| |
| イタリア中部(南)のロマネスク |
| ローマ・ナポリ周辺とアブルッツォ Lazio/ Abruzzo/Molise/Campania |
![]() |
西はロ−マ・ナポリ、東はペスカ ーラ・テルモリ周辺までをイタリア 中部(南)と区分した。イタリア半 島の心臓部であり、常に歴史の中心 を占めてきた重要な地域である。 それだけにこの一帯のロマネスク は特異な個性を持っており、古代ロ ーマやビザンチンやノルマンの影響 を無視することはできない。 イタリア中部(南)の州と州都 1 Lazio (Roma) 2 Abruzzo (L'Aquila) 3 Molise (Campobasso) 4 Campania (Napoli) 5 Sardegna (Cagliari) |
||
| 写真:パエストゥム/ネプチューン神殿 何という力強い建築であろうか。ギリ シャ人が各地に建てた神殿の中でも、そ の圧倒的な存在感は最高だろう。 古代ローマだ、ビザンチンだ、ロマネ スクだ、といった歴史的区分などを遥か に超越した、古代ギリシャ建築の堂々た る美しさに感銘を受けた。 |
![]() |
||
| |
| トゥスカニア/聖マリア・マッジョーレ教会 Tuscania/Chiesa di Santa Maria Maggiore |
| Lazio |
![]() |
ローマの北ヴィテルボ Viterbo の町から北西に 25Km走ると、城壁に囲まれたこの小さな町に着く。 かつてエトルリアの都市として栄えた場所であり、 周辺には死者の町の遺跡が多い。 城壁の南側は小高い丘になっており、そこに二つ のロマネスク教会が建っている。一つはフレスコ画 の残る聖ピエトロ教会 (San Pietro) であり、もう 一つが写真の聖マリア・マジョーレ教会である。 正面には三つの扉口があるのだが、写真にはその 中央と左側の扉口が写っている。中央タンパンには 聖母子とエジプト逃避が、両側のタンパンには不思 議な怪獣のような図像が彫られていた。 バラ窓やレリーフ、小開廊などが意匠されたファ サードには、ロマネスクだけでも色々な年代が複雑 に詰まっているように見える。 聖堂は三廊式で、アーチ列柱が作り出す内陣のハ ーモニーは美しい。フレスコ画の大半は後世のもの だろう。 この日はトゥスカニアの町の Al Gallo という小 ぎれいなオーベルジュに泊まり、主人自慢の料理と ワインを楽しんだ。 |
|
| |
| トゥスカニア/聖ピエトロ教会 Tuscania / Chiesa di San Pietro |
| Lazio |
![]() |
町外れの小高い丘の上に建っており、 そこはかつてエトルスキ人のアクロポリ ス跡だったらしい。 四福音書家の象徴で四隅を囲まれたバ ラ窓を中心としたファサードは、とても 繊細な彫刻で飾られている。エトルスキ の影響を受けたような妙な図像も見られ て、なかなか興味深い。 13世紀初頭の作で、前述の聖マリア のファサードには、大きな影響を与えた ようだ。 聖堂は11世紀の堂々たる三廊式バジ リカで、側廊を仕切る連続アーケードや、 身廊のモザイク床は創建当初の壮麗さを 今日まで伝えている。 中央にのみ半円形の後陣が設けられて おり、その内壁には聖ペテロの逸話など を描いた創建時のフレスコ画が残ってい る。 クリプタ(地下聖堂)は28本の小円 柱が林立する異次元空間で、さながら夢 幻の世界へと迷い込んだような気分にさ せてくれる。 |
|
| |
| ローマ/聖クレメンテ教会 Roma / Chiesa di San Clemente |
| Lazio |
![]() |
