2010/12/04 追加, 2011/01/22 更新, 2012/04/01 微調整
erudition-0076
アストレア論……人工無能について科学的に徹底検証する
大人げもなく少年漫画の登場人物「アストレア」について徹底検証してみました↓。

 水無月すう著『そらのおとしもの』は少年漫画と切り捨てるには惜しい、深読み可能な内容が満載の、優れた作品である。
 まだご存命でいらっしゃるならば(そして実在しているならば)、奥浩哉著『めーてるの気持ち』登場の「父親」こと「小泉安二郎」氏に
「これを読んで、お前の情報処理・数学についての見識および『愛』に関する哲学を言って聞かせてみよ」と言ってみたい作品である。
「小泉安二郎」氏は『めーてるの気持ち』の中で言っている:

「30歳すぎて少年マンガ読んで喜んで(い)るって……どうだろうねえ」
……。しかし、私に言わせると、このようになる。
「小泉安二郎」氏のような人間は、ただ一人の例外もなく、
朝鮮戦争による特需がもたらした高度成長経済時代に画一化され、
円高不況・バブル経済およびバブル崩壊、その後の「(いわゆる)(旧)日本型経営の失敗(?)」を引き起こした張本人たちである。
彼らの現代日本社会に及ぼした功罪は計り知れなく大きい。
むしろ、マイナスのほうこそ大きい(「その功罪の列挙」へのページのリンクを、ここに貼る予定)
少子化社会であるからこそ少年漫画を大事にするのは、今後世界のトレンドとなる。
現実に、欧米でも、中近東でも、極東においても、少年漫画は日本を手本に、各国で独自発展の様相を呈している。
……とまあ義憤(?)はこの程度にしておいて、「アストレア」について論じたい。
アストレアはアストライアすなわちギリシャ神話における正義の女神(ゼウスとテミスの娘)に由来すると思われる。
今のところ、『そらのおとしもの』(以下、著者「水無月すう」氏も利用する「そらおと」と略す)に登場する「エンジェロイド」 (天使型アンドロイド?)たちの中で一番マトモなネーミングである。
現在登場するエンジェロイドは下記のとおりである。
  • タイプα……
    曰くありげな無表情少女。私は「不思議少女」程度の描写で済んでいるが、本人役声優含めるスタッフによると「珍獣」扱い。
    もっとも、そのカッコよさは、高橋しん著『最終兵器彼女』などチャチと思わせる。ただしネーミングの「イカロス」がイマイチ。
    当然のように、「イカロス」の作成者が「ダイダロス」。
    このコンビは作品を暗示する。すなわち、太陽に近づきすぎたイカロスの翼が溶け、地上に墜落。
    ……というギリシャ神話を下敷きにしたと思われる。
    年齢不詳。ただし、メソポタミア文明のジグラト、いわゆる キリスト教世界の言う「バベルの塔」を壊し、「滅ぼした」のはこのイカロスという設定であるため、三千から四千年以上稼働していると思われる。
  • タイプβ……
    電子戦用。ハッキング等が得意。戦闘能力は低い(殴ったり蹴ったり意味不明の武器で攻撃したりはしているが)。ネーミングは「ニンフ」。なお彼女のみが他機を日常的に「アルファー」「ガンマ」「デルタ」と呼んでいる。その点、私はβに好感を持てる。 なお、彼女の十八番武器は「パラダイス・ソング」(*cf. 0085)という。
  • タイプγ……
    要撃用。双子(?)。というか、βを出したらダメ。じゃγを出そうというのは戦力の逐次投入にあたり、避けることは戦術の 常識である(本来ならばβ・γ・Δを一斉投入すべきである)。
    つまり、エンジェロイドたちの故郷「シナプス」は「常識がない」(ありうる)もしくは「常識はあるけれども無視している」(退屈しのぎをよくしているので非常にありうる)のいずれかである。
    ネーミングは二人とも、非常にセンスが疑問なことに「ハーピー」。
  • タイプΔ……
    うん? 今さら気付いた。なぜか大文字。
    近接戦闘用。βもγもダメ。じゃΔというのは(略)。
    アストレアというのは非常にネーミングセンスが良い。ただし、能力的には非常に問題がある(作中の表現を度外視しても)。
    なおアストレアはα・βを「〜(愛称)先輩」と呼んでいる。
  • タイプε……
    Δまでを「第一世代」と呼び、ε以降が「第二世代」らしい。何が第二世代かというと、「装甲」などが違うそうである(第14巻)。詳細は不明(かつネタバレを避ける)であるが、α+β+Δ+ηを超える程度の能力がある、らしい。 ネーミングは最低なことに「カオス」。カオスは、主人公に「ちみっこ(チビっ子の訛)」と呼ばれている。
    彼女は他機を「〜(愛称)お姉さま」と呼んでいる。一番人工知能らしい人工知能っぽい描写であるが、 作中表現には、カオスにバグと思われる記述が散見(*cf.0084)される。たぶん某大手OSのように、充分な動作確認テストを怠ったのであろう。
  • タイプΖ(?)……
    なぜか大文字のゼータ。第10巻から(?)登場。彼女の場合はゼロから創造されたわけではなく、生身の体を非情なシナプスによって(多分ヤケクソぎみに、懲罰の意味をこめて)エンジェロイドに改造された(彼女が第二世代かどうかは、第10巻時点では明確にされていない)。
    ところが、能力も彼女の愛称(あるいはメインの兵器)「デメテル」は、実に「しっくり来る」性格である(神々の母親にして農作物の神様の名を持ってくる、というネーミングのセンスは相当疑問であるが)。
    ……あまり彼女について言及するとwikipediaで言うところの「話の核心部分が明かされる」(ネタバレ)になるため、当面言及を控えたい。
    ただ一つ言及すると、彼女のプロトタイプ(?)退場時期とタイプΖの投入時期が、あまりにも短すぎる。
    シナプスの工業力をもってすれば短期間の急造は可能かもしれない。しかし、ここにはむしろ、通常の工程を時空の操作により、成し遂げた可能性がある。
    すなわち重力場を亜空間(?)に形成、時間の流れの差を利用して、緩やかな時間の中に工場を設置。
