スペイン・ロマネスク紀行 
 Románico en España 
 
 スペイン北西部
    のロマネスク
 
   レオンアストゥリアス
    
ガリシア地方
 
  León, Asturias y Galicia
 
 9世紀にサンチャゴ・デ・コンポステラでサ
ンチャゴ(聖大ヤコブ)の聖遺物が発見され、
11世紀頃から巡礼は大いに盛んになった。
 フランス各地を出発した巡礼路は、ソンポル
ト峠
Puerto de Somport かイバニェタ峠
Puerto de Ibañeta でピレネーを越え、ナ
ヴァラ
Navarra  Puente la Reina 
エンテ・ラ・レイナ
で合流し一本の道となる。
 私達は枝道に入りながら巡礼路上のロマネス
ク教会を参拝し、レンタカーという安直な手段
ではあったが、真摯な気持でサンチャゴを目指
したのだった。
 9~10世紀王朝美術の遺構や、初期ロマネ
スクの聖堂を多数残している、オヴィエドを中
心としたアストゥリアス地方は見逃せない。
 
 
     
 
エル・アセボの村  El Acebo (León)
 レオンを出発した巡礼路は、アストルガ Astorga
から険しい峠道となる。
 
フェロの十字架
Cruz de Ferro に詣で、峠を
下るとこの鄙びた村に着く。昔のままの素朴な家並
には、かつて大勢の巡礼が行き交った宿場の面影
が残されている。      
 
    
 
 ■県と首都

 
レオン (León) 地方
    1 Salamanca (Salamanca)
    2
Zamora (Zamora)
    3
León (León)

 アストゥリアス
(Asturias) 公国
    4 Asturias (Oviedo)

 ガリシア
(Galicia) 地方
    5 Lugo (Lugo)
    6
Ourense (Ourense)
    7
Pontevedra (Pontevedra)
    8
A Coruña (A Coruña)
 
 
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  アルメナーラ・デ・トルメス
   聖母被昇天教会

   Armenara de Tormes/
    Iglesia de la Asunción
     de Nuestra Señora
      
      Salamanca 
      
      
 
 多様な民族の歴史を残している文化都市サラマ
ンカの町の西北22
キロ辺りの谷間に開けた集落
で、教会は町のほぼ中央に建っている。

 聖堂の基本プランは単身廊に半円形の後陣が付
いた全く素朴な建築である。身廊の天井は木造だ
った。祭室の天井は交差ヴォールトで、両脇に袖
廊のような部屋が付設されているが、これは後世
の増設だろう。

 聖堂南側に三つの開口部を持つアーケードが設
けられているが、これも後世のものらしい。
 そのアーケードの中、聖堂の南側に美しいレリ
ーフで飾られた扉口があった。写真はそのアーチ
部分のものである。大きな二本の帯状飾りアーチ
や柱頭などに彫られた緻密な幾何学紋様や植物紋
様からは、イスラムのアラベスクが連想された。
事実、この教会の建設には、何人かのアラブのア
ーティストが関与していたのだそうだ。

 後陣の外観にも注目したい。窓は後世のものだ
が、半円状の壁面は、二本の帯状装飾レリーフで
飾られている。上段は開いた花模様の帯であり、
下段はメダイオンの中に有翼の龍や他の動物像が
連続して彫られている。
 
 
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  サモラプエルタ・ヌエヴァの
    聖フアン教会

   Zamora/Iglesia de San Juan
    de Puerta Nueva
      
      Zamora 
      
      
 
 イスラムからのレコンキスタ(国土回復運動)
以後、この町には12世紀を中心として、数多く
のロマネスク様式教会が建設された。
 小生が調べた限りでも23箇所、門や柱頭だけ
残るものも含めれば、更に相当数の教会が密集す
る奇跡の町、と言えると思う。
 その内、特に印象に残った5つの聖堂を御紹介
したいと思う。

 東西に細長い城郭都市サモラのほぼ中心、マヨ
ール広場に面して建つ堂々たる聖堂である。大勢
の人々で賑わう広場からも、聖堂東側の後陣部分
に建つ鐘塔が目に入る。窓の無い単純な方形の壁
面だが、これは後世の建築だろうと思われる。
 12世紀創建当初の面影は、聖堂南側に残され
た写真のファサードだろう。
 扉口にはサモラの特徴とも言える多葉飾りのア
ーチが力強く彫られ、束ね柱の円柱がとてもユニ
ークに感じられた。
 連続する花紋様は丸で型で押したようで、反復
の面白さは有るが、豊かなイメジネーションから
の創造とは言い難い。
 ファサードの上部に薔薇窓が設けられている。
年代は不明だが、意匠の無骨さからはロマネスク
後期のものと考えられる。 
 
 
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  サモラサンタ・マリア・
    ラ・ヌエヴァ教会

   Zamora/Iglesia de Santa Maria
     la Nueva
      
      Zamora 
      
      
 
 前述のマヨール広場から、真西に続く狭い石畳
の通りを少し行くと、右手に比較的大きな鐘塔の
ある教会の建築が見えてくる。
 聖堂の一番手前が半円形の後陣で、丸い周囲の
壁には七連の盲アーケードが意匠されていて先ず
圧倒される。

 しかし、先へ進んで聖堂全体を眺めると、かな
りの部分に改造が見られ、12世紀に建造された
当初の建築はイマジネーションの中にしか存在し
ないように思えた。
 現在の聖堂は単身廊に鐘塔のある玄関間、半円
形の後陣に左右の小祭室、という平面構造になっ
ている。単身廊という構造そのものはプリミティ
ブなものだ。

 当初のイメージを保っているのは、どうやら後
陣部分だけだったようだ。
 写真は後陣の盲アーケード一つおきに三つある
窓の内の一つ、南側の窓周辺のものである。
 小さい窓がいかにもロマネスクらしく、更に柱
頭の彫刻が魅力的だった。主題の詳細は不明なの
だが、素朴な人物像と植物の配置がたまらなく素
晴らしかった。
 
 
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  サモラサンタ・マリア・
   マグダレナ教会

   Zamora/Iglesia de
     Santa Maria Magdalena
      
      Zamora 
      
      
 
 旧市街を更に西へと進むと、通りに沿って建て
られた背の高い堅固な造りの聖堂が現れる。12
世紀に創建されたとされる教会で、ここでもあち
こちに後世の改造や増設があるものの、半円形の
後陣や単身廊の構造にはロマネスクの面影が色濃
く残されている。
 身廊の天井は木造だったが、祭室部分だけは尖
頭ヴォールトで、半円ドームの後陣はリブ・ヴォ
ールトという構造だった。
 祭室との仕切り壁の手前左右に、四本の円柱に
囲まれた小礼拝堂が設けられている。ソーリアの

