イタリア中部()のロマネスク
    
              
ローマ・ナポリ周辺とアブルッツォ
            
  Lazio/
Abruzzo/Molise/Campania

          
            
   西はロ−マ・ナポリ、東はペスカ
  ーラ・テルモリ周辺までをイタリア
  中部(南)と区分した。イタリア半
  島の心臓部であり、常に歴史の中心
  を占めてきた重要な地域である。
   それだけにこの一帯のロマネスク
  は特異な個性を持っており、古代ロ
  ーマやビザンチンやノルマンの影響
  を無視することはできない。










  
イタリア中部(南)の州と州都

  
 1 Lazio (Roma)
   
2 Abruzzo (L'Aquila)
   
3 Molise (Campobasso)
   
4 Campania (Napoli)
   
5 Sardegna (Cagliari)

     写真:パエストゥムネプチューン神殿

      
何という力強い建築であろうか。ギリ
     シャ人が各地に建てた神殿の中でも、そ
     の圧倒的な存在感は最高だろう。
      古代ローマだ、ビザンチンだ、ロマネ
     スクだ、といった歴史的区分などを遥か
     に超越した、古代ギリシャ建築の堂々た
     る美しさに感銘を受けた。
           

    
    
     トゥスカニア聖マリア・マッジョーレ教会
       Tuscania/Chiesa di Santa Maria Maggiore
    
                          
Lazio

          
   ローマの北ヴィテルボ Viterbo の町から北西に
  25Km走ると、城壁に囲まれたこの小さな町に着く。
  かつてエトルリアの都市として栄えた場所であり、
  周辺には死者の町の遺跡が多い。
   城壁の南側は小高い丘になっており、そこに二つ
  のロマネスク教会が建っている。一つはフレスコ画
  の残る聖ピエトロ教会
(San Pietro) であり、もう
  一つが写真の聖マリア・マジョーレ教会である。
   正面には三つの扉口があるのだが、写真にはその
  中央と左側の扉口が写っている。中央タンパンには
  聖母子とエジプト逃避が、両側のタンパンには不思
  議な怪獣のような図像が彫られていた。
   バラ窓やレリーフ、小開廊などが意匠されたファ
  サードには、ロマネスクだけでも色々な年代が複雑
  に詰まっているように見える。
   聖堂は三廊式で、アーチ列柱が作り出す内陣のハ
  ーモニーは美しい。フレスコ画の大半は後世のもの
  だろう。
   
   この日はトゥスカニアの町の
Al Gallo という小
  ぎれいなオーベルジュに泊まり、主人自慢の料理と
  ワインを楽しんだ。
           

  
  
     トゥスカニア聖ピエトロ教会
       Tuscania / Chiesa di San Pietro
    
                          Lazio

    
   町外れの小高い丘の上に建っており、
  そこはかつてエトルスキ人のアクロポリ
  ス跡だったらしい。
   四福音書家の象徴で四隅を囲まれたバ
  ラ窓を中心としたファサードは、とても
  繊細な彫刻で飾られている。エトルスキ
  の影響を受けたような妙な図像も見られ
  て、なかなか興味深い。
   13世紀初頭の作で、前述の聖マリア
  のファサードには、大きな影響を与えた
  ようだ。
   聖堂は11世紀の堂々たる三廊式バジ
  リカで、側廊を仕切る連続アーケードや、
  身廊のモザイク床は創建当初の壮麗さを
  今日まで伝えている。
   中央にのみ半円形の後陣が設けられて
  おり、その内壁には聖ペテロの逸話など
  を描いた創建時のフレスコ画が残ってい
  る。
   クリプタ(地下聖堂)は28本の小円
  柱が林立する異次元空間で、さながら夢
  幻の世界へと迷い込んだような気分にさ
  せてくれる。
        

  
   
     ローマ聖クレメンテ教会
       Roma / Chiesa di San Clemente
    
                          Lazio

          
   この教会は、有名な観光地コロッセオから真
  東に500mほど歩いた所、規模は小さくはな
  いが町並みの中に隠れるようにして建っていた。
   創建は3世紀とも言われるが、現在の建築は
  12世紀に再建された三廊式バシリカ聖堂であ
  る。
   身廊の壁面や内陣は、写真の如く壮麗なモザ
  イクやフレスコ画で装飾されているのだが、聖
  堂の外観の質素な佇まいからは全く想像すら出
  来ないほどの別世界だった。