    完成時に通常時間の流れに戻す……などという超SF技巧を実現している可能性すらある(「SF的工場」へのページのリンクを、ここに貼る予定)
    いずれにせよ戦術・倫理・科学技術・情報工学すべてにおいて「非常識」といって良いシナプスのことであるため、両方の可能性も充分にありうる。
  • タイプη……
    おそらく、第二世代。ネーミングは比較的マトモで「セイレーン」という。
    シリーズで一番「かわいそー」なエンジェロイド。
    色々と主人公に翻弄された「シナプス」の「マスター」が、「少々本気を出して」製造(させた/した)エンジェロイド。
    水中戦闘用と銘打ったのは良いが、第11巻で登場早々に、カオスによって一瞬にして撃退されてしまう。
    つか、「水中戦闘用」であるにも関わらず、水底に横たわっていたカオスに気付かず、「マスター、助けてください」と泣きわめく (水中であるにも関わらず、涙が流れる様子が描写されている←血液? は水中に広がる様子が描写されている)。
    そもそも水中戦闘の何たるかを理解していないとしか思えない。むしろ、カオスは、自己学習により、水棲生物の捕食の要領で、 「おさかな」を「いっぱいいっぱい」「食べて」いた。水中生物で一番大事な事は、「自らは捕食し」なおかつ「他者に捕食されない(あるいは、個体は 少々捕食されても全体としては生還確率を上げる)」という生存戦略である。
    しかるに、事前に充分な設計方針も検討されずに製作されたとしか思えない彼女(?)は、あっという間にカオスに撃退されている。
    「シナプス」自体が、水中についての考察が不得手とみられるので、致し方ないといえば致し方ない。
    早々に退場(?)したため、以下の検証においても、彼女は使えない。 それにしても、設計を読者が検証する前に、早々と退場した(?)のは、極めて残念で「かわいそー」である。
  • θ……複数の「メラン」たちがいたが、詳細は不明。個々のメランたちはα・β・Δと同程度……。待て。空のマスター、γ2体のメランは作らなかったのか? まあ、作っても作らなかっても、当初予想どおり、結局カオスの「ごはん」となったと思うが。
  • タイプ不明……
    その他、作中の「シナプス」には多数のエンジェロイドが「はたらいている」様子が記述されている。
 さて……。
いけだたかし『ささめきこと』のある登場人物は「よくいるのよ勉強できるバカってのが」と宣っておられる(該当書籍へのリンクを、ここに貼る予定)
 水無月すう氏はその可能性がなきにしもあらずである。ネーミングのセンス、ドヴォルザーク(正しくはドヴォルジャーク)『新世界より』のオケ編成の不審(*cf. 0078)、当て字の多用(「全て」など)、数学の教師が「こんな問題も解らぬのか」と言って出す問題が「東京大学大学院(数学?)(?)の入試問題(?)」
(ちなみに少々高度な微積分・少々高度な行列・少々高度な数列……であるため、一般大学の理数学生ならば解けて欲しいものではあるが)。

……とまあ、作者そのものの粗さがしはこのあたりで中断して、本論のアストレアに入る(普通は「本論から書かなければ」略)。

ベータことニンフがデルタを称して言っている:
デルタは戦闘能力と感情制御を積んだため電算能力が弱い/つまり/バカなのよ……
待ってほしい。1分と言わず、数年ほど待ってほしい。その評価、私は、かなり疑問視している。
たとえば、『そらおと』6巻、自分のミッション(主人公の暗殺)を「うっかり」「スガタ先輩なる生徒」に話してしまうシーンである。
(アストレア独白):再起動中にうっかり機密をしゃべっちゃった。
なんとかしなきゃ/なんとかしなきゃ
アストレア:な、なーんてな夢見ちゃったなぁ〜☆(アクビのマネ)。
(スガタ):エンジェロイドは眠らない(夢を見ない)のではなかったか
アストレア:はうっっ/そうだったそうだった/それはアレよ!!えーとえーと(略)
新大陸なんかじゃないわ!!シナプス
(機密に気付き、手で口を押さえる)あっ!!(略)
(アストレア独白):また機密を聞かれちゃった/もうコイツ殺すしか!!
アストレア、刀(?)を持ってスガタに襲いかかる。
これをバカというのは酷である。上記のシーンを整理すると、下記のようになる。
  • アストレア自身の再起動中(ミッション再確認時)音声に出して、「うっかり」機密をしゃべった
  • 事実を認識。
  • 対処法の検索。
  • 検索結果を元に演技(しかも嘘と認識しており、冷や汗を流す←熱力学的に冷や汗という処置が必要かどうかの疑問は残るが)。
  • 上記対処法では説得不能であることを会話相手に告げられ、事態を認識する。
  • しかも、その方法では説得が無理であることを後から気付く
  • 「それはアレよ」と言いながら対処法の再検索を実施する。しかも、再検索実施中に「えーとえーと」と時間稼ぎをする。
  • 会話相手がさらに別の情報(新大陸)を伝えるが、その情報が誤りであることをを通知する。さらに、誤りを通知する際、
    内容が機密に触れれば事もあろうに、言っている途中の言葉を止める
    そして、声を止めるのみでなく、さらに速く情報を封じようとして、 自身の手で口を覆う
  • 再度機密を聞かれたことを認識。
  • 危険度を判断し、会話対象の殺害を決定。
  • 最適な武器(刀?)を判断し、用意して殺害を準備する。
……一連の動きをちゃんと動作するように、JavaなりJavaScriptなりVBなりVC#なりでプログラミングできるものなら、やってみろ。
#意外と簡単かもしれないがw。
##「フレーム問題」という非常に厄介な物が残るが、ここでは無視することにするw。
さらに問題は、一連のプロセスを自動生成するプロセス(プログラムを作るプログラム)……を作る。やれるものなら、やってみろ。

まず……。
  • 「後から気付く」ということは、「一度は選択された情報を、重要度に応じて取捨選択した」と考えられる。
    すなわち、検索結果には「利点」と「欠点」の双方の情報が提示されたはずである。