San Juan de Duero に似た珍しい意匠が興味深
かった。

 写真は、南側扉口の飾りアーチ・ヴシュールで
ある。六重に見えるアーチは、四重のヴシュール
と上下の飾りアーチで構成されている。
 典型的なサモラの多葉飾りで、葉の浮き出た部
分もあり、なかなかの迫力を示している。
 一番外側の飾りアーチには、植物の蔓と人間の
首が絡み合った連続紋様が彫られており、丸でケ
ルトの図像の様に感じられた。
 
 
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  サモラサンティアーゴ・
   エル・ヴィエホ教会

   Zamora/Iglesia de
      Santiago el Viejo
      
      Zamora 
      
      
 
 Santiago de los Caballeros と呼ばれる12
世紀の教会で、旧市街の西城郭の外側直ぐ近くに
建っている。 
 レコンキスタの英雄エル・シド
El Cid が騎士
称号を与えられた教会、とされる古い歴史を誇っ
ているそうだ。
 切妻型屋根の方形聖堂は単身廊、そして半円形
後陣が東側に突き出している。天井は木造だが、
これ以上は無いほど簡潔であり、建築の原点と思
えるほどの明快な魅力に満ちたプランである。
 開口部が南壁の扉口だけ、というのも魅力に花
を添えている。

 但し、ここでは、8本ある円柱の上に載る柱頭
に彫られた、彫刻を見なければならない。
 写真は最も注目させられた作品なのだが、動物
と植物の間に群がる人間達、という以外、これと
いった主題は発見出来なかった。人生の様々な葛
藤、といったところだろうか。
 他の柱頭には、抱き合う妙なカップルや地獄で
ライオンに食われている人間、怪鳥や四足の怪獣
など、一筋縄ではいかないような代物ばかりが彫
られており、柱頭好きにはたまらない世界が展開
する。   
 
 
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  サモラオリヴァレスの
    聖クラウディオ教会

   Zamora/Iglesia de
    San Claudio de Olivares
      
      Zamora 
      
     
 
 前述の教会から旧市街の城壁に沿って100m
ほど南へ歩いたドゥエロ川沿いに、割と開けた広
場が在った。教会は広場に面して建っており、大
きな半円形後陣と北側の扉口のあるファサードが
目に入る。
 扉口のヴシュールには、様々な動物や植物の連
続紋様が彫られており、詳細に眺めれば興味は深
まるばかりだ。
 ファサードから後陣へと続く軒持ち送りの彫刻
は、他とは比較にならない程秀逸な作品が見切れ
ぬ程並んでいる。
 写真は、単身廊の内陣に接する祭室壁面の柱頭
彫刻で、ケンタウルスが戦っている場面である。
二本の円柱上の柱頭の幅を上手く使っており、右
端の人魚像も個性的に描かれた傑作だろう。
 サモラで、優れた柱頭を見るには、城壁の外が
よろしいようだ。
 
 
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  カンピーリョ
   ナーヴェの聖ペドロ教会

   Campillo/Iglesia
    de San Pedro de la Nave
      
      Zamora 
      
     
 
 ここはサモラの北西20キロにある、ドゥエロ
川に沿った村である。ダム湖底に沈む運命となっ
た村の教会が、この地に移築されたものなのだと
いう。
 7世紀末に建造された西ゴート時代の遺構で、
切妻屋根の聖堂が十字に組まれたまことに素朴で
美しい建築である。
 交差部には方形の採光塔が設けられており、扉
口は西と南にあるが、現在の出入りは南側になっ
ている。
 ビザンチンの聖堂にも似た十字形に交錯するア
ーチ列が、落ち着いた空間を創出する。その静謐
さがたまらなく感動的だ。
 写真は交差部柱頭のもので、格調高い彫りの絶
品だった。イサクを犠牲にするアブラハムが主題
で、神の手や子羊も描かれている。
 他にも、ライオンの穴のダニエルなど、全て一
級品の様々な柱頭彫刻が残されている。   
 
 
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  サンタ・マルタ・デ・テラ
   聖マルタ教会

   Santa Marta de Tera
/
    Iglesia de Santa Marta
      
      Zamora 
      
      
 
 サモラの北約70キロ、エスラ川 Rio Esla
支流テラ
Tera に沿って栄えた門前町である。
 現在残っている教会堂は、11世紀に創建され
た修道院の一部であった。
 修道院の建物の一部から、教会の西正面扉口を
入ることが出来る。

 単身廊で三つの梁間が設けられ、天井は尖頭ヴ
ォールトで横断アーチが架けられている。
 翼廊の付いたラテン十字形で、この交叉部分に
創建当初の建築が残っていた。写真は、南翼廊か
ら北翼廊と祭室方向を写したものである。
 やはり、美しく大胆な半円形アーチが創出する
空間の魅力は、これこそがロマネスクという感を
抱かせる。
 不思議なのは、祭室や翼廊の後陣が全て方形の
平面であることである。後世の改造ではなく、当
初からのプランだそうだ。11世紀という年代か
ら、初期ロマネスク的な影響があったのではない
か、とも思われる。

 アーチの下の柱頭彫刻が傑作揃いで、特に写真
中央の柱頭には、擬人化された魂が天使によって
昇天する場面が描かれている。見応えのある柱頭
である。
 南門の扉口に、有名な巡礼姿のサンチャゴ像が
あり、聖堂内に精巧なレプリカが置かれている。 
 
 
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  サン・ペドロ・デ・ラス・
   ドゥエニャス
聖ペドロ教会
   San Pedro de las Dueñas/
     
Iglesia de San Pedro
      
      León 
      
      
 
 サハグンの町の郊外にこの小さな村が隣接して
おり、私達はここにも立ち寄ってみた。
 村の中央に建つこの教会が目的だった。
 塔の形や内陣のプランは若干異なるものの、基
本的には三廊式バシリカ聖堂であり、赤煉瓦を基
調としたムデーハル様式である。聖堂建築は12
世紀末であり、サハグンの影響を受けたものと思
われるが、後陣などを見ると、よりイスラム色は
失せている。
 建築の外観もさることながら、ここの見所は何
と言っても柱頭の彫刻に有るだろう。
 写真の柱頭は、祭室と身廊の仕切りアーチの右
側のものである。柱頭の三面に七人の人物が彫ら
れている。角のように見えるのは飾りで、各々巻
物を持っており、解説には
Sept Moniales 七人
の修道女と書いてあった。珍しいモチーフで、い
かにもロマネスク的な彫像となっている。
 他にもライオンと人物が絡み合った場面や、奇
妙な顔を持つ鳥などが、私達を楽しませた。
 
 
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  サハグン聖ティルソ教会
  Sahagún/Iglesia de San Tirso
      
      León 
      
      
 
