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9月17日〜9月30日
9月17日(火) 「仲間が欲しい?」
Dorianさんが息子さんの施設に泊まったのでボクはオド(Dorianさんのダンナ)と留守番だったの。雨が降って寒いので一日オドの膝で寝ていたんだ。オドは本の虫で、本を読み出すと動かないのでボクも安心して寝ていられるんだ。
近ごろ、Dorianさんはボクに「チビがいなくなって一人じゃ寂しいでしょ」とよく言う。ほんとうはDorianさんが寂しいんじゃないの。
猫はもともと単独行動をする動物だから、仲間がいなくなっても特に寂しがるということはないんだ。そりゃあ最初は変だなぁ?と思うけど、しばらくするとそれが普通になってすぐに忘れてしまうんだ。猫ってかなり単純だね。でもチビのことは今でもときどき思い出すよ。
で、Dorianさんは「可哀想な猫」がいたらもう1匹ぐらい飼ってもいいかな、なんて思っているみたいだけど、Dorianさんももうそんなに若くない。子猫と最後まで暮らすとなったらあと15年は元気でいなければならないからね。その自信がないんだね、きっと。
15年たったらDorianさんは○△歳。○と△に入る数字を当ててね(=^^=)
9月18日(水) 「舌」
ボクはときどき舌を出したまま寝てしまうことがある。目が覚めてハッとあわててしまおうとしても舌が乾いてうまく口の中に入らないんだ。なんともマヌケな姿で人間には見せられないね。どうしてそんなことになるかというと、猫の舌はとても長くて柔軟で、うっかり出しっぱなしにしても気が付かないくらい余裕があるんだ。
猫の舌の表面にはびっしりとトゲのようなものが生えている。このトゲは実に便利なもので、水やミルクを飲むときなどはこのトゲに液体が付着して口まで運んでくれる。それに毛繕いをするときはこのトゲがブラシの役目をしてくれるんだ。少しぐらいの汚れなんかこのブラシで梳かせばかんたんに落ちちゃう。だからボクの体はいつもピカピカさ。
最近の若者はオシャレに命をかけてるみたいで、いつも櫛や鏡を持ち歩いてるらしい。ショーウィンドウに向かって頭をなでつけてる男の子をよく見かけるけど、おしゃれにかけてはボクたちネコ族のほうが先を行ってると思うよ。なにしろ生まれたときから櫛を持ち歩いてるんだから。
9月19日(木) 「猫の語源」
ネコはどうして「猫」と呼ばれるようになったのか?これには3つの説があるんだって。まずは、ネコとは古くは「寝子」と書き、よく眠る動物だからネコ。次に、ネコのネは「鼠」で、鼠を好んで捕るから「鼠好」と書いてネコと読ませたんだって。もう一つは、冬生まれのネコは鼠を捕るから「ネコ」、春生まれは蝶を捕るから「チョコ」、夏生まれは蛇を捕るから「ヘコ」、季節に関係なく鳥を捕るネコは「トコ」・・って無数の呼び方があったんだって。こうなってくるともう漫才の世界だね。
最後に、これはもっとも信憑性が高い説だけど、ネコの鳴き声から「ニャアニャア」→「ネウネウ」→「ネウ子」→「ネコ」となったんだって。ほんとかなぁ??
