入門その頃のバス

ダイハツ工業(小型バス)

ボディ+シャーシ ダイハツ工業は内燃機関の製造から始まり、三輪トラックをはじめとした小型トラックの製造で知られます。「ダイハツ」の語源は、大阪の発動機製造の略称です。
戦後も軽の三輪トラック「ミゼット」や小型4輪トラック「ベスタ」などを世に送り出します。小型トラックでは初めて後輪にダブルタイヤを採用しています。小型バスについては「ベスタ」をベースにした14人乗り程度からのスタートというところは、ほかのメーカーと同じ足取りです。しかし、1962年に、クラス初の25人乗りでリアエンジンの小型バスを発表するなど、先進的な展開を見せています。その後、1967年にトヨタと提携し、系列内での住み分けのためか1972年頃には小型バス市場からは撤退しています。

表7-2 ダイハツ小型バスの系譜

系譜

ダイハツ マイクロバス 1959 - 1962 ・ 1967 - 1972

ダイハツ工業の小型バスは、2tトラックの「ベスタ」をベースにしたセミキャブのマイクロバスが最初になるようです。黎明期のマイクロバスの例にもれず、ルートバンタイプの14人乗りサイズの車両でした。
そして他のメーカー同様に大きめのバスボディを持った「ライトバス」へと進化をするのですが、14人乗りサイズについても1967年頃から再びカタログに載るようになり、しばらくの間生産されます。

表7-2-1 ダイハツ・マイクロバス
年式19591959-19621967-19701970-1972
原動機型式
(出力)
GOB
(53PS)
FA
(68PS)
FA
(68PS→70PS)
FA
(70PS)
軸距2500mmSV151N
2700mmFPODV200N
2750mmSV16N
備考  
ダイハツ 14人乗りライトバス DV200N
ダイハツDV200N

画像:ダイハツ工業公式カタログ(1960年発行)

2tトラックの「ベスタ」をベースにしたセミキャブのマイクロバス。当初は「ベスタ・マイクロバス」と名乗っていましたが、1960年のカタログでは「14人乗りライトバス」となっています。

ベース車・・・2tトラック「ベスタ」
車長・・・4,690mm
車幅・・・1,685mm
乗車定員・・・14人
総排気量・・・1,490cc
ボディの組み合わせ・・・

ダイハツ V100マイクロバス SV151N
ダイハツV100

撮影:終点北藤根様(宮古市 2013.4.29)

ダイハツの1.25tトラックV100をベースにしたマイクロバス。5ナンバーの小型車サイズで14人乗りというところが売り物。このサイズは「マイクロバス」と呼ばれます。
ベース車のマイナーチェンジに合わせて、1969年に前照灯4灯になりました。
1970年にベース車が「デルタ」にモデルチェンジされたのを受け、1.5tのガソリンエンジン車をベースにしたSV16Nにモデルチェンジされました。

ベース車・・・1.25tトラック「V100」
車長・・・4,640mm
車幅・・・1,690mm
乗車定員・・・14人
総排気量・・・1,490cc
ボディの組み合わせ・・・

ダイハツ SV型ライトバス 1965 - 1972

ダイハツ工業では、1960年頃から大きめのサイズの「ライトバス」の生産を始めていましたが、小型バスの標準サイズにもなる22〜25人乗りクラスのSV型「ライトバス」が1965年から生産され、ダイハツの小型バスでは代表的車種となりました。
しかし、1967年にトヨタ自動車と業務提携が開始され、トヨタ「コースター」と市場が重複するため、ダイハツとしての小型バス生産は1972年頃に終了しています。

表7-2-2 ダイハツSV型ライトバス
年式1965-19691969-1972
原動機型式
(出力)
DE
(63PS)
FB
(85PS)
FD
(95PS)
DG
(80PS)
FB
(85PS)
軸距2750mmSV22NSV20NSV30NSV32N
3200mmSV27NSV25NSV35NSV37NSV25N
備考  

ダイハツ SV型ライトバス SV35N
ダイハツライトバス

撮影:能勢町(2015.12.31)

このSV20/30系列は1965年から作られた小型バス。ボディは川崎航空機製で、ガラス枠のない側面窓で車内の採光を向上させたのが特徴。フロントグリルは、凸形の独特の形状です。SV35Nはダブルタイヤです。