   写真の正面、後陣の天井半ドーム部分は「十
  字架の勝利」と呼ばれる12世紀前半のモザイ
  クで装飾されている。十字架の根元から枝葉が
  伸び、無数の茎の渦となり、その中に花を咲か
  せるという象徴的な図像である。
   モザイクの下部壁面に描かれた聖人像は、ほ
  とんど14世紀のフレスコ画である。
   教会正面には聖堂と隣接して、回廊のような
  アトリウムが設けられている。この部分は12
  世紀半ばの建築らしい。

   紀元前からの古代遺跡が残るローマにあって、
  この教会の床面の装飾や聖歌隊席も12世紀ロ
  マネスク時代のものだと聞くと、何故か有り難
  く感じられたり、随分と新しいものなんだと感
  じたりしてしまうのは妙なものである。
            

  
   
     ローマ聖マリア・イン・トラステヴェレ教会
       Roma/ Chiesa di Santa Maria in Trastevere
    
                          Lazio

          
   テヴェレ川対岸の円形に湾曲するトラステヴ
  ェレ地区は商店の立ち並ぶ下町で、噴水の有る
  賑やかな広場に面してこの教会の正面柱廊やロ
  マネスク様式の鐘楼が一幅の絵となっている。
   聖堂は三廊式バシリカ形式だが、建物の周囲
  に後世の建造物が付随してしまったために、外
  観だけでは明確に掴み取れないだろう。
   身廊の列柱はイオニア式の柱頭を持つ古式な
  円柱で、アーケードではなく横石を載せたまぐ
  さ式の構造になっている。
   創建は4世紀だが、現在の建築は12世紀前
  半に再建されたものが基礎になっている。

   写真は中央後陣の半ドームに描かれたモザイ
  ク画で、キリストとマリアを中心とした聖人像
  が描かれている。
   金色が燦然と輝くモザイクは、ロマネスクと
  いうイメージとはどうしても結びつかないのだ
  が、時代としては明らかに東方からの影響を受
  けたロマネスクなのである。
   
   ここからトラステヴェレの市街を抜け、ロー
  マを一望できるジャニコロの丘へと登る散歩は
  楽しかった。

   
           

  
   
     ローマ聖ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂
       Roma / Basilica di San Giovanni in Laterano
    
                          Lazio

          
   ゾディアック叢書のロマネスク教会
  リストに掲載されていたこの教会の正
  面に立ってしみじみと眺めてみたが、
  この建築の一体どこがロマネスクなん
  だろうと考えてしまった。
   創建は3〜4世紀だが、現在の建築
  は実際には、ファサードは18世紀、
  聖堂は17世紀とのことで戸惑ってし
  まったのである。
   しかし、案内書を良く見れば、13
  世紀初頭の回廊が、聖堂の奥に隣接さ
  れているではないか。
   ローマの町の中に、こうした雰囲気
  の回廊が存在したとは知らなかった。
   二本の柱が対になったアーケードで
  囲まれており、柱の表面はモザイクや
  フリーズで装飾されていたらしい。現
  在は部分的に残っているだけだが、ね
  じれた意匠もユニークで、全体がこう
  したデザインで統一されていたとした
  ら、かなりモダンだったんだろうなあ
  としばし空想に耽ってしまった。
             

   
 
     ローマ聖パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂
       Roma/ Basilica di San Paolo Fuori le Mura
    
                          Lazio

          
   聖パウロの遺骸が埋葬されていた
  場所で、4世紀に創建された教会だ
  が何度も再建されており、現在の建
  物は19世紀のものである。
   正面右の扉口に設けられた扉は、
  歴代教皇の肖像が彫られた青銅製の
  もので、これは貴重な11世紀の頃
  の扉そのままであった。
   サン・ピエトロ寺院に次ぐと言わ
  れる、壮大な聖堂の規模には驚嘆す
  るが、どうにも好きにはなれそうに
  ない。
   祭壇に置かれた復活祭の燭台は、
  びっしりと彫刻が施された12世紀
  の傑作だった。
   しかしここでも、隣接する回廊が
  12世紀初めの建築で、ここだけが
  ロマネスク的な雰囲気が感じられる
  唯一無二の場所だったのである。
   アーケードの形式は、二本対の柱
  やアーチ上部のまぐさ装飾など、ね
  じれ柱は無いものの、前述の聖ジョ
  ヴァンニにとてもよく似ていた。
            