 レオンの手前約80キロに位置する古い町であ
る。ミシュランのガイドブックにも載っていない
町だが、ロマネスク病患者には決して通り過ぎる
ことの出来ない理由が有る。
 特異な煉瓦建築の教会や修道院が、一つの町に
五ヶ所も残されているからである。
 中でも重要なのが、次掲の聖ロレンツォ教会と
写真の聖ティルソ教会である。
 微妙な意匠の差は有るものの、二つの教会建築
はとてもよく似ていた。最初にこちらを訪問した
が、全体のバランスがとても美しかった印象が残
っている。
 赤煉瓦のイメージはイタリアのロンバルディア
やビザンチンに近いが、ここは勿論イスラムの影
響を受けた12世紀のムデーハル様式である。
 単純なロンバルディア帯とはやや異なって見え
るのは、オリエントのアラブ的なイメージが加わ
っているからだろう。レコンキスタ(聖地回復)
の名残とも言える。
 聖堂はプリミティヴな三廊式バシリカ形式だ。
 
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  サハグン聖ロレンツォ教会
  Sahagún/Iglesia de San Lorenzo
      
      León 
      
      
 
 サン・ティルソから北東へ300m程歩いた所
に広場があり、そこにこの教会が建っている。と
ても良く似ていて、最初は区別がつかないくらい
だった。
 こちらもムデハル様式で、12世紀の初めに創
建された煉瓦建築である。
 尖頭アーチを中心とした三廊式で、三つの梁間
を設け、三っつの半円形後陣が意匠されている。

 柱頭などの、装飾のための彫刻類は一切見られ
ず、誠に清廉な美しさを見せている。ロンバルデ
ィア帯と盲アーケードのみが壁面を飾っている。
 シトー会の修道院でも感じることだが、装飾は
堕落の象徴なんだなと思わされてしまうこともあ
り、それ程人を惹きつける魔力を持った建築であ
る、ということなんだろう。

 サン・ティルソの後陣が二層のアーケード装飾
に鐘塔の三層構造に対して、こちらは三層の後陣
に四層の鐘塔であり、詳細に眺めれば若干の違い
が見えてくる。
 どちらもサンチャゴ巡礼路に在って異彩を放っ
ており、スペインならではの建築としてまことに
貴重である。 
 
 
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  サン・ミゲル・デ・エスカラダ
   聖ミゲル教会

   San Miguel de Escalada/
    Iglesia de San Miguel
      
      León 
      
     
 
 レオンへ着く前にもう一ヶ所欲張って、この不
思議な教会へ立ち寄ってみる事にした。レオンの
30キロ手前、見渡す限り荒野の只中である。
 建築は遠見では素朴な外観としか見えないのだ
が、近付くにつれこれは只者ではないなと思わせ
てくる。そして、内陣に入ると同時に仰天させら
れてしまったのである。
 写真は、聖堂の身廊から眺めた祭室方向の列柱
で、イスラムの影響を受けたモサラベ様式と呼ば
れる馬蹄形アーチが最大の特徴である。11世紀
プレロマネスク時代の建造になるそうだ。
 聖堂のプランは単純な三廊式バシリカで、三つ
の祭室を持ち、身廊と側廊を区切るアーチも全て
馬蹄形だった。まことに美しい空間である。
 玄関間に飾られたレリーフには、葡萄の房やそ
れをついばむ鳥をモチーフとした、西ゴート風デ
ザインの図柄が見られた。
 南面する玄関間のアーケードも、美しい馬蹄形
アーチで飾られている。   
 
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  ヴィジャヴェルデ・デ・
   サンドヴァル
聖マリア修道院
   Villaverde de Sandoval/
    Monasterio de Santa Maria
      
      León 
      
      
 
 レオンの手前、南東に18キロ、国道から西へ
少し入ったあたりの寒村に、この壮大な規模を持
っていたシトー派の修道院の遺構が建っている。

 12世紀の創建と伝えられるが、現在残ってい
るのは修道院のかつての建物の一部と遺構、そし
て附属教会と回廊である。
 訪問した時は回廊などが工事中で、見学は諦め
ざるを得ないかと思った。が、出て来た工事の監
督と思しき中年男性が、聖堂内部を案内してくれ
ると言う。
   
 三廊式、三つの梁間、ラテン十字に三後陣とい
うロマネスク様式が、後世にかなりゴシック化さ
れたようだ。写真は北側廊から翼廊方向を撮った
もので、半円横断アーチに交差オジーヴ穹窿が確
認出来る。工事中の中央身廊も同様の構造になっ
ていた。柱頭はシトー派らしく、簡素な植物模様
が彫られているだけだった。

 回廊は後世の改造が顕著だが、回廊北側の修道
院遺構には古いアーケードなのが残されていた。
 案内の男性がくれた、回廊に実る熟したイチジ
クは美味だった。
 帰り際、墓地から見た三後陣は、なかなか見事
な眺めだった。
 
 
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  レオン聖イシドロ参事会教会
  León/Colegiata de San Isidoro
      
      León 
      
     
 
 かつてはレオン王国の都であり、巡礼路上最も
重要な町であった。大聖堂のステンドも見逃せな
いが、私達が訪ねるべき場所は聖イシドロ教会と
パンテオンしかない。

 ここに掲載した写真は、南面右側扉口を飾る彫
刻で、タンパンには、左半分に昇天するキリスト
と天使、右半分に復活するキリスト三人のマリア
が描かれている。素晴らしい彫刻だ。壁面左の彫
像は聖パウロ、右は聖ペテロでこれもなかなかの
傑作であった。
 聖堂内の建築や柱頭彫刻にも見るべきものも多
く、時間をかけて見学せねばならない。
 
 
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  レオン聖イシドロ美術館
    (パンテオン)

   León/Museo de San Isidoro
    (Panteón Real)
      
      León 
      
     
 
 聖堂建築はかなり後世に改修されているが、レ
オン王室霊廟
Panteón Real 部分と前掲の扉口
だけは、11世紀創建のままである。
 パンテオンへは、現在は隣接する美術館からし
か入場出来ない。
 ガイドが付き、完全な撮影禁止だったので、天
が与えてくれる奇跡を待つしかなかった。奇跡に
よる恩恵は、上の写真一枚であった。
 霊廟には九つの円蓋天井が在り、その全てが隙
間無くフレスコ画で覆われている。
 聖書の場面や12ヶ月の仕事を表す図像など、
豊かな色彩と見事なデッサンに驚嘆させられる。
荘厳のキリストでは、福音書家の頭だけ動物とい
う人間化表現が見られたり、細長いゴシック的な
人像が面白い。カタロニアのような強烈な色彩で
はなく、牧歌的な穏やかさが感じられた。
 それにしても、フラッシュレスの撮影を認める
余地は無いのだろうか。
 
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  サンタ・マリア・デ・アルバス
   
聖マリア参事会教会   
   Santa Maria de Arbas/
    Colegiata de Santa Maria  
      
      León 
      
      
 
 レオンからアストゥリアスのオヴィエドへ車で
行くには、現在は無料の高速道路A66号線を使
えば約一時間で済む。
 だが、かつては旧国道630号線で、難所のパ
ハレス峠
Puerto de Pajares を越えねばならな
かった。
 峠の途中に在る国道沿いの小さな村に、この参
事会教会が残されている。

