4/15/2016/SAT
清親―光線画の向こうに、町田市立版画美術館、東京都町田市
小林清親 “光線画”に描かれた郷愁の東京 没後一〇〇年(別冊太陽)、平凡社、2015
小林清親 文明開化の光と影をみつめて、練馬区立美術館・静岡市美術館編、青幻舎、2015
小林清親東京名所図、町田市立国際版画美術館監修、二玄社、2012
小林清親。ずっと見たいと思っていた画家。昨年、練馬区立美術館で行われた展覧会に行きそびれてしまったところ、ほぼ同じ内容の展覧会が町田で開催されていることを知り、出かけた。
展示されている作品が多く、有名な作品だけでなく、戦争画や漫画なども見ることができた。その上、出口の前で川瀬巴水も「馬込の月」を含む5点を見ることができて大満足だった。
「光線画」と呼ばれるくらいなので、光と、それを際立たせる影や宵闇の表現が多彩で、画家の観察眼と表現力に感心する。
光の場合。火事の炎の赤から、稲妻、ガス灯、石油ランプ、提灯、月明かり、蛍まで、明るさや色調が変化に富んでいる。
影と闇も同様。夜空、夜の雲、宵闇、ランプに照らし出された人影は、それぞれ異なる。「上野東照宮」はほとんど黒だけを異なる色調で描き分けている。
気に入った作品は夜の景色が多い。一番好きなのは「新橋ステンション」。上半分には宵闇にそびえる大きな駅舎。下半分には、提灯を下げた大勢の人。明暗の対照が面白い。復興された現物を見たことがあるのも、この作品を気に入った理由だろう。
清親以前に世絵の風景画を見てから清親の作品を見ると非常にモダンに見える。ところが、巴水を見てから清親を見ると、むしろ素朴な表現に見える。巴水は、洗練された表現で、現在のグラフィックアートと見比べてみても、古さも野卑なところもない。
清親は、雨粒や降っている雪は描かない。反対に、巴水は細かく雪を描き込んでいる。気に入った作品には雪景色のものが多い。川瀬巴水は白がいい。
ふと気がついた。絵画を見るとき、私はいつも色から見ている。主題でもなく、構図でもなく、形でもない。
マーク・ロスコを作品を初めて見たとき、なぜ彼の作品に魅了されるか、わからなかった。今はわかる。ロスコを見る前から、私は、色を見ていた。
『小林清親東京名所図』は、描かれた場所の現在の風景と写生した場所と方向を図解する。雰囲気が残っている所もあれば、まったく変わってしまった所もある。
1月以降、都心を歩く機会が増えたので、二重橋や銀座の景色を作品と現在の風景の比較を面白く読んだ。