    
    
     ティヴォリ聖シルヴェストロ教会
       Tivoli / Chiesa di San Silvestro
    
                          Lazio

          
   ローマ郊外のティヴォリは、16世紀の華麗
  なエステ荘と、教皇グレゴリウスの別荘という、
  二つの庭園で知られる観光地である。
   ドゥオモの横を抜け、下町の露地を進むと、
  そこはエステ荘の真裏に当るのだが、そこにロ
  マネスクの壁画を残す小さな教会が在ることを
  知る人は少ないだろう。
   ティヴォリに泊まった翌朝ここを訪れたのだ
  が、ミサの準備をする司祭に運良く会え、扉を
  開き快く撮影の承諾を頂いた。
   教会堂は単身廊のバジリカ形式で、外壁は粗
  い石積みが魅力だったが、内部の壁や柱はすっ
  かり塗り替えられており、ややがっかりした。
  しかし、写真の、祭室に保存されているフレス
  コ壁画は、鮮やかな色彩の図像が壁から天井ド
  ームにまで描かれており、思いがけない収穫に
  心が躍った。
   天井に栄光のキリスト像、その下に羊たちの
  列、そして聖母子と聖人達の群像が、かなり剥
  落した部分は目立つものの、見事なフレスコで
  ある。
   全体的にブルーが格別美しかった。私達はこ
  れをティヴォリアン・ブルーと名付けた。
          

     
     
     アナーニ大聖堂
       Anagni / Cattedrale
    
                          Lazio

          
   ローマからナポリ方面へ向かう高速道
  路を、約100キロ進むとこの町の出口
  が有る。歴史の深い由緒ある町で、歴代
  の教皇を何人も輩出した場所でもある。
   谷を見下ろすことの出来る、一種の山
  岳都市である。
   目的の大聖堂は、町の東端、最も高い
  場所に建っており、美しい後陣を眺めな
  がら石段を登ると、12世紀の荘重な鐘
  塔の在る聖堂正面に出る。
   三廊式の内陣建築や床のモザイクが見
  所なのだが、私達は地下のクリプト見学
  を優先させた。案内の人が付き撮影禁止
  なのだが、堂内は意外に明るく、勿論ノ
  ーフラッシュのデジカメで一枚撮ってし
  まったのがこの写真である。。
   クリプトも三廊式で、小礼拝堂が付い
  ており、壁や天井には写真の通り、隙間
  無くフレスコ画が描かれている。聖母子
  像やキリスト像を中心にし、美しい装飾
  模様で飾られた空間は、未知の天国を現
  出させたかの如く輝いて見えた。
         

     
    
     スビアーコ聖ベネデット修道院
       Subiaco/ Monastero di San Benedetto
    
                          Lazio

          
   ティヴォリと先出のアナーニとのほぼ中間の、
  山深い谷間にこの町があり、修道院へはさらに町
  から裏山へと登って行かねばならない。
   手前に聖スコラスティカ修道院
(Monastero di
  
S.Scolastica) が在り、11世紀の鐘楼と一部に
  のみロマネスク様式が残されている。大半はゴシ
  ックに改築されてしまった。
   ここから更に登ると、ようやくこの修道院の入
  口にたどり着く。岩山にへばりついたような聖堂
  で、写真は上部教会の入口だが、断崖に沿って下
  部教会がずっと下まで続いている。
   幾つもの小さな聖堂は、岸壁をくり抜いた洞窟
  で繋がっており、その全ての壁や天井にフレスコ
  壁画が描かれている。制作年代が13世紀から1
  6世紀までと、かなり幅が広い。いかにも古そう
  なものを探して歩いたが、聖グレゴリオ礼拝堂の
  壁や天井に描かれていたものが13世紀初頭の作
  品であるらしかった。
   孤高な修行のためとはいえ、何故こんな場所に
  と思わざるを得ない絶壁の聖域である。
         

  
   