 教会の周囲を後世の建築が覆っているので、直
接見る事は出来ないが、聖堂には南と西に扉口が
ある三廊式で、三つの梁間を持ち三つの後陣を配
している。特に珍しいのは、左右の
absidiolos
小後陣が方形であることだろう。
 身廊には円形の台座の上に立つ四本の束ね柱が
壮麗である。天井は交差リブ穹窿で、ゴシック的
な色合いが濃い。祭室のドームを覆う六本のリブ
アーチの繊細な装飾からは、山奥ながら巡礼者の
施療院として発展してきたこの教会の歴史が伺え
るようだった。
 写真は、ヴシュール彫刻が見事な南門の全景で
ある。縁も入れれば八重のヴシュールで、それぞ
れに個性的な帯状彫刻が施されている。右上中程
に彫られた、二匹の蛇に噛まれる一匹の蛙の像が
印象的だった。
 聖堂内全体が真っ暗で、撮影は難しかった。
 
 
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  カンガス・デ・オニス
  ヴィリャヌエヴァの聖ペドロ教会

   Cangas de Onis/Iglesia
    de San Pedro de Villanueva
      
      Asturias 
      
     
 
 州都オヴィエド Oviedo からは真東へ約60
キロ、聖地回復運動発祥の聖地として著名なコバ
ドンガ
Covadonga の麓に位置している町であ
る。かつて存在した修道院の遺構は、現在パラド
ール(国営ホテル)に改造されているが、教会部分
だけが見事に保存されていた。
 単身廊バシリカ聖堂で、三つの祭室が設けられ
ている。従って、半円形の後陣が三つ突き出して
いる。この部分と、現在は使用されていないが、
南側にある扉口とが創建当初の姿をそのまま留め
ていると思われる。
 写真は、その南扉口の柱頭彫刻の一つである。
現地の解説に「別れを惜しむ騎士」とあり、異説
もあるようだが、レコンキスタの歴史的なドラマ
を想起させる。
 四重のヴシュールや柱頭彫刻の素晴らしい門だ
った。
 
 
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  プリエスカ
   聖サルヴァドール教会

   Priesca/
    
Iglesia de San Salvador
      
      Asturias 
      
      
 
 先述のカンガスから北西に進み、海岸に近い国
道へ出る。そこからまた少し山間部へ入った辺り
に、数えるほどの戸数しかないこの集落がひっそ
りと眠っていた。りと眠っていた。
 教会の前に一軒の民家があり、我々の車を見る
なり老婆が出てきて直ぐに教会の扉の鍵を開けて
くれた。内部が見学出来るかどうか心配だったの
で、何とも幸運だったと言える。
 後述のヴァルデディオスやオヴィエドの一連の
遺構と共に、アストゥリアス美術を伝える貴重な
建築だったからである。

 北側のギャラリーなど、後世になって聖堂の周
囲に付設された部分があるものの、聖堂の本体は
かなり原形を保っているようだ。
 基本プランは、方形の三廊式で、ナルテックス
と三つの祭室を設けてある。ラテンのバシリカ聖
堂がモデルになったのだろう。
 写真は、身廊から主祭室方向を写したものであ
る。仕切り壁のアーチの奥は、奥行のある祭室と
なっており、周囲の柱の柱頭には葉紋様などプリ
ミティブな意匠が彫られている。
 側廊の屋根は一段低くなっており、身廊上部の
開口部が採光窓になっている。ヴァルデディオス
にとても良く似た構造である。
 それにしても、様式の原点となる様なプリミテ
ィブなものに、何故かくも感動するのだろうか。
 
 
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  ヴィリャヴィシオーサ
   聖マリア教会

   Villaviciosa/
    Iglesia de Santa Maria
      
      Asturias 
      
      
 
 後述のアマンディとヴァルデディオスに行くた
めに通過しただけの町だったのだが、歴史的な雰
囲気とロマネスクを暗示させる教会の案内板が、
私達を旧市街へと誘ったのだった。

 聖堂は単身廊だがほとんどがゴシック様式に改
造されており、天井は木造で祭室は方形だった。
南側に付設されたギャラリーも、古い様式ながら
後世のものだろう。

 唯一注目したのが写真の西側ファサードであっ
た。上部の薔薇窓はゴシックだが、扉口は明らか
にロマネスク様式だった。
 左右に四本づつの円柱を設け、それぞれに柱頭
彫刻が施されている。意味不明ながら、猪か犬の
ような動物と絡み合う人物像など、かなりユニー
クな内容の彫刻群である。
 そして更にユニークなのが、円柱に彫られた人
物像である。上部だけに彫られているので人像円
柱らしい細長い像ではないのだが、円柱と一体化
している点からは、正にロマネスク的な枠組の中
での造形と言えるだろう。
 尖頭アーチの中心に聖母子像が見られるが、こ
れは近年のアレンジだろうと思われる。
 
 
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  アマンディ聖フアン教会
   Amandi/Iglesia de San Juan
      
      Asturias 
      
      
 
 先述のヴィリャヴィシオーサから南へ3キロ登
った山上の町で、深い緑に覆われた絶景の丘にこ
の聖堂が建っていた。

 聖堂は方形の単身廊、ベイの無い木造屋根のバ
シリカ形式という簡素なものだが、教会の創建は
12世紀末とのことであった。
 半円アーチ壁の先が祭室になっており、この部
分は方形で天井は交差穹窿だった。その奥の半円
形後陣も含めた壁面は、上下二段に連なった盲ア
ーケードが左右に四連づつ、後陣部分に六連、合
計十連のアーケードは壮観だった。

 写真は、西正面の扉口である。凝った意匠の連
続紋様を、四重の尖頭アーチ帯装飾に見ることが
出来る。一番内側のアーチには柱頭が無いので、
側柱の基礎から一本に繋がっているのが珍しい。
 聖堂の裏側へ回ってみると、見事な半円形後陣
があり、扉口の稲妻型の紋様が窓の上部アーチ装
飾にも用いられていた。

 聖堂を囲むようにして、西正面に半円状の木造
アーケードが造られており、円柱の並ぶ様は何と
も美しいのだが、意に反して後世の付設であるこ
とが判った。
 
 
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  ヴァルデディオス
   聖サルヴァドル教会

    Valdediós/
    
Iglesia de San Salvador
      
      Asturias 
      
     
 
