9/30/2017/SAT
モリソン文庫渡来100周年 東方見聞録展~モリソン文庫の至宝、東洋文庫ミュージアム、東京都文京区
Treasures of The Toyo Bunko(東洋文庫の名品)、斯波義信編著、東洋文庫、2008
東洋文庫ミュージアムへ初めて行ったのは昨年3月。ほぼ一年半前のあいだにもう5回行き、すっかり行きつけの博物館になった。
この博物館のいいところは大きさが程よいところ。国立博物館のように丸一日かけても全館を見られないほど巨大ではないし、交通費が惜しく不満が残るほど小さくもない。
しかも、仮に展示品が何もなかったとしてもモリソン書庫を見るだけで十分幸福を感じられる。モリソン書庫はこの博物館の「ご本尊」。
今回の展示テーマは、そのモリソン書庫の成り立ちと現在までの道のり。北京から東京までの輸送、関東大震災、大戦中の疎開など、保存を脅かすエピソードの解説をたどるとモリソン書庫を見る目が変わる。「ご本尊」とは、史料としての重みと人々が支えてきた重みを感じた呼び名。
展示の説明文にあるように「アヘン戦争図」「マテオ・リッチと徐光啓の肖像」など、世界史の教科書で見た覚えのある文書や絵画がいくつもある。
東方見聞録のコレクションは圧巻。借金をしたり、一度手放したものを買いなおしたりしてまで一つの書籍をこれだけ蒐集する気持ちは、正直わからない。ここまでくると中毒(addiction)と呼びたくなる。幸か不幸か、そこまでのめり込む趣味は私にはない。
今回、所蔵品の英語版図録を買った。お気に入りの「プチャーチンと戸田港」「ペリー上陸」「殿試策」などは手元に置いて見返したい。
英語版を読むと中国の王朝や皇帝の英語読みがわかる。中国や台湾の友人と歴史の話をするときにこれで苦労した。毛沢東や周恩来は英語で言えても、乾隆帝や永楽大典などはさすがに英語読みは知らない。
その「名品集」からの展示では『後陽成天皇勅販 日本書紀』の力強い明朝体と本阿弥光悦が製作した『徒然草 嵯峨本』の流麗な綴り文字に惹かれた。
後者は「出版された」とある。綴り文字をどうやって印刷したのか。
森カズオはウェブサイト「活版印刷所」のWEB MAGAZINEで「縦書き書を2~3文字単位で活字化し、組み合わせて版に仕上げたという。一説では、ある書物では、約2100個の活字が作られ、一度しか使われなかった活字が全体の16%をも占めていた」と書いている。
ほとんど文字を絵にした版画のようなものか。解説にある通り「贅沢な」本。
東洋文庫ミュージアムは説明文が的確で、またユーモアに富んでいる。これもここへと足を運ばせる魅力の一つになっている。
さくいん:東洋文庫ミュージアム