    しかし(いかなる演算かはさておき)利点と欠点を総合的に判断し、
    欠点側の情報を「いったん切り捨てた」。
  • しかし、いったん切り捨てられた情報について、完全に削除することなく、再利用した(完全に削除してから再検索したと考えるよりも、いったんUndo領域等の退避領域に保存して再利用した、と考えるほうが自然である)。
  • 情報処理的に一番簡単なのは、機密に触れることを最初から話さないことである(意外かもしれないが)。
    すなわち、全部のキーワードにセキュリティレベルを設定し、一定以上セキュリティに達する文章が生成されないようにロジックを構築すれば、「機密情報を守る」ことは、意外に簡単である(そのようにすれば、機密情報がそもそも出力されないはずだからである)。
    ところが、アストレアは、言いかけの言葉を判断し、しかもその言葉を途中で止めている(そんな「パソコン」見た事あるか?)。
  • しかも、速く情報を封じようとして(声を止めれば終わりなのに)、手で口を覆う。
    手で口を覆うためには、自らの体を傷つけない程度のスピード(しかもなるべく速く)動かす必要がある。
    作成者ダイダロスによれば「イカロスのような弾道計算もできない(おそらく複数の自動追尾ミサイル? を操作することを意味する)」らしいが、
    なかなかどうして、ある程度高度な、高校終了程度の物理・あるいは理系大学入学以上の物理の計算が為されているはずである。
  • アストレアにセキュリティレベルの計算能力は搭載されているはずである。
    というのも、「機密情報を二度聞かれたから排除を判断」と単純なIF文を想定するよりも、
    「会話対象の聞いている(短期間記憶レベル範囲内の)情報のセキュリティレベルの総和が致命的な数値に達した」と判断するほうが自然だからである。
    すなわち、アストレアは、「言っている言葉を途中で止める」などと回りくどい事をせずに「言わずにすませる」事が出来たにもかかわらず、あえて「途中で言葉を止める」方法を選択したと考えられるのである。この機能は理にかなっていると考えられる(「理にかなう理由」を「後述するように」という言葉をつけて、本ページ後半に追加する予定))。
  • 私が本作ヒロインの「イカロス」よりも「アストレア」を高く評価したいのは、最後の「最適な武器」の選択による。
    ニンフによれば、イカロスは、自身の育てているスイカの畑に「害虫が寄ってきたとき、アルテミス(自動追尾ミサイル?)で全部撃墜していた」という。
    無農薬野菜を栽培するには最適な方法かもしれないが、費用対効果を考えると、かなり疑問である。
    ところが、アストレアが主人公殺害の際に選択しようとしたのは、自身の刀(?)である。
    脊椎動物は頭部を切り離されると、生きられない。実に理にかなった兵器選択である
    (しかも後述するように、アストレアは「最適な方法」を判断する問題解決技法について、かなり高度な能力が搭載されている
    なお、一番費用対効果が高いヒトの殺害手段は、棒で対象の脊椎を強打することである
    (この方法でカンボジアのポルポト政権は多数の人々を効率的にかつローコストに処刑していった)。
    また、アストレアが確実に頸椎を狙っていることは後続7巻(雪合戦)の描写でも明らかである。
続いて……比較的柔かい話をば。
  • (第7巻P.13)主人公が、水着姿のアストレアを、非常に近い位置で(股の間)股間ごしに胸部を凝視しているカットである。
    問題は、直後のカット。主人公の幼馴染が「アストレアさん/前!!」と「ノゾキ」を指摘する。
    すると、アストレアは顔に汗の漫符を浮かべ「きゃ!」という台詞とともに、豊かな胸部ごしに両手で股間を押さえる。
    自らの翼を逆立て、両足を閉じてガードする。
    ……彼女の一連の行動は、いわゆる「ロボット三原則」の第三条「前掲一条(安全)および第二条(服従)に反するおそれのない限り、自己を守らねばならない(自己保存)。」を「羞恥心」という形式で実装したものと考えられる。
    ただし、エンジェロイドの股間に意味があるのかないのか不明であるが
    (情報処理機能は頭部に、動力炉は胸部にあると考えられる。
    なおヒトとの類似を考えれば老廃物排出口が股間に存在する可能性はある(*cf. 0077)
    しかし、エンジェロイドの排泄シーンは現在のところ描写されていない)

    少なくとも歩行において重要な「両足」のジョイント部分を保護しようとしたものと考えられる。
    ただ股間を押さえるのみならず胸部を保護しようとした事は、同時に動力炉の保護も図ったのであろう。
    また、「翼を逆立てた」ということは、生物の条件反射を模倣したのではなく、むしろ「不意の攻撃可能性」(主人公の近接位置におけるノゾキはとくに)と認識された可能性がある。
    したがって、「翼を逆立てた」のは、むしろ空(三次元・上向き)への緊急避難準備と考えられる。
  • (第10巻P.103)主人公がアストレアの能力(すなわちロボット三原則第二条(服従))を疑問視するシーン。
    (主人公):「お前がまともに命令を遂行できるとも思えないけどな!」
    アストレア:「なっ!?」
    (主人公):「だってお前ヴァカだし」(中略)
    アストレア:「私だって命令の遂行ぐらいちゃんとできるわよバーカ!!(少し上気させた顔に複数汗の漫符)
    /なんなら試しに命令してみなさいよ!!
    ズバッと遂行してみせちゃうんだから!」
    (主人公):「よし……!!/なら命令だ……/おっぱいもませろ!!」
    アストレア:「はいっ」(主人公がアストレアの豊かな胸部を「もむ」カット)
    (怒りの漫符とともにアストレアが主人公を右ストレートあるいは右アッパーと思しき技で殴るカット。なお、擬音がカット両脇に書かれてあるが、殴る音/アストレアの悲鳴双方ともに解釈可能)
    (主人公):ホラできねーじゃねーか/バーカバーカ!!
