……零しちゃった――っきゃっ!!」
 多少噎せつつも呼吸を整え、精液まみれにされながらも謝る真央を、月彦は力任せに押し倒した。
「と、父さま……?」
「すまん、真央……俺、もう――」
 月彦の言葉の語尾は、真央のパジャマが引き裂かれる音にかき消された。文字通り衣類を剥ぎ取り、裸にした真央の体を荒々しい手つきで撫でる。
 耳を、髪を、首を、肩を、膨らみかけの胸を、尻尾をケダモノのように息を荒げながら愛撫し、舌を這わせる。真央は擽ったそうな声を上げてみをよじるも、体格の差は如何ともしがたく、逃れる術などあろう筈がない。
「ふう……ふう……ま、お――」
 無論挿入など出来る筈がない。月彦は荒ぶったそれを真央の背中に、そして膨らみかけの胸に遮二無二擦りつける。先走ったもので白い肢体が汚れ、糸を引く。
「ぁっぅ、やっ……と、さま……んんんッ!!!」
 真央の太股を持ち上げ、剛直の上に座らせるような格好にする。そのまま剛直で真央の未発達な部分を擦り上げる。真央の中から溢れてきたのか、結合部からたちまちにちゃにちゃと音がし始める。
「ぁっ、ぁっ……や、あんっ、と、さま……そんな、熱い、ので……擦られ、たら……あっあっ、あッ!!」
 びくっ、びくんと太股が震え、真央の体が痙攣する。それでも月彦は構わず、剛直を真央の股間に擦りつける。
 限界は、唐突。白濁がはじけ、幼い肢体をたちまち染める。熱いしぶきを浴びて真央はまた達し、月彦の腕の中でぐったりと脱力した。
「ふーっ……ふーっ…………ん……?」
 絶頂後のけだるさに包まれながら、月彦は目を擦った。見間違いか?――いや、確かに――
「真央……少し、戻ってきてないか?」
「え……?」
 以前幼くなったままの体。しかし部屋に入った時よりは明らかに成長――元のそれに近くなっている。月彦は確かめるように真央の胸元へと手を伸ばし、僅かに揉める程度にまで膨らんだそれに錯覚ではないと確認する。
「そうか……そうだよな……何も一生あのまんまってワケはないんだ………………今なら、挿れても大丈夫だな」
「ぇ……ぁっ、うっ……やッ……!」
 一瞬、真央がためらうような仕草を見せるも構わず、月彦は真央を四つんばいにさせる。そのまま、猛り狂ったままの剛直を真央の中へと埋めていく。潤いは十分、しかしいつもと違い、なかなか思うようにいかない。
「っ……って、あ、れ……?」
 下半身から伝わってきた違和感に、月彦は思わず挿入を中断した。視線を落とし、真央の顔を見る。
「はぁ……はぁ……嬉しい……父さまに、“初めて”を二回も……」
 四つんばいのまま肩で息をしながら、真央が呟く。やはり気のせいでは無かったか――月彦の心に罪悪感が湧いた。
「大丈夫か? 真央……痛くないか?」
「ん……平気……前の時も、そんなに、痛くなかったから……」
「そういえば……そんな感じだったな……痛かったら、無理せずすぐ言うんだぞ?」
「ンッ! ……ぁッ……きも、ち……よすぎ、て……痛み、なん、て……あっ、ぅッ! んっ、あっ、ぁぁぁっ……あっ、いっうっ……!」
 真央の反応を見るに、どうやら演技をしているのではなく本当に痛みは薄いようだった。安堵の心と共に、再び野獣のような性欲がぶり返してくる。
「そういや、真央は“初めて”の時ももっとしたい……ってねだってたな……」
 眼下の真央はその時の姿よりもまだ幼い。膣の具合も狭くはあるがまだまだ行為に不慣れな感じではあるが逆にその感触が新鮮で、月彦は徐々に猛り始める。
 真央の腰を掴み、荒々しく突き上げながらその衝撃で揺れる、というよりはまだ震える程度の乳房を掴み、揉みしだく。徐々に、真央が声を荒げ始める。
「ンぁあっ! あぁぁああっぁ! やぁっあうっっ、やっ……いつもとっ……いつもとっ、違う、うぅうっ……」