9月20日(金) 「三半規管」
ボクたちは狭い塀の上や細い木の枝などを平気でスイスイと歩くことができる。たとえヘマをして足を滑らせても背中からドテっと落っこちることはまずない。それに、高いところから落ちる方が体を回転させて着地をキメるまでに十分な時間があるわけで、低いところから落ちるとたまに無様な姿をさらすことになるんだ。
でも猫は体の4分の1の隔たりがあればクルリと足から着地してしまう。つまり肩の高さ32cmの猫なら8cmプラスした地上40cmというわずかな高さから落ちても足で着地することができるんだ。
この回転着地能力は猫の「三半規管」がとても発達していることによるものなんだけど、最近はイスからドタッと落ちたり足を骨折したりする猫が増えているらしい。これは三半規管が衰えているわけじゃなくて、緊張感がなくなっている証拠だね。
平和ボケってやつさ。あ、これは人間の世界にも言えることだけど・・・
9月21日(土) 「フト」
ボクたちはときどき、よく寝ていても突然起きあがってあわててどこかへ出かけたり、仲間と遊んでいるときに急にケンカになったりすることがある。これは猫が気分屋だからというわけではなくて、フトあることを思い出すからなんだ。そのあることというのは仲間とケンカをしたこととか、赤ちゃん時代にお母さんに甘えたこととか、遠い昔、ご先祖様が狩りをして獲物を捕っていたころのことが潜在意識の中に甦ったりとか、とにかく脈絡もなく突然思い出すんだ。そうなると今までやっていたことなんかみんな忘れてしまう。
こう考えてみると、猫は単純なんだか記憶力の良い高等動物なんだかよくわからないね。その複雑なところがまたいいって言う人間もいるけどね。
9月22日(日) 「ペット」
今日はお彼岸。Dorianさんはお墓参りや彼岸参り(親戚のうちの仏様をお参りに行く)に忙しそう。ボクたちもチビの梅の木の下で集会を開いてチビを偲んだんだ。その時「ボクたちはペットだろうか?」という話になった。
人間にとってボクたちはペットなんだろうけど、ボクたちは人間に飼われているという意識なんかまったくない。「同じなわばりを共有している仲間」だと思っている。ボクたちは人間の指図は受けない。ご機嫌も取らない。自由も束縛されない。人間たちに癒しと安らぎを与えている。その代償としてご飯と水をもらっているんだからまったく対等な関係なのさ。
断じてペットなんかじゃない!人間といっしょに暮らしてやってるんだ、という結論に達したのはいいけど・・・なんだかお腹が空いたなぁ。そろそろご飯を要求してこようっと・・・。
9月23日(月) 「習性」
猫は動くものに反応する習性がある。それは猫が狩りをして獲物をとっていた名残だけど、例えば目の前にお刺身があっても、横の方でネコジャラシをフリフリされたらそっちに飛びついてしまう。悲しい習性だね。それに猫の目は、あんまり近すぎるとピントが合わないような構造になってるんだ。それでボクたちは目と鼻とヒゲを総動員してご飯にありつける。のんきそうに見えてもこれでけっこう大変なんだよ。
Dorianさんはボクが小さいころ、ネコジャラシや鈴玉を買ってきて遊ばせてくれたけど、ボクは遊んでいるんじゃなくて狩りの練習をしているつもりだったんだ。でも最近はばかばかしくてやめちゃった。今の世の中狩りなんて必要ないし、Dorianさんを遊ばせるのも飽きちゃったからね。
9月24日(火) 「丸顔の秘密」
犬の顔は丸いのもいるけどだいたいが長い。でも猫はすべて丸顔だ。長い顔の猫なんて見たことない。人間に言わせれば「丸い顔が可愛い」のだそうだけど、実は猫の丸顔にはちゃんとした理由が
あるんだ。それは「恐るべき丸顔」だったんだ!
ネコ科の動物が獲物を捕らえ、トドメの一噛みをするのは獲物の首筋、頚椎のツボを的確にとらえて一気にガブリとやる。失敗は許されない。そのためには噛む力も強くなければならない。そのための特殊な筋肉がホッペタに厚く張り出しているからネコの顔は丸いんだって。
Dorian「ネズミも捕れないダイには関係ない話だね」
ダイスケ「・・・・・・」
9月25日(水) 「ルーツ」
数少ないボクの読者から「博識だ!」とお褒めの言葉をいただいたので気をよくして、きょうは猫はいったいどこから来たのかという話をしよう。ニャニャン(エヘン)
今から約5千年前の古代エジプト人が、ネズミから穀物を守るためにリビアヤマネコを飼い慣らした。これが「イエネコ」のはじまりなんだ。だから古代エジプトではボクたちはかなり重宝がられてたんだね。
やがてネコはネズミ退治の使命を受けて船に乗せられた。船にはネズミが棲みついていたので、
必ず猫が乗せられたんだ。それで世界各地に広がっていったんだって。