     モスクーフォ聖マリア・デル・ラーゴ教会
       Moscufo/Chiesa di Santa Maria del Lago
    
                          
Abruzzo
          
   この寒村に行くには、ペスカーラ
  
(Pescara) の西郊外に位置するピア
  ネッラ
(Pianella) という丘の上の町
  から、更に数キロ行かねばならない。
   教会の場所は直ぐ判ったのだが、
  扉口の鍵が閉まって開かなかった。
  墓参りの婦人に尋ね、墓地の向こう
  に住んで鍵を管理している尼僧に頼
  んで、ようやく内陣に入ることが出
  来た。
   写真で見る通り、三廊式バシリカ
  形式の聖堂である。小規模な建築の
  割りに、太い柱と豪快なアーチが重
  厚な空間を創出していた。12世紀
  の創建であり、まだ荒削りな素朴さ
  が残っていたのかもしれない。
   身廊の右側に置かれた説教壇はこ
  の地方には類例が多く、ここのもの
  は12世紀の作品らしい。壇周囲の
  浮彫彫刻は見事で、聖ゲオルグの龍
  退治の場面はかなりの傑作だろう。
   扉口の装飾アーチや、後陣の窓枠
  を飾るメダイオン模様のレリーフが
  とても美しかった。
           

  
   
     セッラモナチェスカ聖リベラトーレ・ア・マイエッラ教会
       Serramonacesca/ Chiesa di San Liberatore a Maiella
    
                          Abruzzo

          
   ペスカーラの南、アレント Alento の谷に面
  した寒村で、マイエッラ山塊の中腹に位置して
  いる。教会は、町から更に谷に沿って山の中へ
  入った場所に建っており、そこは森厳なる聖地
  となっていた。
   深い森を背景にして建つ白亜の鐘楼や聖堂は、
  訪ねる者の胸を必ずや打つほど鮮やかな印象を
  与えてくれるはずである。
   11世紀初めに創建された修道院の一部で、
  聖堂は、三つの半円後陣と三つの正面扉口を持
  つ、三廊式バシリカ形式の建築である。
   各々の扉口には、タンパン彫刻は無いが、二
  重のヴシュールとまぐさ石、左右の柱などに、
  精密な植物模様やライオンなどの動物が彫り込
  まれている。
   ファサードはロンバルディアの影響を受けて
  おり、またプーリア地方のロマネスクに影響を
  与えたのではないか、と思えるほどプリミティ
  ヴな美しさを見せている。
   身廊では結婚式の準備が行われていたが、が
  らんとした印象で、生きた教会としては使用さ
  れていないのかもしれない。
   小さな柱頭しか無い角柱のアーケードで、規
  模の割にはとても簡素な印象を受ける。
   ここでも、見事な装飾彫刻が施された説教壇
  が、とてもエレガントな存在となっている。
           

  
   
     トッレ・デ・パッセリ聖クレメンテ・ア・カサウリア大修道院
       Torre de' Passeri/ Abbaziale di San Clemente a Casàuria
    
                          Abruzzo

          
   ペスカーラからローマに通じる高速道路E
  80号線を走り、カサウリア−トッレ・デ・
  パッセリの出口を降りると、直ぐ右手にこの
  修道院の敷地が広がっている。
   見所は付属教会であり、特に写真の扉口の
  あるファサードは注目に値する。9世紀の創
  建だが、教会やファサードは12世紀再建時
  のものだろう。
   三廊式十字形のプランで、後陣は一つ、扉
  口は三つ、正面手前に三つのアーケードの有
  る柱廊が付いている。
   写真の門は中央扉口で、青銅の扉も含め、
  全体が12世紀最後の作品である。
   殉教した教皇クレメンスの遺骨を運んで、
  ルードヴィッヒ皇帝が創建したと言われ、こ
  こにはその逸話が彫られているそうなのだが、
  詳細なストーリーは解らない。
   右側扉口のタンパンには聖母子像、左側に
  は聖ミカエルの像が彫られていた。
   内陣の列柱は太い角柱なので、荘厳な雰囲
  気を創り出している。
   地下の祭室は、低い交差穹窿の天井と、柱
  頭の無い短い円柱で構成された美しい空間だ
  った。
         

   
    