この教会は、有名な観光地コロッセオから真 東に500mほど歩いた所、規模は小さくはな いが町並みの中に隠れるようにして建っていた。 創建は3世紀とも言われるが、現在の建築は 12世紀に再建された三廊式バシリカ聖堂であ る。 身廊の壁面や内陣は、写真の如く壮麗なモザ イクやフレスコ画で装飾されているのだが、聖 堂の外観の質素な佇まいからは全く想像すら出 来ないほどの別世界だった。 写真の正面、後陣の天井半ドーム部分は「十 字架の勝利」と呼ばれる12世紀前半のモザイ クで装飾されている。十字架の根元から枝葉が 伸び、無数の茎の渦となり、その中に花を咲か せるという象徴的な図像である。 モザイクの下部壁面に描かれた聖人像は、ほ とんど14世紀のフレスコ画である。 教会正面には聖堂と隣接して、回廊のような アトリウムが設けられている。この部分は12 世紀半ばの建築らしい。 紀元前からの古代遺跡が残るローマにあって、 この教会の床面の装飾や聖歌隊席も12世紀ロ マネスク時代のものだと聞くと、何故か有り難 く感じられたり、随分と新しいものなんだと感 じたりしてしまうのは妙なものである。 |
|
| |
| ローマ/聖マリア・イン・トラステヴェレ教会 Roma/ Chiesa di Santa Maria in Trastevere |
| Lazio |
![]() |
テヴェレ川対岸の円形に湾曲するトラステヴ ェレ地区は商店の立ち並ぶ下町で、噴水の有る 賑やかな広場に面してこの教会の正面柱廊やロ マネスク様式の鐘楼が一幅の絵となっている。 聖堂は三廊式バシリカ形式だが、建物の周囲 に後世の建造物が付随してしまったために、外 観だけでは明確に掴み取れないだろう。 身廊の列柱はイオニア式の柱頭を持つ古式な 円柱で、アーケードではなく横石を載せたまぐ さ式の構造になっている。 創建は4世紀だが、現在の建築は12世紀前 半に再建されたものが基礎になっている。 写真は中央後陣の半ドームに描かれたモザイ ク画で、キリストとマリアを中心とした聖人像 が描かれている。 金色が燦然と輝くモザイクは、ロマネスクと いうイメージとはどうしても結びつかないのだ が、時代としては明らかに東方からの影響を受 けたロマネスクなのである。 ここからトラステヴェレの市街を抜け、ロー マを一望できるジャニコロの丘へと登る散歩は 楽しかった。 |
|
| |
| ローマ/聖ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ大聖堂 Roma / Basilica di San Giovanni in Laterano |
| Lazio |
![]() |
ゾディアック叢書のロマネスク教会 リストに掲載されていたこの教会の正 面に立ってしみじみと眺めてみたが、 この建築の一体どこがロマネスクなん だろうと考えてしまった。 創建は3〜4世紀だが、現在の建築 は実際には、ファサードは18世紀、 聖堂は17世紀とのことで戸惑ってし まったのである。 しかし、案内書を良く見れば、13 世紀初頭の回廊が、聖堂の奥に隣接さ れているではないか。 ローマの町の中に、こうした雰囲気 の回廊が存在したとは知らなかった。 二本の柱が対になったアーケードで 囲まれており、柱の表面はモザイクや フリーズで装飾されていたらしい。現 在は部分的に残っているだけだが、ね じれた意匠もユニークで、全体がこう したデザインで統一されていたとした ら、かなりモダンだったんだろうなあ としばし空想に耽ってしまった。 |
|
| |
| ローマ/聖パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂 Roma/ Basilica di San Paolo Fuori le Mura |
| Lazio |
![]() |
聖パウロの遺骸が埋葬されていた 場所で、4世紀に創建された教会だ が何度も再建されており、現在の建 物は19世紀のものである。 正面右の扉口に設けられた扉は、 歴代教皇の肖像が彫られた青銅製の もので、これは貴重な11世紀の頃 の扉そのままであった。 サン・ピエトロ寺院に次ぐと言わ れる、壮大な聖堂の規模には驚嘆す るが、どうにも好きにはなれそうに ない。 祭壇に置かれた復活祭の燭台は、 びっしりと彫刻が施された12世紀 の傑作だった。 しかしここでも、隣接する回廊が 12世紀初めの建築で、ここだけが ロマネスク的な雰囲気が感じられる 唯一無二の場所だったのである。 アーケードの形式は、二本対の柱 やアーチ上部のまぐさ装飾など、ね じれ柱は無いものの、前述の聖ジョ ヴァンニにとてもよく似ていた。 |
