入門その頃のバス

ガイドウェイバス

ガイドウェイバス ガイドウェイバスは、バスに案内輪を付け、道路上ではバスとして、軌道(レールのない専用道)上では鉄道車両として、二つのモードで走行する交通システムです。
交通渋滞の多い都市部では独自の高架軌道を走り、郊外の住宅部ではドアツードアのきめ細かい運行ができます。
建設省が1973〜76年に実験運行を行ったデュアルモード・バス・システムが日本での始まりです。1985年には、より実用に向けた実験が行われ、1989年に九州の博覧会会場で無料運転、2001年に名古屋で実用化されました。
一方、1999年にトヨタ自動車が開発したIMTSは、よく似たモードではあるものの、磁気マーカーによる非接触の専用道走行システムで、隊列運行を可能としています。2004年に愛知県で開催された「愛・地球博」で実用化されています。

表9-8-1 モード区分
名称誘導方式専用道モード動力試験開始年実施主体
デュアルモード・バス・システムガイドウェイ自動運転電気1973年建設省ほか
ガイドウェイ・バスガイドウェイ有人運転ディーゼル1985年建設省ほか
西日本鉄道
名古屋GB
IMTS電波磁気自動運転(隊列)CNG1999年トヨタ自動車
備考

デュアルモード・バス・システム

建設省 デュアルモード・バス・システム(1973〜76年)
建設省、(財)国土開発技術研究センター、デュアルモード・バス・システム研究会では、1973〜76年に、一般道路ではワンマンバスとして、専用道ではガイドウェイにより完全自動運転する「デュアルモード・バス・システム(DMB)」を開発し、つくば研究学園都市で実験運転を行いました。
専用道でガイドウェイにより走る点は、後のガイドウェイバスと同じですが、動力が電気である点と、専用道で自動運転する点が異なります。
給電は、専用道では給電線から、一般道路ではバッテリーにより行います。
結果的に、後のガイドウェイバスにつながった実験ではありましたが、無人運転や電気動力については、すぐの実用化は見送られました。(注1)


デュアルモード・バス 021号車
DMB

参考:国土交通省Webサイト

1975年に製造された実験車で、全長8mというのは、マイクロバスと中型バスの中間程度の大きさです。乗車定員は立席込みで47人。
前輪に誘導装置を取り付けており、一般道路では車幅の中に格納します。
前ドアは一般道路専用、中ドアはステップ昇降装置付で一般道路・専用道兼用になっています。(注2)

全長・・・8,000mm
全幅・・・2,450mm
全高・・・2,985mm
軸距・・・3,700mm
出力・・・(架線)120kW/(電池)100kW
定員・・・47人

デュアルモード・バス 022号車
DMB

参考:電気車の科学Vol.29(1976)

実験車の2両目で、021号車より若干短くなっています。
前後の扉は一般道路用、中央の扉は専用道用です。
2両とも、原動機はサイリスタチョッパ制御による直流電動機駆動です。(注3)

全長・・・7,835mm
全幅・・・2,465mm
全高・・・3,020mm
軸距・・・3,600mm
出力・・・(架線)120kW/(電池)100kW
定員・・・49人

ガイドウェイバス

表9-8-2 ガイドウェイバス
所属形式製造年製造者バス型式備考
建設省001号車1984年三菱MP117M定員76人
建設省002号車1984年日野K-RT225A定員86人
西日本鉄道デュエット号1989年日野P-HU235BA車体:西日本車体
西日本鉄道デュエット号1989年三菱P-MP618M車体:西日本車体
名古屋ガイドウェイバスGB-1000形2001年三菱KL-MP35JM
名古屋ガイドウェイバスGB-1100形2001年三菱KL-MP35JMリフト付
名古屋ガイドウェイバスGB-2000形2001年日野KL-HU2PMEA
名古屋ガイドウェイバスGB-2100形2001年日野KL-HU2PMEAリフト付
名古屋ガイドウェイバスGB-2110形2013年日野HU8Jリフト付
備考建設省の001・002号車の製造年は、ガイドウェイバスへの改造年
建設省土木研究所 ガイドウェイバス(1985年)
001号車
ガイドウェイバス

