これは、平成2年度堺市教育委員会より研究委託を受け奨励金を授与され、
『邦楽楽器商報』一九九一・四月号より十二月号に連載、後に川向勝祥氏によ
り『邦楽大阪パンフ版』として広く配付されました。
 この一冊により、多くの邦楽教育へ同じ思いを持つ仲間と知り合い、孤軍奮
闘でない手応えを感じ、勇気を持って進んでくることが出来ました。
 ここに改めて、川向勝祥氏に感謝の意を表したいと思います。


・ 子 ど も と と も に 楽 し み な が ら
・ 子 ど も と と も に 楽 し み な が ら
 ・ 音 楽 の 喜 び
 ・ 音 楽 の 喜 び
・  音 楽 の 教 師 を 志 し て
・  音 楽 の 教 師 を 志 し て
・ 今 求 め ら れ て い る こ と
・ 今 求 め ら れ て い る こ と
・  お わ り に
・  お わ り に

音楽教育における和楽器の指導 
                
         堺市浜寺東小学校   尾 関  義 江
                
・  は じ め に     

 「子どもたちに日本のメロディを。ふるさとの調をふるさとの楽器で。」との願い
から、音楽クラブの活動に、「和楽器」を取り入れ始めて、十年余りになる。難 
しい理屈はぬきで、子どもとともに、楽しみながら活動してきた。
であるから、このたびの学習指導要領の改訂で、「伝統音楽の重視」「和楽 器
の取り扱い」「楽曲に応じた発声」などが明示されたときには、驚きと興奮を感
じずにはいられなかった。       
 全国の、邦楽を愛する人々の願いが、今、叶えられようとしているのである。
私は、邦楽や和楽器を、公教育の中で定着させていくことは、日本人としての
責務であると考える。          
 もちろん、邦楽が、これまでの西洋音楽大系による教育音楽に、全面的に取
って代るものでは、決してないと思われる。しかし、教育音楽が、邦楽につい
て、腰を据えて取り組んでいかねばならないときが、来ているのではないかと思
う。
・  新 指 導 要 領 の
       内 容 に つ い て の 考 察 
                 
 1、日本の伝統音楽の重視    
                 
 子どもたちに、日本古来の音楽の美しさや楽しさを味わわせ、我が国の文化
や伝統を愛する気持を育てていくことは、世界の中の日本人を育てるうえでも、
大切なことである。           
 このことについて、新学習指導要領においても、我が国の伝統音楽重視の方
向が、大きくうち出された。そして、内容の取り扱いとして次のようなことが示さ
れた。
○和楽器が、鑑賞領域のみに留まらず、表現領域においても取り扱うこと。
○発声の指導についても楽曲に応じて工夫すること。
○日本の古謡や、地方に伝承されているわらべうたなどを取り上げていくこと。

2、「日本の音」による表現活動の重要性       

 明治以降の、西洋音楽による音楽教育の功績が、大きなものであることは、
誰もが否定できない。コーラス、リコーダー、ブラスバンド、オーケストラなど、み
んな、すばらしい音である。
 しかし、我が国の音楽教育とは、子どもたちの教室から、これら西洋の音と同
じように、いろいろな和楽器の響きや、日本人固有の歌声が流れ出ることこそ、
本来の姿であると言えるのではないだろうか。
 音楽教育で「日本の音」を取り上げていこうとする動きは、戦後の数次にわた
る、学習指導要領の改訂のたびに、少しづつ邦楽曲を共通教材として指定した
ことに見ることができる。しかし、指導にあたる教師の、邦楽面における経験不
足から、表現領域における日本の音が登場することは、まず、なかったのでは
ないだろうか、  
 自国の音楽の尊重は、授業の大半を占める表現領域に「自国の生の音」を登
場させることによって、初めて具体化していけるのではないだろうか。それによ
って、鑑賞領域との関連も密になり、表現と鑑賞は表裏一体であるという考え
方も実証されるのではないかと考える。             
 「日本の音」それは「和楽器」であり、今、その活用をはかっていくことが、音
楽科の最も大きな課題ではないだろうか。     

3、和楽器の有用性                    
                
 ○情操教育、音楽の生活化、生涯音楽につながるものとして。和楽器は、高
齢者から幼児までが、現実に演奏しており、日本人の情操を高める生涯の楽器
として、用いられ続けていること。また日常生活や地域行事の中で長年にわた
って活躍してい る。     
                
 ○個性を生かす教育として。 
  生来、日本人は邦楽的感覚を持っているはずである。西洋音楽感覚と共
に、それを引き出し、伸ばしていくことは、音楽教育の基本課題である。 
                
 ○現代音楽の一翼を担う楽器として。          
  日本人作曲家も、世界の作曲界も和楽器や東洋の楽器に注目し、作品化し
ている。もはや、和楽器は、現代音楽にとって、なくてはならない存在である。
      
 ○創造的表現活動の素材として。
  音楽教育にとって新しいこの音素材は、子どもたちに潜在すると思われる、
邦楽的感覚によって、日本音楽の新しい世界をつくり出していくであろう。

 ○国際交流に、欠かせないものとして。
  自国の文化や伝統を理解することこそ、国際理解の出発点である。自らの
音や音楽を持つことは、国際人として必要なことである。

      (以上、音楽教育の邦楽分野充実のための趣意書より)

 私は、この十年間に、音楽クラブで「和楽器」を指導しながら、長唄を通して邦
楽を学んできた。
私は、そこで経験した様々な困難や失敗と、幼いころからの音楽体験から、「和
楽器」を「授業」にという、音楽教育の土俵にのせるために、どんなことが必要
なのかを考えてみたいと思う。そしてそれが、多くの先生方が「和楽器」や「邦
楽」に取り組むために、少しでも役に立てば、と思い、筆をとった次第である。
            
【内容】

・ 子 ど も と と も に 楽 し み な が ら
・ 子 ど も と と も に 楽 し み な が ら
 ・ 音 楽 の 喜 び
 ・ 音 楽 の 喜 び
・  音 楽 の 教 師 を 志 し て
・  音 楽 の 教 師 を 志 し て
・ 今 求 め ら れ て い る こ と
・ 今 求 め ら れ て い る こ と
・  お わ り に
・  お わ り に

       *『邦楽楽器商報』一九九一・四月号より十二月号に連載
 
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