イタリア中部(北)のロマネスク
                
                   (エミリア・ロマーニャからマルケまで)
             Emilia-Romagna/Toscana/Umbria/Marche            
            

イタリア中部(北)の州と州都

 
1 Emilia-Romagna (Bologna)
 
2 Toscana (Firenze)
 
3 Umbria (Perugia)
 
4 Marche (Ancona)

    
 パルマの大聖堂
 
Duomo
 Parma
 
Emilia-Romagna
       イタリア中北部といっても別段厳密な規定をしたわけではなく、エミリア・
      ロマーニャ州以南、トスカーナ・ウンブリア・マルケ州を結んだ線辺りまでと
      御理解頂きたい。
       掲載する上での便宜が、私的地区別とした唯一の理由である。
       この地域には、ボローニャ、ラヴェンナ、フィレンツェ、ペルージア、アン
      コーナといったイタリアを代表するような歴史都市が集中しており、ビザンチ
      ンからロマネスク、ゴシックからルネサンスへの変遷が記録された、芸術的な
      香りの濃い地方である。
                             

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     ピアチェンツァドゥオーモ
       Piacenza/Duomo
   
                          Emilia-Romagna

        
     ポー川の直ぐ南に位置している町で、古代ロー
  マ帝国の植民都市として栄えてきた。州境に近く、
  中世にはロンバルディア都市同盟にも加わった歴
  史もあり、ロンバルディアの雰囲気が色濃い町で
  ある。

   三つの扉口のあるファサードには薄いピンク色
  の大理石が使用されており、扉口それぞれに設け
  られた柱廊付きの小玄関からはとても優雅な印象
  を受ける。

   12〜13世紀に建造された大聖堂は壮麗な建
  築で、三廊式の身廊と翼廊の交差部に八角形の円
  蓋と鐘楼を持つ、言葉では見事としか言い様のな
  い空間を構成していた。
   ロンバルディア・ロマネスク様式のプランが基
  礎だが、写真に見る如く、身廊上部の三連窓の様
  式や天井の交差ヴォールトなどのゴシック様式が
  かなり古くから取り込まれていたらしい。

   隣接するロンバルディアのクレモナ
(Cremona)
  など、ロンバルディア様式の大聖堂というのはい
  ずれも壮大華麗な建築であり、思わず目を見張ら
  されてしまうのだが、ロマネスク好きの感性を震
  えさせるような魅力に満ちているとは、残念なが
  ら言えそうもないのは何故なのだろう。
          

  
   
     カステッラルクアート聖マリア・アスンタ参事会教会
       Castell'Arquato/Collegiata di Santa Maria Assunta
   
                          Emilia-Romagna

         
   ミラノからの高速道路を走り、ピアチェン
  ツァの次のフィオレンツオーラのインターを
  出る。
   南へ15キロほど進むと、正面に小高い丘
  が現れ、近づくほどにその頂上に城郭や教会
  の塔や集落が見えてくる。
   麓の駐車場に車を止め、中世の面影を伝え
  る古い家並の続く石畳の道を登って行った。
   終点は広場になっており、市庁舎、城塞と
  共に、この教会の建物が美しい空間を構成し
  ていた。
   写真は三廊式バシリカの後陣部分で、左端
  には礼拝堂が付け足されている。
   見事に均整の取れた、この地方屈指の秀逸
  な後陣だといえる。
   北扉口のタンパンや重厚な身廊の柱頭など
  に、彫りの深い技巧的な彫刻を見る事が出来
  た。12世紀創建当初の作品である。
   この日は日曜日、広場は各種の露店で賑わ
  っており、軽食ながら楽しいランチを味わう
  ことが出来た。
     

  
   
     ヴィゴロ・マルケーゼ聖ジョヴァンニ教会
       Vigolo Marchese/Chiesa di San Giovanni
   
                          Emilia-Romagna

         
   カステッラルクアートから北西へ6Km
  行ったところに小さな集落があり、そこ
  に目を見張るような秀麗なロマネスクの
  建築が保存されていたのだった。
   町外れの閑静な場所で、いずれも11
  世紀初頭に建てられた三廊式のバシリカ
  聖堂と洗礼堂が並んで建っている。
   とりわけ美しいのが円形の洗礼堂で、
  外壁には太い12本の柱と深いアーケー
  ドと、三つの半円形後陣が付いている。
   薄焼の赤い煉瓦を積んだ建築は、北イ
  タリアのロマネスクの特徴でもあり、ロ
  ンバルディア様式であると共にビザンチ
  ン的でもある。
   扉口などに彫刻など一切の装飾の無い
  のは東方の様式のようでもあり、従来の
  ロマネスク教会を見慣れた目にはむしろ
  斬新な美しさが感じられて嬉しかった。
   デジカメ写真の取り込みに失敗したの
  で、写真はヴィデオの静止画を使用した
  ためかなり粗悪である。
         

            
            
     パルマドゥオモ
       Parma/Duomo

                          Emilia-Romagna

          
   旧市街にあるドゥオモ広場に立てば、
  12世紀のドゥオモ、13世紀ゴシック
  の鐘塔、そして12世紀初頭に創建され
  た洗礼堂などの歴史的建築を一目で眺め
  られる。(当ページの表紙参照)
   ドゥオモの正面扉口は、獅子が両側に
  座る柱廊式玄関になっており、有名な1
  2ケ月を表した装飾彫刻がアーチに彫ら
  れている。内陣は三廊式で、壁一面のフ
  レスコ画が目に入るが、これは15〜1
  6世紀のものである。よく見れば、いく
  つかの柱頭彫刻は、見事なロマネスクで
  あった。
   写真は右翼廊の壁にはめ込まれた「キ
  リスト降架」のレリーフで、12世紀ア
  ンテラミの作品である。ロマネスク的な
  抽象と、静謐な悲嘆と感動の瞬間のリア
  リティとが見事に融合し、神々しい程の
  気品が感じられる彫刻である。キリスト
  や聖母や天使達の表情や、衣服の襞や髪
  などの表現には、並々ならぬ美意識が秘
  められている。
         

