入門その頃のバス

キャブオーバーバス

シャーシ キャブオーバーエンジンバス(COE)は、車体前部にエンジンを置いた箱型バスで、つまり、エンジンの上に運転台があることからこう呼ばれます。外観的には車体正面にグリルがあるのが特徴、車内には運転席横にエンジンの張り出しがあるのが特徴です。
戦後の乗客増に対応するため、ボンネットバスと共通のシャーシに箱型バスを乗せたものが主で、当初はボンネットバスからの改造車も多く見られました。しかし、箱型バスの主流がリアエンジンバスになる中で、キャブオーバーバスは9m以下の中型サイズの市場を埋めるにとどまり、またキャブオーバー専用シャーシも一部のメーカーのみに終わりました。
ここでは、1950年代後半以降の主要な車種のみを紹介します。なお、日野、三菱にはキャブオーバーバスのモデルはありませんでした。

車形タイプ

キャブオーバーバスの車内の一例です。運転席の横にエンジンの大きなカバーがあるのが特徴です。ボンネットバスの場合はこの部分がボンネットになり、車内として活用できませんが、箱型ボディにするとここに運転席や客席を設置でき、収容力が増加します。

キャブオーバーエンジンバス車内
BXD30E

撮影:板橋不二男様(高田営業所 1976)

いすゞ自動車

表8-3-1 いすゞキャブオーバーバス
年式1949-195519621962-19651965-1970
原動機型式
(出力)
DA43
(85PS)
DA640
(130PS)
DA640
(130PS)
DA640
(130PS)
軸距4000mm BX721EBXD20EBF20
4300mmBX92BX731EBXD30E 
4400mm   BF30
備考緑文字=中ドア専用シャーシ
いすゞBX92 1949−1955
いすゞBX92
BX92

画像:いすゞ自動車公式カタログ(1959)

いすゞのキャブオーバーバスは、終戦後の1949年に発売されたBX92が最初です。これはボンネットバスのBX91をベースに日本自動車などで流線形の箱型ボディを架装したものです。COE専用車型であるため、フロントからのエンジン引き出し構造やコラムシフトの導入などの工夫が見られます。
(画像のボディは日本自動車製)

いすゞBX/BXD 1962−1965
秋田市交通局 いすゞBX731E
BX731E

撮影:板橋不二男様(中央営業所 1973)

1962年からは、ボンネットバスBX721/731をベースにしたCOEを発売、型式末尾にEのつくのがCOEです。
写真は北村製作所製ボディで、COEでしか見られない正面窓が傾斜した独特のスタイルです。

岩手県交通 いすゞBXD30E(1963年式)
BXD30E

撮影:板橋不二男様(高田営業所 1976.6.7)

ボンネットバス同様に、1962年から型式をBXDに変えますが、実質的には同じ型式です。
こちらは川崎航空機製ボディで、同時期のリアエンジンバスと共通性のあるスタイルです。

吉野大峯ケーブル自動車 いすゞBXD20E(1964年式)
BXD20E

撮影:BA10-2407291様(奈良県 1994.3)

こちらは短尺のBXD20Eで、安全車体製。
側窓の形状などに安全車体製ボンネットバスとの共通点が見られます。

いすゞBF 1965−1970
自家用 いすゞBF20(1966年式)
BF20

撮影:BA10-2407291様(千葉県 1987)

1965年には、特装車シャーシと統合の上、BFを発売しています。
前照灯は4灯になりました。
写真は北村ボディ。

林田産業交通 いすゞBF30(1966年式)
BF30

撮影:板橋不二男様(霧島西口駅 1977頃)

こちらは川崎ボディ。
これまでのCOEはボンネットバスがベースだったため、前輪が内側に寄っていますが、BFは通常幅になっています。

いすゞBD 1971 -
自家用 いすゞBD40(1974年式)
BD40

撮影:BA10-2407291様(平塚市役所 1986)

BFの後継として、TD系8tトラックをベースにしたBDが設定されており、特装車を中心に使用されています。
車両サイズも大きくなり、エンジンはリアエンジンバスBUと同じDH100です。
写真は東京特殊車体の架装。

