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11/9 (木) ポカラからツクチェへ           

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  ヘリコプターで一気にヒマラヤ越え!

 ポカラ空港からツクチェへのヘリコプターの第一陣は8時出発の予定なので,5時半起床,朝食6時,ホテル発7時ということになった。
 6時,食堂で朝食を摂りはじめると,朝陽が登りだし,窓からアンナプルナの峰々が輝きだした。
「しまった!カメラを持たずに部屋を出てきてしまった」
もう,朝食はどうでもよい,パンを一切れ,コーヒーを一口飲んだだけで,部屋に戻りカメラと三脚を抱えて庭に飛び出す。しかし,ここからは,ホテルの隣に建つ民家が邪魔だし,アンナプルナサウスも見えない。ホテルの外に飛び出して,好ポイントを探しながら夢中でシャッターを押し続ける。時計を見るともう集合時間の6時45分近く,慌てて戻る。

        朝陽に輝くアンナプルナ(1)
 
 左よりアンナプルナサウス(7291m),アンナプルナT(8091m),マチャプチャレ(6993m)。
     朝日に輝くアンナプルナ(2)
 
 左よりアンナプルナW(7525m),アンナプルナU(7937m),ラムジュン・ヒマール(6986m)


 ツクチェへのヘリは,操縦士を含めて定員6人である。したがって5人づつ二手に分かれて飛ぶこととなる。わたしは第二陣,第一陣の出発は8時頃,第二陣はそれから小1時間ほど後となるというので,空港ターミナルの屋上でお茶を飲みながら待つこととする。
 ここからのアンナプルナ山塊の眺望は最高である。SU氏とH氏はスケッチ開始。わたしは,悔しいかなそのような芸を持ち合わせていない,もっぱらレンズを通して記録することに励む。

 ポカラ空港ターミナル屋上からのアンナプルナ山塊
 
 左よりポカラのシンボル マチャプチャレ(6993m),アンナプルナV(7555m),アンナプルナW(7525m),アンナプルナU(7937m),ラムジュンヒマール(6986m)。
     ポカラ空港からのアンナプルナ山塊
 
 左よりアンナプルナV,アンナプルナW,アンナプルナU

 
 飛行場の管制関係が理由なのか,第一陣ヘリの出発は9時過ぎ,第二陣は10時25分と大幅に遅れたものの,

ヘリコプターは,高度3000m位を飛行してアンナプルナ山塊の北側に回り込む。
 右:マチャムチャレ,左:アンナプルナサウスが間近に凄い迫力で見える。

 ヘリは一気にアンナプルナ山塊の”マチャプチャレ”と”アンナプルナサウス”の山ふところに向かって舞い上がる。
 正面には,”ダウラギリ”がその勇姿を見せ,またまた夢中でシャッターを連射しているうちに,眼下にカリガンダキの広い河原が現れ,わずか20分ほどで,ツクチェの村落内の一画に着陸。(ヘリの座席は右側だとアンナプルナがよく見えるが,ダウラギリは,見にくい(カメラアングルが悪い)。上手い具合にはいかないもんだ!)
 

ツクチェのゴンパ(寺院)で仮面踊りを見物!
  着陸地点は,電線などの妨害物があるので集落から離れた河原になると聞かされていたが,実際は町の北の外れにある往時,塩の交易場だったという50m四方ほどの広場に無事着陸。
 ポカラから, たったの25分のフライトで別世界に来てしまった・・・。
 ここは,ヒマラヤ山脈の北側,モンスーンの影響が及ばない乾燥した気候のチベット高原の南縁である。家々の屋根も泥を固めた陸屋根形式で,雨が少ないことを示している。
 今回の旅行の最終目的地 ブルジャンコットの「ロッジタサンヴィレッジ(LTV)」の主人 タカリー族のアルジュン・S・トラチャン氏が出迎えてくれている。(ちなみに「トラチャン」とは,四つのタカリー氏族名の一つ,他に「ゴーチャン」・「バッタチャン」・「セルチャン」がある。)

 今晩の宿「ツクチェゲストハウス」の屋上サンルームで昼食(野菜ラーメン・玉子焼き・チャーハン・ポテト・アップルパイ)後,村のゴンパで一年に一回行われるというお祭り 「仮面踊り(マニ・リンドウ)」見学に出かける。
 ゴンパには近郷近在から村人がやって来て,タルチョ(祈祷旗)のはためく屋根にまで人・人人の山である。中庭が踊りの広場,石段を上がったゴンパが楽屋。広場の周囲の軒下の一画に楽隊が陣取る。
わたし達も人並みに分け入ってラマ教のお坊さんが演ずる仮面踊りを2時間近く楽しんだ。




           ツクチェ(Tukuche)
 
 ツクチェ(標高2600m)は,カリガンダキトレッキングコースの基地ジョモソム(Jomosom)の南西12km, カリガンダキ川を挟んで聳えるニルギリ(7061m)を背に静かなたたずまいを見せている。