    
  
     フィデンツァドゥオーモ
       Fidenza/Duomo
   
                          Emilia-Romagna

        
   パルマとピアチェンツァの中間に位置する小さ
  な町だが、ドゥオモのファサードは、エミリア・
  ロマーニャ地方に点在するロンバルディア様式を
  代表する傑作である。
   モデナ・ノナントラ・フェラーラ・ピアチェン
  ツァ・ヴェローナなど、それぞれにライオンの彫
  像の有る柱廊式玄関を備えた教会が残ってはいる
  が、彫刻の高雅な美しさと、扉口の均整の取れた
  設計という意味において、このフィデンツァが最
  も印象深い。

   広場に面して扉口は三つ有るが、写真の中央扉
  口が左右の二つに比べ最も装飾的である。
   壁面に彫られたレリーフには、ロマネスクらし
  くデフォルメされた図像や、ゴシックの影響を受
  けた写実的な聖人像などが、彫刻コンクールの展
  示かと思われるほどの密度で並べられている。

   どのような主題が多いのか、を見た。キリスト
  の洗礼やエルサレム入城などというお馴染のテー
  マはすぐ分かったが、聖人の殉教場面など不明な
  ものも多かった。いずれにせよ、高い技術と美意
  識を持った設計家や石工が存在した事の証明とな
  っている。
          

   
   
     モデナ司教座大聖堂
       Modena/Cattedrale
   
                          Emilia-Romagna

         
   ここも大きな町の大聖堂なのだが、ほ
  ぼ建築全体が12世紀ロマネスクのまま
  残されているので、ひとまわり華奢な感
  じがして抵抗感を少しも感じさせないの
  かもしれない。13世紀ゴシック様式の
  バラ窓も、軽快感に満ちている。
   身廊の三廊式に従って、ファサードの
  扉口も三つの開口部を持っている。中央
  はライオン像に守られたポーチで、左右
  四つのレリーフは「アダムとエヴァ」や
  「カインとアベル」など、創世記が主題
  となっている。
   内部は、天井の15世紀リヴ・ヴォー
  ルトを除けば、ロマネスクの半円アーチ
  列と見せかけトリビューンで構成された
  荘厳な雰囲気に溢れていた。
   祭壇を取り囲むレリーフや説教壇の彫
  刻も12世紀のものであり、当地の優れ
  た芸術家や石工達の仕事をこの目で見る
  ことが出来る。
   
        

  
   
     ノナーントラノナーントラ大修道院
       Nonàntra/Abbazia di Nonàntra
   
                          Emilia-Romagna

         
   ここはモデナの東8Kmに位置する小
  さな町で、かつては城壁に囲まれた城
  塞都市だったという。
   修道院は8世紀の創設で、12世紀
  に起源を持つロマネスク様式の聖シル
  ヴェストロ
(San Silvestolo) 教会が、
  付属教会として修復された。
   聖堂は三廊式で、写真はその後陣で
  ある。ロンバルディア帯が美しい、壮
  麗な意匠の建築である。
   祭室が半二階になっており、下部は
  地下祭室(クリプト)となっている。後
  陣下部の窓はクリプトのものである。
   正面扉口は可愛いライオンのポーチ
  で、左右の柱とヴシュールには、訪問
  や受胎告知などの浅浮彫が彫刻されて
  いる。
   身廊は素朴な束ね柱と半円アーチに
  よって仕切られており、彫刻の無い柱
  頭がかえって力強い素朴な美しさを象
  徴しているようである。

         

  
   
     ボローニャ聖ステファノ教会
       Bologna/Chiesa di Santo Stefano
   
                          Emilia-Romagna

         
   昔訪ねた時には長い昼休みに当たっ
  たために、中を見ることが出来ず涙を
  呑んだことがあった。
   今回はラヴェンナに泊まった翌朝一
  番に訪ねたので、内部を詳細に見るこ
  とが出来たのだが、残念ながら堂内は
  全て厳しい撮影禁止となっていた。
   ここは四つの古い教会の集合体で、
  写真は多角形をした、12世紀の聖セ
  ポルクロ教会である。起源は7世紀ま
  で遡るそうで、当初は正八角形であっ
  たらしい。ボローニャの守護聖人聖ペ
  トロニオの墓所である。
   最も古い聖ヴィターレ教会、中庭、
  回廊、聖十字架教会など、街中に在っ
  て、修道院のような静謐な空間を形成
  している。
   装飾は少ないが柱の太い質実剛健な
  赤レンガ建築には、素朴な中に洗練さ
  れた美しさを秘めるこの地方特有の高
  雅な魅力が感じられた。
       

  
  