|
| |
| ティヴォリ/聖シルヴェストロ教会 Tivoli / Chiesa di San Silvestro |
| Lazio |
![]() |
ローマ郊外のティヴォリは、16世紀の華麗 なエステ荘と、教皇グレゴリウスの別荘という、 二つの庭園で知られる観光地である。 ドゥオモの横を抜け、下町の露地を進むと、 そこはエステ荘の真裏に当るのだが、そこにロ マネスクの壁画を残す小さな教会が在ることを 知る人は少ないだろう。 ティヴォリに泊まった翌朝ここを訪れたのだ が、ミサの準備をする司祭に運良く会え、扉を 開き快く撮影の承諾を頂いた。 教会堂は単身廊のバジリカ形式で、外壁は粗 い石積みが魅力だったが、内部の壁や柱はすっ かり塗り替えられており、ややがっかりした。 しかし、写真の、祭室に保存されているフレス コ壁画は、鮮やかな色彩の図像が壁から天井ド ームにまで描かれており、思いがけない収穫に 心が躍った。 天井に栄光のキリスト像、その下に羊たちの 列、そして聖母子と聖人達の群像が、かなり剥 落した部分は目立つものの、見事なフレスコで ある。 全体的にブルーが格別美しかった。私達はこ れをティヴォリアン・ブルーと名付けた。 |
|
| |
| アナーニ/大聖堂 Anagni / Cattedrale |
| Lazio |
![]() |
ローマからナポリ方面へ向かう高速道 路を、約100キロ進むとこの町の出口 が有る。歴史の深い由緒ある町で、歴代 の教皇を何人も輩出した場所でもある。 谷を見下ろすことの出来る、一種の山 岳都市である。 目的の大聖堂は、町の東端、最も高い 場所に建っており、美しい後陣を眺めな がら石段を登ると、12世紀の荘重な鐘 塔の在る聖堂正面に出る。 三廊式の内陣建築や床のモザイクが見 所なのだが、私達は地下のクリプト見学 を優先させた。案内の人が付き撮影禁止 なのだが、堂内は意外に明るく、勿論ノ ーフラッシュのデジカメで一枚撮ってし まったのがこの写真である。。 クリプトも三廊式で、小礼拝堂が付い ており、壁や天井には写真の通り、隙間 無くフレスコ画が描かれている。聖母子 像やキリスト像を中心にし、美しい装飾 模様で飾られた空間は、未知の天国を現 出させたかの如く輝いて見えた。 |
|
| |
| スビアーコ/聖ベネデット修道院 Subiaco/ Monastero di San Benedetto |
| Lazio |
![]() |
ティヴォリと先出のアナーニとのほぼ中間の、 山深い谷間にこの町があり、修道院へはさらに町 から裏山へと登って行かねばならない。 手前に聖スコラスティカ修道院 (Monastero di S.Scolastica) が在り、11世紀の鐘楼と一部に のみロマネスク様式が残されている。大半はゴシ ックに改築されてしまった。 ここから更に登ると、ようやくこの修道院の入 口にたどり着く。岩山にへばりついたような聖堂 で、写真は上部教会の入口だが、断崖に沿って下 部教会がずっと下まで続いている。 幾つもの小さな聖堂は、岸壁をくり抜いた洞窟 で繋がっており、その全ての壁や天井にフレスコ 壁画が描かれている。制作年代が13世紀から1 6世紀までと、かなり幅が広い。いかにも古そう なものを探して歩いたが、聖グレゴリオ礼拝堂の 壁や天井に描かれていたものが13世紀初頭の作 品であるらしかった。 孤高な修行のためとはいえ、何故こんな場所に と思わざるを得ない絶壁の聖域である。 |
|
| |
| モスクーフォ/聖マリア・デル・ラーゴ教会 Moscufo/Chiesa di Santa Maria del Lago |