 オヴィエドから海岸へ出て、ヒホン Gijón
町を経由し、
Villaviciosa ヴィラヴィシオサで昼
飯を食べた。アストゥリアスを旅する雰囲気が、
何とも心地良い。
 南下して谷間へ入ると、このいかにも古そうな
聖堂に出会う事が出来る。
 修道院で見学の申し込みをして、ツアー方式の
案内を受ける。
 9世紀に献堂された由緒有るプレ・ロマネスク
建築で、三廊式バシリカの南側に柱廊が付いた単
純なプランだ。
 身廊の天井は高いが、側廊との境目のアーチ列
柱は低く、装飾の少ない太い角柱が鄙びた雰囲気
を感じさせる。
 側廊の柱頭に、素朴な彫刻を見る事が出来る。
唐草や大きな葉の模様がいかにもプリミティブで
あり、後に続くロマネスクを予感させるプレ・ロ
マネスクの佇まいそのものである。
 西ゴート様式の影響と思われる馬蹄形のアーチ
や、窓にはめ込まれた透かし彫りなどには、イス
ラムの影も微かに残されていた。
 
 
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  ヴァルデディオス
   
聖マリア修道院
   Valdediós/Monasterio
    de Santa Maria la Real
      
      Asturias 
      
      
 
 前述のサン・サルヴァドール教会の在ったこの
谷に、13世紀初頭に開かれたのがシトー派のこ
の修道院だった。現在は修道院がサン・サルヴァ
ドール教会を管理している。
 神の谷
Valle de Dios が地名の由来である。

 度重なる洪水や変革のため、修道院は何度も改
修を余儀無くされてきた歴史を持っている。
 比較的よく残っているのは附属教会部分だが、
三廊式の堅固な建築やスペインらしいバロック的
な金ぴか祭壇とはシトー派のイメージが結び付か
なかった。それでも、堂内の柱頭には質素な植物
模様が目立ち、らしさが垣間見えた感じだった。

 写真は、西側の玄関間の中に残された、西の扉
口である。現在の出入り口は脇へ写っているが、
従来は身廊から祭壇へと直線で結ばれる正門であ
った。
 タンパン部に彫刻が無いのはシトー派だからだ
ろうか。三重のヴシュールには、アストゥリアス
特有の鋸刃模様とも言えそうなギザギザが彫られ
ている。植物模様中心ながら、柱頭の一部に人物
の首部が彫られているのは、ちょっとした俗性の
表れだったのかもしれない。

 修道院に宿泊するために訪れた巡礼者を迎える
シスターの姿を見たが、巡礼者の施療院としての
歴史が未だに続いていることに感動した。
 
 
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  オヴィエド聖サルヴァドル
   大聖堂(カマラ・サンタ)

   Oviedo/Catedral
     San Salvador
        (Cámara Santa)
      
      Asturias 
      
     
 
 14~16世紀に建造されたフランボアイヤン
・ゴシック様式の大聖堂である。カマラ・サンタ
は9世紀に創建された聖堂で、ロマネスク時代に
改造されその上に大聖堂が建てられたのである。
 現在の聖堂の拝廊には、12世紀の十二使徒の
人像円柱が飾られている。後陣は宝の山である。
 天使の十字架や勝利の十字架などが有名だが、
写真は正面に据えられた
Arca Santa アルカ・サ
ンタと呼ばれる十二世紀の聖遺物箱である。銀板
を被せたもので、四天使と十二使徒に囲まれた栄
光のキリスト像である。
 カマラ・サンタには、荘厳な地下のクリプトも
在った。
 
 
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  オヴィエド聖ティルソ教会
   Oviedo/Iglesia de San Tirso
      
      Asturias 
      
     
 
 大聖堂前に広がるアルフォンソ二世広場の南側
に、初期キリスト教教会の遺構とされるこの聖堂
が建っている。
 だが、聖堂の建築は後世に完全に改造されてお
り、9世紀の名残りは大聖堂脇の路地を曲がった
所で見られる、写真の後陣の壁にのみ残されてい
た。
 はめ込まれたレンガ造り部分だけ、創建当初の
後陣の姿である。破風屋根や馬蹄形の三連アーチ
からは、愛らしい祭室が想像される。
 アンダルシアのコルドヴァなどで見た、アーチ
上のアルフィスというコの字型の囲いが興味深い
が、イスラムの名残なのだろう。
 
 
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  オヴィエド
   
聖マリア・デル・ナランコ聖堂
   Oviedo/Santuario de
    Santa Maria del Naranco
      
      Asturias 
      
      
 
 オヴィエドは、かつての王国であった現在のア
ストゥリアス地方の首都である。
 イスラムに破壊された町を再建したアルフォン
ソ二世の子、ラミロ一世がナランコ山麓に建てた
離宮の遺構が二つ残っている。

 この聖堂はその一つ、離宮の謁見の間が改造さ
れたもので、9~10世紀のアストゥリアス様式
というプレ・ロマネスク建築である。
 方形二階建て左右対称の建築で、二階は開かれ
た大窓から採光される明るい内陣となっている。

 天井は半円筒形ボールト、柱は螺旋形の束ね柱
で、柱頭はコリントス様式という複雑な意匠の装
飾である。
 壁にはめ込まれたレリーフは、連続葡萄模様や
龍のようなオリエント的なモチーフを用いたメダ
イヨンだ。拓本に採りたくなるような、精密で美
しい彫刻だった。

 ごく最近訪ねた際には、従前とは違って入場料
を取り、ガイドツアーでないと聖堂内部へは入れ
ないシステムになっていた。もっとも、そのおか
げでクリプトを見る事ができた。
 いつ訪ねても、素晴らしい環境の中に残された
プレ・ロマネスクの、素朴ながら繊細な建築美に
感動する。
 
 
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  オヴィエド聖ミゲル・
    デ・リリョ王室礼拝堂

   Oviedo/Capilla Real
      San Miguel de Lillo
      
      Asturias 
      
      
 
 ナランコ山に残るもう一つのアストゥリアス建
築で、サンタ・マリア聖堂のすぐ近くに建ってい
る。いかにも歴史を感じさせる風情で、苔むし蒼
然たる風貌が素晴らしい。

 後陣は改造が目立つが、内陣は複雑な構造なが
ら、ビザンチンのような方形プランである。
 壁面や門柱や柱頭に施された装飾のためのレリ
ーフ彫刻は、オリエント的な縄目模様を中心にし
て、見慣れぬモチーフが並んでいる。
 特に門柱彫刻は有名で、ローマ時代の円形競技
場の場面が彫られている、と説明書には書いてあ
ったが、ライオンとムチを持つ人間の場面は、ま
るでサーカスの図ではないかと見えてしまった。
 いくつかの窓に、アーチ列柱と透かし彫りがは
め込まれている。プレ・ロマネスクとは思えぬほ
ど、繊細な彫りが美しい。

 オヴィエドの旧市街に残るサン・ティルソ教会
の後陣や、プラドス、そしてレナ、ノラ、ベンド
ネス、サンティアネス、トゥニョン、ヴァルデデ
ィオス、プリエスカ、というオヴィエド周辺に残
る9世紀アストゥリアスの教会を全て巡ってみよ
うという気にさせられてしまった場所でもあった
のである。
 
 
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  オヴィエド聖フリアン・
    デ・ロス・プラドス教会

