入門その頃のバス

小型バスの特装車

ボディ 小型バスは、フレーム付シャーシで、フロントエンジンであることから、特装車に改造するベース車にもなります。
改造ではありますが、当初から想定されている使い方も多く、カタログ上でも改造例が示されている場合もあります。また、二次架装のメーカーが指定されていて、特装車のカタログが発行されている場合もあります。
改造のベースになるのは、客室定員のないバンタイプの車両で、普通免許で運転できるサイズで融通を利かせています。後面に観音開き扉がつくのが普通です。
改造車なので、実際の仕様は千差万別で、使用者のニーズに合わせて様々な形態が見られます。従って、ここで掲載している車両は、飽くまでも一例です。
ただし、これら特装車用途は、トラックベースの車両などにその役目を譲りつつあります。

検診車

医療センターや病院などから、学校や企業などに出向き、車内で検診を行うのが検診車です。
車内には、医療機器を搭載し、ベッドや椅子などが設けられます。左側面のドアと後面の観音扉が対象者の出入口になることから、その部分の屋根には大型のオーニングテントが装備されているのが普通です。
小型バスだけでなく、大型バスやトラックベースの車両も多く見られます。

循環器検診車
トヨタコースター

撮影:長野市(2016.1.11)

トヨタ コースター

循環器検診車。屋根の突起はオーニングテントの収納場所。自動でテントを張り出し、その下で受付などが行えるようになっています。

超音波検診車
三菱ローザ

撮影:長野市(2016.1.11)

三菱ローザ

検診車は、車内に医療機器を搭載するため、その部分の窓を埋めたりスモークにしたりするケースが多く見られます。
側面と後面にオーニングテントを装備しています。

移動図書館

車内に書架を設け、地域の学校や公民館などを巡って本の貸し出しを行うのが移動図書館です。図書館用語でBM(ブックモービルの略)と呼ばれます。
客室部分に書架があり、車内からはもちろん、車外からも本を選べるように外向きの書架も設置されています。移動図書館が来たことを地域に知らせるため、スピーカーも装備されています。
近年、移動図書館自体が減少しているほか、ベース車はトラックに変わりつつあります。

可児市 移動図書館「ひまわり号」
日産シビリアン

撮影:可児市(2021.10.15)

日産シビリアン

岐阜県可児市の移動図書館です。
外向きの書架がある場合、その外板は上開きの大型扉になっています。横長の固定窓のあるのが普通です。中向きの書架へは、後部の扉から車内に入ることができます。
おでこにはスピーカーがあり、巡回場所に近づくと、移動図書館が来たことを付近の住民に放送で知らせるようになっています。

東大阪市 移動図書館「キキョウ号」
三菱ローザ

撮影:東大阪市(2022.1.19)

三菱ローザ
三菱ローザ

撮影:東大阪市(2022.1.19)

東大阪市の移動図書館です。4代目ローザの最終形で、1995〜97年式。
巡回場所で貸し出しのセッティングがされた状態です。側面の扉が上下に開きます。上側の扉は雨除け、日除けの屋根に、下側の扉は借りる本を置く台にもなります。
後面には昇降用のリフトを備え、階段も内蔵されています。車内の書架を見るためと、書籍などの運び出し用を兼ねているのでしょう。

東大阪市 移動図書館「ウメ号」
三菱ローザ

撮影:東大阪市(2022.1.20)

三菱ローザ

同じく東大阪市の移動図書館のもう1台。5代目ローザで1997〜2004年式。4灯のショートボディです。
年式は異なりますが、基本仕様は同じです。こちらは、走行中の画像で、側面のドアを閉めた状態。

泉佐野 移動図書館「いちょうごう」
トヨタコースター

撮影:泉佐野市(2022.3.12)

トヨタコースター
トヨタコースター

撮影:泉佐野市(2022.3.12)

大阪府泉佐野市の移動図書館です。
前側の写真は通常時、後ろ側の写真は巡回場所で貸し出しのセッティングがされた状態です。
ロングボディで移動図書館としては規模の大きい車両です。屋根に内蔵されたオーニングテントもかなり大型です。後面には観音開き扉と昇降用リフトを備えます。

藤枝市 移動図書館「ふじのはな」
日産シビリアン

撮影:藤枝市(2021.10.5)

日産シビリアン(2001年式)

移動図書館の車内の一例です。後ろの観音開き扉から見たところで、両側に書架があります。
ここでは、子供用の本は車内に揃えられていました。外側は背の高い大人用という切り分けのようです。
運転席後ろに貸出用席がありますが、規模の大きい移動図書館の場合には、車外にテーブルや椅子を出して貸出用にする場合もあります。

キッチンカー

個人や商店が所有し、ショッピングセンターやイベント会場など人の集まる場所に出向き、車内で調理したファストフード類を提供するのがキッチンカーです。
車内には加熱調理のできるキッチンが装備され、側面には販売用のカウンターが設けられるのが一般的です。食品衛生法によって、必要な設備や用途が決められており、排水設備や運転席との仕切りなどを備えています。
この分野も主流は小型トラックやバンで、専有スペースの大きい小型バスは少数派のようです。