「っ……どういう風に、違うんだ?」
 月彦自身、その違和感を感じながら、あえて聞く。真央は答えようと口を開くも、そのたびに嬌声が溢れ出て、まともに喋ることが出来ない。
「あぁっぁっぁぁっあッ、ら、めっ……あんっ! そんっ、なっ……いっぱいっ……奥、突いちゃっっらめっ、と……さまっ、わた、し……こわれ、ちゃうっ……こわれ、ちゃうよぉっっ……!」
「そうか……それは、困る……な」
 唐突に抽送を止める。真央の悲鳴に近い声が途絶え、はあはあと荒い息づかいだけが室内に木霊する。休憩――などではない、月彦は真央の腰に手を沿えたまま背後へと倒れ、真央に跨らせる形をとる。
「ンぁァァアッ! あぁぁあっぁっ……!!!!」
 幼い体躯には不釣り合いな肉柱に串刺しにされ、真央は仰け反りながら声を上げる。
 月彦は剛直の先端に真央の体重を感じながら、再び抽送を開始する。ベッドの弾みを利用し、真央の体を浮かせては落下に合わせて何度も突き上げる。最奥を小突かれ、真央はその都度舌を突きだして甲高い声で鳴いた。
「んっ……たまには、悪く、ない……かも、な……こういう、の、も……」
 快感に不慣れな体に翻弄される真央を見上げながら、月彦は愉悦の笑みを浮かべる。ひとしきりしたから突き上げ、真央が髪を振り乱して鳴くのをたっぷり堪能した後、再び月彦は体を起こし、背後から包み込むような形で抱き、突き上げる。
「ぁああんっ、ぁっはっ、はっ……んっ……あっふぁっ……ぁ……と、さま……おね、がい……もう、ゆる、し……ぁああぁぁあっ!!!」
 ぎゅうと真央を抱きしめ、突き上げながら耳の中を舐め上げる。きゅううううっ、と膣内が締まるのがたまらず、両方の耳が唾液でふやけるまで月彦はそれを繰り返した。
「っ……さすがに、限界だ……真央、出す、ぞ……」
「ぇっっぁっ……んっ、あっ、あぁぁああぁあぁあっあっッ!!!!」
 どくんっ!
 一向に量の衰えない白濁がたちまち真央の膣内に溢れ、限界まで腹部を圧迫した後結合部から汚らしい音を立てて漏れ出す。ごぽごぽと、止めどなく。
「はーっ…………はーっ…………………………ぁ……ぅ……と、さま…………すご、い……こん、な……いっぱい………………」
「……まだだ、真央」
 月彦の腕の中で満足げに呟き、中出しの余韻に浸っている真央の耳に、そっと月彦の唇が囁く。
「ほら……まだ、大きいままだろ?」
 ぐっ、と存在を誇張するように真央の最奥を押し上げる。
「ぁン…………そん、な……父さま、まだ……する気……なの?」
 怯えるような声。しかしどこか期待するようなそぶり。
「当たり前だろ……真狐のバカタレのせいで……ちょっとヤッたくらいじゃ眠れそうに、な――い――?」
 その違和感は、唐突に来た。えも知れぬ――そう、例えようのない感覚。
「っ……ぁ……からだ、が…………」
 訳も分からず、月彦は真央から離れてベッドから転げ落ちた。そのまま、己の体に何が起きたのかを理解する間もなく“変化”は進み、そして始まった時と同じように唐突に止まった。
「とう……さま?」
 不安げに真央が声をかける。そして、真央の眼が驚きに見開かれた。
「……真央、ひとつ聞きたいことがある」
 月彦は己の体を見下ろし、そして祈るような目で真央を見た。
「俺……ひょっとして縮んだ?」
「うん…………私より、縮んじゃってる…………」
 真狐が持ったものが何であったかは月彦には知る術もないが、どうやら個体差のようなものがあるものだったらしい。月彦は真央よりも遅く効果が現れ、そして真央よりも縮んだ……つまり、若返ってしまったらしい。
「ざっと小学校低学年……って所か。まいったな……」
 まあ真央の例を見るにそう長い間の事ではないだろうと思って別段不安は感じない。何より、真央の姿はもう殆ど普段のそれと同じくらいにまで戻りつつあるのだ。長くても一晩待てばいつも通りになるだろう、と月彦は楽観した。そう、文字通りそれは楽観だった。