画像:建設省土木研究所発行パンフレット(1985)

三菱 MP117M

建設省土木研究所と(社)日本交通計画協会では、1985年度から2年間、新しい都市交通システムとしてガイドウェイバス(GB)の実験を行いました。
通常の路線バスに案内装置を増設し、筑波研究学園都市にある実験施設で走行試験が行われました。
001号車は三菱の在来車に案内装置等の増設工事を行った車両で、案内装置の格納方式は「旋回式」。

ガイドウェイバス

画像:建設省資料(1986)

002号車
ガイドウェイバス

画像:建設省土木研究所発行パンフレット(1985)

日野 K-RT225A

002号車は日野のデモ車に案内装置等の増設工事を行った車両で、案内装置の格納方式は「伸縮式」。

ガイドウェイバス

画像:建設省資料(1986)

西日本鉄道 ガイドウェイバス(1989年)
西日本鉄道 デュエット号(1989年)
ガイドウェイバス

画像:西日本鉄道パンフレット(1989)

1989年のアジア太平洋博覧会(よかとピア)の会場で西日本鉄道により運行されたのが、営業用のガイドウェイバスの始まりです。この時に作られた車両は、日野P-HU235BAと三菱P-MP618Mの2両ずつ計4両で、車体は西日本車体製でした。会期終了後は案内装置をはずして一般車に改造されたそうです。

名古屋ガイドウェイバス(2001年〜)
名古屋ガイドウェイバス 試作車(事業用車)三菱KC-MP617M改
ガイドウェイバス

撮影:バス親父様(本社 2011.2.18)

名古屋ガイドウェイバスの初代の試作車には、日野車と三菱車があったそうですが、三菱車はその後、融雪剤散布車として使用されていました。
名古屋市交通局の基幹バス車両とそっくりな仕様です。

名古屋ガイドウェイバス GB-1000形 三菱KL-MP35JM(2001年製)
ガイドウェイバス

撮影:愛知県(2023.1.1)

名古屋ガイドウェイバスの初代車両。三菱と日野とが導入され、それぞれ通常車両(4枚折戸)とリフト付との両方がありました。写真の車両は、三菱の通常車両の廃車体です。

名古屋ガイドウェイバス 試作車(事業用車)(2012年製)
ガイドウェイバス

撮影:キュービック様(本社 2024.5.13)

名古屋ガイドウェイバスの第2世代車両の試作車として、2012年に日野ハイブリッドバスを改造した車両が登場、これをベースにGB-2110形が製造されています。
その後、融雪剤散布車に改造されました。

名古屋ガイドウェイバス GB-2110形 日野HU8J(2013年製)
ガイドウェイバス

撮影:小幡緑地駅(2023.2.17)

ガイドウェイバス

撮影:大曽根駅(2023.2.17)

名古屋ガイドウェイバスの第2世代車両。軌道区間を走るための案内輪を、一般道で車体下部に格納する機構のため、ノンステップバスをツーステップに改造して床を段上げしています。バリアフリー対応策では、中ドアに車いす用リフトを装備します。(注4)

IMTS

IMTS(Intelligent Multi-Mode Transit System)は、一般道と専用道とを直通運転する新交通システムで、一般道では通常のバスと同じ手動運転ですが、専用道では電波磁気誘導方式のバスシステムにより自動運転・隊列走行が可能です。
トヨタ自動車が開発した新世代交通システムで、2001年から兵庫県で、2005年に愛知県で実用化されていますが、いずれも施設内交通で、公共交通としての実用化はされていません。

トヨタ IMTS(1999年製)
IMTS

参考:バスラマVol.57(2000)

