2011/01/29 追加
erudition-0085
パラダイス・ソング……その理論と実際(?)
大人げなく少年漫画「そらのおとしもの」における技「パラダイス・ソング」について無意味に論じてみました↓。

「そらおと」には、SF的な兵器が頻出する。また、漫画という表現媒体の特質上、「表現された事物を写実的に看取してはならない」というお約束が存在する。
というのは、(「デト・トネドラ」にも記述したが)登場人物の背後に燃え盛る炎が描かれてあっても、「火事に巻き込まれた」のではなく「火を発しかねない程の怒りの漫符」と受け取らねばならないからである。それはともかく。
「そらおと」の「武器」「装置」には、「われわれのテクノロジーと同じ物」もある。しかし、額面どおりに受け取るのは危険だろう。

  • レーダー、ステルス……
    電波を投射して反射波を受け取って(主に)金属物体を探知する装置、と考えないほうが無難である(同様に、「ステルス」もわれわれの「レーダー」に対して隠密性がある、と考えないほうがよい)。
    ここは、SF的に「三次元的な何か」すなわち「存在そのもの」を何らかのテクノロジーにより検出するシステム、と考えたほうが良さそうである。 たとえば、第6巻177ページのニンフのセリフ:
    レーダー性能がかなり落ちてるから/水はちょっと探知できないかも
    ……いや、超音波を使えるなら、地中の液体の検知ってできるのでは?
    という疑問は封印しよう。質問者(生徒会長・女性)が、わざわざ「レーダーで」と言っているのであるから。SF的な物体検知機能がある、という考察は、 他にも証拠がある。
    たとえば、アストレアが「釣り針の餌(遠隔地・水中)」の「匂い」を嗅ぎ分けた事を想起されたい。空中・水中に浮遊する分子を捕捉したというよりも、 むしろSF的に「遠隔地の摂食可能な物質の概要を検知した」という事を「匂いがする」と表現した方が、自然(?)である。
    さらに第10巻、ニンフが「レーダー」を用いて竜巻の中にエンジェロイドを発見するシーンのインターフェースと、第2巻ニンフがαに 「ねえ……いいかげんアルテミスの捕捉解除してくんない?/頭の中ミサイルアラート鳴りっぱなしでおかしくなりそうなんだけど!」と不平を述べるシーンの インターフェースが酷似している。
    グローバルデザインとして統一されているとも考えられるが、同一の「レーダー」システムを利用しているとも考えられる。
    エンジェロイドを発見するのは、通常のレーダーでも可能(?)であろうが、「自らターゲット・ロックされている」と検知可能なシステムと判断するほうが、 無理からぬ。
  • ジャミング……
    「そらおと」においては、「探知妨害」あるいは「(好人物と)誤解させる」という文脈に用いられる。
    詳細は、ネタバレになるので記述を避けるが、シナプスには「生命体の頭脳について、惑星規模に干渉する能力がある」事が証明されている (Ζ登場直前のシーン)。
    また、後述のように、実際に「惑星規模」を超え、次元を超えた干渉が可能である。
さて。問題は、「パラダイス・ソング」である。
「パラダイス」でもなければ、「ソング」でもない。
ネーミングに困ったのであろうか、「超々超音波振動子」と漢字が用いられている。
ただし、「パラダイス・ソング」が通常の「超音波」を用いない事は明らかである。