| Abruzzo |
![]() |
この寒村に行くには、ペスカーラ (Pescara) の西郊外に位置するピア ネッラ (Pianella) という丘の上の町 から、更に数キロ行かねばならない。 教会の場所は直ぐ判ったのだが、 扉口の鍵が閉まって開かなかった。 墓参りの婦人に尋ね、墓地の向こう に住んで鍵を管理している尼僧に頼 んで、ようやく内陣に入ることが出 来た。 写真で見る通り、三廊式バシリカ 形式の聖堂である。小規模な建築の 割りに、太い柱と豪快なアーチが重 厚な空間を創出していた。12世紀 の創建であり、まだ荒削りな素朴さ が残っていたのかもしれない。 身廊の右側に置かれた説教壇はこ の地方には類例が多く、ここのもの は12世紀の作品らしい。壇周囲の 浮彫彫刻は見事で、聖ゲオルグの龍 退治の場面はかなりの傑作だろう。 扉口の装飾アーチや、後陣の窓枠 を飾るメダイオン模様のレリーフが とても美しかった。 |
|
| |
| セッラモナチェスカ/聖リベラトーレ・ア・マイエッラ教会 Serramonacesca/ Chiesa di San Liberatore a Maiella |
| Abruzzo |
![]() |
ペスカーラの南、アレント Alento の谷に面 した寒村で、マイエッラ山塊の中腹に位置して いる。教会は、町から更に谷に沿って山の中へ 入った場所に建っており、そこは森厳なる聖地 となっていた。 深い森を背景にして建つ白亜の鐘楼や聖堂は、 訪ねる者の胸を必ずや打つほど鮮やかな印象を 与えてくれるはずである。 11世紀初めに創建された修道院の一部で、 聖堂は、三つの半円後陣と三つの正面扉口を持 つ、三廊式バシリカ形式の建築である。 各々の扉口には、タンパン彫刻は無いが、二 重のヴシュールとまぐさ石、左右の柱などに、 精密な植物模様やライオンなどの動物が彫り込 まれている。 ファサードはロンバルディアの影響を受けて おり、またプーリア地方のロマネスクに影響を 与えたのではないか、と思えるほどプリミティ ヴな美しさを見せている。 身廊では結婚式の準備が行われていたが、が らんとした印象で、生きた教会としては使用さ れていないのかもしれない。 小さな柱頭しか無い角柱のアーケードで、規 模の割にはとても簡素な印象を受ける。 ここでも、見事な装飾彫刻が施された説教壇 が、とてもエレガントな存在となっている。 |
|
| |
| トッレ・デ・パッセリ/聖クレメンテ・ア・カサウリア大修道院 Torre de' Passeri/ Abbaziale di San Clemente a Casàuria |
| Abruzzo |
![]() |
ペスカーラからローマに通じる高速道路E 80号線を走り、カサウリア−トッレ・デ・ パッセリの出口を降りると、直ぐ右手にこの 修道院の敷地が広がっている。 見所は付属教会であり、特に写真の扉口の あるファサードは注目に値する。9世紀の創 建だが、教会やファサードは12世紀再建時 のものだろう。 三廊式十字形のプランで、後陣は一つ、扉 口は三つ、正面手前に三つのアーケードの有 る柱廊が付いている。 写真の門は中央扉口で、青銅の扉も含め、 全体が12世紀最後の作品である。 殉教した教皇クレメンスの遺骨を運んで、 ルードヴィッヒ皇帝が創建したと言われ、こ こにはその逸話が彫られているそうなのだが、 詳細なストーリーは解らない。 右側扉口のタンパンには聖母子像、左側に は聖ミカエルの像が彫られていた。 内陣の列柱は太い角柱なので、荘厳な雰囲 気を創り出している。 地下の祭室は、低い交差穹窿の天井と、柱 頭の無い短い円柱で構成された美しい空間だ った。 |
|
| |
| ボミナーコ/聖マリア・アスンタ・教会 Bominaco/Chiesa di Santa Maria Assunta |
| Abruzzo |
![]() |
