【第1回】  お犬様天国フランス


 フランスのブルターニュ地方に住むようになって半年。生活には慣れてきたものの、今だにカルチャーショックを受けることはしばしばです。

 まずはフランスに来た初日。早くもフランスの洗礼を受けました。つまり、ふんを踏んだのです。パリの歩道には犬のふんがたくさんあると聞いてはいましたが、それはパリだけではありませんでした。フランスのどこを歩いても、ふん、ふん、ふん。その数から判断するに、犬の人口(犬口?)は相当なものと思われます。

 さてこのワンちゃんたち、集合住宅にも住んでいます。おそらく「犬お断り」のところなんて、ほとんどないでしょう。もちろん、うちのアパートもワンちゃんOK。ゴールデン・レトリーバーのような大型犬も暮らしています。集合住宅だけではありません。ショッピングセンターやレストランにも入れるし、電車やバスにも乗れるし、ホテルにだって泊まれます。こんな環境だから、飼い主が出かけるときは、いつだってワンちゃんも一緒。もちろん外出中、用足しもいたします。屋外であればどこででも。でも飼い主が後始末をすることは決してありません(きっと飼い主の仕事だとは思っていないのでしょう)。こんな住環境の良さに加えて、豊かな食生活と万全な医療体制が彼らの生活を益々快適なものにしています。スーパーには数えきれないほどのドッグ・フーズが並び、動物病院の多さは日本とは比べものになりません。そう、まさにフランスはお犬様天国。でもその反対に、犬の苦手な人や猫にとっては、暮らしにくい国かもしれませんね。

 ところで、ふんを拾わぬ飼い主のお行儀とは違って、ワンちゃんのお行儀はとても立派です。決して吠えたりしないし、レストランでは食べ物をねだったりもしません。ただひたすら、飼い主の長い長い食事(夕食なら2、3時間)が終るのを椅子の下でじっと待っているのです。うちの実家の犬もフランスに修行に出せば、少しはおりこうさんになってくれるかもしれません。

 ふんを踏んだあの日、私のことを指差して笑った夫も、その三ヵ月後にはちゃんと洗礼を受けました。わっはっは。フランスへお出かけの際は、くれぐれも足元にご注意を。

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