   Oviedo/Iglesia de
    San Julián de los Prados
      
      Asturias 
      
     
 
 町の東側に建つ9世紀前半の教会で、アストゥ
リアス建築を今日に伝えるテキストのひとつとさ
れている。
 広々とした緑地苑の中に、歴史の厚さを秘めた
凛とした姿で、毅然と建っている簡素な聖堂に感
動した。
 写真は、聖堂後方から後陣を眺めたもので、上
部の三連アーケードのある窓がいかにもアストゥ
リアスらしい。
 平面プランは玄関間の付いた三廊式で、三つの
祭室へと続く。特徴的なのは、身廊と祭室の間、
つまり袖廊に相当する部分、写真では最も高い屋
根の部分が横方向の身廊になっていることであろ
う。
 アーケードの柱は全て角柱で、ここには柱頭は
在るが彫刻は一切無い。聖堂内の壁全体を覆うフ
レスコ画やロマネスク期のキリスト像は見逃せな
い。但し、厳重な撮影禁止となっている。
 
 
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  シアーニョ聖エステバン教会
   Ciaño/Iglesia de San Esteban
      
      Asturias 
      
     
 
 オヴィエドからは、ナロン川に沿って東へ18
キロ、ラングレオ
Langreo の町の東に在るやや
大きな集落である。
 12世紀創建の教会は町の中心に建っており、
建築の大半は近代になってネオロマネスク様式で
復元されたものだそうだ。(案内板による)
 唯一の見所が西正面の扉口である。三重のヴシ
ュールには、ケルト的な鳥の口ばしのような連続
模様や、ノルマン風の稲妻模様が見られる。
 写真は、印象的だった柱頭の彫刻で、聖エステ
バン(聖ステファン)の殉教の場面だそうだ。か
なり質の高い彫刻である。
 
 
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  プリオリオ聖フアン・
    バウティスタ教会

   Priorio/Iglesia de
     San Juan Bautista
      
      Asturias 
      
      
 
 オヴィエドから西へ10キロほどの寒村だが、
教会を探して道の狭い集落の中を探すのに苦労し
た。だが何と教会は、村外れの、
Las Cardas
町の近くに建っていたのだった。

 後世の改築になる玄関間の中に、写真の西正面
扉口が設けらていた。
 扉は開かなかったので、金網の隙間から堂内を
覗いてみた。単身廊に手の長い翼廊のある十字形
の聖堂で、正面に半円形ドームの後陣が見えた。
壁が一面白塗りなので幻滅だが、ロマネスクの構
造は生きているようだ。

 見所はやはり扉口の彫刻で、特にタンパンには
二天使の下に、四福音書家のシンボルに囲まれた
栄光のキリストが彫られている。アストゥリアス
ではこの手のタンパン
timpano は珍しい。
 人間・鷲・獅子・牛という、四つの象徴は最も
事例の多い配列になっているが、これはアーヘン
の福音書やベアトス本に基づく図像だろうと言わ
れている。
 後陣の軒持ち送り
canecillos を見るために、
聖堂後方へ回ってみた。蛇・鳥・魚まどの動物や
愛嬌たっぷりの人物たちなど、表現力豊かな彫刻
が並んでいる。日常と空想とが入り混じった不思
議な造形である。
 
 
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  ベンドネス聖マリア教会
   Bendones/
    Iglesia de Santa Maria
      
      Asturias 
      
     
 
 オヴィエド西南の山間部の村に建つ、8~9世
紀創建のプレロマネスク教会である。
 この珍しい構造の聖堂の大半は、近年に資料を
基にして再建されたものである。
 写真は正面入口で、左右に控室のような部屋が
あり、内部は横長の単身廊、左右端に突き出した
部屋が飛び出している。
 方形の祭室は三つに区切られており、ビザンチ
ンの井型がベースになっている様に思えた。
 プレロマネスク特有の窓の格子模様や、煉瓦の
縁取りからはモダンなセンスすら感じられたのは
驚きだった。
 
 
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  ポーラ・デ・レナ
   聖クリスティナ教会

   Pola de Lena/Ermita
   de Santa Cristina de Lena
      
      Asturias 
      
      
 
 オヴィエドからレオンへと通じる高速道路で、
約30キロ南のレナ
Pola de Lena の町へと向
かう。レオンからパハレス峠を越えて来た国道が
たどり着く町でもある。

 教会は町から数キロ南の北側の山の上に建って
おり、車を止めてからしばらく山道を歩くことに
なる。視界が開けた場所には草原があり、その先
にこの9世紀プレロマネスクの教会の孤高な姿が
見えた。

 外観はオヴィエドのプラドスに似ているように
感じられたが、聖堂の内部に入って衝撃的ともい
える想像外の構造に思わず感動をしていた。
 写真は門を入って直ぐの壇上の祭室で、三つの
アーケードが幻想的とも思える空間を創出してい
たのである。壇上へは左右に設けられた石段で昇
ることになる。植物模様の彫られた障壁のような
ものが置かれており、用途は判らない。後陣への
前室のような空間である。
 さらに奥へは数段の階段があり、同じ三連アー
ケードの中央アーチを入った所に祭壇が置かれて
いた。方形の後陣である。
 アーケードの窓状にはめ込まれた格子が、いか
にもプレロマネスクを象徴しているようだ。
 聖堂の平面プランは、アストゥリアスでは珍し
いギリシャ十字の対称形である。
 
 
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  ノラ聖ペドロ教会
   Nora/Iglesia de San Pedro
      
      Asturias 
      
     
 
 オヴィエドの西15キロ、ナロン川の支流ノラ
川沿いに建つプレロマネスクの聖堂である。
 長方形のバシリカ聖堂で、西側に玄関間が取り
付けられている以外には出っ張りは無い。
 三廊式で三つの方形の後陣を備えている。写真
は後陣を斜め後ろから見たもので、三後陣それぞ
れに長方形の格子を入れた窓が付いている。この
素朴さに何故感動するのだろうか。
 聖堂内へは入れなかったので確認出来なかった
が、後陣上部の三連アーケードのある部屋が階上
にあるという。だが、用途を含め未確認である。
 しかし、ノラ川に映える、ロマネスクが花咲く
前のツボミの様に素朴な建築を見るだけで充分満
足したのだった。  
 
 
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  コルネジャナ
   
聖サルヴァドル教会
   Cornellana/Iglesia
    de San Salvador
      
      Asturias 
      
     
 
 オヴィエドの西40キロにある地方都市である。
 オヴィエドからこの町を抜けて、アセボ峠
Alto
de Acebo
を越え、ルゴ Lugo へと通じる古い巡
礼路
Camino Primitivo がある。実際、この教会
の脇を歩く巡礼を数人見かけた。
 11世紀創建の修道院教会だが、内部見学は出来
なかった。
 正面は二本の鐘塔が“西の構え”のような形式だ
が、様式はバロックだった。ロマネスクの建築は、
三つの半円後陣と三本目の鐘塔が見える写真の部分
だけだった。重量感に満ちた、なかなか見応えのあ
る三後陣だった。
 
