ダイスケ  日だまり日記

(13)

3月1日〜3月31日

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3月1日(土)  「おたがいさま」

今日から3月、これからひと雨ごとに暖かくなると思うとうれしくなるね。やっぱり寒いより暖かい方がいいもんね。でもきょうは朝から冷たい雨が降っている。こんな日はオドは朝から飲み始めるんだ。(もちろん牛乳じゃないよ)。

きのう、お隣の空き地にブルドーザーが入って土を入れて整地をはじめた。ガガガー、ドッコンドッコンとものすごい音と地響きで、ボクはビビってあわてて逃げ出した。でもきょうは静かなのでゆっくり眠れるよ。

お隣に家が建って、ネコの嫌いな人がきたらどうしようとDorianさんは今から心配している。猫嫌いの人にとっては、庭に入られたりオシッコをかけられたりするのはガマンできないだろうからね。ボクが入らなくても疑いの目で見られるかもしれないし・・・

この辺では猫はみんな放し飼いなんだ。だいたい夏は表から裏までみんな開けっ放しで、近所の猫が家の中を通り抜けていくこともある。みんな猫を飼っているのでお互い様なんだよ。

そういうことをわかってくれる人が来てくれることを願うばかりだね(と、Dorianさんが言ってるよ)

 

3月4日(火) 「猫マップ」

Dorianさんが一日パソコンにへばりついて何かやっている。1年前に買ってから1度使っただけで忘れていた水彩ソフトを、机の引き出しから引っ張り出して、ボクの猫地図を作っているんだって。

オドは「一銭にもならないことばかりして・・・」とぶつぶつ言ってるけど、オドだって同じようなものだ。本ばかり読んでたって一銭にもならないよ。

ネコ地図を見せてもらったけどあんまり上手じゃないね。それにボクのテリトリーはもう少し広いんだよ。Dorianさんが知らないだけさ。もっともぜんぶ人間に知られたんじゃ、ネコの沽券にかかわるけどね。猫は神秘性がなくちゃ猫じゃないよ。

 

3月7日(金)  「夜遊び」

3月に入ってもいつまでも寒いね。でもボクは元気いっぱい!

右目の上の傷が治って、ボクはまた夜遊びに出かけるようになった。Dorianさんはため息をついて「男の子はつまらないねぇ」という。今まで飼っていた猫はみんな女の子だったので、外泊なんてしたことなかったんだって。

「△△△と同じだよ」・・・△△△というのはDorianさんの息子で8年前に車の事故で大けがをしたんだ。「あの子も10代の頃は家になんかいなかったからね。朝になって帰ってきてご飯を食べてまた出かける・・・その挙げ句が車椅子だ。」

「ダイスケも△△△みたいにケガをしなくちゃ帰ってこないのかねぇ・・・」だって。縁起でもないこと言わないでよ。ボクはいま遊びたい盛りなんだ。もう少し大人になれば落ち着くから、それまで黙って見守っていてね。

 

3月13日(木)  「英雄ネコを好まず」

遊びに飽きて気がついたらもう1週間も日記をサボってる!最近は家にいる時間も多くなって、やっと落ち着いてきたよ。ボクももうそんなに若くないからね。

ところできょうは、イヌ好きの人間ネコ好きの人間の性格の違いについて考えてみようと思う。昔から、芸術家はネコを好み兵士はイヌを好む、内向的な人はネコが好きで外向的な人はイヌが好き、反逆者はネコを愛し権威主義者はイヌを愛す・・・なんていわれているけど、そんな単純なものでもないんだよね。

人間は自分にないものを求める習性があるから、いつも上司にゴマをすって卑屈になっているおじさんが、ネコの自由気ままな生き方にあこがれてネコを可愛がる場合もあるし、その反対に、自分に服従するイヌを可愛がる場合もある。犬も猫もどっちも好き、なんて動物愛護協会みたいな人もいるしね。

でもこれだけは確かなことなんだけど、世の独裁者は一様にネコを嫌ったんだそうだ。アレクサンダー大王、ナポレオン、ヒトラーなんかはみんな大のネコ嫌いだったんだって。彼らは強大な軍隊を率い、何百万人もの人を殺したけれど、小さなネコをそれは怖れていたらしい。猫はたとえそれがナポレオンであろうとヒトラーであろうと、決して征服されることはないからね。

隣の国の将軍様も、きっとネコは怖いんだろうね。もしかしたら、ブッシュとかいう人もネコは大嫌いかもしれないよ。

 

3月14日(金)  「踊るネコ」

ボクはあまりテレビは見ないけれど、テレビが好きでいつもコマーシャルや歌に合わせて踊ったりするネコがいるらしいね。でもボクに言わせれば、あれは好きで踊っているわけじゃないんだよね。

ネコは高い音が嫌いで、コマーシャルの甲高い音や高音の歌をなんとか止めさせようともがいているだけなんだ。高い音は敏感なネコの耳には耐え難いだけでなく、苦しいときのネコの悲鳴を連想させるからね。とくに子どもを産んだことのあるメス猫は、その高音が仔猫の鳴き声に聞こえて、なんとかしなくちゃと焦るんだって。