     フェラーラ大聖堂
       Ferrara/Cattedrale
   
                          Emilia-Romagna

         
   町の中央に位置する、文字通りの大
  聖堂である。壮大な規模の割りに威圧
  感が無いのは、ゴシックのような天井
  の高さが無いからかもしれない。
   聖堂の外壁は、下部がロンバルディ
  ア様式のロマネスクで、上部は連窓付
  きの小開廊というゴシックである。
   身廊は三廊式だが、大半がルネサン
  スやバロックに改造されていた。
   写真は、西正面中央扉口のタンパン
  彫刻で、龍と闘う聖ゲオルギウスが中
  央に彫られている。
   マグサ石部分には、キリスト誕生を
  中心とした逸話の場面が描かれている。
   大きな町の大きな教会は基本的には
  好きではないが、エステ家の興廃に興
  味を抱く家人に付き合って訪ねたので
  あった。
   家人には済まないのだが、美意識を
  刺激されたのは、このタンパンだけだ
  った。
  
          

          
          
     ポンポーザポンポーザ大修道院
       Pomposa/Abbazia di Pomposa

                          
Emilia-Romagna

             
   フェッラーラ Ferrara の東、アドリア海に面し
  たポー河の河口近くに、この広大な旧ベネディク
  ト会修道院の敷地が広がっている。

   写真は、修道院付属のサンタ・マリア聖堂の正
  面と鐘塔である。赤い煉瓦の色が印象的で、ラヴ
  ェンナのビザンチン様式の聖堂に似ているが、こ
  の部分は11世紀の建築である。塔の右側は柱廊
  付玄関であり、三廊式の身廊を持つバジリカ聖堂
  の正面入口を保護するかのように、11世紀に増
  築されたものである。

   聖堂の建築年代は8世紀まで遡るらしいが、中
  央祭室と壁面の一部だけが創建当初のもので、他
  は10〜12世紀の改修が混在しているという。
  祭室や壁面に描かれたフレスコ画は、ロマネスク
  ではなく14世紀である。
   床面にはモザイクで象や獅子が描かれており、
  ビザンチンの面影を伝えている。

   盛夏の青空に映える塔のレンガ建築は、ロンバ
  ルディア帯や飾りアーケードで装飾されており、
  ポプラの木とのコントラストが鮮やかで、目に染
  みるような美しさを味わうことが出来た。
         

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     ラヴェンナ聖フランチェスコ教会
       Ravenna/Chiesa di San Francesco

                          
Emilia-Romagna

             
   初期キリスト教美術を代表するビザ
  ンチン式のモザイクで知られるこの町
  に、10世紀創建のロマネスク教会が
  あることはほとんど知られていない。
   鐘楼がそれと判るこの教会は、「聖
  女の行列」のモザイクで知られる聖ア
  ポリナーレ・ヌオヴォ聖堂の西200m
  に位置している。

   三廊式のアーケードはロマネスクの
  様式を示しているのだが、聖堂全体は
  幾度も修復を繰り返してきたそうで、
  第二次大戦のダメージが最も大きかっ
  たそうである。
   写真に見えるギリシャ大理石の美し
  い円柱や、古い主祭壇などは創建時の
  名残だろう。
   もう一つ、創建当初の姿を留めるク
  リプトが在るのだが、水に浸かってし
  まったために、小さな窓からのぞいて
  見ることが出来るだけだった。
           

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     ブリジゲッラ聖ジョヴァンニ・イン・オッターヴォ教区教会
       Brisighella/Pieve di San Giovanni in Ottavo

                          
Emilia-Romagna

             
   ラヴェンナの町の南西30キロ
  の町ファエンツァ
(Faenza)からさ
  らに10キロ先にある小さな町で
  ある。教会はさらに町を外れた牧
  歌的なアペニン山麓に位置する。

   創建は10世紀初頭であり、エ
  ミリア最古のロマネスク聖堂とさ
  れている。
   聖堂は三廊式バジリカで、いか
  にも古色蒼然とした佇まいが魅力
  的だった。
   身廊を仕切るアーケードの円柱
  や柱頭には、明らかにローマ時代
  の遺構の部材が再利用されていた。
   写真は後陣の眺めで、積まれた
  石の壁に古びた風情が感じられ、
  思わず手の平で触ってしまった。

   エミリアからエトルリアへと通
  じる古い街道に面して建つ、貴重
  な遺構である。

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     ピサドゥオーモ
       Pisa/Duomo
   
                          Toscana

        
     観光的にも著名なこの建築群を、ロマ
  ネスク様式という概念で御覧になる方は
  少ないかもしれない。
   しかし、手前の洗礼堂、大聖堂、そし
  て斜塔として知られる鐘楼と並ぶ、白亜
  の伽藍が創出する引き締まったような美
  しさの前では、そうした持って回ったよ
  うな様式論は無用、ということなのかも
  しれない。
   洗礼堂壁面のゴシック装飾以外は、い
  ずれも11〜12世紀に着工されたピサ
  様式と呼ばれるロマネスク建築である。
   連続する小円柱が作る装飾空間、多色
  大理石の組み合わせによる変化に富んだ
  壁面や幾何学模様にその特徴があるが、
  そうした表面的な装飾を無視して、純粋
  な建築の構造と平面プランだけを眺めて
  みると、そこには泰然たるロマネスク建
  築の姿が浮かび上がって来るのだった。
   その著名さと装飾過多が嫌いで取り上
  げなかったのだが、サルデーニャでピサ
  様式の魅力を知り、遅まきながら再認識
  したというのが“今更ながら”の理由な
  のである。
          

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     ピサ(グラード)聖ピエトロ・ア・グラード教会
       Pisa (Grado)/Chiesa di San Pietro a Grado
   
                          Toscana

        
     ピサの町の中心から西南に6キロ行くと、
  そこはもう見渡す限りの田園地帯である。
   聖ペテロがアンティオキアから来た船か
  ら上陸したと伝えらる場所に建てられた、
  三廊式のバシリカ聖堂である。