トヨタが1999年に発表した初代のIMTSは、日野の中型観光バス(レインボーRR)をベースとして試作された車両で、トヨタ自動車東富士研究所で3台が隊列運行の実験などに使用されました。
エンジンはCNGで、外観的には前面に大きなバンパーが取り付けられ、車間距離を保つための磁気センサーなどが取り付けられています。バンパーからは小型のタイヤも出ていますが、これはガイド輪ではなく、緊急用の緩衝機だそうです。
(バスラマVol.57(2000)P.28-31による)

トヨタ IMTS(2000年製)
IMTS

画像:トヨタ自動車公式ダウンロードページより

トヨタ自動車は2000年の東京モーターショーに、IMTS実験車を参考出品しました。
大型ノンステップバスがベースで、CNGエンジンを搭載しています。前面のスタイルは観光バスの日野セレガで、ナンバープレート位置にもセレガのロゴが見えます。

トヨタ IMTS(2001年製)
IMTS

画像:トヨタ自動車ほか発行パンフレット(2002年東京モーターショー)

トヨタIMTSの最初の実用車は、兵庫県の「淡路ファームパーク・イングランドの丘」の施設内交通に導入されました。
路面に埋め込まれた磁気マーカーに沿って、2両ずつ2組が最高時速30km/hで、完全自動運転での隊列運行を行います。
車両は小型CNGバス(日野リエッセ)をベースにしています。
2001年から2008年まで使用されました。

トヨタ IMTS-00形(2004年製)
IMTS

撮影:トヨタ博物館(2007.3.25)

2004年に愛知県で開催された「愛・地球博」で、会場内のアクセス交通として、トヨタIMTSが営業運転しました。
初めて手動運転区間(道路)と自動運転区間(専用道路)とを直通運転する本来のコンセプトが実現しています。専用道路には中央に磁気マーカーが埋め込まれ、2〜3台での隊列運行が可能です。
車両は大型ノンステップバス(日野HU)をCNG改造し、“発芽”をテーマにしたというオリジナルボディを架装しています。
写真は、トヨタ博物館に保存されているIMTS-07号。

IMTS

画像:トヨタ自動車パンフレット(2004)

主な参考文献
  1. 山口隆康・波多野康男(1976)「デュアルモード・バス・システム」(電気車の科学29)P15-18
  2. 建設省土木研究所 新交通研究室(1979)「デュアルモード・バス・システムの開発(その2)」
  3. バスラマ編集部(2000)「トヨタの新世代交通システム、IMTSに乗る」(バスラマ57)P28-31
  4. バスラマ編集部(2001)「名古屋ガイドウェイバスが運行開始」(バスラマ65)P12-18
  5. バスラマ編集部(2001)「トヨタIMTS 淡路島で実用運行を開始」(バスラマ68)P12-15
  6. バスラマ編集部(2005)「愛・地球博のバス達」(バスラマ89)P9-11
  7. バスラマ編集部(2021)「名古屋ガイドウェイバス株式会社」(バスラマ188)P43-51
(注1)
建設省土木研究所(1979)によると、この研究開発は、民間からは新日本製鉄、日産自動車、石川島播磨重工業、東洋工業、松下通信工業、東京芝浦電気の6社が加わって行われた。昭和49年度〜51年度にガイドウェイ建設、実験車製作、無人走行実験等を実施、昭和52年度は障害物検知試験と小旋回半径走行試験を実施、昭和53年度は総合走行試験等を実施した。
(注2)
この事業で試作された車両の製造者は不明。上記のとおり、研究会には日産自動車と東洋工業の2自動車メーカーが参加している。2両を共同で製作したか、分担して製作したかも不明。
なお、ポルト出版(2010)「西工の軌跡」P.56に、中型バスサイズのガイドウェイバスを、東洋工業の設計で西工が試作車を製作したとの記述がある。
(注3)
建設省土木研究所(1979)によると、昭和52年度の障害物検知試験に向けて031号車が追加されているが、これは日産ディーゼルのトラックがベースであり、旅客車ではない。
(注4)
バス親父様(掲示板2024.7.20)によると、GB-2100形は、ベース車の型式はLJG-HU8JLGですが、シャーシ、ボディとも変更点が多く、試作車扱いでHU8Jという型式になるそうです。
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