 
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  サンティアネス・デ・プラヴィア
   
聖フアン教会
  Santianes de Pravia/
   Iglesia de San Juan Apóstol
    y Evangelista
      
      Asturias 
      
     
 
 コルネジャナの北18キロにプラヴィアの町が
あり、サンティアネスは北側のコミューンの一つ
である。
 教会の横に在るプレロマネスク美術館の方が、
教会の鍵を開け、内部を案内して下さった。
 写真は正面玄関間部分で、中に扉口がある。
 8世紀創建とのことだが、それらしい痕跡は柱
の一部と、馬蹄形アーチに微かにしか残っていな
いような気がした。創建時の遺構の上に改築され
た内陣には、洗礼所の跡も残っていた。
 半円アーケードで仕切られた三廊式で、写真の
門上の格子窓部分は、階上のトリビューンのよう
になっている。
 
 
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  トゥニョン聖アドリアーノ教会
   Tuñon/Iglesia
     de Santo Adriano
      
      Asturias 
      
      
 
 オヴィエドの西南、ナロンの支流トゥルビア川
Rio Trubia に沿って8キロ程登ったあたりに、
この小さな集落がある。

 ファサードはプレロマネスクとは思えないよう
な、バロック風の白塗り鐘楼門なのだが、その奥
にバシリカ式の聖堂が繋がっていた。
 残念ながら聖堂内へは入ることが出来なかった
が、予約をすれば案内していただけると聞いて少
々がっかりであった。
 現在、南側にのみ翼廊のような方形の部屋が付
いているが、従来は北側にもあって十字形の聖堂
だったようだ。後世のロマネスク建築における、
鐘塔を建てるための交差部とは意味合いは違いそ
うである。
 仕方なく回り込んだ後陣部分の写真である。手
前の石壁との隙間が狭いため、この方向しか撮影
出来なかった。
 お馴染みとなったアストゥリアスのプレロマネ
スクの顔とも言うべき二連アーチ窓と、格子をは
め込んだ三つの窓が嬉しい。付け柱までが美しく
見えてきてしまう。「プレロマネスク病」にかか
る人の気持が判るようだった。
 格子窓から中を覗いてみたら、白塗りになって
はいたが、素朴な角柱の並ぶ三廊式の身廊が確認
出来た。フレスコ画は見えなかった。
 
 
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  ラ・プラザ(テヴェルガ)
   
聖ペドロ参事会教会
   La Plaza (Teverga)/
    Colegiata de San Pedro
      
      Asturias 
      
     
 
 前述のトゥルビア渓谷の更に奥へ20キロ入っ
た谷間に開けた町である。
 町外れに建つこの教会は、プレロマネスク建築
を土台として建てられている。
 三廊式の長方形の聖堂で、方形の三後陣などの
プランはプレロマネスクの継承だろう。
 堂内の整然とした石積建築も魅力だが、何と言
ってもここでは低い位置に在る柱頭彫刻の数々だ
ろう。
 人物と動物、牛や馬、ロバや鳥などが中心に描
かれている。幻想と抽象が織りなす夢の世界であ
り、非日常からの脱却と瞑想を促す装置だったの
か、などと考えた。
 写真はその内の一基だが、右端の人は何を持っ
ているのだろうか。他の面には狩猟の場面が彫ら
れている。
 
 
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  ヴィリャヌエヴァ(テヴェルガ)
   聖マリア教会

   Villanueva de Teverga/
    
Iglesia de Santa Maria
      
      Asturias 
      
     
 
 ラ・プラザから数キロほど奥へ入った所に在る
村で、教会は村の入口に建っている。鍵を管理す
る住人が親切に扉を開けてくれた。
 教会の建築は後世の改造が大きいので見るべき
ポイントは少ないが、身廊に彫られた柱頭彫刻は
格別で、目を見張るような傑作で溢れていた。
 ここでも様々な動物や人物が、奇妙な構図で表
現されている。聖家族のエジプトへの脱出をテー
マにした柱頭もあるが、大半は写真の様な何を意
味するのか判らない謎の彫刻ばかりなのである。
 写真の柱頭は、渦巻状の植物の下に、鳥の羽根
と足を持った人像と、長い髪の人魚(セイレン)
らしい。似た人魚をサモラでも見た記憶がある。
 その他にも、大きな植物の葉の下にうずくまる
人々や、蔓の様な植物と絡み合う口ばしの長い鳥
など、決して単なる石工の手慰みでない、深い精
神性が秘められていそうなのだが、当方の発想の
貧困はいかんともし難い。   
 
 
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  エル・セブレイロ教会
   El Cebreiro/Iglesia
      
      Lugo 
      
      
 
 ポンフェラーダ Ponferrada の町から、巡礼
路は最大の難所である
Puerto de Piedrafita
ピエドラフィタ峠を登り、旧道をこの村へ向かっ
て更に登らねばならない。
 村へ入って驚いた。石畳の狭い通りを、十数頭
の牛が糞を垂らしながら行進していたのである。
行き先を確かめに付いて行った場所は、重厚な藁
葺き屋根の農家だった。ケルト以来の伝統的な建
築だそうで、何棟かを見る事が出来た。10世紀
近くも時が止まったままの如く、変わらぬ営みを
繰り返しているように見えた。
 教会は見るからに古そうで、窓も無く、ただひ
たすら石を積んだだけという、まことにプリミテ
ィヴで感動的な建築だった。
 9世紀創建という説明がされていたが、明らか
にロマネスク様式が確立される以前の香りが残っ
ている。
 鐘塔はやや整然としていて、初期ロマネスクの
面影を留めている部分だろう。
 奇跡の聖杯と聖遺物を納めた容器が堂内に展示
してあったが、これは巡礼最盛期のものらしい。
 
 
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  プエルトマリン聖ヨハネ教会
   Puertomarin/
    Iglesia de San Juan
      
      Lugo 
      
     
 
 セブレイロの峠を下ると、巡礼路はダム湖のほ
とりに在るこの村に着く。かつては川沿いの村だ
ったが、ダム工事と共に水没するため、村ごとそ
っくり現在の場所へ移転したそうだ。
 教会も移築されたそうで、町の広場に面しては
いるが心なしか不自然な佇まいである。
 聖堂は方形のバシリカ式単身廊に、半円形の祭
室が付いただけの単純な建築である。建築全体は
まるで小さな城砦のようにも見えた。
 写真は西側扉口で、タンパンには聖母子像、ア
ーチ装飾には楽器を持つ人物達が彫られていて興
味深い。祭室のバラ窓が写っていて美しいが、こ
れは後世のものである。
 南の扉口タンパンでは三人の聖人、北の扉口で
は受胎告知が主題となっていて、いずれも地味だ
が好ましい彫刻だった。
 