   聖堂内は博物館のようになっており、床
  下の基礎となった古代ローマの建物や初期
  キリスト教聖堂の遺構を、ガラス越しに眺
  められるようになったりしている。
   聖ペテロの説教した場所が示されており、
  歴史の堆積を感じさせる雰囲気に満ちた空
  間となっている。

   ピサ様式とは関連の無い素朴なロマネス
  ク建築で、横から眺めた長いバシリカ壁面
  の朴訥さや、写真の後陣に見られるロンバ
  ルディア帯や付け柱が特に美しく感じられ
  たのだった。
          

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     ルッカドゥオーモ
       Lucca/Duomo
   
                          Toscana

        
     城壁に囲まれた旧市街では、中世以降都市国家と
  して繁栄したルッカの栄光の面影を見ることが出来
  る。大聖堂以外のロマネスク教会だけでも、後述の
  聖ミケーレや聖ジョヴァンニ、聖シモーネ、聖アン
  ドレア、聖アレッサンドロ、聖ジュスト、聖フレデ
  ィアーノ等等、枚挙に暇無しである。

   聖堂は11〜13世紀に、聖マルティヌスに捧げ
  て建てられた。正面のファサードには、ピサ様式の
  最大の特徴である小円柱で構成された三段の小歩廊
  が設けられている。色大理石による細部の装飾には、
  洗練された意匠を見ることが出来る。

   三つの大きなアーチを構える玄関間とも言うべき
  柱廊が、もう一つの特徴を示している。アーチが左
  右非対称となっているのは、右側にそびえる13世
  紀の鐘塔の存在が影響しているらしい。
   柱廊内部の扉口には、聖マルティヌスの逸話など
  を描いた13世紀の素晴らしいレリーフが飾られて
  いる。
   ファサード以外の聖堂建築は、残念ながらゴシッ
  ク以降のものである。

   聖十字架伝説を生んだ「聖なる顔」と呼ばれる十
  字架像は身廊内の廟に飾られている12世紀の彫刻
  で、東方に起源を持つと考えられている。
        
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     ルッカ聖ミケーレ・イン・フォロ教会
       Lucca/Chiesa di San Michele in Foro
   
                          Toscana

        
     ローマ時代からの古い広場に面して、この大理石
  の堂々とした聖堂が建っている。
   ファサードは勿論だが、内陣、側壁、鐘塔、外陣
  全てがロマネスク様式のまま残されているので、ピ
  サ・ルッカ様式を最も顕著に残す建築の一つとされ
  ている。

   ファサードは四層の小柱廊や大理石の象嵌細工で
  飾られており、前に立って見上げる者を圧倒する。
   その高さが異常だが、本来はその高さまでの身廊
  を建設する予定であったらしい。現在の三層以上は、
  見せ掛けファサードのような感じである。

   写真の側壁は、上部に設けられた小歩廊と、下部
  の連続する盲アーチ列で飾られており、音楽が聴こ
  えてきそうな程の躍動感に満ちている。
   その奥に、ロンバルディア帯と小アーチで飾られ
  た、白亜の鐘楼が建っている。どうやら、ルッカの
  建築家は、壁面を石積みだけのままにしておくこと
  が出来なかったようだ。

   内部は見かけよりは質素な三廊式バシリカ聖堂で
  あり、落ち着いたロマネスクの静けさが感じられて
  嬉しかった。
          

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     ピストイアドゥオーモ
       Pistoia/Duomo
   
                          Toscana

        
     ピサとフィレンツェの中間にあることで、
  小都市国家として歴史的にも重要な立場を
  占めてきた。旧市街を囲む城壁は14世紀
  のものだが、原形は古代ローマからであり、
  8世紀にはランゴバルド族の城壁があった
  という。

   ドゥオモは12〜13世紀の建築ではあ
  るが、17世紀に内陣が改造されており、
  鐘塔や後陣も後世の建築である。従って、
  純然たるロマネスクは、基礎的な三廊式プ
  ランとクリプト、そしてファサードにのみ
  残されている。
   写真は正面ファサードで、上部がピサ・
  ロマネスク様式の小円柱アーケードが構成
  する三層の小歩廊になっている。ルッカな
  どに比べると地味だが、幾何学模様などに
  は非凡な意匠が施されている。
   なお、ファサード下部の七つのアーチの
  柱廊部分は、14世紀に付け加えられたも
  ので、場所柄フィレンツェの影響が感じら
  れる。
   
          

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     プラートドゥオーモ
       Prato/Duomo
   
                          Toscana

        
     ここも旧市街を六角形の城壁が囲んでお
  り、かつてはやはり重要な都市国家の一つ
  であった。14世紀中頃に、フィレンツェ
  の統治下に入っている。

   聖堂は12〜13世紀に、ロマネスク様
  式で建築されたのだが、14世紀になって
  直ぐにゴシック様式が取り入れられている。
  節操がないというよりは、上手く調和させ
  たと考えたほうが良さそうだ。
   ファサードの縞模様が印象的で、これは
  白と濃緑色の大理石を使用したものである。
   聖堂の側面には、ピサ様式とも言える連
  続する盲アーケードが意匠されている。
   鐘塔は12〜14世紀のものとされてお
  り、解説には“ロマネスク・ゴシック”様
  式と記してあった。
   三廊式の身廊は緑色の大理石円柱で仕切
  られており、純粋な“ロマネスク”様式を
  見ることが出来る。

   中央礼拝堂に飾られた、ルネサンスの巨
  匠フィリッポ・リッピのフレスコ画は見逃
  せない。
          

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     フィレンツェ聖ミニアート・アル・モンテ教会
       Firenze/Chiesa di San Miniato al Monte
   