 チベット交易が盛んだった時代,タカリー族が3,000人も住んで居たという交易の中継地として栄えた町である。 チベット高原には古くから良質の岩塩があり,チベットの遊牧民たちは,その岩塩を自分たちが作ったバターやチーズなどとともにロバや馬の背に乗せて 下界へ運び,インド方面から運ばれる大麦や米などの農産物と交換したという。このチベットからネパールへ至るカリガンダキ川に沿ったヒマラヤ越えのルートは,「塩の道」 と呼ばれた。今でも家の入り口の両側は,当時,塩蔵として使われた跡を残している。
 
 タカリー族は当初,カリガンダキ川の少し下流のコバン(Khobang)を本拠としていたが,ムスタン王の許しを得て, ここツクチェに移り住んだ,その際,計画的な町造りが行われたので,整然とした碁盤目状の道路と矩形の住宅がつながる,この辺りの他の集落と異なった景観を見せている。
 
 また100年ほど前,河口慧海が滞在したことでも有名である。
1989年1月には,白い蕎麦の花が咲く富山県の山村「利賀村」 と紅い蕎麦の花が咲く「ツクチェ村」は, ともに昔から生活の糧となってきた蕎麦が縁で姉妹村盟約を結んで,以来活発な交流が行われているという。


 Mt.ニルギル(7061m)


    往時の隊商(カッチャ)を彷彿とさせるロバ隊。今は,トレッカーの荷物運びが多いようだ。

マルファ(Marpha)へ!
 
 仮面踊り見学を切り上げて,KU氏,S氏,SA嬢とわたしの4人は,バイクタクシーに乗って 5kmほど上流の「マルファ」を 訪れることにした。他の6人は,河原でアンモナイト化石を探すという。

 それぞれ,ドライバーにしがみついて,砂埃を思い切り被って15分くらい走り,マルファ集落手前で下車。
トレッカー相手の宿が点在する河岸段丘上の道を行く。
 周りは果樹畑で,日本のNGOの援助で,りんごの栽培が盛んでマルファ村の名産品となっている アップル・ブランディーが製造されているという。途中で尺角以上もあるかと思われる木材を背中に背負って運搬している材木屋さんらしき人に逢う。柵内には同じような大きさの材が積まれている。どこから伐ってきたのだろうか?この地域には,こんな大きな角材を採れる山林は無いはずだが・・・・・・

 15分ほど歩いて集落に入る。
手前で,道が二股に分かれていて右手がジョモソム方面に直接向かう道路,いわばマルファバイパス。
左手は, 白い壁に囲まれた狭い石畳の道で,迷路のように張りめぐされている。
50年前にマルファを訪れた川喜田二郎さんは,著書「鳥葬の国 秘境ヒマラヤ探検記」 で「売春婦の街」と紹介しているが,今はそんな気配は全く感じられない白壁のきれいな古い町並みが残っている宿場町である。道路沿いに水路が敷設され家並みのすぐ裏側が畑地となっている住み易い環境にあるようだ。 

 マルファ村の仏塔門(カンニ) 
 
         石畳の街道
 
 どこの家の屋根にも薪が積み上げられている。薪は財産,薪をど〜と積み上げて「俺んちはこんなに金持ちなんだぞ〜」と誇示する習慣があるという。


 KU氏によれば,タカリー族圏は,マルファの手前までで,マルファから北は,パンチガウ族の居住圏だという。家屋の
形式とか構造が少し違っているように感じられる。標高は2700mで高地特有の乾燥地帯,気流の影響で午前10時を過ぎると強い南風,夕方からは北風が常に吹き出すという。(瀬戸内の浜風,凪,陸風みたいなものだろうか?)

 チベット仏教修行に向かう日本の僧侶河口慧海は,ここにも滞在しておりその住居が町のほぼ中央に「河口慧海博物館」として公開されている。(入館料20Rp)
といっても,一般住居としても使われていて,中に入ると若いお兄さん風が,慧海の居間や仏間を案内してくれた。

 マルファからの帰りは,バイクが町の外れすぐそばまで来て呉れていて,ツクチェまでなんなく戻る。(バイクタクシー代400Rp/一人)

 迷路のような小路
 EKAI KAWAGUTI’s HOUSE


 ツクチェは2,600mの高地,日が落ちると気温は一気に下がる。
ツクチェゲストハウスの各部屋には,お湯の出るシャワーが付いている。先ほどのバイクタクシーで埃だらけになったのでさっそくシャワーを浴びることとする。ところがお湯の出が余りよくない。風邪を引いたらたまらない,早々に仕舞う。
 部屋には暖房も無し,1月,2月になったらちょっと厳しいなあ〜。
 夕食の途中から,電気がストップしてしまった。久方ぶりのローソクの灯の下で語り合うのもいいもんだ。
20年ほど前,停電は当たり前だった。パソコンが「ドーン」という音を立ててシャットダウンするたびに,心臓もドーン,4日間も復旧せず冷凍庫の食材が,全部パーになったことなどなどの記憶が鮮明に蘇ってきた。


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