ほかにも、交尾の時の鳴き声やケンカ相手のうなり声など、今までの経験から連想される音がテレビやCDからきこえてくると、ネコは反応してウロウロするんだ。

それを人間は勘違いして「うちの○○ちゃんは元ちとせが大好きなの、元ちとせの歌がきこえると飛んできて踊るのよ」なんて自慢するおばさんがいるけど、本当はあの不安定な歌声が大嫌いで、なんとかして止めさせようと手を振っているだけなんだ。

だからネコが芸術を理解したり音楽的センスがあるというのも、人間が作り出した猫神話にすぎないんだよね、残念ながら。

 

3月15日(土)  「トタン塀」


お隣の家を壊してから、Dorianさんちのトタン塀がボロボロなのが目立って、何とかしなければと思っていたら、オドが重い腰を上げて塀作りに取りかかった。

材料をホームセンターで買ってきて、板を切ってトタンを打ち付けて、何とか形はできあがった。「不器用なアンタにしては上出来だね」とDorianさんも満足そう。だって業者に頼めば何十万も取られるのに材料費の2万円でできちゃったんだもの。
<本とグラスきり持ったことのないオドが塀を作った!>これは今年の10大ニュースの一つだね。

ところが、塀の下を完全に塞いじゃったので、ボクの通り道がなくなっちゃったんだ。隣の空き地に行くのにはグルッと回らなきゃなんないし、それにはいつも道で火を燃やしている裏のおやじさんの前を通らなくてはならない。このおやじさん、何をするかわからないので怖いんだよね。

でもボクの遊び場は倉庫のあたりなので、隣の空き地に行かれなくてもべつにいいや。

 

3月16日(日)  「マンガデビュー?」


ついにボクもマンガデビューすることになったよ〜〜!ヘヘ・・・じつは名前が同じというだけなんだけどね。
クロ號」(杉作 著)第4巻に登場するのが田宮さんのオネーサンちのダイスケ

クロの飼い主であるヒゲの隣に越してきた、きれいなオネーサンが可愛がっているダイスケは、毛並みも年頃もボクとよく似ているんだけど、性格は大違い。ヤツは根性曲がりのヒネクレモノで、クロと顔をあわせればケンカになるんだ。

ところがヒゲはこのオネーサンによからぬ気持ちを抱いて、押し入れの中から隣の様子をうかがったりするんだね。クロもオネーサンのやわらかい手に撫でられて感激し、いつもその手に撫でられているダイスケがうらやましくて、ますますダイスケに腹を立てるんだ。

結局オネーサンにはカレシがいて、ヒゲの恋は終わり、クロとダイスケのいがみ合いはますますエスカレートしていくんだ。でもなんだかんだ言いながらも、じつはクロとダイスケはよく似ていて、いいケンカ友達ってところだね。

「クロ號」、おもしろいのでぜひ読んでみてね!

 

3月17日(月)  「イチコ」


きょうはDorianさんの初仕事。今までもボランティアでヘルパーの仕事はやっていたけど、資格を持ってやるのは今日が初めてなんだ。

はりきってデジカメを持って出かけたよ。ヘルパーにデジカメ?実は、きょうの利用者さんの家には可愛い猫がいるってきいていたので、ぜひ写真を撮ってこようと思ったんだね。

それがこの写真。イチコちゃんといって、もともとは野良が産んだ子どもだったらしい。それを老夫婦が保護して大切に育てているんだって。今どきの野良は毛並みもよくて血筋もよさげだね。ボクのほうがよっぽど野良に近いよ。

このイチコちゃん、人見知りがはげしくて、Dorianさんがいる間ずっと隣の部屋の棚の上に隠れていたらしい。カメラのフラッシュで目が光って妖しい雰囲気だね。ボクの趣味じゃないや・・・・

 

3月19日(水)  「第二の声帯」

ネコには他の動物にはない特技がある。それはあのゴロゴロと喉を鳴らすワザだ。人間のひざの上でゴロゴロやれば、どんなに気むずかしい人だって一瞬なごんでネコをナデナデしちゃうもんね。

あの音はいったいどうやって出すんだろう。音の出るメカニズムはじつはよくわかっていないんだけど、学者の間では二つの説があるんだって。その一つが「仮声帯説」。ネコには喉の他にもう一つ声帯があって、ゴロゴロいう音はその第二の声帯から出るというんだ。人間のいびきみたいなものだね。

もう一つの説は「血液乱流説」。あのゴロゴロは血液の流れる音で、心臓に送られる血液が乱流して、その音が気管から鼻、口、喉へと共鳴してきこえるんだって。でもゴロゴロはネコがくつろいでいるときに出る音で、そんな時は血の流れも穏やかで、そういうときだけあの音が聞こえるというのもおかしいよね。