それで日本にはいつ来たかというと、奈良時代にインドを経由して仏教とともにやってきたというんだから驚きだね。仏教の経典をネズミに囓られないように、猫もいっしょに船に乗せられたんだって。仏教とともに猫も広まっていったというんだからニャンともありがた〜い話ではないの。
紀元前2500年頃のエジプトでは何と!猫は神様として崇拝されていたんだって。19世紀末にナイル川沿いの寺院で、その頃のものと思われる猫のミイラが3千万体も発掘されたというんだからビックリだね。猫は神様だから殺したりしたらそりゃー大変だ。たとえ不注意で死んでも厳罰に処せられたんだって。
エジプトとペルシャが戦争になったときのこと。ペルシャ軍が形勢不利になったのでペルシャの王様は部下に訊いた。「やつらの弱点は何だ?」「猫です」「よし、猫を使え」というわけで、街中の猫を生け捕りにして、猫を楯の代わりに胸に抱いて突進したんだって。エジプト軍は猫を殺すわけにいかないので、何もできずに降伏してしまったそうだ。
勇ましい兵士が猫を抱いて戦争しているなんて考えただけで可笑しいね。その頃が猫にとっていちばん輝かしい時期だったのかもしれない・・・・
9月27日(金) 「受難の時代」
でもそんな幸せな時代は長くは続かなかった(といっても何千年といった単位だけどね)。中国では隋の時代(5世紀末〜6世紀初め)に「猫鬼」という呪術が流行して、猫は魔物として恐れ嫌われるようになったんだって。「猫鬼」というのは、憎い相手に猫の呪いをかけて殺してしまうという身の毛もよだつ恐ろしいもの。実際に心臓が苦しくなったり吐血したりしたそうだから、思い込みもバカにならないよね。
ヨーロッパでも猫は悪魔の手先として忌み嫌われ、火あぶりにされたり高いところから投げ落とされたり、皮をはがされたり生き埋めにされたりしたらしい。しかもそれがキリスト教の祭典として公然と行われたというんだから、何が正しくて何が悪なのかさっぱりわからないね。
今だったら動物愛護団体が黙っちゃいないけどね。猫の歴史なんておもしろくないので、これでオシマイ。
9月28日(土) 「掃除機」
ボクの苦手なものの一つに掃除機がある。むかしは掃除機のスイッチを入れると驚いて1メートルも飛び上がったんだって。今では少しは慣れたけど、でもやっぱりあのものすごい音を出して動きまわる黒い怪物はガマンならない。情けないけど、掃除機のコードを引っ張り出すシュッシュッという音をきいただけでコソコソと逃げ出しちゃうんだ。
だいたいネコは大きな音を出すものはニガテだ。その代表が大工さんなんだ。ズカズカと家の中に入ってきていきなりギコギコ、バンバンとあちこちを切ったり叩いたり・・・猫にとってはなわばりを荒らしに来た恐ろしい敵にほかならない。おまけに大工さんは大声でしゃべるからよけい恐いんだ。
掃除機も大工さんもボクにとっては怪獣みたいなもので、怪獣が通り過ぎるまでは庭の隅でじっと身を潜めているしかないのさ。
最近ボクたちのなわばりに2匹の子猫が加わった。子猫といってももう3ヶ月ぐらいになっているので立派な野良だね。毛の色は白地に黒い模様があるのと、黒地に白い模様があるので、たぶん両親が白と黒なんだろう。Dorianさんは「ダイスケの子じゃないだろうね」というけど、見りゃわかるだろ、ボクの毛の色とはまったく違うし、だいいちそんな覚えないんだから。
Dorianさんが呼んでもサッと逃げてしまうのでご飯をやることもできない。でも野良はそれなりの生活をするのでハンパにご飯なんかあげないほうがいいらしいよ。いったんご飯をもらうともう自分の力で食べ物を探すことができなくなっちゃうんだ。そうなったらかえって野良にとっては不幸だからね。
この子猫がいったいどこからやってきたのか誰も知らない。人間になつかないので生まれたときから野良生活だったことは確かだけど。また集会を開いて今後のことを話し合わなくちゃ・・・忙しくなるぞ。
9月30日(月) 「爪とぎ」
ネコは必ず爪とぎをする。爪は狩りをするときの武器になるので、武器はいつも手入れをしておかなくちゃね。ボクの爪とぎの場所は庭の柿の木だ。固くて太さもちょうどいいので気に入っている。
部屋の中だけで暮らす猫は爪を切られてしまうらしいね。家具を傷つけたり子どもにケガをさせたりするかららしいけど、猫にとってはとても迷惑な話だ。爪のない猫なんて牙を抜かれたライオンみたいなものさ。サングラスを外したタモリみたいな・・・入れ歯をはずしたデビ夫人みたいな・・・マワシがはずれた武蔵丸みたいな・・・カツラ飛ばした・・・誰かとめてよ(-.-;)y-゜゜
ま、室内飼いの猫はそれでもいいけど、ボクのように外で遊ぶネコの爪は絶対に切らないでほしいね。塀に飛び乗るときや屋根に飛び移るときなど、いつもの調子でやると引っかかるものがなくてズッコケちゃうからね。下にボス猫でもいたらもう最悪だ・・・…>_<…ところできょうはDorianさんの誕生日なんだ。何回目かって?そんなことボクの口から言えないよ。