                          Toscana

        
     アルノ川対岸の山腹に建つ教会で、テラ
  スから眺めるフィレンツェ旧市街の展望は、
  静けさの分だけ観光名所のミケランジェロ
  広場より優れている。
   ドゥオモ広場に建つ聖ジョヴァンニ洗礼
  堂と共に、フィレンツェを代表するロマネ
  スク建築の傑作である。創建は 1013 年か
  らとのことであり、ゴシック・ルネサンス
  に先立つ建築として貴重である。
   緑色と白の大理石を組み合わせた幾何学
  模様のファサードが特徴で、フィレンツェ
  様式と呼ばれている。端正で古典的な風貌
  が魅力だが、ピサ様式ほどの普及は無く、
  むしろ後世のフィレンツェへの影響の方が
  大きかったようだ。
   三廊式の身廊や、クリプトとその上の一
  段高くなった後陣なども、多彩な大理石に
  よって飾られていた。
   身廊の床は大理石の象嵌敷きであり、遍
  く普及しなかったのは、こうした豪華さに
  あったのかもしれない。
   フィレンツェにもこんなロマネスクが、
  というお話をしてみたかったのである。
          

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     アレッツォ聖マリア教区教会
       Arezzo/Pieve di Santa Maria
   
                          Toscana

        
     この町を訪ねる大半の人の目的は、聖フランチェス
  コ聖堂に飾られた、ピエロ・デラ・フランチェスカの
  フレスコ画「聖十字架伝説」にあるだろう。小生が初
  めて訪ねた時もそうだったのだが、後日そのすぐ近く
  に12世紀のロマネスク教会があることを知ったのだ
  った。

   教会を訪ねると、先ずは正面ファサードの豪華さに
  驚く。下部には五つのアーチが連続しており、中央の
  扉口以外は全て盲アーチである。その上の層は、連続
  する盲小アーケードで、更に上の二層には小円柱が並
  ぶ小歩廊が設けられている。ピサやルッカの様式を、
  大胆に取り入れたファサードである、と言えるだろう。
   扉口や盲アーチのタンパン部分、内部の壁面などに
  魅力的な彫刻があるのだが、修復工事中で撮影は出来
  なかった。

   内部は三廊式で、祭壇下にクリプトがあるために、
  祭室は中二階状になっている。写真は、左側廊からク
  リプトと祭室を眺めたものである。
   建築全体に修復の手が入っているので、何か妙に整
  然とした感が否めないのだが、この最も古い祭壇部分
  には、トスカーナ・ロマネスクを代表するような簡素
  だが威厳に満ちた風格といったものが感じられたのだ
  った。
          

   
  
     モンタルチーノ聖アンティモ大修道院
       Montalcino/Abbazia di Sant'Antimo

                          
Toscana
            
   トスカーナの銘酒ブルネッロ (Brunello) の産
  地として名高いモンタルチーノの町から、少し離
  れた山奥に在る。
   小さな峠を越えたあたりから、オリーブと糸杉
  に囲まれた広大な谷間が見え、その中心にこの美
  しい修道院が建っている。
   聖堂へと続く小道を下って行くと、均整の取れ
  た優雅な後陣と鐘塔が次第にくっきりと見えてく
  る。いかにもトスカーナらしいそんな美しい風景
  を眺めながらの修道院へのアプローチは、正にロ
  マネスク探訪の旅の至福の時間と言えるだろう。

   修道院付属教会の聖堂は三廊式のバジリカ形式
  で、トリビューンが備わっている。
   最大の特徴は、イタリアでは珍しい周歩廊が祭
  室の周りに作られ、三つの小礼拝堂が放射状に付
  けられていることである。フランスやスペインに
  見られる、巡礼路教会に似ているのである。

   身廊の列柱は荘厳で、柱頭には美しい彫刻が施
  されている。ダニエルとライオンの場面を彫った
  柱頭が特に印象深い。フランスのルシオン地方か
  ら来たカベスタニーの職人
(Maître de Cabestany)
  による作品だという。
   南門の扉口は角柱とマグサ石で構成された単純
  な門だが、マグサ石に有翼の怪獣や怪鳥が彫られ、
  柱は幾何学的な模様でびっしりと埋められている。
       

   
   
     サン・クイリコ・ドルチア聖クイリコ参事会教会
       San Quirico d'Orcia/Collegiata di San Quirico

                         Toscana

         
   シエナの南東の町で、モンタルチーノ
  とピエンツァの間に位置している。高台
  に在る旧市街は城壁に囲まれており、こ
  の参事会教会は西側の壁に近い。
   写真は教会堂の南側面を写したもので
  余り装飾は無いが、きりっとした簡素で
  美しい建築である。12〜13世紀との
  ことだが、門はややゴシックにかかって
  いる。
   聖堂は、単身廊に翼廊の付いた十字形
  で、写真の手前の門が翼廊の南扉口であ
  る。翼廊には小さな祭室が付いており、
  後陣が見えるが角張っていて余り魅力は
  無い。
   西側の正面扉口は写真では見えていな
  いが、身廊南口に似ており、束ねた意匠
  の柱や鰐のような怪獣の彫刻が有る。こ
  の西扉口が最も古く、三つの異なった時
  代の扉口を見ることが出来て興味深い。
   旧市街は車通行禁止で、歴史的な家並
  を見ながらゆったりと歩くのは楽しい。
       

   
    