ラクイラ L'Aquila 市の南東30Kmに位置す る、人口300人という山間の小さな集落である。 だが、この町外れの高台に在る修道院の跡地 には、素晴らしい二つの教会が残されていた。 一つはゴシックの聖ペッレグリーノ教会で、 13世紀ビザンチン様式のフレスコ画を保存し ている。正面の柱廊が、とても印象的だった。 写真は、隣接するもう一つの教会で、10世 紀末から11世紀初めの創建と伝えられる。 写真で見る通り、三つの後陣を持つ三廊式ベ シリカ形式の聖堂で、下部にはほとんど窓の無 い石壁のみの構造体である。上部は後世の追補 で、明かり取りの窓が数箇所開けられている。 後陣の窓の周囲に彫られたレリーフは、ライ オンに蔓が絡まって連続する植物模様である。 崖下から見上げた三つの半円形後陣は、いか にもこの地方らしい、素朴で東方の香りのする チャーミングな姿をしていた。 内陣は思ったより狭い感じで、アーケードを 支える太い円柱が堂々としているように見えた。 見事なロマネスク彫刻の施された、大理石の 説教壇が据えられていた。この地方には類例が とても多いのだが、正直を言うと余り感銘を受 けない。 |
|
| |
| コルフィニオ/聖ペリーノ聖堂 Corfinio/Basilica di San Pelino |
| Abruzzo |
![]() |
ペスカーラからの高速道路E 80号線を Pratola Peligna イ ンターで降り、西へ5Km走っ たところにこの町が在る。教会 へは町を抜け、更に西へ2Km ほど行かなければならない。 11世紀から12世紀にかけ て建造された司教座教会で、三 廊式バシリカ建築である。写真 は南側面からの眺めで、右端が 後陣で小礼拝堂が側面に飛び出 した変則形式が面白い。 後陣の装飾は、繊細なレリー フや浮き出た列柱アーケードな ど、よく見ると実に手が込んで いる。 左端は別棟の聖アレッサンド ロ(San Alessandro)教会で、後 陣が写っている。ここは拝観禁 止になっていた。 身廊は柱と壁が一体化したア ーケードによって、側廊が区切 られているという簡素な構造に なっている。 |
|
| |
| アルバ・フチェンス/聖ピエトロ教会 Alba Fucens/Chiesa di San Pietro |
| Abruzzo |
![]() |
この町は古代ローマの遺跡で知られており、 ラクイラの南に聳えるヴェリーノ(Velino)山塊 の南麓に位置する眺望絶佳の場所である。 広大な発掘現場を横に見ながら、牧草の茂る 丘を登って行くと、この簡素な教会堂が見えて くる。 管理人の説明では、聖堂は12世紀に完成し たとのことで、レリーフ彫刻に囲まれた正面扉 口を入ると、三廊式の身廊と側廊が目に入った。 柱には縦縞が浮彫されたローマ式の円柱が用 いられており、どうやら遺跡の石材を再利用し たものらしい。 写真は身廊から左側廊を眺めたもので、手前 に美しい色大理石細工の模様が付いた説教壇が 据えられている。これまでも数々の事例を見て きたが、全てコスマティと呼ばれる細工師のギ ルドの手によるものである。 身廊と内陣を区切る仕切板にも、同様の細工 が施されていた。 管理人に御礼の気持ちで献金をしたのだが、 彼は私達が聖堂から出ると同時に扉口の鍵を閉 め、スタスタと丘を下って町唯一のバールへと 消えていった。生き神様への功徳だったか、と 思ったが、何故か別段悪い気はしなかった。 |
|
| |
| テルモリ/大聖堂 Tèrmoli/Duomo |
| Molise |
![]() |
アドリア海に沿ってペスカラから南東に下 ると、小さな州モリーゼの港町テルモリに着 く。チャーミングな旧港に接して突き出した 岬は城壁で囲まれており、その内側が旧市街 である。 迷路のように狭く曲がりくねった石畳の街 路を進むと、小さな広場に出る。そこに12 世紀創建の大聖堂が建っており、写真は広場 から教会正面を写したものである。 説明書によると、ファサードはピサ・プー リア様式とのことで、確かに盲アーケードの 中に付け柱や二連窓が造られている。 タンパンには四人の人物像が有ったらしい のだが、ほとんどが破壊されていて判別でき なかった。 左端のアーチ窓の中にだけ二体の像が彫ら れており、これはどうやら受胎告知らしい。 聖堂は小さいながらも三廊式バシリカで、 三つの後陣を有している。柱は柱頭の無い角 柱で、両側に三本づつ並んでいる。 祭壇はかなり高い位置に在り、身廊から祭 壇へは十段の石段を登らねばならない。祭壇 の下はクリプタになっていたが、見学は出来 なかった。 |