キッチンカー(ピザ)
日産シビリアン

撮影:塩尻市(2022.5.3)

日産シビリアン(2020年改造)

長野県でピザを販売するキッチンカー。
ベース車の日産シビリアンは、平屋根で前面にボンネットバス風の改造がなされた車両です。キッチン部分の屋根はかさ上げされ、オーニングテントが取り付けられ、ドア側がカウンターになっています。

キッチンカー(ベビーカステラ)
トヨタコースター

撮影:砺波市(2021.10.16)

トヨタコースター(2021年改造)

富山県でソールフードのベビーカステラを販売するキッチンカー。大型店やイベントでの出張販売に使われます。
車内後部は調理室で、右側面に調理器と販売カウンターが設置されています。側面の跳ね上げ扉は、販売時にはカウンターの屋根にもなります。

キッチンカー(ピタパンサンド)
三菱ローザ

撮影:滑川市(2021.10.15)

三菱ローザ(2018年改造)

森の中のログハウスをラッピングした外観で、ピタパンサンドを販売するキッチンカー。ショッピングセンターでの出店風景。
車内の調理室、側面のカウンターなどのほか、車内には客席もあり、後面の扉から出入りするようになっています。

キッチンカー
日産シビリアン

撮影:岡山市(2012.9.2)

日産シビリアン

この車両は、右側面は窓が埋められているため、左側面がカウンターになっていると思われるキッチンカー。
窓のない部分は、調理器具などが設置されていると思われます。
天井に大型の排気口があります。食品衛生法改正前は、地域によって許可内容が異なり、大型の換気扇が設置されている車両もありました。

移動販売車

スーパーマーケットや大型店を起点として、商店の少ない地区や福祉施設などを巡るのが移動スーパーです。食品以外の移動販売車もあります。
車内に冷蔵、冷凍を含む商品棚が設置されています。積み込み商品を車両の外に並べて販売する手法も取られます。
買い物難民などの用語ができた近年、成長が期待される分野ですが、これも軽トラックなどに移行しています。

移動購買車「ひまわり号」
ライトコーチ

画像:日産自動車発行カタログ

農協 日産ライトコーチ

農協型移動購買車で、食品・日用品の移動販売を目的に、車内には両側に棚が用意され、三槽式冷凍ショーケースも搭載されています。室内高は1,700mmを確保し、ハイルーフ部分には明かり窓も設けられています。
そのほか、放送装置、レジ用テーブルと電源、手洗い・清水・汚水タンクなども装備されています。

移動販売車
トヨタコースター

撮影:川西市(2022.4.27)

トヨタコースター(2018年改造)

健康に配慮したお弁当の移動販売車。平日のお昼時間に、駅近くの広場に出店しているところです。
ベース車はキャンピングカーとして使われていたトヨタコースターで、オーニングテントが増設されている以外は、ノーマルな外観です。通常のドアを使って販売しています。

移動スーパー
日産シビリアン

撮影:高崎市(2021.9.20)

日産シビリアン

車内に商品棚を設置し、後面の扉から車内に入ったり商品を降ろしたりできる移動販売車。
車内の左右には商品棚があるため、窓は塞がれており、後面扉の上にはオーニングテントが設置され、屋外での販売時に使用されます。
過疎地の住民に商品を販売する目的で使われますが、写真の会社では福祉施設を回るコースもあります。

商品展示車・宣伝車

商品を展示し、各地の利用者に見学、体験等をしてもらうための商品展示車や、新商品などを宣伝するための宣伝車にも、小型バスが使われます。

宣伝車
三菱ローザ

画像:三菱公式カタログ(1964年)

三菱ローザ B20D

三菱自動車のカタログに掲載された宣伝カーの実例写真。屋根上には、スピーカーを兼ねたブランド名表示窓が取り付けられています。後部にはオープンデッキが設置されています。

商品展示車
日産シビリアン

撮影:北海道(2018.11.10)

日産シビリアン

側面に大きな窓を開けた商品展示車。ここがショーケースか、カウンターのように使われるのでしょう。
車内は、運転席部分と商業スペース部分が区分されており、冷蔵庫やドリンクサーバーが見えますので、飲食店としての機能も持っているようです。

街頭宣伝車

政党が所有し、街頭演説などの際に使用するのが街頭宣伝車(街宣車)で、選挙カー、広報車などとも呼ばれます。
後部にオープンデッキのステージがあり、停車時にはそこから屋根上に上がれるようになっています。屋根には、大型スピーカーや看板受けが設けられます。
やはりトラックベースの車両も存在します。

街頭宣伝車
三菱ローザ

画像:三菱公式カタログ(1979年)

三菱ローザ

三菱自動車のカタログに掲載された街宣車への改造例。屋根上に上がる梯子は、後部のデッキ中央部にあります。
候補者やウグイス嬢、さらには応援演説者など多数のスタッフが乗車することが多いため、客席も多めに確保されます。