トヨタ自動車

表8-3-2 トヨタFB/DB
 
年式1960-19611961-19641965-1970
原動機型式
(出力)
F
(125PS)
2D
(130PS)
F
(130PS)
2D
(130PS)
F
(130PS)
2D
(130PS)
軸距3400mmFC80     
4370mmFB80CDB90CFB80CDB90CFB100CDB100C
4800mm     DB102C
4900mm DB92C DB92C  
5170mm DB95C DB95C DB105C
備考緑文字=中ドア専用シャーシ


トヨタFC 1960−1961
吉野大峰ケーブル自動車 トヨタFC80(1961年式)
FC80

撮影:板橋不二男様(奈良県 1975頃)

1960〜61年の間に製造されたというトヨタのキャブオーバーバスFC80。ボンネットバスと共通シャーシの多いトヨタのCOEにおいて、ボンネットバスには見られない型式ですが、トラックとの共通性はあるようです。
4灯のフロントグリルは、丸みのあるボンネットバスのグリルと共通のイメージです。
写真の車両は尾張車体製のボディ。

トヨタFB/DB 1960−1970
上信電気鉄道 トヨタDB90C
DB90C

撮影:ヒツジさん様(上野村 2004.6.12)

トヨタではボンネットバスのFB/DBのアレンジで、型式末尾にCをつけたキャブオーバーバスを生産しています。
写真は前照灯2灯の初期車で、車体は富士重工製。

自家用 トヨタDB100C
DB100C

撮影:53様(大槌町 1985.8)

1964年に前照灯4灯になりました。ボンネットバスやリアエンジンバスと同じ変化です。また、正面のグリルの形状は同時期のボンネットバスと共通しています。
写真は北村製作所製ボディ。

ボディの組み合わせ・・・富士、金産、北村、西工ほか

日産自動車

表8-3-3 日産キャブスター
年式1956-1958195819591959-19641965-1971
原動機型式
(出力)
NC
(105PS)
NC
(105PS)
NC
(105PS)
KE25
(110PS)
P
(125PS)
P
(130PS)
軸距4300mmE590E591E592ME592E690E690
備考 


日産E590(1957年製)
E590

画像:所蔵写真(1957)

日産自動車では、ボンネットバスとは別にキャブオーバー専用シャーシを設定、「キャブスター」という愛称をつけて販売しました。乗用車と同様にレディーメイドで低価格販売をするというコンセプトで、自家用バスとしての導入が主だったようです。
当初の標準ボディは、新日国ボディ(→日産車体)でした。

ボディの組み合わせ・・・新日国、富士

日産E690
E690

画像:日産自動車(1963)「技術の日産」

1959年にE690にモデルチェンジされた際、前照灯が4灯になりました。
新日国ボディの車体は、スタンディウィンドウの縦寸法が小さくなっています。

ボディの組み合わせ・・・新日国、富士

自家用 日産E690(1968年式)
E690

撮影:BA10-2407291様(南林間駅 1986)

写真は富士重工製ボディです。標準仕様より扉位置が一つ後ろにある車両です。
富士重工製ボディのキャブスターは、ヒサシ付の13型登場後も丸みのある11型で製造されていました。

自家用 日産E690(1969年式)
E690

撮影:BA10-2407291様(埼玉県 1986)

キャブスターの標準ボディは富士重工に変り、1969年に13型になりました。その後まもなく生産が終了した模様です。
最終期の1970年代には「キャブスター」の名前はなくなったようです。

民生デイゼル

表8-3-4 民生KB2LC
年式1949
原動機型式
(出力)
KD2
(60PS)
軸距4350mmKB2LC
備考 


東京都交通局 民生KB2LC
KB2LC

画像:自動車技術会(1952)「自動車技術Vol.6 No.1-2」

民生デイゼルが終戦後の1949年に製造したキャブオーバーバスがKB2LCです。KB3型ボンネットバスのシャーシを2気筒エンジンに載せ替えて箱型ボディを架装した車両だそうです(注1)

ボディの組み合わせ・・・富士

(注1)
鈴木文彦(1999)「日本のバス年代記」P.44
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