     ボミナーコ聖マリア・アスンタ・教会
       Bominaco/Chiesa di Santa Maria Assunta
    
                          Abruzzo

          
   ラクイラ L'Aquila 市の南東30Kmに位置す
  る、人口300人という山間の小さな集落である。
   だが、この町外れの高台に在る修道院の跡地
  には、素晴らしい二つの教会が残されていた。
   一つはゴシックの聖ペッレグリーノ教会で、
  13世紀ビザンチン様式のフレスコ画を保存し
  ている。正面の柱廊が、とても印象的だった。
   写真は、隣接するもう一つの教会で、10世
  紀末から11世紀初めの創建と伝えられる。
   写真で見る通り、三つの後陣を持つ三廊式ベ
  シリカ形式の聖堂で、下部にはほとんど窓の無
  い石壁のみの構造体である。上部は後世の追補
  で、明かり取りの窓が数箇所開けられている。
   後陣の窓の周囲に彫られたレリーフは、ライ
  オンに蔓が絡まって連続する植物模様である。
   崖下から見上げた三つの半円形後陣は、いか
  にもこの地方らしい、素朴で東方の香りのする
  チャーミングな姿をしていた。
   内陣は思ったより狭い感じで、アーケードを
  支える太い円柱が堂々としているように見えた。
   見事なロマネスク彫刻の施された、大理石の
  説教壇が据えられていた。この地方には類例が
  とても多いのだが、正直を言うと余り感銘を受
  けない。
        

   
    
     コルフィニオ聖ペリーノ聖堂
       Corfinio/Basilica di San Pelino
    
                          Abruzzo

          
   ペスカーラからの高速道路E
  80号線を
Pratola Peligna
  ンターで降り、西へ5
Km走っ
  たところにこの町が在る。教会
  へは町を抜け、更に西へ2
Km
  ほど行かなければならない。
   11世紀から12世紀にかけ
  て建造された司教座教会で、三
  廊式バシリカ建築である。写真
  は南側面からの眺めで、右端が
  後陣で小礼拝堂が側面に飛び出
  した変則形式が面白い。
   後陣の装飾は、繊細なレリー
  フや浮き出た列柱アーケードな
  ど、よく見ると実に手が込んで
  いる。
   左端は別棟の聖アレッサンド
  ロ
(San Alessandro)教会で、後
  陣が写っている。ここは拝観禁
  止になっていた。
   身廊は柱と壁が一体化したア
  ーケードによって、側廊が区切
  られているという簡素な構造に
  なっている。
 
        

   
   
     アルバ・フチェンス聖ピエトロ教会
       Alba Fucens/Chiesa di San Pietro
    
                          Abruzzo

          
   この町は古代ローマの遺跡で知られており、
  ラクイラの南に聳えるヴェリーノ
(Velino)山塊
  の南麓に位置する眺望絶佳の場所である。
   広大な発掘現場を横に見ながら、牧草の茂る
  丘を登って行くと、この簡素な教会堂が見えて
  くる。
   管理人の説明では、聖堂は12世紀に完成し
  たとのことで、レリーフ彫刻に囲まれた正面扉
  口を入ると、三廊式の身廊と側廊が目に入った。
   柱には縦縞が浮彫されたローマ式の円柱が用
  いられており、どうやら遺跡の石材を再利用し
  たものらしい。
   写真は身廊から左側廊を眺めたもので、手前
  に美しい色大理石細工の模様が付いた説教壇が
  据えられている。これまでも数々の事例を見て
  きたが、全てコスマティと呼ばれる細工師のギ
  ルドの手によるものである。
   身廊と内陣を区切る仕切板にも、同様の細工
  が施されていた。
   管理人に御礼の気持ちで献金をしたのだが、
  彼は私達が聖堂から出ると同時に扉口の鍵を閉
  め、スタスタと丘を下って町唯一のバールへと
  消えていった。生き神様への功徳だったか、と
  思ったが、何故か別段悪い気はしなかった。
   
           

  
   
