入門その頃のバス

シャーシメーカーのエンブレム

シャーシ かつて、ほとんどのバスの正面には製造メーカーを示すエンブレムが取り付けられていました。様々なボディメーカーとシャーシメーカーの組み合わせが存在した時代は、このエンブレムでシャーシメーカーを見分けるのが最もストレートな方法でした。
かつてのエンブレムは、車両デザインの一部にもなる重要な要素で、スピードや新しさを表すため、翼のようなデコレーションをつけたものも多く、遠目にもどこのメーカーなのか分かるものでした。逆にエンブレムをつけないバス会社のバスは、どこか間の抜けたイメージを与えたものです。
しかし、1970年代から1980年代にかけてエンブレムはシンプルになって行き、あくまでもメーカーのロゴを補助的に表示するツールでしかなくなって行きます。そして現在ではメーカーエンブレムはほとんど見なくなりました。
ここでは主に、リアエンジンバスにつけられていたものを中心にご紹介します。


いすゞ自動車

BC型(1955頃〜1963年)
いすゞ

比較的大ぶりのエンブレムで、主に観光バスBC型に使われていたもの。
全幅に渡る金属モールなどと合わせて使われた例もあり、オーバーデコレーション時代の産物です。
なお、中央部のいすゞの社章は、1934(昭和9)年から使われており、せきたい流の「いすゞ」の文字を12のさざなみで囲ったもの。


1951頃〜1959年
いすゞ

1950年代から使われていた、ワッペン形のエンブレムの中に「いすゞ」のマークが入ったエンブレム。
水平に伸びたラインは、かっこよく見せるためのデコレーション。


1960〜1964年
いすゞ

川崎ボディのモデルチェンジとほぼ同時に、エンブレムの形も変わりました。
尖った翼が左右に伸びているスマートなエンブレムです。
遠目には日産ディーゼルとよく見間違えたものです。


1965〜1974年
いすゞ

昭和40年代になると、かなりコンパクトになりました。いすゞのマークが五角形の中に納まっています。
この形はそれなりに長く続きました。


1975〜1984年
いすゞ

1974年に社章が「伸び行く2本の柱」に変わり、企業カラーも「情熱と前進」を表す赤になりました。
これを受けて、バスのエンブレムもマークとロゴの組み合わせに変わりました。
実際の展開では、マークかロゴかどちらか一方だけつける例もあります。


1984〜1990年
いすゞ

1984年にいすゞLV,LRが登場するのに合わせて、ロゴとマークの配置が上下入れ替わりました。材質も樹脂に変わったように見えます。


1990〜1994年
いすゞ

1990年からは、2本柱のマークに枠がなくなり、メッキ色のものが取り付けられるようになりました。
その後、1991年に社章が変更になりましたが、バスにはそれ以降しばらくそのままのものが使用されているようです。

(画像:カタログより)


1995年〜
いすゞ

1991年に、2本柱のマークが廃止され、「ISUZU」の文字が新たにデザインされました。
1995年のモデルチェンジから使われているようです。サイドやリアも、これと同じものがステッカーで取り付けられています。



日産ディーゼル工業

1960〜1982年
UD

民生デイゼルからの社名変更に伴い、UDエンブレムをメインにするようになりました。
当初は「UDエンジン」搭載車を意味したようです。
やがてUDが日産ディーゼル工業の代名詞になり、同社製のあらゆるバスにつけられるようになりました。


1982〜1995年
UD

1979年にロゴが新調され、バスは富士重工製ボディが15型になるのと時を同じくして変更しました。
1995年に新しい「UD」マークが登場するまでこれが使われていました。



1995〜2003年
UD

1995年にCI(コーポレートアイデンティティ)により、UDマークが新しくなりました。楕円に、UとDが接したマークで、その下に英語の社名ロゴが入ります。
このマークは、正面に向かって左側に付けられていました。
その後、2003年にUとDと楕円を融合した新マークに変わり、2010年にUDトラックスへの社名変更に伴い再変更されています。



日野自動車工業

1952〜1989年
日野

「ウィングマーク」と呼ばれるエンブレムで、その名の通り翼をあしらった優雅な形が人気でした。
他のメーカーが旧来のエンブレムを廃止する中でも長く使用されました。


1989〜1995年
日野

1989年から、赤い部分が角張った形状になりました。
1994年には「H」をデザインした社紋に変わり、ウィングマークも終焉を迎えました。



三菱自動車工業

1955〜1984年
ふそう

三菱グループを象徴するスリーダイヤとFUSOのロゴを組み合わせて三角形のエンブレムとしたもの。
スリーダイヤは創業時の九十九商会が船旗号として採用した三角菱が起源です。
「ふそう」は1932年に当時の三菱造船が製造したバスに名づけた名称で、中国の「東の日の出るところに育つと伝えられる神木」つまり日本の別称です。それ以来、三菱の大型車のブランド名として使われています。


1982〜1993年
MMC

1982年に三菱自動車工業に「MMC」という愛称がつき、そのロゴをつけるようになりました。
「MMC」はMitsubishi Motors Corporationの略称です。


1982〜1987年
FUSO

大型車には「MMC」とともに「FUSO」のロゴも使われます。
エアロバス登場とともに使われたマークです。


1987年〜
FUSO

1987年から、スリーダイヤが単独マークとして復活しました。それとFUSOとの組み合わせも見られます。



日産自動車

キャブスター(1956〜1971年)
日産

日産自動車「キャブスター」のフロントには、独自のエンブレムがありました。
エンブレムの上側にある円と横棒を組み合わせたマークは、通常は「NISSAN」のロゴが入る日産自動車のマークです。


UDエンジン搭載車(1958〜1968年)
日産

「UD」エンジン搭載車には、「UD」エンブレムがついていました。UR系のバスがこれに当たります。日産ディーゼルのバスとの区別を難しくしていた一つの要因がこれでした。


トヨタ自動車

1958〜1974年
トヨタ

トヨタにリアエンジンバス、キャブオーバーバスにつけられていたエンブレムです。

(画像:カタログより)



ご案内

  1. シャーシメーカーのエンブレムは、主にフロント中央部分に取り付けられていました。
  2. その他に、ボディメーカー、商品名・型式、エアサスなどの仕様を示すマークが、正面、側面、後面には見られます。
  3. 上記に取り上げたものはあくまでも標準的なもので、車種、地域などにより異なるものも存在します。
  4. 年号には多少の誤差があります。メーカー側でロゴマークを変更しても、車両のモデルチェンジまでは旧来のものをそのまま使用する場合もありました。さらにユーザーや地域による違いもあったようです。
  5. 使用した画像の中には、画像処理を施していたり、画像を元に作画したものも含まれます。
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