キャブオーバーバス〜奇跡の復活〜(後編)
(前編のあらすじ)宮城県仙台市の某所で発見された終戦間もないころのキャブオーバーバスは、海和さんのご努力によりメーカーや年式、元ユーザー、車台番号などが次々に判明し、その波乱に満ちた人生が明らかになりました。塩釜交通のボンネットバスとして生まれたこのバスは、5年後にはキャブオーバー型に更新され、さらに3年後には温泉旅館へ譲渡、送迎や宣伝車として10数年間使用されます。そして、それから約35年間、静かにこの地で余生を過ごしていたのでした。
そして今回、レストアされるため、福山へ向かって旅立つことになったのです。
(画像は一部を除き、海和隆樹さん撮影。搬出は2005年8月27日)
ちょっと再確認 このバス出生のからくり
ボンネットバスとして登場
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この車両は、1948(昭和23)年にトヨタBM型シャーシのボンネットバスとしてこの世に生まれました。
注:ボディメーカーやカラーデザイン等は不明です。イラストは、参考文献の中にあった同年式の同型式車両を元に想像して描きました。
おそらくこのように戦前のバスとさほど変わらない外形だったと思われます。
改造中
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早くも5年後の1953(昭和28)年には、富士自動車工業(後の富士重工)に運ばれて、キャブオーバーバスに改造されることになります。
改造に当たっては、旧ボディはすべて撤去され、ハンドルやミッション等の運転機器はエンジン横に移設されたと思われます。
イラストは、改造に当たってそれらをすべて撤去した状態のフレームの想像図です。
キャブオーバー再生
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当時としてはモダンな最新ボディだった富士のT5型ボディを架装されて、キャブオーバーバスに生まれ変わりました。エンジンの位置はボンネットバス時代と同じ最前部ですが、運転席や客席がエンジン横まで延長されたため、乗車定員は大幅に増加し、外形的にも新車同様になりました。
注:イラストは、廃車体から当時のカラーを推定して描いてみました。とびうおのマークだけは色が分かりませんが、魚なので青色ではないかとの想像です。
いざ、搬出(2005年8月27日)
搬出を待つ
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車台番号が分かり、福山自動車博物館への搬送の手配をし、バスの内外の整理をし、ほとんど海和さん一人の手によって、永久保存への段取りが進められていきます。
およそ50年に渡り過ごしたこの温泉地の奥に、ひっそりとたたずむトヨタBM。本来ならこの地で静かに土に返るのを待つ身だったこの車両が、この地を去るのも間もなくです。
搬出の朝
搬出の朝、まずは最初の役者であるショベルカーが到着しました。
現在押し込められているこの場所から引き出すためのパートナーです。シャベルの部分にワイヤーをつけ、バスのバンパーに引っ掛けて、バスを引き出します。バンパーやタイヤ、さらにボディが壊れないように慎重に引き出していきます。
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後ろから引っ張られ
長年の安住の地であった場所からショベルカーにより後ろ向きに引き出されていくキャブオーバーバス。
心なしか、今までいた場所を名残惜しそうに見ているような気がします。
「おいおい、どこにつれてくんだよ」
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6t車に載せる
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続いてこの敷地の細い道から搬出するため、6t車に載せます。
これもバスを壊さないように慎重に行われます。
車体の下部を地面にこすらないように、床下を傷つけないように、慎重に積み終わると、6t車はゆっくりとこの温泉地の道を下り始めました。
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陽のあたる場所に顔を見せたキャブオーバーバス。
こうして全身いっぱいに太陽の光を浴びるのは、何年ぶりなんでしょうか。窓のくぼんだ正面スタイルのせいかもしれませんが、なんだか眩しそうな顔をしているように見えます。
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公道へ出る
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無事に敷地内から運び出されたキャブオーバーバスは、しばらくはそのまま6t車で運ばれます。
50年の眠りから覚めたバスが、白いガードレールの現代を行く姿。すれ違う車のドライバーの驚いた表情が目に浮かびます。
ボンネットバスとのツーショット
6t車から下ろされたキャブオーバーバスが、ボンネットバスとご対面!
きれいにお化粧されたボンネットバスと、目覚めたばかりのキャブオーバーバスとのツーショットは、ちょっとキャブオーバーバスにとっては気恥ずかしい場面だったかもしれませんが・・・。
中央は今回の立役者、海和隆樹さん。
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長旅の前に
さて、今度は長距離ドライブに備えて、11t車に積み替えます。
やはり慎重にキャブオーバーバスを持ち上げ、11t車に載せてゆきます。さっきは大人が大人をおんぶするようなアンバランスな感じでしたが、今度はうまく全体が乗っかることができ、安定しています。
この姿で、宮城県から広島県福山まで1000kmを超えるドライブに旅立つのです。
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旅立ち
仙台から福山に向けて旅立つ直前のキャブオーバーバス。トラックに載せられることにもだいぶ慣れたのか、少し前よりもりりしい表情をしているように見えます。
ガラスの割れた部分などはガムテープで仮止めされ、長旅に備えます。長く暮らした仙台の地に、再び戻ってくることはあるのでしょうか。
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福山到着
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長旅を終えて、福山に到着しました。この場所が、しばらくは安住の地になるはずです。
復元へ
11t車から下ろされ、点検を受けるキャブオーバーバス。
これから復元されるわけですが、終戦直後の1948年式のバスを復元する作業は、並大抵ではないと思われますが、よろしくお願いします。
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