     ソヴァーナ聖ピエトロ・パオロ大聖堂
       Sovana/Cattedrale di Santi Pietro e Paolo

                         Toscana

          
   トスカーナ南端部の辺境の町で、かつ
  ては見捨てられた城塞の廃墟しか残って
  いなかったそうである。町外れのこの教
  会は10世紀に起源を持つ古いもので、
  改修はされているが12世紀のロマネス
  ク建築を今日に伝えている。
   写真は西壁から見た三廊式の身廊で、
  色大理石の柱がアクセントになっている。
   天井は14世紀の改修の時に、構築さ
  れたという。
   柱頭彫刻に見るべきものが多く、アダ
  ムとイヴやダニエルと獅子を彫ったもの
  が特に目に付いた。
   プリミティヴな地下祭室の円柱が美し
  かったが、北側扉口の装飾が格別印象的
  だった。
   組紐、網目、渦巻といったケルティッ
  クなものや、鳥や花をモチーフとした数
  々の図案で飾られている。
           

           
           
     ジャーノ・デッルンブリア聖フェリーチェ大修道院
       Giano dell'Umbria/Abbazia di San Felice

                         
Umbria
           
   山上都市モンテファルコ Montefalco
  で食事をしてから、私達はジャーノを訪
  ねたのだが、町のどこにもこの修道院は
  無かった。その筈で、ここから更に数キ
  ロ山道を入った崖地で、ようやく発見す
  ることが出来たのだった。
   さらに幸運なことに、通常は閉じられ
  た教会の扉が開いていた。司教がオルガ
  ンの練習をしていたのだった。
   お陰で私達は内陣を、BGM付きでゆ
  っくりと見学出来たのである。
   三廊バジリカ式身廊、柱頭彫刻の無い
  素朴な柱、上下二段の祭室、半円形外陣
  などがイタリア・ロマネスクの特徴なの
  だが、ここも法則通りの建築だった。
   写真は下段の地下祭室で、低い重厚な
  天井からのアーチを受けるか細い柱が妙
  に美しく感じられた。ここの柱頭には、
  鳥や動物を一筆書きで描いたような、素
  朴な浮彫が見られた。
         

  
                   
     ベヴァーニャ聖シルヴェストロ教会
       Bevagna/Chiesa di San Silvestro

                         Umbria

           
   城壁に囲まれて静かにたたずむこの町は、古い
  石畳の小道や美しい広場と共に、そこここに色濃
  く歴史を残していた。
   城門の外に車を止め、細い路地を抜けると大き
  な広場に出る。そこには広場をはさんで、聖ミケ
  ーレ教会とこの教会とが向かい合って建っていた。
  どちらも重要なロマネスク建築なのだが、聖ミケ
  ーレは完全な修復中で見ることが不可能だった。
   どちらも12世紀後半の建造だが、こちらのフ
  ァサードは未完とのことで、タンパンには何も彫
  られていなかった。
   写真で見る通り、ここも三廊バジリカ式身廊、
  上下二段の祭室というパターンだが、半円形外陣
  は一つであった。
   また、単純なはずの柱頭には、気持ちばかりの
  植物模様が彫られている。柱間の半円アーチのス
  パンが大きいので、狭い空間がかなりゆったりと
  して見える。
   地下のクリプトは清浄な雰囲気の静かな空間だ
  が、古代ローマの柱が数本利用されたりしていて、
  当時の石材利用は大らかだったのだなあと思わせ
  て面白かった。
  
         

           
            
     アッシジ聖ルフィーノ大聖堂
       Assisi/Duomo di San Ruffino

                         Umbria

           
   アッシジへは行ったことがあったのだが、聖
  フランチェスコ聖堂と聖キアラ教会しか訪ねて
  いなかった。
   今回はアッシジの郊外に数泊し、未見のカル
  チェリやアンジェリなどといった聖フランチェ
  スコの遺跡を訪ねることが出来た。
   12世紀ロマネスク建築である、この大聖堂
  も初めての訪問だった。聖フランチェスコも聖
  キアラも、ここで洗礼を受けたのである。
   写真は聖堂西正面のファサードと塔である。
  均整のとれた美しいファサードであり、扉口を
  飾る彫刻は繊細で、相当の技量の持ち主が彫っ
  たのだろうと推量出来る。
   三つの門はいずれも、その門柱の基礎にライ
  オンを彫っている。イタリア・ロマネスクのパ
  ターンなのだが、余り卓越した意匠とは思えな
  いのだが、何故この当時に一世を風靡したのか
  は分からない。獅子が象徴する勇気・栄光・勝
  利は理解出来るのだが、日本の狛犬に余りにも
  似ているのが陳腐に感じる要因かもしれない。
   右側の建物は美術館になっており、地下へ降
  りていくと聖堂のクリプトへと入ることが出来
  る。最もプリミティヴな部分であり、フレスコ
  画や天井の低い空間からは、創建時の美意識が
  伝わってくるようだった。
   
         

           
          
     フェレンティッロ聖ピエトロ・イン・ヴァッレ大修道院
       Ferentillo/Abbazia di San Pietro in Valle

                         Umbria

                                    
          
   ローマの北に位置する、ウンブリア地
  方の最初の県がテルニである。県庁のあ
  るテルニ
(Terni) の町から、スポレート
  方面には行かず、ネーラ川に沿って渓谷
  を進むと城塞の町フェレンティッロに着
  く。
   修道院へは町からさらに渓谷を遡り、
  左手の山に入って急な斜面を登らねばな
  らない。
   創建が8世紀と伝えられる古い修道院
  だが、大半は12世紀の建築である。単
  身廊に翼廊の付いた、十字形の簡素な教
  会堂には、両側の壁にフレスコ画が残さ
  れていたが、かなり修復の手が後世に入
  っているように見えた。
   回廊の入口の側柱に彫られた聖ペテロ
  と聖パウロ像は、いかにもロマネスク的
  な愛らしい彫像で気に入ってしまった。
   周囲の環境は、修道院らしく人家も無
  い辺鄙な場所で、清浄な空気と神聖な光
  に満ち溢れていた。
         