    アストレア:(かなり上気した顔で、より多くの汗の漫符を浮かべながら)「できるわけないでしょ!?/バーカバーカ!!」


    会話において声の音量は、ある程度影響する。とくに強点を置きたい時など、一時的に声を大きくすることがある。
    アストレアの「なっ」の言葉は「何」の略と思われる。また、(実際の会話ではありがちであるが)性急な主人公がアストレアの言葉を待たずに、「命令遂行能力に対する疑問」および「理由」を言ったものであろう。
    ロボット三原則第二条「服従」は実装済みであることを、力点を置いて彼女は話している、「命令の遂行ぐらいちゃんとできる」と。その際、急激な声帯運用を行ったため、顔面に熱が発生したのであろう。冷却のためか汗が分泌されている。なお、エンジェロイドたちには設計上、加熱から体躯を守るため各装置のある事は明らかである。イカロスは「動力炉の調子がおかしい」と過熱した顔の蒸気を耳から排出している(2カットほど)。また、第10巻Ζとの戦闘で「オーバーヒート」したニンフは体躯全体を休止状態にすることにより、全身の冷却を図っているからである。
    さて。ここで問題である。エンジェロイドたちの「おっぱい」に何か意味があるであろうか。
    シナプス人が哺乳類同様の生物であると仮定しても、エンジェロイドの「おっぱい」に納得いかないものがある(はずである)。

    ここで仮説を一つ立ててみる。
    エンジェロイドの「おっぱい」は、瞬発力発揮用の、特殊なエネルギータンクに転用されているのではなかろうか。
    胸部に動力炉がある関係上(何度も胸部にあることが示されている)、胸部に近い「おっぱい」が瞬発力用のエネルギータンクとして利用するのは自然と考えられる。
    また、通常動力用のエネルギーと戦闘に用いられる瞬発力用のエネルギーは、濃度か何かが違うのであろう。通常動力用は持続力が高く低燃費であるが(アストレアは「数か月ろくなものを食べていない」状態でも、まだ稼働していることを想起されたい)、
    瞬発力用は少量で一気にアフターバーナーが可能な非常に高度なエネルギーなのであろう(いずれも未知のエネルギー素材と考えられる)。エンジェロイドたちの「おっぱい」と運用形態を下記に比較してみよう。
    • α……
      主人公が「こいつ乳でけえ」と言うぐらいの、大きさ。カットにより微妙に胸の大きさが違うのは、戦闘前後において燃料の増減があったと考えられる(ここではあえて、水無月すう氏の画力について言及しない)。
    • β……
      誰からも「小さい」と言われ、確かにどのように見ても小さいと思われる。しかし、殴る蹴るの戦闘よりも「電子戦」を想定した彼女に、「アフターバーナー用」エネルギーは多量に必要でなかったのであろう。
      電子戦といえども、エネルギーを使う以上、エネルギーは必要である。しかし、彼女の装備は、いずれも、通常動力で賄われるものと考えられる。すなわち、彼女のアフターバーナーエネルギーは、むしろ緊急用装備と考えられる。
    • γ……
      では、スレンダーな双子の猫娘γたちの「おっぱい」はどうなるか、という話であるが、これも説明できる。すなわち、彼女たちの任務は、本来、「要撃」である。要撃ということは、本部・補給拠点から出撃・戦闘・撃破、そして帰還する、という意味である。数回分の戦闘分で充分なため、大きなアフターバーナー用エネルギータンクは、大きく設計する必要がない。むしろ、しっかりと兵装を整える方が望ましいと考えられる。したがって、γたちの姿は(意外と)理にかなうのである。
    • Δ……
      第一世代随一の瞬発力を誇るアストレアは、非常に「おっぱい」が大きい。近接戦闘用という。これも、仮説を裏付けている。 。
    • ε……
      意外かもしれないが、この「カオス」は、まともな戦闘を行っていない(原作上では←アニメ版はツッコミを入れる気力もなくなるぐらいハデ)。
      おそらく心理戦・諜報戦用に製造されたものと思われる。現に、βとの戦闘時においては幻影を多用し、心理的な傷を与えることに終始している。また、イカロスとの戦闘においても、自らの力をセーヴし、「自分で自分を壊す」ように持っていっている。……極めて高度な情報処理であり、非常に理にかなった、素晴らしいスペックの兵器である。しかし致命的なバグがある。彼女は良く、「愛ってなあに?」とエンジェロイドたちに質問していた(いけだたかし『ささめきこと』を読め、そこに答えが書いてある、と言ってやりたいぐらいだが)。
      彼女は、イカロスの不調「動力炉が痛い」と聞く。そして戦闘中に自ら「全身に痛い目」に会う。また、彼女は事前に「第一世代のエンジェロイドたちが『愛に走った』」とか聞いていた。そして、推論する。
      「痛いということが愛なのね」
      そして、その事(相手を痛めつける)を「みんなに知らせよう」と考える。
      まず、この推論を三段論法に展開した場合、妥当性がなくなる。少なくとも、「周延」の数がおかしくなる。したがって、意外とアストレアがキッチリ行っている推論エンジンにバグがあることに他ならない。いったんオーバーホールして、動作再確認をした方が望ましい。いや、シナプスにとっては、βなどよりもとてつもない欠陥であり、心理戦・諜報戦という任務の特殊性を考えると、いったん廃棄した方が望ましい。そして、ソースを徹底検証すべきである。
      おそらく、ダイダロスの作った第一世代の推論エンジンを流用し、心理戦用のアプリを搭載したと思われる。ところが、新アプリ搭載時に、ダイダロス・エンジンの改修が必要となったに相違ない(現実の業務アプリでは、連結アプリを作成時、そのようなハメになる事は珍しくない。将来の拡張性を考慮しきれなかったことによる現象である)。すなわち、シナプスは、ダイダロスが職務放棄した後にも、第二世代エンジェロイドを作る必要があった。しかし、その際、ダイダロス・エンジンに手を加えたに相違ない。また、こういった既存改修は、バグを容易に既存システムに起こしたり、既存の潜在バグを顕在化させたりするものである(これも、以下略)。
      図らずも、シナプスは、ダイダロスのサボタージュ(我々は良く、「前任者の時限爆弾」と呼ぶ)により、自らの脆弱性(システム・社会・etc)を露呈させたことになる。いずれにせよ、「欠陥品」の緊急度からするとεの方が大きい。βは確かにロボット三原則のうち第二条「服従」を違反している。しかし、イカロスよりも安定に動作していると思われるため、βは放置しておいて、カオスを回収して即刻廃棄する方が望ましい。
    • Ζ……
      まあまあ「おっぱい」はある(少なくともニンフよりは)。彼女は第10巻になって初めて性能を発揮したため、詳細は不明である(スピード・防御等)。ただ、明確となっているのは「気象兵器(?)」と対電子戦がメインとなっている。動くシーンはあまりなかったが、あまり活発に動くとは思えない。いずれにせよ「用途」というよりもプロトタイプ(?)に対する懲罰として急造された可能性が高いため、本来大した目的などなく、プロトタイプの「おっぱいの大きさ」をそのまま流用したものと思われる(骨格を流用、「おっぱい」は適当)。いずれにせよ、アフターバナーは「適当」であることが類推される。