「父さま……可愛い……」
 ぽつりと漏れた真央の呟きには、なにやら得体の知れない艶が含まれていた。否、それだけならば月彦の気のせいと言えなくもなかったのだろうが、意味深にぺろりと舌なめずりをされた瞬間、月彦の背筋には悪寒が走った。
「よせ、真央……何を考えてる……」
「父さま……まだ、するんだよね……?」
 真央は四つんばいのまま、猫のような仕草で月彦の方へと寄ってくる。本能的に危機を感じて、逃げようとした月彦の腕を真央がしっかりと掴んだ。
「は、離せっ……」
 月彦は力任せにふりほどこうとした。が、筋力もそうとう衰えているのか、普段は思いのままに組み敷ける真央の細腕がふりほどける気配すら無かった。
「くす……父さま、まだ大きいまんまだよ?…………真央が吸い出してあげる」
「ま、待て……こらっ、引っ張るな! そういう事は元に戻ってからっっ……ぅ、ぁ……」
 月彦は力任せにベッドへと引きずり込まれ、たちまち真央に組み敷かれた。自分を見下ろし、艶笑を浮かべながら舌なめずりをする真央を見上げながら、月彦は既視感を感じた。そしてすぐに思い出した。この状況は、あの“神隠し”の時と、さも似た――……。

「うぁぁっあっ……あっ、うっ……あっ……!!!」
 ただ、お粗末な声を上げることしか出来なかった。未発達の性器を舐められる感覚は快感と呼ぶにはあまりに刺激が強すぎ、真央の舌が這うたびに無様に全身を痙攣させてしまう始末だった。
「んんっ、ふ……父さま、凄く可愛い……もっと、してあげる、ね……んっ、んぷっ、ん……」
「ま、待て……真央、それ、ヤバッ……く、ぁ……!」
 抵抗はできない。しようとすればたちまち組み伏せられてしまう。今の月彦の腕力では両腕でも真央の片腕に敵わないのだ。
「あ、うっ、あうッ! あっ、くっ……う、ぁっ……うっっ!!!」
 びくんっ、と勝手に腰が撥ね、何か熱いものが迸った。いつものそれとはあまりに勝手が違う為、それが射精だとは判らなかった。
「んっんんっ……んっっく、んっ……は……いつもと、ちょっと、違う……」
 舌に精液を絡みつかせながら微笑み、口腔内にはき出されたそれを一滴残らず飲み干すと愛しげに剛直をなめ回す。悲しいことに、まだまだしぼむ気配がない。
「な、なぁ……真央、もう……いいだろ? 続きは、元に戻ってから……」
 普段の射精よりも強烈な脱力感。脳みその大半が痺れたような気怠さの中で、月彦は必死に“説得”を試みるが――
「ねえ……父さま……父さまが母さまとシたのって……中学生くらいの事だよね?」
「…………シたっつーか、襲われたっつーか……」
「じゃあ今真央とシたら……父さまの“初めて”は真央だよね?」
「いや、それは……」
 そういう問題なのか?――と考えるよりも先に、真央が跨ってくる。逃げる間もなく、剛直が――小学生の体のわりには妙に立派な――それが真央の中に飲み込まれていく。
「うわぁあああっああっ!」
 月彦の口から出たのは、紛れもない悲鳴だった。自分の体の一部が、未知の生物の口の中に飲み込まれたような感触。そのまま真央の両足でしっかりと体を固定され、身動きもとれない。
「んっ……父さまの“初めて”……もらっちゃった……」
「も、もらっちゃった……って……ま、待て……お前がやってることは、真狐と同じ――んんんっ!」
 問答無用でキス。両手で抱きすくめるようにされながら、たっぷりじっくり数分かけて舌を絡まされる。半ば強制的に。
「っは……これで、ファーストキスも私、だよね?」
「だ、だから真央……話を……っくぁ!」
 ぐいっ、と腰を動かされ、そこで月彦の言葉は中断してしまう。そのまま、ぐいっ、ぐいっぐりんっ、と真央が腰をくねらせ始める。
