その二 そして事は起こった
 ゆっくりと食事をしてゲレンデに繰り出す。
ゲレンデは時折ガスで視界が悪くなる。ガスが薄くなるのを待ちながらの滑降。
1回目は振り子状になっているコースを降りる。2回目は1回目に降りたときのコースの右の斜面を降りる。ここがヨダレものの斜面で、もう1本!となる。

 リフトで上がるとますます視界が悪い。これをおりたら休むか、上がろうとしていた矢先に事は起こった。
 傾斜面に出るまであとわずかというところで振り返ると山人が座り込んでいる。どうしたのかと問う間もなく行動不能とストックで合図し「骨折した。」と訴えてくる。

 山人のところまで登り返していると、幸いなことにすぐそばにいたスキーヤーが「救助呼んできましょうか?」と申し出てくれ、お願いすると救助要請の連絡をしてくれた。
 救助を待っている間に天候がどんどん悪化し、降ってくる雪の量が急激に増えてくる。
場所がゲレンデなのは幸いだが、荷物を背負っていないので板を外すだけが精一杯。風よけになるもの、副木をあてるもできない無防備な状態で待つのは非常に厳しいものがあったのだろう。山人はがたがた震えながら救助を待つ。

 待ち焦がれていた救助隊が到着。この視界が悪い中よく見つけられたと思う。連絡してくれたスキーヤーが正確に場所を伝えてくれたのと訓練された救助隊のお陰だ。
 山人の怪我をしたほうの足のブーツを救助隊の人に手伝ってもらい脱がせ、ズボンをまくると明らかに折れているのがわかる。変形している。副木をあてて固定してもらいスノーボートに収容し、傾斜が緩やかになるところまで人力でおろすことになる。救助隊のひとに連絡先などを聞かれ、一通り答えると、救急車を呼んだほうが良いでしょうということになり、お願いする。

 スノーボートを下ろす救助の人に続いて、自分達の板を引きずってモコモコも後に続くが、あっという間に遅れる。あっちは山人を下ろしているのに引き換え、こちらは板しか持っていないのに。「さすがだ」救助する人は凄いと前から思ってはいたが、凄さを目の当たりにしてしまった。
事故発生14.15(同時に救助要請の連絡を依頼)〜救助隊による搬出(15.30)
その三 いよいよ病院へ
 救急車のかすかなサイレンに最初に気づいたのは救助隊の人だった。
救急車に山人を収容し、モコモコも同乗する。救急車の中を見るのは初めてだが、ストレッチャーをのせた中はとても狭いので、やはり荷物は載せられない。

 山人は振動が足に響くらしいが、固定されているのでずいぶんと楽になったようだ。
 救急車の中では、連絡先などを聞かれる。
 さらにどのように転倒して怪我したのかと聞かれるが、モコモコは山人の先にいたため転倒の瞬間をみていない。山人本人に聞くとその部分だけスッポリ記憶がないらしい。
転倒前の「あっ」と思う瞬間もなく(忘れた?)気がついたら転んでいて起き上がろうとしたら動けなかったとのこと。最初は頭を打ったのかと思ったが、雪の跡を見たときに転がったり頭を突っ込んだりした様子はなかったことから、あまりのことに脳が無意識のうちに記憶を消去するように働いたのではないかと思う。

 ようやく麓に下りてきてもうすぐ病院だと思っていたら、「このあと高速道路に入りますから揺れは少なくなると思いますのでもう少し頑張ってくださいね。」と言われた。(えー高速道路?!)てっきり西川町の病院にいくと思っていたので驚いてしまう。おそるおそる「病院まではどのくらいですか?」と聞くと「30分くらいです。」の答え。さらに「ちなみになんと言う病院ですか?」と聞くと「寒河江市立病院です。この辺りでは整形外科が良いといわれています。」と教えてくれた。というわけで救急車に乗って高速道路を走るという貴重な体験をする。

余談ですが、救急隊の隊長さんがそばについていてくれたのだが、その隊長さんが「タバコはすわないんですか?」ときいてきた。
何で分かるのか尋ねると、搬送中には血中の酸素飽和度を測っていて、その測定値をみると98%くらいになっていて優等生らしい(タバコをすっていると95%くらいまでにしkくらいになってしまうとのこと)。
ひとつ勉強になりました。
 傾斜面になったところから救急車が入ってこられるところまではスノーモービルで山人を搬送してもらい、救急車を待つ。
 救急車を待っている間に救助隊の人から「多分一緒に来てくださいといわれると思います。そのとき荷物は乗せられないと思うので、貴重品だけもっていってください。荷物は我々で宿に運んでおきます。宿には事情を話しておきますので後で連絡をとってもらえれば大丈夫です。」など指示をもらう。こちらはどうしたらいいのかわからない事だらけなので、こういった指示はとてもありがたい
その四へ
リフト降り場
こんなにガスが濃い。
この1本を滑り終えたら休もうと思っていた。
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検証!骨折事故