やっぱり人間のいびきと同じで、無防備に安心しきっていると出てくるんだから、第二の声帯説が正しいのかもしれないね。なんにしてもあの音で人間が喜ぶんならいくらでも出してやるよ。

 

3月20日(木)  「戦争」

ついに戦争が始まったね。人間てかなりアホだとおもうよ。猫は平和主義だから、無駄な争いはしないんだ。ケンカになっても相手を傷つけることはめったにないし、深追いもしない。人間も猫の社会を見習ってほしいよね。

それにしても男って本来、戦争が好きな生き物なのかなぁ。オドはテレビにくぎ付けになって、なんだか楽しそうなんだ。Dorianさんはそんなオドは相手にしないけどね。

戦争といえば、長い猫の歴史の中で、猫が戦争に利用されたことが2回あったんだね。その一つは以前に書いた「猫の楯」の話だけど、もう一つはもっと悲惨な話なんだ。

1535年に書かれた、ハプスブルクのクリストファーという人の本に出てくるんだけど、歩兵隊将校のクリストファーさんが考えた作戦というのがなんと!「猫を使って毒ガスをまき散らす方法」なんだって!

猫の背中に毒の入ったビンをくくりつけて敵のまっただ中に放り込むんだ。ビンの口は猫のシッポのほうを向いているので、猫がパニックになって走り回ると、毒ガスがあたりにまき散らされて敵軍は全滅。もちろん猫も全滅だよね。特攻隊じゃあるまいし、クリストファーさんもひどいことをしたもんだね。

今の戦争も、毒ガス炭疽菌なんかをばらまかれたら終わりだよね。怖いからもう寝よっと。

 

3月23日(日)  「お彼岸」

「暑さ寒さも彼岸まで」って言うらしいけど、ほんとうに今日は暖かくて気持ちがいいね。お彼岸なので畑の梅の木の下で、チビをしのんで日なたぼっこをした。梅の花は満開で、あたり一面甘い香りがただよっている。地球の反対側で戦争をやっているなんて信じられないよ。

オドも畑に出て、ネギの苗を植えている。ボクも手伝ってやろうと、植えたばかりのネギの上でごろごろ寝転んだらオドに怒られた。なんでだよ〜〜!

 

3月25日(火)  「ごちそう」


彼岸参り(仏様にお線香をあげに行くこと)に行ったDorianさんがお土産をもらってきた。動物好きの親せきのオジサンが、ボクと犬のエスのためにと、特別おいしいカリカリを用意してくれたんだって。

ボクにはモンプチのカリカリ。かにえび入りの高級品だよ。特売のカリカリには飽き飽きしていたので、ボクは夢中で食べたね。おいしかったよ〜。お腹が一杯になったので一休み。人間の世界ではいろいろ大変らしいけど、ボクはおいしいものが食べられて日なたぼっこができれば幸せだもんね。

 

 

3月29日(土)  「ガマガエル」


このところ、夜、庭を歩くと変なヤツとはち合わせする。黒くて石ころみたいで、昼間はじっとしているのに夜になると動き出して、ゲコゲコと鳴く気持ち悪いヤツ。そいつ達はウチの池に三々五々集まってきて、夜な夜な大饗宴を繰り広げ、挙げ句の果てに卵を産んで行く・・・そう、ガマガエルの集団なんだ。

ちゃんと数えたことないけど、数十匹はいると思う。水のある場所はこのへんではウチの池ぐらいなので、みんな卵を産みにくるんだ。Dorianさんは気持ち悪くて夜は外に出られないと言っている。やたらに歩くと踏んづけちゃうからね。ガマは怒ると毒の液を出すからボクも近寄らないようにしているんだ。

そしてある朝、池の中に長いヒモみたいな物がとぐろを巻いているのが見つかる。それがカエルのタマゴなんだね。透明なヒモの中には黒いテンテンがあって、それがだんだん大きくなってオタマジャクシになる。オタマが並んで泳いでいると可愛いよ。

カエルの恋の季節はまだ始まったばかり。これから1週間か10日ぐらいにぎやかな夜が続くんだろうなぁ、やれやれ・・・

 

3月31日(月)  「モニター」


ペットフードメーカーのカルカンからレトルトのペットフードが送られてきた。「カルカン デリカスタイル」という新製品で、3種類6袋が入っていた。量は1袋85cだから1回で食べきれる量だね。

Dorianさんはよく覚えていないらしいけど、ずっと前に「猫ちゃんモニター」というのに応募したらしくて、それに当選したんだって。もしかしたら応募者全員に送られてきたのかもしれないけれど、タダでもらえるんなら何でもうれしいよね。

中身は缶詰と同じようだけど、特製のだしでじっくり煮込んだものをレトルトパックにしたので、できたてのおいしさをそのまま食卓に・・・じゃなくて、猫皿にっていうのが売りらしい。まさか袋のまま3分ゆでたりはしないだろうけど。

味はもちろんおいしかったよ!一度に2袋食べちゃった!最近やたらにおいしいものにありつけるけど、特売のキャットフードがますます不味くなっちゃうのは困ったもんだ。

 

つづく