「んっ、んっ……ぁ……父さま……声も、感じてる顔も、すごく、可愛い……ぁぁぁ…………やっ……これ、くせに……なっちゃいそ…………んっ……!」
「く、癖って……っっっ……ま、真央っ……腰、止めっっ……くぅ……!」
 藻掻くも、腰の上にどっかりと座られ両足で体を固定されていてはどうしようもない。出来ることと言えばベッドのスプリングを利用して下から突き上げることくらいだが、今の敏感な体でそんなことをしたらうっかり気絶してしまうかもしれない。
「あっ、あっ、んっ……なんか……父さま、を……お……犯してる、みたい……あぁっぁぁっ……やっ……わた、し……すご、く……感じて、る…………あぁっぁ……」
 犯してるみたい、ではなくそのものズバリ犯しているのだが、当然月彦には突っ込む余裕などない。真央がぐりぐり腰を動かすたびに声変わり前の声で情けなく喘ぎ、意味のないもがきを繰り返すだけだった。
「く、あぁああっぁっっ、うっ、あっあっ……!!!」
 唐突にやってくる絶頂。がくんっ、と腰が撥ね、熱いものがほとばしり、真央の中へと注がれていく。
「んっ…………んっ………もう、イッたんだ………父さま……真央のナカ……そんなによかった?」
 問われても、月彦にはもう喋る余力も無かった。そのくせ股間だけは以前ギンギンなのだから始末に終えない。
「父さま……まだ、こんな…………いいよ……真央のナカで……いっぱ出して、ね……?」
 真央が再び腰を振り始める。結局、月彦の若返りの効果が切れた夜明け前までひたすら真央に搾り取られ続け、不本意ながらも月彦はそれまでの一晩の射精回数の記録を大幅に塗り替えるハメになったのだった。

 ――翌日。
 月彦は杖でもつかねば歩くのもままならぬ――という状態で学校へと出向き、一日の殆どを寝て過ごした。一方真央は――若さなのか何なのか、むしろ普段よりも元気なくらいでこの娘には男の精を吸いとる力でもあるんじゃないかと月彦は本気で疑ってしまった。
 にしても、まさか真央にああいった性癖があるとは思いもよなかった。さすが真狐の娘と言ってしまえばそれまでだが、ああいった行為にトラウマばっちりの月彦としては金輪際避けたいプレイ内容だった。
 とにもかくにも、真狐の策謀は終わった。朝方、葛葉が昨夜の残り物を弁当に積めているのを見た時はぎょっとしたが、さすがに学校でそんなものを食べてまた若返りでもしたら騒ぎは免れないと判断して昼食はパンですませることにした。ちなみに弁当の方はさすがに捨てるのは悪い気がして下校途中に見かけた野良猫にくれてやることにした。食べるなり野良猫はふうふうと発情したような声を出してふらふらと何処かへ消えてしまったから、ひょっとしたら近所の野良猫の数が多少増えたりしてしまうかもしれない。
 事を終えて帰路につく途中、道の向こうから知った顔が来るのに気がついた。由梨子だった。おそらくは真央を送った帰りなのだろう、声をかけようかとも思ったが、向こうがあくまで他人のフリを通そうとしているのを見て月彦も黙っていることにした。
「ただいまーっ……っと」
「おかえり、月彦。今日は早かったのね」
 ドアを閉めるなり、ぱたぱたとエプロン姿の葛葉が笑顔で出迎える。普段ならば台所か居間からおかえりなさいの声が帰ってくるだけでわざわざ出迎えたりはしないのだが、今日はことさら上機嫌らしい。理由は月彦にも分かっている。難しいことではない、見れば判る、という至極当たり前のことだ。
 月彦も朝見た時はさすがに度肝を抜かれた。葛葉もまた、若返っていた。だれがどう見ても二十歳前後に見えるくらいにまで。これはまずいと月彦は思ったものだが、当の本人は――
「今日ね、買い物に行ったら“奥さん今日はすごく若く見える”って褒められちゃった」