    長い脇道から戻って……。
    アストレアが主人公に「もむ」ことを許したのは、セキュリティレベル低下によるものであろう。あるいは、セキュリティレベルがそこまで低下したと(いったんは)彼女が判断したものと思われる。
    しかし、「エンジェロイド」の「アフターバーナーエネルギー貯蔵嚢」と仮定すると、整備関連以外の者がそれに触れることは、文字通りロボット三原則第三条「自己保存」に抵触する。
    彼女は、警告の範囲内での懲罰行為として、主人公を殴る。そして、「(そのような場所を主人公に触らせる事など)できるわけないでしょ!?/バーカバーカ!!」と反論したと考えられる。

  • アストレアはアイデアメーカー(1)
    (第6巻P.40)
    雪合戦。主人公は雪だるま状に雪に埋められていて動けない。アストレアが主人公の首を刀(?)で首を刎ねようとした、その瞬間。
    イカロス「(途中三点リーダー省略)アストレア/マスター(主人公)に何かあったら許さないから」
    アストレア「(独白)ムリムリムリムリ!!/イカロス先輩怒らせたら絶対殺されるっ(略)
    仕方ない!/ここは一旦シナプスに報告に戻って」
    シナプス人「(回想、途中三点リーダー省略)おぼえておけ/Δ(略)お前まで失敗してノコノコ戻って来るようなら/おしおきだ!」
    アストレア「(独白)か/帰れない〜ッ!!」(略)
    ナレーション(?)「任務は果たせない/家(シナプス)にも帰れない/ということで/ようこそ!!/河原(サバイバル)へ!!」
    (河原で寒さに震えながら釣りをしているアストレアのカット)。
    整理しよう。
    • 任務遂行→マスターに「何か」ある→イカロスがアストレアを許さない→ロボット三原則第三条(自己保存)に違反。
    • 任務遂行せずに報告のためシナプスに戻る→任務不服従すなわちロボット三原則第二条(服従)に違反→さらに不服従に対する懲罰(おしおき)が待っている→第三条(自己保存)に違反。
    素晴らしいの一言に尽きる。
    三原則をどのように考え、どのような順番で組み込んであるか定かではないが、アシモフ通りではないと思われる。
    大昔に、とあるシミュレーションゲームがあった。画面上のロボットたちに疑似プログラムを組み込んで、ロボットたち自身に倉庫の中の箱を移動させるのである。
    この際、疑似プログラムに不備があり、「にっちもさっちも行かなくなる(ジレンマに陥る)」と、ロボットたちは呆然と天を見上げたまま、一切の動作を停止する。動作を再開させようと思ったら、それなりの費用を払ってロボットを回収し、プログラムを組みなおさねばならない。
    アストレアの場合も、本来、その場にずうっっっっっっっっと立ちつくすはずである。何の予防措置もなければ。
    ところが、アストレアは、緊急避難を行った。「任務遂行」も「帰還」もできない。「任務の先送り」をしたのである。
    「任務の放棄」(すなわちロボット三原則第二条に違反)を選択していない事は、第7巻で主人公の命を狙っていることでも明白である (しかも、その回においては、さらに都合の良いように、「自らの犯行を否定し、水難事故」と主張できるよう小細工を弄している)。
    アストレアは河原での生活を始めた。コンビニの食糧等をあさるホームレスにならなかった事は想像に難くない。舞台は人口七千程度の町とはいえども、 あまり民度の高くない様子が伺える(服屋を固有名詞で呼び合っている事から、町に服屋は数多くあるようには見えない)。 すなわち舞台となっている町は、ホームレスを抱えるほどの余裕も、空き缶を拾い集める無職の人々を養う余裕も、ないはずである。
    また、場面に描かれる季節は雪合戦可能な時期であり、田畑の作物を盗んで糊口をしのぐことも難しかろう。
    野鳥・野獣を密猟すれば、もっと違った展開を見せるはずだが、彼女は行っていない。
    おそらくシナプス人たちは、鳥を食べることを躊躇するのだろう。ヒトが猿を食べるのに躊躇するのと似たものかもしれない(中華料理にはあるが)。
    また、作中にはよく熊が描写されるが、熊を食おうにも、相当山奥を探さねばならぬであろう。また、任務遂行の事を考えれば、 あまり山奥に潜り込まないほうが良いかもしれない(また、「熊を狩る」という行為は、後述の問題がある)。
    先輩生徒がなぜか河原で生活(自活)しているという先例もヒントになったのであろう。
    彼女は、河原で生活を試みるようになる。
    おそらく彼女は、シミュレーションゲームのロボットのように、しばらく天を見上げ立ちつくした。
    しかし、そこで、ロボット三原則第三条(自己保存)のための何らかの機能が働いたと思われる。
    そのため、彼女は任務の遂行(あるいはそのまま立ち続ける事)を【中断】し、自己保存、すなわち生活手段の確保を行ったのである。
    もしもアストレアが本当にバカならば雪合戦の行われた校庭で、朽ち果てるまで立ちつくしていたであろう
    (ちなみに彼女よりも学校の方が先に朽ち果てていると思われる)。
  • アストレアはアイデアメーカー(2)
    (第7巻P.23)泳ぎの達人の主人公が急に「カナヅチ」になったのをアストレアが見る。
    アストレア、(回るプールの)管制室を見る。
    アストレア:「(独白)これは/もしかして/(改ページ)こいつを殺(や)るチャンスなのではッ!?」
    (続いて第7巻P.27)
    アストレア:「管制室で流れの速さを(致命的に暴走するよう)ちょちょいとね?/泳げないアンタにはたまらないでしょう!!/そのまま溺れ死んでしまいなさ」)
    「しまいなさい」が途中で切れているのは、アストレアがプールサイドで滑って、自ら回るプールに落ちたからである。
    このシーンのみを見ると「ドジっ子」と思うが、これまた数年ほどまって欲しい。
    • 「すべての人は、水に入ると溺れる(そのまま看過すると死に至る)」
    • 「ある暗殺対象がカナヅチになった(水に入ると溺れる)」
    • 「その暗殺対象を水に入れて看過すると死に至る」
    うん……、妥当な三段論法。
    ダイダロス・エンジンの正常動作が確認できる。しかし、目を向けるべきは、「管制室」である。
    「回るプールは『管制室』で流れの速さを人が溺れないようコントロールしている」→「人が溺れるようコントロールできる可能性がある」
    そして、上記の三段論法につなげる。
    すると、「泳げない暗殺対象の入った『回るプール』の流れを暴走させ、その者を死に至らしめる」という行動の企図につながる。
    これは、立派な問題解決システムである。
    しかし、このような問題解決システムは、近接戦闘エンジェロイドには必要不可欠であると考えられる。
    近接戦闘ということは、ショートレンジで、すばやく変わる状況に即座に対応する必要がある。
    半ば反射的に、問題解決すべき事もあるだろう(敵の攻撃をかいくぐって、逆に敵に攻撃を加える)。