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     トーディ大聖堂
       Todi/Duomo

                         Umbria

           
     エトルスキ時代、ローマ時代、中世と、三つの時代
  それぞれに築かれた三重の城郭が、この町の歴史の古
  さと重要さを物語っている。
   中世における町の活気を今日に伝える歴史的な建造
  物が居並ぶポポロ広場
(Piazza del Popolo) に面して、
  12世紀創建のこの優雅なファサードを持つ聖堂が建
  っている。

   バラ色と白色の大理石で出来たファサードは、三つ
  の扉口が付け柱で仕切られ、中央上部にはバラ窓が設
  けられている。この部分は13世紀以後に、ゴシック
  的な改修が行われたのであろう。
   聖堂内部は三廊式で、仕切りアーケードには、美し
  い柱頭彫刻の施された円柱が並んでいる。何故か一本
  おきに角柱が並立していた。円柱だけでは強度的に弱
  く、角柱部分が聖堂の主構造の一部になっているのだ
  ろう。

   クリプトは修復工事中で、中へ入ることが出来なか
  った。仕方なく聖堂背後へと回りこんでみると、狭い
  隣家との間に、写真のような見事な後陣を見ることが
  出来た。
   この教会では、この部分こそが、ロマネスク教会と
  しての“らしさ”を最大に発揮しているのかもしれな
  い。   
          

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     スポレート大聖堂
       Spoleto/Duomo

                         Umbria

           
     城壁に囲まれたこの古い町は、古代ローマ時代には
  ローマの自治都市であり、6〜8世紀にはランゴバル
  ド族の統治下になったこともある。

   この大聖堂は 1198 年に教皇イノケンティウス3世
  によって献堂されたもので、城壁内旧市街の東端に位
  置している。
   広場からは一段低い場所に建つ聖堂のファサードと、
  すっくと延びる鐘楼を見下ろすようになっている。
   ファサードは三層に分かれており、最上部には三つ
  のバラ窓とビザンチン風のモザイク画が飾られている。
  描かれているのは、玉座のキリストを中心にして立つ
  聖母マリアと福音書家聖ヨハネである。このモザイク
  は、1207 年の作品であるという。
   二層目には大きなバラ窓を中心にして、五つのバラ
  窓が意匠されている。中央のバラ窓の四隅に、四福音
  書家のシンボルが彫られている。
   最下部の柱廊付き玄関間はルネサンス時代の改造だ
  が、鐘塔と共に、暮れない夏の夕日の中に、均整の取
  れた絵になる光景を創出していた。

   内部は後世にかなり改築されており、身廊の床に残
  るモザイクだけが創建時代のものである。
   この寺に墓がある、フィリッポ・リッピのフレスコ
  画は必見である。
          

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     スポレート聖ピエトロ教会
       Spoleto/Chiesa di San Pietro

                         Umbria

           
     町の最南端の城門を出てから、テッシ
  ーノ
(Tessino) 川を渡り、モンテルーコ
   (Monteluco)
の丘の麓へと登った所に、周
  囲を見晴らすような格好でこの教会が建
  っている。

   近世の修復もあって聖堂建築全体には
  余り興味が湧かないのだが、写真のファ
  サード扉口の両側に施されたレリーフ装
  飾彫刻は絶対に見逃せない。
   制作されたのは12〜13世紀であり、
  ロマネスクとしてはやや後期ということ
  もあって、ロマネスクの魅力である抽象
  性が失せ、ちょっとだけ古典的な写実性
  が顔を出している、と分析出来るだろう。

   四層の小盲アーチ列や擬人動物像、そ
  の外側には新約聖書の逸話や、様々な寓
  話を象徴した動物などが彫られている。
   伝統的な古代ローマの美意識が彫らせ
  たような、重厚な写実性すら感じさせる
  不思議なレリーフである。
          

              
             
     サン・マロート聖ジュスト教会
       San Maroto/Chiesa di San Giusto

                          
Marche
         
   アッシジの南の町フォリーノ (Foligno) から西へ
  と向かい、イタリアの背骨であるアペニン山脈を越
  えてマルケ州に入る。
   峠から少し下った谷間の寒村で、地図にも載って
  いないのだが、教会は見晴らしの良い高台に建って
  いるので、峠越えの国道からも直ぐにそれと判った。

   隣家の老人の話では、週に一回司祭がミサのため
  に巡回して来た時だけ扉が開くそうで、残念ながら
  私達は内陣へは入れなかった。
   写真で見る通り、聖堂は完全な円形であり、四方
  に半円形の礼拝堂が付いている。
   ロンバルディア帯だけの装飾で、とても質素に見
  えるが、二重の屋根の形や高さが絶妙であることが
  建築全体に軽快な美しさを見せている。背後の山か
  ら見下ろしたら見事だろうと意見が一致したが、急
  峻な坂道に向かって歩き出すことはなかった。
   堂内の天井を見上げて、半球形のドームを眺めた
  かったのだが、きっと大仰ではないこじんまりとし
  たチャーミングなドームであっただろうと想像して
  いる。
   聖堂は12世紀のものであり、鐘塔は後世の追補
  である。
         

           
           
     サン・ヴィットーレ・デッレ・キウーゼ聖ヴィットーレ教会
       San Vittore delle Chiuse/Chiesa di San Vittore