 なんてことを実の息子の前でノロケる具合だ。
「やっぱり山菜って美容にいいのかしら。これからもたくさん食べなくちゃ」
 しまいにはそんなことを言い出す始末だ。月彦は自分にも葛葉の脳天気な血が流れていることを少しばかり不安に思った。
「そういうわけだから、今夜も山菜鍋よ」
 なるほど、そうやって褒められていっぱい買い込んだわけかと、台所のテーブルの上に山のように積まれた食材を見て、月彦はため息をついた。
 真狐の盛った“若返り”が一体いつまで続くのかは判らない。真央はほんの数十分、自分は数時間とズレていたように、個体差があるのだろう。もしくは、持続時間は性行為と関係しているのかもしれない。何にせよ葛葉がこの調子では若返りが治っても取り乱すような事は無かろうと月彦は判断して二階の自室へと向かった。
「あっ、父さま……お帰りなさい」
 一足先に帰った真央が制服姿のままベッドに腰掛けていた。その手に握られているものを見て、月彦は些か眉を寄せてしまった。
「真央、それは?」
「うん……多分、若返るキノコだと思うの」
 真狐が差し入れたという食材の残りから見つけた、と真央は付け足した。なるほど、外見は松茸そのものだ。葛葉がたとえまともな感性の持ち主でもこれなら混入させてしまったに違いない。
「それで、なんで真央がそれを持ってるんだ?」
「…………父さま、お腹空いてない?」
 質問に質問で返すと――と月彦は言いたくなったが、やめた。
「空いてたら、どうするつもりなんだ?」
「これ、食べてくれないかなぁ……って」
 真央は上目遣いに、まるで“おねだり”するような仕草でそっとキノコを差し出す。
「昨日の父さま、すごく可愛かったから……」
「……から……何だ?」
「また……小さい父さまと…………」
「…………断る!」
 月彦はこれ以上ないという強い口調で拒絶した。
「どうしても……ダメ?」
「逆さに振ってもダメだ」
 しゅーんとあからさまに落胆のそぶりをみせる。しかし月彦は聞き逃さなかった。
「…………じゃあ、こっそり盛っちゃお」
 蚊の鳴くような声だったが、確かに聞こえた。今後しばらく真央経由で出される飲食物は全て拒絶しようと月彦は堅く心に決めた。
「全く……そんな事ばっかり言ってると、いつか真狐みたいになるぞ?」
 戒めのつもりで言った筈が、意外にも真央は笑顔を零した。
「私……母さまみたい?」
「いや……そういう意味じゃなくてだな……」
「私が母さまみたいになったら……父さまはもっと好きになってくれる?」
「……家から追い出すだろうな、間違いなく」
 リアルに想像して、月彦は冷静に答えた。
「そういや昨日も似たようなこと言ってたな。一体どうしたんだ? 前はそんな事言ってなかっただろ」
 問うと、真央は黙ってしまう。何かを言い足そうなそぶりはあるも、言えない……そんな顔だ。
「何度も言うようだけどな、真央は真央のままのほうが俺は一番好きだぞ。無理に真狐の真似なんてする必要はないし、そんなことしたって無意味だ。俺はあいつの事が大嫌いなんだからな。真央は俺に嫌われたいわけじゃないだろ?」
 諭すように言い、そっと頭を撫でる。
「じゃあ……どうして……」
「ん?」
「……なんでもない」
 ぷいとそっぽを向いて、真央は部屋から出て行ってしまう。後には真央が持っていた得体の知れないキノコだけが絨毯の上に転がっていた。


 真央は部屋を出た後、足早に霧亜の部屋へと入った。部屋の主は留守で、散らかった床を飛び越えてベッドの中に潜り込む。
「じゃあ……どうして寝言で母さまの名前を言うの…………」
 真央の呟きは、当然月彦に届く筈は無かった。

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