    すなわち、彼女の「管制室暴走」という行動は、むしろダイダロスの周到な設計方針が百パーセント活きた形なのである。ダイダロスは、「電算能力を高性能にしなかった」とか言うが、とんでもない。エンジェロイド全タイプを通じて、彼女は一番の問題解決能力を有すると考えられる。すなわち、ドジっ子アストレアは、(情報処理の理論から考えると)意外と「ものすごく賢い」と言えるのである(逆に、イカロスは、いま一つ)。

    ダイダロスの素晴らしい設計に、感服せざるを得ない。
    なお、彼女は、直後、プールに落ちている。
    プールサイドの水を危険と感知しなかったのであろう。おそらくそのような学習はなかった(そもそも彼女自身、天空の住人で、水とは無縁のはずである) これは、致し方ない。
    それに、通常、その程度の看過は彼女の能力にとって、本来問題にならない(許容範囲)だったろうからである。

  • アストレアの感情制御はダテではない(1)
    (第7巻P.51)
    アストレアが食事ができず(「数か月(略)ろくなものを食べた覚えがありません」)、「行き倒れて」いる。
    エネルギー消耗による、休止モードに入ったと思われる。このような状態においても胸の大きさがあまり変わっていないので、やはり
    胸はアフターバーナーエネルギーと考えられる(通常エネルギーは別)。ここで驚かされるのは、直後のカットでの彼女の独白である。
    アストレア:「(独白)食べ物の……におい?」
    アストレアは、一般の食糧を補充的(?)エネルギーとして摂取していると考えられる。また、食糧を探知するため、ヒト同様、大気中の分子を「におい」として 感知する機能がある。
    いずれも、「エネルギー摂取」としては理にかなっている。ところが、次ページ(第7巻P.52)。
    「ざばあっ」と先輩生徒が釣り上げたのは、アストレアだった。
    つまり、アストレアは、遠隔地の釣り竿の先、水中の餌を「自身の食糧として摂取可能」と認識したのである。
    これは、驚くべき嗅覚である。アストレアの「嗅覚」が、実はSF的な能力である可能性もある(SF的「嗅覚」に関する考察ページへのリンクを、少し遠い未来にここに貼る予定)が、あまり言及されていないため、先を急ぐ。
    先輩生徒は、釣り針に釣られながらも「もぐもぐもぐもぐもぐ(略)」と餌を食べ続けていたアストレアを見て、「ス……」と「釣りのエサ」をアストレアに差し出す(同P.53)(なお、この「釣りのエサ」の方の匂いを感知した可能性もあるが、最初に食らいついたのが釣り針である事を考えると、「誰かの所有物」として摂取対象から迂回させたものと思われる)。
    アストレア「えっ!?/くれるの!?/ありがとう!!」と嬉しそうに言う。
    物をプレゼントされたときに「そのように答える」というプログラム、ではない。直後のカット:
    アストレア「やった!!/久しぶりの食べ物だ!!/わーい!!」ととびっきりの笑顔で。
    これは、意味がある。シナプスの非常識人どもとダウナーと蔑視されるヒトと、生物学的な類似があるかどうかは全く言及されていない(シナプスは背中に翼をしょっているため肩甲骨等がヒトと異なる、ということは内臓もかなり異なることも予想される)。しかし、ここはあえて、動物学的に、かつ心理学的に、ヒトとシナプスが類似していると考えよう。また、エンジェロイドは「シナプス人」を模倣した(Ζのように)モノであると考えよう。
    すると、彼女の笑顔は、意味がある。これは、感情制御なのである。
    食糧摂取(エネルギー補助摂取)を「喜び」と表現する事は、ロボット三原則第三条にも合致する。非常に遂行しやすいであろう。また、エンジェロイドに感情表現を持たせる事は、使役する側すなわちシナプスにとってもメリットとなる。というのも、「任務遂行命令」=「表情引き締まる」、「任務達成」=「嬉しい」、自己保存に合致する=嬉しいなどと表現してくれると、コミュニケーションを充分補助してくれるであろう。
    この表情をシナプスがコミュニケーションの補助手段としていることは、同書P.164の描写でも明らかである。
    性格及び知能に欠陥があると思しきシナプス人が脳内(?)通信機でしつこく命令する場面である。
    シナプス人「(通信で)何をしているデルタ!!(略)早く(略)止めを刺せ!!(拒否したい命令にアストレアが苦痛? で歯をくいしばって汗をかいている様子) 聞いているのか/デルタ」
    すなわち、シナプス人が、応答しない、表情も解らない事で「万一、聞こえない(通信障害)事態が発生しているのか」と困惑しているのである。
    コミュニケーションにエンジェロイドの表情が利用されていることも、充分に伺える。
    なお、この表情は、本書で鬼畜な振る舞いをする「シナプス人」のストレス解消にも役立っているはずである。
    ドSなシナプス人は、「暇つぶしに」ドMなニンフを蹴りつけて喜んでいる。またドMなニンフの泣き笑い・耐える表情は、ドSの心に、耐えられないものがあるw。
    したがって、シナプス人の行うべきことは、タイプβニンフの廃棄ではなく、量産ではなかろうか。すなわち、「お互いにバトルロワイヤルしろ」とか色々無理難題を吹っ掛けて、ニンフのMな表情を満喫するのである。ところが、おそらくアストレアよりもオツムの弱いシナプス人は、ニンフの傷め付けをエスカレートさせるだけで、自らの発想力の貧しさを棚に上げて「暇だ暇だ」と不満を漏らしている(ちなみに発想力もアストレアにすら劣っている)。なお、イカロスの無表情であるが、本人の資質もさることながら、シナプス人に対する無言の抵抗というパフォーマンスの可能性がある。すなわち、同僚に対する仕打ちを快く思わない彼女(「ニンフが笑っているところを見たことが一度もない」)は上司に対して、無表情を貫くことで上司とのコミュニケーションを拒否するのである(思い当たる上司は、即刻、自らの振る舞いを考えなおすべきである)。……と余談はさておき。
    「ひとつひとつ味がなくなるまでしっかりかまなくっちゃ!!」とアストレアは「もぐもぐもぐもぐ」釣りの餌を食べている。
    ダイダロスは、心理学的な機能を「舌(味覚)」に連結させた可能性がある。
    現実の人間でも、メイン・エネルギーの糖分を摂取したとき、まず、脳内に「幸福感」が醸成されるという。そして「幸福感」の後に、はじめて「甘い」「うまい」が出てくる、と言う。「甘い物」は「うまい物」と認識されやすいのである。また、
    ホメオスタシスの維持のために「幸福感」は必要である。
    一見愚かしい行動「釣りの餌を『味がしなくなるまで噛み続ける』」は、実は心理学的に、アストレアの自己防衛の機能だったのである。

  • アストレアの感情制御はダテではない(2)
    (第7巻P.54)
    アストレアのホメオスタシスは崩壊寸前であったと推測される。前項指摘ページの直後、アストレアは「みじめ」と地に倒れ伏す。ところが、ここで、面白い現象が発生する。
    • アストレア「(独白、なお以下、すべて三点リーダー省略)こうなったのもぜんぶアイツ(主人公)のせいだ!!/こうなったら/復讐よ/(改ページ)アイツを同じ目にあわせてやる!!
