その頃

ノラざえもん

第8話 請求書を放棄しよう!!



のびぞう 「あれ? ノラざえもん。なんか浮かない顔してるね」

ノラざえもん 「ああ分かるかい? これを見なよ」

のびぞう 「分厚い封筒だね」

ノラざえもん 「これみんな、請求書の束なんだ」

のびぞう 「え? これ全部? いよっ、ノラざえもん、大金持ち!」

ノラざえもん 「のびぞう君、請求書っていうのは、お金を払えという書類なんだよ。金持ちとか貧乏とか関係ないんだよ。むしろ金を払えば貧乏になるんだよ」

のびぞう 「そうなの。よく分からないや」

ノラざえもん 「まあ、常識的な知識が欠如しているのびぞう君に、多くは望んでいないけどね」

のびぞう 「小学校5年生のボクを捕まえて、難しいこと言われても困るよ。債権者と債務者が逆の意味だなんて、分かるわけないや。逆の意味ならもっと違う言葉にしてほしいよ」

ノラざえもん 「え? そんな言葉よく知ってるね、バカのくせに。いじめられっ子ならではの現象だな」

のびぞう 「それはそうと、何の請求書なの?」

ノラざえもん 「これはね、これまで景気よく僕のポケットから出してきた色々な道具の使用料金なんだ」

のびぞう 「ええっ? あれ、有料だったの。で、その厚さだと、5万円分くらいはあるよね」

ノラざえもん 「厚さで金額はわからないよ」

のびぞう 「5万円以上あるの?」

ノラざえもん 「まだきちんと計算していないけど、♣瞬間移動ドア!では1kmの移動につき単価100円、♣タイムマシン自転車!では、1年の移動につき単価1円、て書いてある」

のびぞう 「なんだ、そんなもんか。じゃあボクの小遣いでも払えるよ」

ノラざえもん 「甘いな。この前のびぞう君は、常夏の離れ島で動物と戯れたいとか言うから、西表島に行ったろう。あれで2000kmは移動してるから、片道20万円。サンバを踊りたいからブラジルに行きたいって言ったろう。あれは17万km移動してるから片道1700万円。去年は恐竜に乗りたいて言うから、ジュラ紀に行ったろう。ジュラ紀は2億年位前だから、2億円払う必要があるんだ」

のびぞう 「え、そんなに? お父さんの給料で払える?」

ノラざえもん 「お父さんの年収を800万円とすると、ジュラ紀の2億円だけで25年間かかる。控除前の支給額ベースで全額だから、もちろん食費も学費も何も払わなくてということだけど」

のびぞう 「月賦で払えばいいじゃない」

ノラざえもん 「月々8万円のローンを組むとして、2億円を払いきるには、200年はかかるね」

のびぞう 「200年なら、ボクのひ孫くらいまで払うことになるかな」

ノラざえもん 「言っとくけど、ほかにもいろいろ出してるからね。♣実現メモ!で先生に褒められたろ? あれは1件実現につき500円、さらに相手の先生に慰謝料500円を払うから合計1000円」

のびぞう 「どうして慰謝料払うのさ」

茅野

ノラざえもん 「のびぞう君を褒めるなんて、先生のプライドを完全に傷つけたからね。あと♣透明ジャンパー!着て、シズミちゃんのお風呂覗いたろ。犯罪と認定される行為をすると、それだけで1万円の加算料金を取られる」

のびぞう 「やめてよ、もういいよ。いずれにしたって、そんな大金払えないよ」


ノラざえもん 「まあ、のびぞう君だけじゃなくて、一緒にジュラ紀に行ったシズミちゃんやジャイアントたち5人に割れば2億円も4千万円にまでは減るんだけどね。年収全額返済も5年でいいし」

のびぞう 「割っても無理だよ。そもそも、どうして有料だって教えてくれなかったの?」

ノラざえもん 「実はボクも知らなかったんだ」

のびぞう 「ど、どうして」

ノラざえもん 「最初はさ、無料お試しキャンペーンに応募して、1年間無料で出し放題だったんだ。で、契約は自動更新なんだけど、2年目からは定価です、って契約書に書いてあった」

のびぞう 「どうしてちゃんと契約書を読まなかったの!」

ノラざえもん 「だって、契約書もこんなに分厚くて、2年目からの有料化はこんなに小っちゃい字で書いてあるんだよ」

のびぞう 「あれま。ちゃんとハンコ押してあるし」

ノラざえもん 「ほんと、まるで詐欺に遭った気分だよ」

のびぞう 「それはこっちのセリフだよ。で、もし払わないとどうなるの」

ノラざえもん 「未来警察からポリスマンが来て、運が悪けりゃ銃殺だね」

のびぞう 「ちょっと、何とかならないの、それ。♣紙幣製造マシーン!かなんかで3億円くらい作って払ってよ」

ノラざえもん 「多分、紙幣作成手数料として、3億円同額の料金がかかるね」

のびぞう 「意味ないじゃん」

ノラざえもん 「と言うことで、ボクからのびぞう君の保護者へ、請求書を出しておくけど、いいよね」

のびぞう 「ちょっと待ってよ。何とか払わなくてもいい方法を考えてよ」

ノラざえもん 「あるにはあるんだよね。実は」

のびぞう 「あるんだ・・・よかった」

ノラざえもん 「でもね、払わなくするには、道具を使った記憶を、すべて削除する必要があるんだ」

のびぞう 「じゃあ、削除してよ」

ノラざえもん 「いいのかい? 飛脚とかけっこした楽しい思い出とか、シズミちゃんの入浴姿を見てのびぞう君のどこかが見たこともないくらい変化した思い出とか、沖ノ鳥島でサンゴを盗んだ思い出とか、みんななくなっちゃうよ」

のびぞう 「仕方がないよ。で、でもね、シズミちゃんのお風呂場の件は、1回分だけは残しておいてよ。ボクの小遣いから払うよ」

ノラざえもん 「犯罪の可能性があるから、1万円加算されてもいいの」

のびぞう 「お年玉から払うよ」

ノラざえもん 「分かった。じゃあ、これまでのすべての道具にまつわる記憶は、その1件を除いて全部消すよ。・・・消した!!!」

のびぞう 「・・・」

ノラざえもん 「のびぞう君、消したよ」

のびぞう 「・・・」

ノラざえもん 「のびぞう君、どうしたの」

のびぞう 「・・・」

ノラざえもん 「あ、そうか。のびぞう君は、小学校2年生の時から、ボクの出した道具で生きてきたから、これがないと、小学2年生の知能に戻ってしまうんだ。さらに、途中の長い記憶がすべて抜けてしまったから、腑抜けになってしまったんだ」

岩手県のバス“その頃”



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