ダイハツ SV型ライトバス SV25N
ダイハツライトバス

撮影:BMS様(宮城県 2021.4.9)

1969年のマイナーチェンジで、フロントグリルの中央にDマークが入りました。
色々な形があったダイハツ製の小型バスの中で、このタイプが最終形となりました。

ベース車・・・2tトラック「D200」
車長・・・5,460mm、6,100mm
車幅・・・1,910mm
乗車定員・・・22、25人
総排気量・・・1,861cc、2,433cc
ボディの組み合わせ・・・川崎

ダイハツ DV型ライトバス 1960 - 1969

ダイハツ工業では、1960年頃から大きめのサイズの「ライトバス」と呼ばれる車両の生産を始めます。ベース車は相変わらず2tトラックのDV型「ベスタ」になるようです。初期にはベース車に近いセミキャブ型で生産を始めますが、この時期の小型バスにしては大きな車体でた。
これらは、独自の市場を形成する小型バスであったと思われますが、「SV型ライトバス」登場後、主軸はそちらに移り、こちらは1969年には生産終了しているようです。
特装車という形から始まったせいか、梁瀬自動車や尾張車体などで車体が架装されているようですが、詳細は不明です(注1)


表7-2-3 ダイハツDV型ライトバス
年式1960-19621962-19641965-1969
原動機型式
(出力)
FA
(68PS)
FB
(85PS)
FD
(95PS)
軸距3000mmDV201N
3200mmDV30N
3350mmDV200N
備考DV200N(WB3350mm)はセミキャブ。  

ダイハツ ライトバス DV200N
DV200N

画像:ダイハツ工業公式カタログ(1960年発行)

2tトラック「ベスタ」をベースとしたバスは、当初は定員21人のセミキャブ型「ライトバス」DV200Nが作られます。全長5.5m、全高2.4m、全幅2mクラスで、この時期の小型バスにしては大きな車体で、後輪ダブルタイヤという仕様でした。

ベース車・・・2tトラック「V200」
車長・・・5,500mm
車幅・・・1,980mm
乗車定員・・・21人
総排気量・・・1,490cc
ボディの組み合わせ・・・

ダイハツ ライトバス DV201N
DV201N

画像:ダイハツ工業公式カタログ(1962年発行)

1962年には完全に箱型のDV201Nに進化し、全幅2m級のバスらしいボディになりました。

ベース車・・・2tトラック「V200」
車長・・・5,440mm
車幅・・・1,990mm
乗車定員・・・21人
総排気量・・・1,861cc
ボディの組み合わせ・・・

ダイハツ ライトバス DV30N
ダイハツライトバス

画像:ダイハツ工業公式カタログ(1966年発行)

1965年頃からは、定員29人という大きなサイズのDV30Nに移行します。
カタログモデルは、側面のバッジからヤナセ車体です。

ベース車・・・2tトラック「V200」
車長・・・6,100mm
車幅・・・2,270mm
乗車定員・・・25、29人
総排気量・・・2,433cc
ボディの組み合わせ・・・ヤナセ、尾張車体ほか

ダイハツ DV型ライトバス
ダイハツライトバス

撮影:富士河口湖町(2013.7.27)

小型トラックをベースにしている小型バスは、元々特装車という位置づけが強いせいか、このダイハツ製では、梁瀬自動車製や尾張車体製がありました。
写真の車両は、後面にも扉があるため特装車だと思われますが、詳細は不明。DV30N型に近いスタイルの小型バスです。

ダイハツ NR型ライトバス 1962 - 1963

ダイハツ工業では、1962年に、小型バスとしては当時最大クラスである25人乗りで、かつ前ドア設置を可能としたリアエンジンの「ライトバス」を発表します。外観も大型バスをそのまま小型化したようなスタイルで、小型バスの分野に新風を吹き込みました。
しかし、このクラスの市場が十分に熟成していなかったこともあり、製造は短期間で終了しているようです。


表7-2-4 ダイハツNR型ライトバス
年式19621963
原動機型式
(出力)
FB
(85PS)
FB
(85PS)
軸距2850mmNR250
3060mmNR251
備考  