|
| |
| ペトレッラ・ティフェルニーナ/聖ジョルジオ教会 Petrella Tifernina/ Chiesa di San Giorgio |
| Molise |
![]() |
州都カンポバッソ Campobasso から北へ20Kmの山間の町で、石 畳の美しい中世そのままの集落であ る。 町の最上部にある小さな広場に面 して、12世紀に創建された教区教 会が建っていた。 扉口は一つだが、三つの後陣を持 つ三廊式の聖堂である。 写真は西正面入口タンパンの彫刻 で、まるで近代絵画を観るような自 由な発想が表現されている。 人間を喰う動物二匹、大蛇、十字 架を負う羊などが彫られている。救 済を暗示すると思われるが、不思議 な図像である。 扉口は北と南にも有り、同じよう な意匠の動物像が彫られているが、 表現力はやや劣るようだ。 堂内の柱頭彫刻や壁面のレリーフ には、卓越した意匠の様々な彫刻を 見ることが出来た。ロマネスク的な 不思議な図像も魅力である。 |
|
| |
| アマルフィ/聖アンドレア大聖堂 Amalfi/ Duomo di Sant'Andrea |
| Campania |
![]() |
紺碧の海に面した風光明媚な景勝の地で、海 運都市としても古くから開けていた。 大聖堂は9世紀の創建で、以後各時代に様々 な修復が行われたらしい。使徒聖アンデレの聖 遺物が納められている事で、良く知られている。 幅の広い階段の上に柱廊が設けられており、 その向こうにノルマンやアラブの影響の色濃い 聖堂が堂々と聳えている。 聖堂にはかなり修復の手が入っており、列柱 の一部や説教壇などが12世紀のものらしい。 写真には写っていないが、創建当初の鐘楼が 左側に建っており、シシリー島のモンレアーレ に似た意匠が見られた。 有名な天国の回廊は13世紀中頃の建造で、 かなりゴシック的なのだが、二本対になった白 亜の列柱と交差穹窿はロマネスク的であり、交 差するアラブ風の装飾アーチとの均整の取れた 意匠はモダンでとても素晴らしい。 |
|
| |
| カヴァ・デ・ティッレーニ/三位一体ベネデッティーナ修道院 Cava de' Tirreni/ Abbazia Benedettina Santissima Trinità |
| Campania |
![]() |
サレルノからナポリへと向かって約 10Km行ったところにこの町が在り、 町の西南端の深い谷底にこの修道院が 建っている。 修道院入口のファサードは完全なバ ロックであり、付属教会もルネサンス かバロック様式が目に付いた。 目的のロマネスク回廊はガイドが付 いたツアー見学になっており、英語の 堪能な婦人が案内をしてくれた。 岸壁を刳り抜いて作った回廊や、複 雑な構造のクリプタなどを巡るツアー である。 写真は回廊部分で、派手な装飾や立 派な柱頭彫刻は見られないが、瞑想に 相応しい静寂のみの孤高な空間が創出 されていた。 写真撮影禁止となっていたが、案内 の婦人はウィンクをしてから、後ろを 向いていてくれていたのだった。 |
|
| |
| サレルノ/大聖堂 Salerno/ Duomo |
| Campania |
![]() |