    • (場面変更、空っぽの冷蔵庫の中で、アストレア、頭に「ほっかむり」している。そして、両足をかかえて「しくしくしくしくしく」と泣いている)
      アストレア「(ニンフに何をしているのか尋ねられて)冷蔵庫中に何ひとつなくて/悔しいからアイツの食料全部食べてやろうって思って来たのに/何ひとつないって何なんですか?何なんですか!?」
    • (キッチンの描写のみ、大きく「うわーん!!」とアストレアの号泣と思しき擬音)
      アストレア「ニンフ先輩おナカすいたーっ!!」
      (「ゴロゴロゴロ」と転げまわるアストレア)
      アストレア「ごはんー!! ごはんー!!」
    • (中略)
      (イカロスの育てているスイカを大量に食べて、妊婦のように大きくなったおナカを手で押さえるニンフとアストレア)
      ニンフ「おなかいっぱいねー」
      アストレア「ええ/幸せです〜

    整理しよう。
    • アストレアの任務は果たせない。それも、主人公がイカロスのマスター(主人)であるため、マスターの「排除」は、自己存続の危機となるからである。
      本来の(アシモフの)「ロボット三原則」に従えば、アストレアは任務を遂行しなくてはならない。すなわち「命令違反しない限り、自己存続させねばならない」のがアシモフ三原則であるため、たとえイカロスが「許さない」と言っても、アストレアは主人公を「排除」せねばならなかったはずなのである。
      ところが、アストレアは自己保存の方を優先させた。我々の感覚からすれば、とんでもない話ではある。
      しかし、アストレア等の制作者ダイダロスは、この事態を見越していたものと推察される。
      シナプス人たちは無理難題をエンジェロイドに押し付けている(一例:ニンフに、ニンフの可愛がっている小鳥を「(生きたまま)引き裂け」と命じる)。
      「阿呆な命令ならば、聞く必要なし」と考えていたと思われる。というのもダイダロスは、アストレアと主人公がじゃれあっているのを (何らかのテクノロジーを用いて)覗きながら「楽しそう」と喜んでいるのである。それはともかく。
      「こうなったら復讐よ/アイツを同じ目にあわせてやる」
      素晴らしい推論である。
      • (アストレアから見れば)食事もかなわぬ(生活手段喪失)理由は、主人公の存在そのものである。
      • 主人公の排除は、現時点でもできない。
      • 主人公を排除せず、自らの苦境を主人公にも味あわせよう。
      • 悔しいからアイツの食糧全部食べてやろう
      彼女は、自己存続と(場合によっては)任務達成可能な解決策を見出したのである。素晴らしい問題解決システムである。
      ただ、本項は彼女の「アイデアメーカー」としての能力を取り上げるものではない。むしろ「感情制御」を取り上げたい。
      彼女は「悔しいから」と動機付けを行っている。すなわち、問題解決のみならず、自己のホメオスタシス維持のために 主人公の食糧を「盗み出そう」というのである。
    • しかし、主人公宅のメイド(?)と化しているイカロスは、偶然その日、買い物が未完了であった。冷蔵庫は空っぽ。そこで、彼女は「しくしくしくしく」と泣いている。さらには、ニンフに「おナカすいたー」と号泣。ヒト同様に、「泣く」「大声を出す」ことにより、ストレス解消を図っていることが推察される。
    • さらに彼女は「おいしい」「甘い」スイカを大量に食べて、「幸せです」と言っている。
      味覚のみならず満腹感を「幸福」と感じている証拠である。なお、ヒトの場合、満腹から得られる幸福感に依存するあまり、過食症になる者がいる。
      すなわち、過食症は、れっきとした精神的な病理現象と言える。
  • アストレアはアイデアメーカー(3)
    (第11巻P.68)
    「そらおと」は民度の低い土地柄の町を舞台にしているが、住民たちの音楽的素養の高さには、驚かざるを得ない。
    ネット通販サイトでは、非常に多種多様の「作曲の仕方」「作詞の仕方」という本が出回っている。
    これほど多種多様の「作詞・作曲の仕方の本」が出回っているという事情は、すなわち
    • 多数の「作詞・作曲のノウハウを要求する」人が存在する
    • ただし、「作詞・作曲のノウハウを書く人」の著作は、要求を充足させていない(すなわち、作詞・作曲のノウハウを「知っている(つもり)」の人が 「教える(つもりの)」目的で著述しているにもかかわらず、読者の要求を充足させていない)
    • 多数のノウハウ本が出回る。しかし、どれも、要求を充足させていない
    • 結果として、「使えないノウハウ本」が、どんどん世に増えていく
    という事に起因する(おお、大多数の「成功本」も、この範疇に入るようだw)。
    ところが、舞台となる町は、いずれの人も、(それなりに)作詞作曲を嗜むようである。
    これは、非常に驚かざるを得ない。
    しかも、驚かされる事に、アストレア自身も、(即興で?)自作歌を歌うのである!
    ごはんの歌:
    毒キノコってなんですか〜〜♪
    カラフルなやつ〜を食べる〜と〜
    体が痺れるのはどうしてですか〜?
    クマに襲われて〜♪
    タヌキにかじられて〜♪
    おなかがすきました〜♪
    これは、別途「カオス・バグ」で論じる問題であるが、ダイダロスの設計方針として、「学習する必要のない項目は、学習しなくてよい」と いう思想があったに相違ない。
    元々、ダイダロスは、第一世代エンジェロイドを制作時、忠実な(?)シナプスの住人であった。
    そもそも、「不用意に物事を学習されると、本来の任務に支障が出る」と考えていたとみられるフシもある。
    そして、彼女の設計方針を徹底化したのが、「ヴァカ娘」ことアトスレアであると思われる。
    「シナプスの」近接戦闘用エンジェロイドであるアストレアにとって、「毒キノコ」に関する知識は、本来、不要である。また、学習する事も、不要である。
    というのも、通常動力も瞬発用動力も、エネルギー源はシナプスで補給すれば良いからである。
    逆に、「シナプスで補給が出来ない」という状況は、「シナプス」も「アストレア」も「終了してしまっている」状況であり、
    考慮する必要がない。
    たとえでいえば、うるう年の計算をする際に、「バカ正直に、数千年後の閏年を愚直に計算する」ことはせず、 「単純に『4年に1度』と計算して設計・プログラムの負担を軽減する」ような事である。
    代わりに、アストレアの「アイデアメーカー的能力」と「質問能力」を、ダイダロスは高めたと考えられる。
    彼女は、よく、挙手をし、「〜って何ですか?」と質問をしている。
    質問も何もせず「仕様書の通りにプログラム作りましたが?」とほざく(しかも出来上がりが仕様書通りでないという)能なし外注プログラマよりも、よっぽど賢いと言わざるを得ない。
    そもそも、「そらおと」の読者たちで、即興で、「アストレアの歌」として上記「ごはんの歌」を作れる者が何人いようか。
    ゼロ、と考えて良い。もちろん、その数の中には、近年まれに見る良書の少年漫画を提供してくれた角川書店編集部、および 作者「水無月すう」氏を含んでいる事は言及するまでもない。
    なお、上記「ごはんの歌」の場面は、無視できない点を、いくつか含んでいる。
    • クマに襲われて/タヌキにかじられて
      だから、そのクマとかタヌキとかを狩りたてて食すれば何の問題もない、というのに……。
      ここには、どうやら、「『密漁は良くない』」という倫理感を実装した」と考えないほうが無難である。
      むしろ、「タヌキを狩る」「クマを狩る」行動が、「戦闘行為」と同一視されかねない「連想」を迂回させようとしたのであろう。
      本来、人間ならば、「恐怖(逃避)」あるいは「狩る(攻撃)」の行動へと二分される。
      しかし、彼女の場合は、「とりあえず『固まる』」事により「いったん判断回避」するようになったと思われる。
      その「いったん判断回避」が彼女の日常を歌ったと思しき、「クマに襲われて/タヌキにかじられて」という句に表れている。
      ダイダロスが「空腹に対する狩り」と「戦闘行為」を連想づけないようにした理由。
      それは「空腹のあまりヒト(とくにシナプス人)を襲う」という事態を避けたかったからに相違ない。
      「カオス・バグ」のページで言及する事であるが、ダイダロスは各エンジェロイドを設計時、 周到に、「シナプス(すなわち当時の自分たち自身)に牙をむかないように」考慮したと考えられるからである。
    • (毒キノコを食べると)体が痺れるのはどうしてですか〜?