音とは空気の振動である。1秒間に1回空気をポンと叩くと、1ヘルツの音が生じる。
超音波とは、ヒトの可聴領域を超えた音、と言える。
また、音速を超えた物体には衝撃波が発生する。
これらを踏まえた事象が、「パラダイス・ソング」の元ネタとなっていると考えられる。
すなわち、「衝撃波状の何か」の照射により、敵を粉砕する兵器、と考えられるのである。
パラダイス・ソングの正体を探る(後述のとおり、断じて音ではない)前に、「パラダイス・ソング」の効果を原作から抽出してみよう。
  • 第2巻32ページ:
    「粉々にしてやる」
    効果不明。ただし、「敵を粉々にする意図」のある兵器と想像できる。
  • 第4巻13〜14ページ:
    「ドオオオオン」砂埃、地面が抉られる。
    この描写のみならば、音速を超えた物体の発射・発生する衝撃波を用いた兵器と判断可能ではある。しかし、後述の理由により、この方法は却下される。
  • 第10巻45ページ:
    「ドカアアア」と「竜巻」を乱す。
    「竜巻」の正体が不明(一応、気象兵器? デメテルの現象らしいが)であるため、乱したのが何物かは不明。
  • 第11巻81ページ:
    石化した主人公・アストレアにヒビを入れて「ゴバン」と砕き割る。
    ただし、この「石化」および破砕は、あくまでも漫符と受け取るべきである。
    注目すべきは同一カットの中のα。すなわち、正体不明バリアー「イージス」の中に隠れ、なおかつ「自らの指で両耳に栓をしている」のである(これは、きわめて重大な示唆である)。
  • 第11巻82ページ:
    • 前頁に続いて、同じ(?)町の動物園の動物たちが目を回し落涙
    • Ζの目を回しノックアウト
    • 作物が「しおしおしお」と枯れ、「バラバラッ!!」と粒子状に散る
  • 第11巻83ページ:
    • さらに前頁から続いて、シンガポール・ニューヨークと思しき都市に到達する
    • 月・金星・水星と思しき衛星・惑星に到達し部分的な亀裂・破損を生じさせる
  • 第11巻84〜85ページ:
    さらにさらに続いて、太陽に影響をもたらす
    原文では「太陽が欠けた」とあるが、字義どおり受け取らないほうが無難。なお、太陽と比較して惑星が大きいような気もするが、 あくまでもイメージと理解しよう。
  • 第11巻86〜87ページ:
    • 人々から言葉を(一時的に)奪う(テレビ番組・人々の会話・犬の鳴き声が全部「ホゲ」になる)。
    • 結果として「世界中の紛争が終結」「人類は有史以来初めて平和を手にする」 (アメリカ合衆国大統領と思しき人物と、アラブ系テロリスト・リーダーと思しき人物が、二人揃って笑顔で握手する)
今一度、「パラダイス・ソング」の漢字表記「超々超音波振動子」を確認してみよう。そこには「超音波」とは書かれていない。
「超音波を超え、さらに超えた物の振動子」とある。
以下に、仮説により、「パラダイス・ソング」の原理を想定してみる。
宇宙理論において、ダークマターの正体は、2010年現在、いずれも仮説の域を出ない。
しかしながら、「ダークマターは銀河をつなぎとめるのに役立っている」「ダークマターの存在なく、重力の理論のみでは銀河系島宇宙を構成することができない」とも 言われている。
そこで、「音が空気の振動である」事を思い出してみる。……さらに、「ダークマターが何らかの振動を見せれば?」
それは何らかの効果がある物と考えられる。
ただし、今は、「パラダイス・ソング」が、「ダークマターに関連する可能性がある」という示唆のみに留めておこう。 ここは、漢字を純粋に読解してみる。
「超音波」これは、可聴領域を超えた、ただの音、すなわち三次元的な「空気」の振動である。当然ながら大気圏内のみ伝わり、真空中に伝わらない。
平面を三次元方向に動かした軌跡は、立体すなわち「超平面」と呼ぶことができる。
全く同様に、立体を四次元方向に動かした軌跡は、「超立体」と呼ぶことができる。
では、「超超音波」とは? 四次元方向、たとえば1次元の時間軸に沿った、何らかの超音波(?)的な物と推定できる。
では、「超々超音波」とは? 五次元方向、たとえば空間の三次元および時間の1次元計4次元のいずれの方向にも垂直な方向への「音(?)」的な振動と推定できる。
もしも、「パラダイス・ソング」が5次元方向の振動を媒介した3次元世界への攻撃兵器と仮定すれば、「超音波」という印象に相違して、きっちり1天文単位にまで 影響が及んだのも頷ける。ただし、αがイージスの中にいるにもかかわらず耳を塞ごうとした事を考えると、超次元気圧(?)の変化による聴覚の異変を防止しようと したのであろう。すなわち、威力は大気圏の中にこそ発揮し、5次元方向(あるいは1天文単位の宇宙空間)への影響は、きわめて小さいもの(といっても三次元世界から見れば、無限に近いと思われるのだが)なのであろう。
いずれにせよ、(ダークマターに影響する場合も、超次元的な兵器である場合も)「パラダイス・ソング」の濫用は、「地球に優しくない」事が予想できる。