入門その頃のバス

いすゞ自動車(観光バス)

シャーシ いすゞの貸切・高速タイプの車両の歴史は、BUの量産に先立って製作された国鉄の高速バス共同実験用の試作車BU20PA(1962年)に始まり、軽合金ボディを持つ高速バス専用車BU30P(1963年〜)を経て、BH(1969年〜)、CRA/CSAへとつながります。
貸切バスには、当初はBUの高出力バージョンを投入することが多かったようですが、CRA/CSAの登場により、路線バス系とは分化しています。
1980年代に「スーパークルーザー」、1990年代に「ガーラ」を登場させ、現在に続きます。


表5-1 いすゞ観光バスの系譜

系譜

いすゞBH 1969−1975

表5-1-1 いすゞBH
年式19691969-19721973-1975
原動機型式
(出力)
V170
(330PS)
V170
(300PS)
8MA1
(315PS)
軸距5600mm  BH21P
5650mm BH20P 
6400mmBH50P  
備考 
宮城交通 いすゞBH20P(1970年式)
BH20P

撮影:阿武隈様(1978)

宮城交通 いすゞBH20P(1970年式)
BH20P

撮影:阿武隈様(1978)

1969年の東名高速道路全通を前に、300psを超えるVエンジン搭載の高出力バスとして作られたのがBH50Pです。引き続き、普及型としてBH20Pの生産が開始されました。これらは川崎丸型(オバQ)ボディを標準とし、国鉄の高速バスだけでなく一般の貸切バスとしても導入されました。後面の通気孔配置に特徴があります。
1973年に直噴エンジンにモデルチェンジを図り、BH21Pに変わりました。同時のボディは角張った73SCになりました。

ボディの組み合わせ・・・川崎、富士

宮城交通 いすゞBH20P(1970年式)
BH20P

撮影:阿武隈様(1978)

宮城交通 いすゞBH20P(1970年式)
BH20P

撮影:仙台市(1977.8.7)

いすゞCRA/CSA 1975−1984

表5-1-2 いすゞCRA/CSA
年式1975-19791979-1984
原動機型式
(出力)
10PA1
(295PS)
10PA1
(295PS)
10PB1
(320PS)
軸距5800mmCRA580K-CRA580K-CSA580
6500mmCRA650K-CRA650K-CSA650
備考 
十和田観光電鉄 いすゞCRA580(1976年式)
CRA580

撮影:盛岡駅(1986.7.28)

岩手県交通 いすゞCRA650(1978年式)
CRA650

撮影:毛越寺(1986.9.24)

それまで貸切バスにはBUの高出力タイプが多く用いられていましたが、汎用観光タイプとしてV型10気筒直噴エンジンを搭載して登場したのがCRAです。2種類の車長が用意されており、型式の数字部分はホイールベースをcmで表した数字です。環境対策から後面のエンジン通気孔はなくなりました。「ニューパワーV10」のロゴが前後に付けられている場合もあります。
標準ボディの川重では、1976年にハイデッカーⅠ型、1977年にハイデッカーⅡ型を発表するなど、ハイデッカー化が進んだのもこの時期です。

秋北バス いすゞK-CSA580(1982年式)
CSA580

撮影:県北バス盛岡営業所(1986.4.4)

十和田観光電鉄 いすゞK-CSA650(1984年式)
八戸22か43

撮影:盛岡駅(1986.5.25)

昭和54年排ガス規制に対応してマイナーチェンジが行われ、型式にK-が付くと同時に、300psを超える高出力タイプのCSAが追加されます。CRAは「V10S」、CSAは「V10SS」のマークが付きます。
貸切バスのボディスタイルの多様化に追随し、川重では1980年にハイデッカーⅢ型ハイデッカーⅣ型を追加しています。

ボディの組み合わせ・・・川崎、富士、西工

V10ロゴ
いすゞCRA/CSALV219には、V10エンジンを示すロゴマークがあり、車体の前部または後部に取り付けられていました。
このマークの形状によって、製造時期がわかります。

いすゞCRA
V10

初期のCRAは「V10」と表記されており、売り物の「ニューパワー」の文字が小さく入っています。



いすゞK-CRA/CSA
V10SV10SS

1980年以降のK-CRAは「V10S」、K-CSAは「V10SS」と表記されるようです。
なお、このロゴマークは、リアに表記される場合もあります。



いすゞLV
V10SS

1985年から観光バスもモデルチェンジされLVに移行しますが、ロゴの「V10SS」は表記はそのままで、SSの部分の色が緑色に変わりました。



いすゞLV 1985−

表5-1-3 いすゞLV
年式1985-19871987-19901991-1995
原動機型式
(出力)
10PC1-N
(295PS)
10PC1
(330PS)
10PC1-N
(295PS)
10PC1-S
(330PS)
10PD1
(305PS)
10PD1
(355PS)
軸距5450mm  P-LV719NP-LV719NU-LV771NU-LV771N
5800mmP-LV219QNP-LV219Q    
6150mm  P-LV719RP-LV719R(※)U-LV771RU-LV771R
6500mmP-LV219SNP-LV219S    
備考(※)P-LV719R(スーパーハイデッカー)は1986年から
いすゞLV219 1985−1987
山梨交通 いすゞP-LV219S(1986年式)
LV219S

