西日本車体(観光バス)
西日本車体は、あらゆるシャーシメーカーに対応するボディメーカーで、西鉄を中心に、関西より西の事業者に多く見られます。観光バスの場合、シャーシの違いに関わらず、同じスタイルで揃えられるため、梯団運行にメリットが見出されます。西日本車体では、1978年のモデルチェンジの際に用途によって区別される車型呼称を設定し、路線バスボディの窓を拡大した観光バスはE型となりました。次いでハイデッカーS型が登場しました。また、1982年からのデラックス観光バスはC型、スーパーハイデッカーがSD型という呼称になっています。
観光バス
66MC 1967〜1978
西日本鉄道 三菱B805L
撮影:板橋不二男様(1977頃)
宇部市交通局 日野RV730P
撮影:周南市(2012.5.26)
西日本車体では、路線バスの窓を拡大したボディスタイルを観光バス用に設定しています。前面は、丸みの大きい傾斜窓、後面は路線バスの方向幕のないバージョンと同じスタイルです。
他のメーカーのモノコックボディと同様、この時代のボディスタイルは、比較的長い間、同じスタイルを維持していました。
この時期の車体には、用途による車型呼称はありません。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
E型
路線バスのB型と同じく、モデルチェンジ時期により、78MC、53MC、96MCと進化します。
78MC 1978〜1983
E-Ⅰ型
九州産交観光 三菱K-MS615N
画像:九州産交観光カタログ(1986)
1978年に、路線バスと同時に、前後のプレスを変え、これまでより角張ったイメージにモデルチェンジを行いました。屋根のカーブが相変わらず丸いため、前後の窓がルーフラインまである観光バスの場合、前モデルとあまりイメージは変わっていません。
E-Ⅱ型
西日本鉄道 三菱K-MS615N(1982年)
画像:西日本車体工業 カタログ(1982)
路線バスタイプと同様に、雨樋位置を高くし、側窓の縦寸法を拡大したタイプをE-Ⅱ型と呼びます。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
58MC 1983〜1996
西日本鉄道 日野P-RU607BA(1986年式)
画像:西日本鉄道時刻表(1993)
1983年に路線バスと同時にモデルチェンジを行い、スケルトンタイプになりました。
1982年に登場したC型と異なり、路線バスのB型の前面窓を上方に拡大したような仕様であり、近距離高速バスや特殊車両などの用途に変化していきます。
湯河原厚生年金病院 検診車
画像:西日本車体工業 会社案内(1993)
1990年にマイナーチェンジが行われ、バンパーと一体化したマスク形状になりました。
写真の車両は、検診車ですが、仕様に柔軟性のある西工ならではの用途といえます。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
96MC 1996〜2010
E-Ⅰ型
長野県 胃検診車
撮影:長野県(2016.1.11)
1996年に路線バスと同時に96MCに変りました。当初は外観に変更はありませんでした。
下記のマスクの車両と区別するため、E-Ⅰ型という呼称になりました。
E-Ⅱ型
昭和自動車 日産デPKG-RA274TAN(2010年式)
撮影:博多駅(2024.8.2)
しずてつジャストライン 日産デADG-RA273PAN(2007年式)
撮影:静岡駅(2016.3.20)
1997年には、路線バスと同じマスクに変更したタイプが追加され、E-Ⅱ型と呼ばれます。前面窓が下方に拡大されたほか、1枚ガラスになった車両が多く見られます。シャーシも路線バスシャーシを用いたものが増えました。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
E-Ⅲ型
西日本鉄道 日産デPKG-RA274RBN(2009年式)
撮影:博多駅(2024.8.2)
西日本鉄道 日産デPKG-RA274RBN(2010年式)
撮影:博多駅(2024.8.2)
2005年にフルデッカーのS型を96MCにモデルチェンジするに当たり、E型に編入され、E-Ⅲ型を名乗ることになりました。
本格的な観光・高速タイプをC型に譲った中で、廉価版はE型に集約する意味があったのだと思います。
S型
1983年には路線バスなどと同様にスケルトンタイプにモデルチェンジされますが、観光バスの主流は1982年に登場したC型に移り、こちらのS型は廉価版という位置づけになります。
2005年に96MCにモデルチェンジされた際、E型に収れんされ、S型はなくなりました。