サレルノの町に3泊したので、ロマネスクだけ でなくパエストゥムのギリシャ遺跡などもゆっく りと観ることが出来た。中でも、サレルノの旧市 街は古びた家並みが魅力で、散歩する楽しみが増 幅されてしまう。 聖マタイの遺体が地下に眠っているというこの 大聖堂は、そんな旧市街の真ん中に建っていた。 11世紀末の創建で、門を入ると直ぐに写真の アトリウムに出る。全体的にノルマンの影響が強 く、12世紀の鐘楼はアマルフィのものに類似し ている。 列柱には古代ローマの円柱なども使われており、 多彩色の石が積まれた、まことにエキゾティック な空間だった。 聖堂は三廊式だが完全にバロックに改修されて おり、ちょっとがっかりだったが、正面扉口のレ リーフや堂内に置かれたモザイクの美しい二つの 朗読台は12世紀のものだそうである。 地下のクリプタは進入禁止で、残念ながら聖マ タイの墓へ詣でることは出来なかった。 |
|
| |
| サンタガタ・デイ・ゴティ/大聖堂 Sant'Agata dei Goti/ Duomo |
| Campania |
![]() |
カセルタ(Caserta)の東20Kmに 位置する谷間の町で、川に沿って古 い町並みが続いている。 ここには二つの重要なロマネスク 教会が在るのだが、舗床のモザイク が美しい聖メンナ(San Menna)教会 は、残念ながら閉まったままで見る 事が出来なかった。 こちらの大聖堂は、開扉を散々待 たされたが、粘り勝ちで何とか入る ことが出来た。 聖堂は近年の改修になるものだっ たが、目的は祭壇下のクリプタ(地 下礼拝堂)である。 横長の狭い空間に、三つの半円形 祭室が在り、10本の円柱が2列に 並んでいる。写真はその内の一本の 柱頭で、ロマネスクとしての魅力的 なモチーフである。 低い天井は交差穹窿で、暗闇に円 柱の林が浮き出る様は誠に美しい。 |
|
| |
| カセルタ・ヴェッキア/大聖堂 Caserta Vécchia/Duomo |
| Campania |
![]() |
ナポリ王国の宮殿や庭園が世界遺産 に指定されたカセルタの町に3泊し、 そこを基地にしてカンパーニャのロマ ネスクを巡った。 このカセルタの旧市街は、10キロ 北に離れた山の上に残っている。古色 蒼然たる家並の雰囲気は格別で、町歩 きが大きな魅力となっている。 教会は12世紀初めの三廊式十字形 で、三つの扉口と三つの後陣、十字交 差部の八角ドーム塔、ファサード右の 方形鐘楼などが、主要な建築となって いる。 二つの塔の外観は見るからにノルマ ン的な装飾で、アラブ的な交差アーチ の意匠を見ることも出来る。 写真は、祭壇の端から、身廊を扉口 の方へ向かって振り向いたところであ る。やや繊細かと思われる列柱と、小 さな幅のアーケードが整然と美しい。 カセルタを訪ねる観光客は多いが、 ここまで足を延ばす人はほとんど無く、 静かに落ち着いた別天地だった。 |
|
| |
| サンタンジェロ・イン・フォルミス/聖ミケーレ・アルカンジェロ教会 Sant'Angelo in Formis/ Chiesa di San Michele Archangelo |
| Campania |
![]() |
カセルタの北西10キロに位置するこ の教会へは、1985年の年末にシシリ ーへ向かう途中で立ち寄ったことがあっ たが、その時は全くの修復中で、何も見 る事が出来なかった。 修復成った今回は心行くまで、フレス コ画の魅力を堪能することが出来た。 聖堂は三つの後陣のある三廊式バシリ カで、柱廊の付いたファサードには扉口 が一つ開いていた。 写真は、側廊から扉口方向を眺めたも のだが、御覧のように四方の壁一面にフ レスコ画が描かれている。 正面の半ドームには四福音書家のシン ボルに囲まれた玉座のキリスト像、左右 の壁には主にキリストの奇跡の物語を中 心とした新約聖書のエピソードが描かれ ている。ほとんどが11世紀ロマネスク 期の作品である デッサンや構成は稚拙だが、統一され た色彩や密度の濃い表現が、我々を異次 元の世界へと誘導してくれる。 |
|
このページTOPへ 次のページ (Puglia) へ 前のページ (Toscana) へ
ロマネスクTOPへ 日本庭園TOPへ 石造美術TOPへ
古代巨石文明TOPへ 総合TOPへ 掲示板へ