ダイハツ ライトバス NR250
ダイハツライトバス

画像:モーターファン(1962.7)表紙

ダイハツ ライトバス NR250(1962年製)
ダイハツライトバス

画像:モーターファン(1962.7)P.109

ダイハツでは、1962年にクラス初の25人乗りリアエンジンバスNR250を試作、1962年4月の「第5回大阪国際見本市」で発表の後、発売されました。
他のライトバスと同じFB型ガソリンエンジンを搭載しますが、全長6.3m、全高2.4mの大柄なボディの後部をエンジンルームとし、前ドア設置を可能としたもの。後輪はダブルタイヤです。(注2)

ダイハツ ライトバス NR251
ダイハツライトバス

撮影:兵庫県(2015.12.31)

ダイハツ ライトバス NR251
ダイハツライトバス

撮影:兵庫県(2015.12.31)

1963年にはマイナーチェンジによりNR251となっています。
ボディメーカーも不明ですが、ヒサシを持つ前後同一プレスのボディは、この時代にしてはスマートなスタイルです。貸切バスや路線バスなど、使い方は多かったはずですが、登場した時代が早すぎたのか、数はあまり出ていないようです。

車長・・・6,280mm
車幅・・・1,995mm
乗車定員・・・25人
総排気量・・・1,861cc
ボディの組み合わせ・・・

電気マイクロバス

電気マイクロバス
ダイハツ電気マイクロバス

画像:ダイハツ工業公式カタログ(1977年発行)

電気自動車の開発では1965年からの歴史を持つダイハツですが、1971年より通産省大型プロジェクトによるEV研究開発に参画し、1974年には15人乗りの「EVマイクロバス」を開発し、長田野工業団地に納入しているとのことです(注3)
画像は、1977年発行のパンフレットに掲載されている「電気マイクロバス」の写真。上記の「EVマイクロバス」と同一車両なのかどうかは不明。

輸出用バス

国内用の小型バス生産から撤退したダイハツは、輸出用に特化して生産を続けていたようです。

表7-2-5 ダイハツV型ライトバス(輸出用)
年式1978-
原動機型式
(出力)
DG
(75PS)
B
(85PS)
5R
(95PS)
軸距3285mmV12-BV22-BV32-B
備考輸出用(原動機型式は、2tトラックデルタのデータを参考に記載)  

ライトバス
輸出用ライトバス

画像:ダイハツ工業公式カタログ

1978年から、2tトラックシャーシに日野車体工業でボディを架装した26人乗りの小型バスを輸出用に生産しています。ボディスタイルは日野の小型バスAMと似たスタイルになっています。 全長は6mクラスで、ディーゼルエンジン2種、ガソリンエンジン1種の3種の出力があります(注4)
また、デルタをベースに、荒川車体でボディを架装した15人乗りのライトバスもありました。全長は4.7mで、これもガソリンエンジンとディーゼルエンジンの2種がありました。(注5)
その後は日野ABと似たボディにモデルチェンジし、「デルタ・ライトバス」の名で輸出されていたようです(注6)

商品名の由来

・ベスタ(vesta)・・・「火の女神」。「発動機」の意味もあった。
・DV・・・「ダイハツ・ベスタ」の略。
(小関和夫「日本のトラック・バス」より)

ダイハツ工業の系譜
  • 1907(明治40)年 内燃機関の製造・販売のため発動機製造設立
  • 1930(昭和5)年 ダイハツ1号車(三輪自動車)発売
  • 1951(昭和26)年 ダイハツ工業と改称
  • 1967(昭和42)年 トヨタ自動車工業、トヨタ自動車販売と業務提携

(注1)
ポルト出版(2010)「西工の軌跡」P.55に、西日本車体では1962年にダイハツDV200N型ライトバスの試作を行ったとある。それがどのような車両なのかは不明。
(注2)
「モーターファンVol.16-No.8」(1962年7月号)P.108-109によると、1962年発売分はWBが2850mmとなっている。
車史研(1987)「1960年代のバス」P.210には、1963年式の写真と図面が掲載されており、図面のWBは2,850mmになっている。
一方、ダイハツ工業(1967)「六十年史」資料P.28によると、1963年発売分はNR251であり、WBは3060mmとなっている。
(注3) ダイハツ工業公式サイトによる。
(注4) 広瀬清一(2002)「私の知っているバス達」(金沢ボデーのアルバム)P.19-20、及び二玄社(1981)「世界のバス'81-'82」P.26に記載がある。
(注5) 二玄社(1981)「世界のバス'81-'82」 P.50
(注6) 九段書房(1985)「日本のバス1986」P.18
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