撮影:岡谷駅(1987.7.1)

日本国有鉄道 いすゞP-LV219Q(1984年式)
LV219Q

撮影:盛岡支所(1985.5.21)

昭和58年排ガス規制に対応して、観光タイプも路線バスに続いてLVに変わりました。しかし、架装されるボディはこれまでと変わりなく、モノコックボディも架装されます。ハイデッカーⅤ型などでは折り戸の窓が角型に変わったほか、富士重工ボディではリベットレスになっており、これらの場合は車体で見分けることも出来ます。
外観的には、路線バスのLVと同様、右側面後部のエンジン通気孔がなくなった点が、CRA/CSAとの相違点です。

いすゞLV719 スーパークルーザー 1986−1990
JRバス東北 いすゞP-LV719R(1988年式)
LV719R

撮影:盛岡支所(1988.7.21)

JRバス東北 いすゞP-LV719R(1988年式)
LV719R

撮影:盛岡支所(1988.7.21)

他メーカーがダブルデッカーを発売していた中、いすゞは無関心を決め込んできましたが、1986年に2軸スーパーハイデッカーのスーパークルーザーを発売しました。軸重バランスを変えたため、フロントオーバーハングが長くなっています。標準車体のIKコーチはこれを機にモデルチェンジを行いました。
1987年にはハイデッカーも同型式に移行し、IKコーチのボディはスーパークルーザーに統一されました。
1989年には国産初のアンダーフロアコックピットタイプ(スーパークルーザーUFC)を開発しました。いずれのグレードも、富士重工での架装も見られます。
平成元年排ガス規制に対応して、1990年にU-LV771へ発展しています。

ボディの組み合わせ・・・川崎、富士、西工

いすゞの型式の付け方
BXからBUまで

例:BA741P
 終戦後から1970年代にかけてのいすゞの型式には、Bで始まるものが多く見られますが、これらはバス(Bus)の頭文字をとったものと思われます。BXと並行してTXというトラックが生産されていたことからも明白です。
 その後のいすゞのバスは、BA,BB,BC,BE,BF,BH,BK,BL,BR,BUとBを頭文字に使ったものが続きます。2文字目の意味は不明ですが、BUのUはアンダーフロアーエンジン(Under floor engine)の頭文字だと想像できます。
 数字部分は、2桁→3桁→2桁と変わり、3桁時代は、100の位がバージョンを示し(マイナーチェンジごとに1→3→5→7と変化)、10の位が長さを示し(ホイールベースのメートル部分に近い数字ですが、詳細は不明)ているようです。1の位は1をつけるのが基本ですが、同じホイールベースで中ドア専用などのバリエーションが増えると、3がついたりしています(例:BA743)。
 BU登場後に再び2桁数字になりますが、これは各系列の中での相対的な長さを表していたようです。(BA30BU30Pは各系列の中での長尺車であって、同じ長さではない)
 その他の記号としては、末尾にボディメーカーを示す記号(BXではX,V,N、BAではA,B,C,D)がついた時期があるほか、エアサスがP(pneumaticの頭文字)、ナロー車がN(narrow)、直噴エンジンがD(direct)という具合に識別記号があります。

CRAからCQMまで

例:CJM470
 1975年のCRA以降、3文字の記号と3桁の数字による型式となります。
 1文字目は、ほとんどがCですが、小型バスにD、大型9mにEがあります。意味は不明です。2文字目はエンジンを示す記号で、出力の小さい順になっているようです。中型のCCMと大型9mのECMはエンジンが同じなので、この部分の記号は同じです。3文字目は、リーフサスだとM、エアサスだとAになるようです。
 数字部分は長さを表し、ホイールベースをcm単位にした数字です。

LV

例:LV318M
 1984年からLVなど、2文字の記号と3桁の数字と1文字の記号を基本にした型式となります。
 2文字の記号にはLV,LT,LR,MRなどがありますが、意味があるのかどうかは分かりません。
 数字は、100の位は3がリーフサス、2がエアサスを示しますが、小型バスの1と前輪独立懸架の7などもあり、一定のルールは分かりません。10の位はバージョンを示すようで、路線バスLVなどでは1→2→3と進んでいますが、すべてには当てはまりません。1の位はエンジン出力を表すようですが、これもルールは分かりません。
 末尾の記号は長さを表し、D,F,J,K,L,M,N,Q,R,Sなどが相対的な長さを表します。

(注1)
いすゞCRA/CSAについては、ぽると出版(2008)「バスのカタログ17・18 いすゞCRA/CSAシリーズ」(バスラマ109号〜110号連載)の中で詳しく記載されています。
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