     テルモリ大聖堂
       Tèrmoli/Duomo
    
                          
Molise

          
   アドリア海に沿ってペスカラから南東に下
  ると、小さな州モリーゼの港町テルモリに着
  く。チャーミングな旧港に接して突き出した
  岬は城壁で囲まれており、その内側が旧市街
  である。
   迷路のように狭く曲がりくねった石畳の街
  路を進むと、小さな広場に出る。そこに12
  世紀創建の大聖堂が建っており、写真は広場
  から教会正面を写したものである。
   説明書によると、ファサードはピサ・プー
  リア様式とのことで、確かに盲アーケードの
  中に付け柱や二連窓が造られている。
   タンパンには四人の人物像が有ったらしい
  のだが、ほとんどが破壊されていて判別でき
  なかった。
   左端のアーチ窓の中にだけ二体の像が彫ら
  れており、これはどうやら受胎告知らしい。
   聖堂は小さいながらも三廊式バシリカで、
  三つの後陣を有している。柱は柱頭の無い角
  柱で、両側に三本づつ並んでいる。
   祭壇はかなり高い位置に在り、身廊から祭
  壇へは十段の石段を登らねばならない。祭壇
  の下はクリプタになっていたが、見学は出来
  なかった。
           

  
   
     ペトレッラ・ティフェルニーナ聖ジョルジオ教会
       Petrella Tifernina/ Chiesa di San Giorgio
    
                          Molise

          
   州都カンポバッソ Campobasso
  から北へ20
Kmの山間の町で、石
  畳の美しい中世そのままの集落であ
  る。
   町の最上部にある小さな広場に面
  して、12世紀に創建された教区教
  会が建っていた。
   扉口は一つだが、三つの後陣を持
  つ三廊式の聖堂である。
   写真は西正面入口タンパンの彫刻
  で、まるで近代絵画を観るような自
  由な発想が表現されている。
   人間を喰う動物二匹、大蛇、十字
  架を負う羊などが彫られている。救
  済を暗示すると思われるが、不思議
  な図像である。
   扉口は北と南にも有り、同じよう
  な意匠の動物像が彫られているが、
  表現力はやや劣るようだ。
   堂内の柱頭彫刻や壁面のレリーフ
  には、卓越した意匠の様々な彫刻を
  見ることが出来た。ロマネスク的な
  不思議な図像も魅力である。
         

   
   
     アマルフィ聖アンドレア大聖堂
       Amalfi/ Duomo di Sant'Andrea
    
                          
Campania
          
   紺碧の海に面した風光明媚な景勝の地で、海
  運都市としても古くから開けていた。
   大聖堂は9世紀の創建で、以後各時代に様々
  な修復が行われたらしい。使徒聖アンデレの聖
  遺物が納められている事で、良く知られている。

   幅の広い階段の上に柱廊が設けられており、
  その向こうにノルマンやアラブの影響の色濃い
  聖堂が堂々と聳えている。
   聖堂にはかなり修復の手が入っており、列柱
  の一部や説教壇などが12世紀のものらしい。
   写真には写っていないが、創建当初の鐘楼が
  左側に建っており、シシリー島のモンレアーレ
  に似た意匠が見られた。

   有名な天国の回廊は13世紀中頃の建造で、
  かなりゴシック的なのだが、二本対になった白
  亜の列柱と交差穹窿はロマネスク的であり、交
  差するアラブ風の装飾アーチとの均整の取れた
  意匠はモダンでとても素晴らしい。
         

  
   
     カヴァ・デ・ティッレーニ三位一体ベネデッティーナ修道院
       Cava de' Tirreni/ Abbazia Benedettina Santissima Trinità
    
                          Campania

          
   サレルノからナポリへと向かって約
  10
Km行ったところにこの町が在り、
  町の西南端の深い谷底にこの修道院が
  建っている。
   修道院入口のファサードは完全なバ
  ロックであり、付属教会もルネサンス
  かバロック様式が目に付いた。
   目的のロマネスク回廊はガイドが付
  いたツアー見学になっており、英語の
  堪能な婦人が案内をしてくれた。
   岸壁を刳り抜いて作った回廊や、複
  雑な構造のクリプタなどを巡るツアー
  である。
   写真は回廊部分で、派手な装飾や立
  派な柱頭彫刻は見られないが、瞑想に
  相応しい静寂のみの孤高な空間が創出
  されていた。
   写真撮影禁止となっていたが、案内
  の婦人はウィンクをしてから、後ろを
  向いていてくれていたのだった。
         

  
    