                          Marche

         
   サン・マロートからアペニン山脈を
  縦断するような形で北上し、アンコー
  ナへ続く国道に出た。このあたりはフ
  ラサッシ峡谷といい、深い谷と切り立
  った断崖が続いている。
   この村は温泉で知られており、教会
  は温泉施設の並ぶ小さな集落の一番奥
  の小高い場所に建っていた。
   クーポラや後陣の姿からは、明らか
  にビザンチンの影響を受けていること
  が分かる。
   聖堂はほぼ方形で、縦横三列九つの
  ベイから成り、中央にドームが設けら
  れた東方様式なのである。
   太い円柱、豪快な半円アーチ、窓の
  無い荒削りの壁、など11世紀ロマネ
  スク建築が、ぴったりとビザンチンの
  スタイルに融合しているのだ。
   装飾だらけの教会を見慣れた目には、
  この無垢な石積の聖堂が限りなく純粋
  な建築美を示しているように見える。
          

         
         
     アンコーナ聖マリア・デッラ・ピアッツァ
       Ancona/Chiesa di Santa Maria della Piazza

                          Marche

         
   アンコーナの旧市街、港の中央にほぼ
  面した小さな広場の奥に、この小さな教
  会が建っていた。
   現在の聖堂は5世紀の古い教会の上に
  構築されており、床のガラスを通してそ
  れが見えるようになっていた。
   身廊は三廊式で、クリプトの上段に祭
  室が設けられているが、かなり修復され
  ているように見えた。
   ここではやはり、写真の扉口とファサ
  ードが見所だろう。
   13世紀の作だが、壁一面に彫られた
  四層のブラインド・アーケード(盲アーチ
  列柱)は、デザインとしても奇抜で、とて
  も鮮烈な意匠だと思う。
   扉口のヴシュールに彫られた繊細な動
  植物模様や、最上部と中段に付けられた
  帯状のレリーフの彫刻には、石工の非凡
  な才能を見ることが出来る。
           

   
  
     アンコーナ聖チリアコ大聖堂
       Ancona/Duomo di San Ciriaco

                          Marche

         
   アンコーナの町外れ、アドリア海に突き出た小
  さな岬の高台に、この壮大な歴史的遺産が建って
  いる。

   建築はギリシャ十字形で、身廊も翼廊も三廊式
  となっている。写真はクーポラのあるその交差部
  で、手前が身廊入口、右奥が祭室であり、左階段
  の上は北翼廊の礼拝堂となっている。
   大規模な聖堂の割りに整然とし、一番嫌いな威
  圧感というものを感じさせないのは、権威を誇示
  するために飾る小道具類が一切無いからなのかも
  しれない。

   正面玄関柱廊はライオンの居るロンバルディア
  ・ロマネスク、扉口の先尖アーチ門はゴシック、
  平面図はビザンチン、内部構造はロマネスク、と
  いった複合建築でありながら、それぞれが控えめ
  な主張しかしていないところに絶妙の均整感が生
  まれているのかもしれない。

   アンコーナで最も期待していたポルトノヴォの
  聖マリア教会
(Santa Maria di Portonovo)は、完
  全に修復中で境内に立ち入ることも出来なかった。
  また来い、ということらしい。
        

        
        
     チヴィタノーヴァ・マルケ聖マリア・ア・ピエ・ディ・キエンティ教会
       Chivitanova Marche/Chiesa di Santa Maria a Piè di Chienti

                          Marche

         
   アドリア海沿いのチヴィタノーヴァ
  からは、キエンティ川を約7キロ西へ
  遡ることになる。
   ここでも親切な鍵番の老婆が、本来
  ならば締めるはずだった昼の休みの時
  間を延長して扉を開けてくれた。下手
  をすれば、3時間は待たねばならなか
  ったところだった。
   9世紀創建と伝えられる三廊式十字
  形の古い聖堂であり、最大の特徴は、
  祭室に周歩廊が設けられ、小祭室が放
  射状に飛び出していることと、二階に
  周歩廊もそのままトリビューンが設け
  られ、さらに天井がもう一段高くなっ
  ていることであろう。
   祭室のドームに後世のフレスコ画が
  描かれている以外、ほとんど目立った
  装飾の無い聖堂なのだが、トリビュー
  ンの示す立体感が調和のとれたハーモ
  ニーとなっており、あたかも建築が奏
  でる荘重な音楽を聞くような気分にな
  っていたのだった。
  
          

   
  
     マチェラータ聖クラウディオ・アル・キエンティ教会
       Macerata/Chiesa di San Claudio al Chienti

                          Marche

         
   キエンティ川の上流、高速道路のマチ
  ェラータ・インターからほど近い田園地
  帯の只中に、麦畑や牧草地に囲まれてポ
  ツンと建っている。
   後方からの外陣の眺めは抜群だったが、
  外見はほとんどビザンチンで、平面図も
  方形を三列づつに区切り、三つの祭室の
  飛び出す様式の後陣が付いたものである。
   後方から見るとよくは分からないが、
  正面から見ると、二本の円塔に挟まれて
  上下に二つの扉口が設けられ、上階へは
  直接石段で登れるようになっている。
   つまり聖堂は完全に二層になっていて、
  円塔内の螺旋階段のみで連絡出来るよう
  になっていたのだった。
   上下どちらも見事なまでに質素な内陣
  で、交差穹窿の天井から柱頭無しでその
  まま柱になるという意匠は、現代建築で
  はないかと思えるほどで、むしろとても
  斬新な印象を受けてしまった。
          

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