78MC 1979−1983
S-Ⅰ型
堀川バス 三菱K-MS615S
画像:堀川バスカタログ(1987頃)
S型の基本スタイルはE型をベースに屋根を途中から嵩上げし、セミデッカーとしたものです。S-Ⅰ型と呼ばれます。
S-Ⅱ型
北九州観光バス 日産デK-RA51R
画像:西日本車体工業 広告(2003)
S-Ⅱ型は、屋根上の明り窓を大型化してパノラマデッカー風にしたもので、西日本車体では「ビスタークルーザータイプ」と呼ばれます。
S-Ⅲ型
日田バス 三菱K-MS615N(1982年式)
画像:日田バス観光バスカタログ(1989頃)
1980年に登場したS-Ⅲ型はフルデッカーとしたもので、前頭部まで車高を高くし、前面窓の上辺のRも小さいため、ベース車(E型)より角張っているように見えます。
58MC 1983−2005
九州急行バス 三菱P-MS715N(1987年式)
撮影:武雄(1987.3.14)
ハイデッカーのS型は、路線バスのB型や標準床車のE型と同時に、1983年にスケルトンタイプの58MCにモデルチェンジが図られました。基本スタイルは標準床車のE型と同じになりました。
西日本鉄道 三菱U-MS716S(1993年式)
画像:西日本車体工業 会社案内(1993)
1990年にバンパー形状を変更しています。
2005年まで58MCのまま製造されますが、96MCにモデルチェンジの際E型に統合され、E-Ⅲ型という呼称に変りました。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
C型
路線バスボディとは異なるサイクルでモデルチェンジを行い、初代のあとは92MC、02MCと進化します。
初代(モデル番号なし) 1982〜1992
C-Ⅰ型
日田バス 三菱P-MS725S
画像:日田バス観光バスカタログ(1989頃)
1982年に観光バス専用の角張ったボディスタイルが登場しました。上部に向けてすぼまった断面形状や銀メッキのフロントマスクが特徴。
ノーマルなハイデッカーは、C-Ⅰ型と呼ばれます。
西日本鉄道 いすゞP-LV719S(1989年式)
画像:西鉄観光バスカタログ(1991頃)
1987年にはバンパー形状が変更されています。角形2灯のヘッドライトを樹脂製のバンパーと一体型にしています。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
C-Ⅱ型
西日本鉄道 三菱K-MS615S(1982年)
画像:西日本車体カタログ(1982)
C型のハイデッカーの中で、後部の屋根を段上げしたステップアップルーフと呼ばれる独特の仕様を持つ車両。
西鉄グループでは、「ロイヤルハイデッカー」などと呼んでいます。
後部にサロンを置き、居住性を高めるのが目的。特に貸切バスに使用されるボディです。
日田バス 三菱P-MS729S
画像:日田バス観光バスカタログ(1989頃)
1987年から、バンパー形状が変更されました。
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
92MC 1992〜2002
C-Ⅰ型
JR九州 いすゞKC-LV781R1(2000年式)
画像:西日本車体工業 会社案内(2001)
1992年に観光系ボディはフルモデルチェンジされ、それまでの直線的なスタイルから、曲線的なスタイルに変りました。「ネオロイヤル」という愛称のあるボディです。
C-Ⅱ型
下電バス 日野U-RU2FTAB(1993年式)
画像:西日本車体工業 会社案内(1993)
後部の屋根をかさ上げしたC-Ⅱ型も、引き続きラインナップされています。
02MC 2002〜2009
C-Ⅰ型
阪神バス 三菱KL-MS86MP(2002年式)
撮影:大阪駅(2016.5.7)
西鉄 日産デPKG-RA274RBN(2009年式)
撮影:博多駅(2024.8.2)
2002年に前後のバンパーの形状が変更されるモデルチェンジが行われました。
SD型
C型と同じく、初代のあとは92MC、02MCと進化します。
初代(モデル番号なし) 1985〜1992
SD-Ⅰ型(←C-Ⅲ型)
西日本鉄道 三菱P-MS725S(1990年式)
画像:西日本鉄道 会社案内(1991)
1986年から登場したスーパーハイデッカーで、ハイデッカーシャーシに架装するボディです。全高も、他のSD型より低めです。
「ムーンライト号」の2代目車両として登場し、その後の夜行高速バスに多く用いられたボディです。ホイールベース間の床下に、トイレや仮眠室を備えることができます。
当初はC型のバリエーションに分類されていましたが、1989年にSD-Ⅰ型に呼称変更されました。