     サレルノ大聖堂
       Salerno/ Duomo
    
                          Campania

          
   サレルノの町に3泊したので、ロマネスクだけ
  でなくパエストゥムのギリシャ遺跡などもゆっく
  りと観ることが出来た。中でも、サレルノの旧市
  街は古びた家並みが魅力で、散歩する楽しみが増
  幅されてしまう。
   聖マタイの遺体が地下に眠っているというこの
  大聖堂は、そんな旧市街の真ん中に建っていた。
   11世紀末の創建で、門を入ると直ぐに写真の
  アトリウムに出る。全体的にノルマンの影響が強
  く、12世紀の鐘楼はアマルフィのものに類似し
  ている。
   列柱には古代ローマの円柱なども使われており、
  多彩色の石が積まれた、まことにエキゾティック
  な空間だった。
   聖堂は三廊式だが完全にバロックに改修されて
  おり、ちょっとがっかりだったが、正面扉口のレ
  リーフや堂内に置かれたモザイクの美しい二つの
  朗読台は12世紀のものだそうである。
   地下のクリプタは進入禁止で、残念ながら聖マ
  タイの墓へ詣でることは出来なかった。
          

   
    
     サンタガタ・デイ・ゴティ大聖堂
       Sant'Agata dei Goti/ Duomo
    
                          Campania

          
   カセルタ(Caserta)の東20Km
  位置する谷間の町で、川に沿って古
  い町並みが続いている。
   ここには二つの重要なロマネスク
  教会が在るのだが、舗床のモザイク
  が美しい聖メンナ
(San Menna)教会
  は、残念ながら閉まったままで見る
  事が出来なかった。
   こちらの大聖堂は、開扉を散々待
  たされたが、粘り勝ちで何とか入る
  ことが出来た。
   聖堂は近年の改修になるものだっ
  たが、目的は祭壇下のクリプタ(地
  下礼拝堂)である。
   横長の狭い空間に、三つの半円形
  祭室が在り、10本の円柱が2列に
  並んでいる。写真はその内の一本の
  柱頭で、ロマネスクとしての魅力的
  なモチーフである。
   低い天井は交差穹窿で、暗闇に円
  柱の林が浮き出る様は誠に美しい。
           

  
    
     カセルタ・ヴェッキア大聖堂
       Caserta Vécchia/Duomo
    
                          Campania

          
   ナポリ王国の宮殿や庭園が世界遺産
  に指定されたカセルタの町に3泊し、
  そこを基地にしてカンパーニャのロマ
  ネスクを巡った。
   このカセルタの旧市街は、10キロ
  北に離れた山の上に残っている。古色
  蒼然たる家並の雰囲気は格別で、町歩
  きが大きな魅力となっている。
   教会は12世紀初めの三廊式十字形
  で、三つの扉口と三つの後陣、十字交
  差部の八角ドーム塔、ファサード右の
  方形鐘楼などが、主要な建築となって
  いる。
   二つの塔の外観は見るからにノルマ
  ン的な装飾で、アラブ的な交差アーチ
  の意匠を見ることも出来る。
   写真は、祭壇の端から、身廊を扉口
  の方へ向かって振り向いたところであ
  る。やや繊細かと思われる列柱と、小
  さな幅のアーケードが整然と美しい。
   カセルタを訪ねる観光客は多いが、
  ここまで足を延ばす人はほとんど無く、
  静かに落ち着いた別天地だった。   
   

   
   
     サンタンジェロ・イン・フォルミス聖ミケーレ・アルカンジェロ教会
       Sant'Angelo in Formis/ Chiesa di San Michele Archangelo
    
                          Campania

          
   カセルタの北西10キロに位置するこ
  の教会へは、1985年の年末にシシリ
  ーへ向かう途中で立ち寄ったことがあっ
  たが、その時は全くの修復中で、何も見
  る事が出来なかった。
   修復成った今回は心行くまで、フレス
  コ画の魅力を堪能することが出来た。
   聖堂は三つの後陣のある三廊式バシリ
  カで、柱廊の付いたファサードには扉口
  が一つ開いていた。
   写真は、側廊から扉口方向を眺めたも
  のだが、御覧のように四方の壁一面にフ
  レスコ画が描かれている。
   正面の半ドームには四福音書家のシン
  ボルに囲まれた玉座のキリスト像、左右
  の壁には主にキリストの奇跡の物語を中
  心とした新約聖書のエピソードが描かれ
  ている。ほとんどが11世紀ロマネスク
  期の作品である
   デッサンや構成は稚拙だが、統一され
  た色彩や密度の濃い表現が、我々を異次
  元の世界へと誘導してくれる。
   

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