      舞台の町の人々は、アストレアに大分慣れたのか、「(今アストレアが歌った形状の物こそが毒キノコであるということを)学習しろ」「学習しろ」と、 一様に独白している。
      そういった学習自体が、本来の彼女に不要である、というのは上述したとおりである。
      問題は「体が痺れる」という事にある。この件に関しては、私がダイダロスを代弁してみよう。
      そもそも、いわゆる「毒キノコ」なる物が、シナプス人/エンジェロイドたちにとって「毒性があるかどうか」の検証はさておき、 純粋に「毒物を経口摂取した場合」に、どのような反応があるか、考えてみよう。
      • 何も起こらない(消化する)……
        可能なはずである。というのも、前述のとおり、エンジェロイドたちは例外なく、「対消滅エンジン」を搭載していると考えられる。
        毒物を摂取した時、何も言わずに黙って消化(毒物そのものをエネルギー転換)する事は、シナプス人にとって朝飯前のはずである。
        しかしながら、それは「長期的に望ましくない」とダイダロス(他)は判断したのだろう。
        というのも、仮にシナプスに伝染病が発生し、罹患した食べ物を経口摂取。エンジェロイドが何も言わずに消化してしまえば、 被害はシナプス人にのみ発生し、エンジェロイドは無害という事態が発生する。
        そのような事態は、シナプス人にとって、許しがたいであろう。したがって、「毒物を何も言わずに消化する」反応を実装することは、あり得ない。
        何らかのアラートを出すはずである。
      • 何らかのアラート(警告)を報告させ、消化するなり毒の成分をフィルター等に含んで排出する。
        可能なはずである。というのも、エンジェロイドに排泄の概念はあるはずである(ニンフが、「押入れに引きこもった主人公」に対し、「トイレはどうするのか」という疑問を発している)。
        シナプス人の外観を模倣したと思しきエンジェロイドたちが、シナプス人同様(すなわちヒト同様)に排泄器官(場合によっては性器までをも)実装している 可能性は、別途ページにおいて論じたとおりである。
        すなわち、毒は消化せず、排泄物とともに排出し、「このような毒が混じっておりました」と報告する事がエンジェロイドには可能なはずである。
        ただし、かような医学的対処(もしくはスカトロジスティックな対処)は、シナプス人たちの美的センスに合致しない可能性が高い (地上の町における「トイレ」(という存在)の描写はあるが、第11巻現在、シナプスにおけるトイレの描写が皆無である。 存在が皆無ではなく、存在自体が希少もしくは「トイレを用いない処理」が彼らのテクノロジーにおいて可能なのだろう)
      • 摂取しない(経口により排出、すなわち嘔吐する)……
        ヒトにおいても、相当程度、この反応はある。毒物のみならず、過剰な飲食時(もしくは拒食症)においても、嘔吐による摂取拒否 をヒトは行っている。古代ローマに至っては、「目の前の饗宴の料理を平らげるため」わざわざ嘔吐しては、食事を続行するなどという 本末転倒な所業すら行っている。
        ただし、嘔吐反応を用いた場合、どうなるか。
        食事の皿に(場合によっては、シナプス人たちが列席している中で)、嘔吐する事になりかねない。
        それはそれで、緊急時、対処がしやすいという話ではある。
        だが、これまたシナプス人たちの美的センスに合致しない可能性が高い。
      • 摂取する。ただし、摂取した事を痙攣という反応で、麻痺状態をシミュレートしたアラートにより、自他ともに通知する……
        おそらく、ダイダロス他シナプス人たちにとって、最も美的センスに合致した反応であろう。
        現実のヒトに対しては、胃(すなわち脳)が「毒物」と認識せずに摂取した物が、摂取後の反応として、個別の成分の性質により、 さまざまな反応がなされる(酒・その他薬物による酩酊等を含める)。
        しかしながら、エンジェロイドが直接、毒物の成分により「エンジェロイドの神経系(?)」が反応する事は考えにくい。
        毒物は毒物として摂取し(消化し)、「毒物を摂取した」という情報を「痙攣状の麻痺というエラー反応を神経系(?)に発生させる」 ことにより自他ともに通知する。
        このようにすれば、食事の場に出くわしたシナプス人たちの美的センスを阻害することなく、またエンジェロイドたちの経口摂取に 「警告を発する」事が可能である。この「経口摂取に対するエラー反応」は、エンジェロイドの生存原則を守るため、 標準実装されているのであろう。
        なお、「学習せず(出来ずに)なおかつ、毒キノコを食べ続けている状態」は、アストレア登場以来、変わらない。
        すなわち、毒物の依存症になることなく(完全消化している)しかも、「痙攣は一時的なもの/微細なもの」であり 活動に支障がなく、「ただただエラー反応がなぜか出る」とのみアストレアに認識されている可能性が高い。
        すなわち、毒キノコといっても、アストレアにとっては、「何かエラーが出るけれども問題なく食べられる」代物に過ぎないのである。
  • #近い未来、さらにさらにさらに徹底検証し、ヒトとエンジェロイドの「記憶」に迫る予定w。