街頭宣伝車
トヨタコースター

撮影:さいたま市(2021.10.30)

トヨタコースター

後部にデッキがある街宣車は、大きな政党では所有していますが、その数は減りつつあり、さらにトラックベースの車両への代替も行われているようです。
写真の政党では、「あさかぜ号」などの愛称をつけ、複数台数を所有、党首や大臣経験者などが街頭演説を行う時などに登場します。
屋上に上がっての街頭演説、側面への懸垂幕取付や、周囲への幟旗や看板の設置などを行い、広報効果を高めます。停車時のみできる手法で、道交法上、走行時にはできません。
(画像は一部修正)

中継車・取材車

放送局や新聞社が所有し、現地取材を行うための車両は、中継車、取材車、放送車などと呼ばれます。
室内には放送機器や撮影機器、中継用モニター、編集用デスクなどが置かれるため、窓は埋められているケースが多いようです。屋根上に撮影用のデッキや大型アンテナなどを備えます。
なお、これらの車両も、大型トラックや中型トラックベースの車両が主流となっています。

毎日新聞 報道車
ダイハツライトバス

画像:ダイハツ公式カタログ(1969年)

ダイハツライトバス

ダイハツのカタログに掲載されていた報道車。毎日新聞の社名が入っていますので、実際に納入された車両をカタログ掲載したものと思われます。
車内後部に編集室、前方屋根上に撮影用デッキを備えています。

信濃毎日新聞 多目的広報車「なーのちゃん号」
トヨタコースター

撮影:長野市(2022.4.9)

トヨタコースター

信濃毎日新聞の広報車で、車内でミニ新聞や号外の印刷ができるよう、大型印刷機を備えるほか、編集作業用の机やパソコン、印刷機が設置されています。屋根上には、車内の電子機器を作動させるためのソーラーパネル4枚が設置され、車内の大型バッテリーに蓄電されるようになっています。ソーラーパネルの下には屋外作業用の電動ヒサシも格納されています。

キャンピングカー

個人所有のほか、レンタカーなどにも販売されるキャンピングカーは、専用のカタログが用意されるなど、ニーズの大きい市場のようです。
人間の居住空間となるため小型バスの得意分野ではありますが、トラックや小型のワゴン車などもベース車となり得ます。

キャンピングカー
三菱ローザ

画像:三菱公式カタログ(1992年)

三菱ローザ U-BE459F-TU6

三菱が特装車としてカタログに掲載しているキャンピングカーで、中京車体工業で二次架装しています。
定員を10名に抑え、普通免許で運転可能としているほか、ソファー兼用ベッド、着脱式サロンテーブル、流し台、冷蔵庫などを備えます。オプションでは、シャワールーム、キッチンなども設定されています。

キャンピングカー
日野レインボーAB

画像:日野公式カタログ(1993年)

日野レインボー U-AB2WGAA

日野自動車のカタログで、特装車の一例として紹介されているキャンピングカー。
後部の屋根が一部かさ上げされており、天井は可動式になっています。

鉄道車両

特殊な例であり、汎用性はありませんが、鉄道車両として改造された例もあります。

軌道式保線作業車
JR東海 保線作業車
いすゞジャーニー

撮影:提供写真(中部天竜駅 1991)

いすゞBLD30N改(1978年製)

道路のない山間部を走る鉄道で、保線要員や作業道具を乗せて現場まで走行する車両。タイヤの代わりに鉄輪が取り付けられています。
保線用レールバス、軌道バスなどとも呼ばれています。(注1)

デュアルモードビークル(DMV)
JR北海道 ダーウィン901
いすゞジャーニー

撮影:北海道鉄道技術館(2018.11.10)

DMV901号(1995年製)

JR北海道が日産シビリアンをベースに、線路と道路の双方を走ることができる車両として2004年に開発した試験車両。
道路を走るときはタイヤで、鉄路を走るときは前後の車輪を降ろして走ります。

ベース車

ベース車
トヨタコースター

画像:トヨタ自動車公式カタログ(1985年)

トヨタコースター・ビッグバン

トヨタコースターでは、ビッグバンという仕様を用意します。
これは、定員を10人に抑え、普通免許での運転を可能にしています。客用ドアから後ろは座席がなく、後面の観音開きドアとともに、後天的改造の自由度を増しています。

ベース車
日野レインボーAB

画像:日野自動車公式カタログ(1986年)

日野P-AB115AA・特装用胴殻車

日野レインボーABでは、「特装用胴殻車」を用意しています。
写真は、それをベースに製作された移動動物園で、小動物を運搬できるよう、窓に手すりを設けたり、後部の扉にあゆみ板を取り付けて、動物の乗車下車ができるようになっています。

(注1)
村上龍雄(1996)「私の知っているバス達≪いすゞ自動車≫」P.44に記述があり、いすゞ自動車、国鉄施設局との共同開発とのこと。
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80s岩手県のバス“その頃”