全高・・・3,470mm
シャーシの組み合わせ・・・いすゞ、日産デ、日野、三菱
SD-Ⅱ型
西日本鉄道 三菱P-MS729S(1990年式)
画像:西日本鉄道 会社案内(1991)
1988年にスーパーハイデッカーシャーシに架装するSD-Ⅱ型が登場します。これを受けて、翌1989年にC型に分類されていた他のスーパーハイデッカーがSD型のバリエーションに呼称変更されます。
全高はSD-Ⅰ型より高くなっています。
全高・・・3,540mm
シャーシの組み合わせ・・・日産デ、三菱
SD-Ⅲ型(←C-Ⅲ型)
サンデン交通 日産デU-DA66U(1985年式)
画像:サンデン交通カタログ(1985)
1985年に日産ディーゼル「スペースウィング」DA用に作られた3軸スーパーハイデッカー。当初はC型のバリエーションとしての展開でしたが、1989年にSD-Ⅲ型に呼称変更されました。
生産台数はごく少数です。
全高・・・3,600mm
シャーシの組み合わせ・・・日産デ
92MC 1992〜2002
SD-Ⅰ型
西日本鉄道 三菱U-MS826P(1993年式)
画像:西日本車体工業 会社案内(1993)
1992年にC型と同時にモデルチェンジを行い、曲線的なデザインに変りました。
全高・・・3,485mm
SD-Ⅱ型
西日本鉄道 三菱U-MS821P(1994年式)
画像:西日本車体工業 会社案内(2001)
車高の高いSD-Ⅱ型です。
全高・・・3,560mm
02MC 2002〜2009
SD-Ⅰ型/SD-Ⅱ型
羽後交通 日産デPLG-RA274RBN(2007年式)
撮影:横手営業所(2019.7.21)
2002年に前後のバンパーの形状が変更されるモデルチェンジが行われました。
表3-8 西日本車体の車型とモデル番号の関連
モデル番号/車型 | B型 | E型 | S型 | C型 | SD型 |
---|---|---|---|---|---|
(路線バス) | (観光バス) | (ハイデッカー) | (デラックス 観光バス) | (スーパーハイデッカー) | |
66MC | ○ | ○ | - | - | - |
78MC | B-Ⅰ型 B-Ⅱ型 B-Ⅲ型 | E-Ⅰ型 E-Ⅱ型 | S-Ⅰ型 S-Ⅱ型 S-Ⅲ型 | - | - |
モデル番号なし (1982年〜) | - | - | - | C-Ⅰ型 C-Ⅱ型 C-Ⅲ型 | SD-Ⅰ型(旧C-Ⅲ型) SD-Ⅱ型 SD-Ⅲ型(旧C-Ⅲ型) |
58MC | B-Ⅰ型 B-Ⅱ型 | E型 | S型 | - | - |
92MC | - | - | - | C-Ⅰ型 C-Ⅱ型 | SD-Ⅰ型 SD-Ⅱ型 |
96MC | B-Ⅰ型 B-Ⅱ型 | E-Ⅰ型 E-Ⅱ型 E-Ⅲ型(旧S型) | - | - | - |
02MC | - | - | - | C-Ⅰ型 | SD-Ⅰ型 SD-Ⅱ型 |
07MC | B-Ⅰ型 (中型のみ) | - | - | - | - |
備考 | ○印=66MCの時期には車型呼称なし。 |
西日本車体のボディ呼称
西日本車体のボディ呼称については、書籍等で記載されているほか、同社の公式カタログに記載があるものもあります。基本的に、路線バスや観光バスなどの用途を表す呼称(=車型)については、公式カタログに記載があり、モデルチェンジ時期を表す世代呼称(モデル番号)については一部を除きカタログ等には記載がなく、内部呼称のようです。
用途を表す呼称(車型)
例:B型
路線バスと観光バスとで仕様に違いが発生するのが1960年代ですが、1978年のモデルチェンジ以降、アルファベットの記号で区別されるようになりました。
B型=路線バス(BUS)
E型=観光バス(EXPPRESS)
S型=観光バス(ハイデッカー)(SIGHT SEEING)
C型=ニュー観光バス(スケルトン)(COACH)
SD型=ニュー観光バス(スーパーハイデッカー)
F型=中型観光バス(2004年〜)
これらの用途を表す呼称は、期間を通じて変わりません。
また、この呼称については、西日本車体発行のカタログにも記載されており、外部に対しても公表された呼称であると考えられます。
世代呼称(モデル番号)
例:78MC
西日本車体には、時期ごとに車体呼称があります。基本的に年号の2桁とMC(モデルチェンジ)との組み合わせになります。
路線バスのB型を例にとると、下記のような呼称になります。
66MC=1966〜1978年
78MC=1978〜1983年
58MC=1983〜1996年
96MC=1996〜2010年
1983年に関しては、「はさん」と読めてしまうことから和暦に読み替えているそうです。