 
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  モンドニェード
   聖マルティン教会

   Mondoñedo/
   Iglesia de San Martin
      
      Lugo 
      
     
 
 ルーゴ Lugo の北80キロにこの名の大きな
町が在るが、
ここはそこから更に北へ20キロ行
った所に在る同名の村であった。
 遠くから眺めると石の塊のようにも見え、あた
かも堅固な要塞のようにも見える。後補の控え壁
のイメージが、美しいロマネスクの後陣を隠して
しまっているからかもしれない。
 三廊式バシリカ形式で、三つの半円形後陣を配
している。身廊のアーケードには、左右各三本づ
つの束ね柱や角柱が並んでいる。
 ここでは聖堂内へ入りたかったのだが、長い昼
休みで鍵は開かず諦めざるをえなかった。最大の
目的だった「黙示録」を啓示するレリーフや、ヘ
ロデ王の宴を描いた柱頭などを見る事が出来なか
ったのだった。自由旅の宿命、と諦めた。  
 
 
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  リバス・デ・ミーニョ
   聖エステヴォ教会

    Ribas de Miño/
    Iglesia de Santo Estevo
      
      Lugo 
      
     
 
 ルーゴの南60キロに在る Chantada チャン
タダ
の町の東、ミーニョ川の段丘上に建つ12世
紀創建の教会である。
 一歩教会の敷地に足を入れると、いかにも鬱蒼
と苔むしたような、かび臭い霊気に満ちた聖地と
いう印象を受けた。
 単身廊に尖頭横断アーチ、天井は木造、祭室は
オジーヴ・ヴォールトで、半円形後陣を備えてい
る。
 写真は、西側正面の扉口で、左右四本づつの円
柱が基礎となって、四重のヴシュールを構成して
いる。
 タンパンが無地なのが淋しいが、その直ぐ上に
七人の楽師が色々な楽器を奏でていて面白い。太
く編まれた綱だの、筒に絡まる蔓のような連続紋
様は、他所では余り見かけない意匠だろう。
 西のファサードは、この中央扉口の左右の盲ア
ーチ、上部の薔薇窓とで構成されている。
 
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  エイレ聖ミゲル教会
  Eiré/Iglesia de San Miguel
      
      Lugo 
      
      
 
 オレンセ Ourense との県境に近い、フェッ
レイラ
Ferreira という町の郊外に在る寒村で
ある。前述のエステヴォ教会からは、真南に15
キロほどに当たる。
 現在残る建築は12世紀前半の小礼拝堂に過ぎ
ないが、前身は大きな修道院であったらしい。そ
の痕跡を見つけるのは難しかった。

 写真は、聖堂の東北後方からの眺めで、半円形
後陣と鐘塔が写っている。
 聖堂は、正方形の単身廊と鐘塔との交差部分、
ほぼ正方形の祭室に半円形後陣、という構成にな
っている。礼拝所、鐘楼、祭室という教会の機能
を満たす上で、これ以上の簡潔さは無いだろう。

 扉口としては西門は使用されず、北側に設けら
れた装飾アーチのある北門が出入り口となってい
る。
 半円形のタンパンがあるのだが、幾何学紋様の
彫られたまぐさ石状のものが嵌め込まれている。
センスは感じられない。
 帯状飾りアーチは二重で、ひねり棒のような意
匠の外側に、花弁を並べたような連続紋様が彫ら
れ、要石部分に十字架を担いだ子羊が浮彫りされ
ている。
 手を延ばせば触れそうな、そんな素朴で暖かい
スケールが嬉しかった。
 
 
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  ヴィジャル・デ・ドナス
   聖サルヴァドール教会

   Villar de Donas/
    Iglesia de San Salvador
      
      Lugo 
      
      
 
 城壁の町ルゴ Lugo に泊まった翌朝、私達は
高揚した気分でホテルを出発した。何故ならこの
日の昼前後には、目指す聖地サンチャゴ・デ・コ
ンポステラに到着する予定だったからである。
 途中、巡礼路から少し外れて、重要なロマネス
クの遺構であるこの教会へ立ち寄ってみた。
 村ではサンチャゴ教会と呼んでいるらしいのだ
が、12世紀にサンチャゴ騎士団の屯所が置かれ
ていたかららしい。
 やや人里離れた場所で、かつては修道院として
の規模を誇っていたようだ。アプローチの美しい
神域で、北壁のアーチ門を入ると、すぐ聖堂西正
面の扉口が見える。写真は北門の外から撮影した
ものである。実に均整の取れた設計で、建築は場
面の転換を意図したドラマの創作なんだと知るこ
とができる。
 幾何学模様を主体としたアーチ装飾や、ファサ
ードの盲アーチ飾りに特徴が感じられ、木の扉に
施された金属細工の模様までが、優れた意匠の中
で往年の栄華を語りかけているようだった。
 聖堂は、心落ち着けるバシリカ式単身廊に、左
右の袖廊が付いた十字形で、三つの祭室の在る単
純なプランが好ましかった。
 
 
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  バンデ聖コンバ教会
  Bande/Iglesia de Santa Comba
      
      Ourense 
      
     
 
 オレンセから南へ約40キロでバンデに着く
が、この聖堂は更に10キロ南の文字通りサンタ
・コンバという看板の出ているバニョス
Baños
という集落の中に建っている。
 7世紀に建てられたという西ゴート時代の貴重
な遺構である。
 瓦屋根が新しく、石の壁面も洗ってあるので、
違和感ばかりが先に立ってしまう。
 しかし、ギリシャ十字形の聖堂の原形を想いつ
つ、実際十字交差部に採光塔が立っている姿を見
るのは、やはり感動的だった。
 一番手前右側の建物は、十字外の後補だろう。
 内部のプリミティブな建築を見たかったが、扉
口に鍵がかかっていた。鍵管理人の電話番号を記
した張り紙があったので連絡したが、全く応答が
無かった。残念。
 
 
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  サンチャゴ・デ・コンポステラ
   
聖ヤコブ大聖堂
   Santiago de Compostela/
    Catedral de Santiago
      
      A Coruña 
      
      
 
 ついにやって来た、というのが最初の感動的な
実感だった。フランス各地を出発し、ピレネーを
越えてはるばる旅した巡礼者達が、最初にくぐる
聖堂入口の門が、写真の栄光の門なのである。
 タンパンには黙示録の栄光のキリスト像が彫ら
れ、輪郭のアーチには黙示録の二十四長老が配さ
れている。
 見事な扉口彫刻だが、内容はキリスト受難が主
題であり、実は大変重い命題を投げかけられてい
るのである。しかし、両手を掲げたキリストの表
情は、長い道のりを歩いてきた巡礼に対して、歓
迎と祝福の意を伝えているようにも見える。
 例えレンタカーの巡礼とはいえ、ようやくたど
り着いた憧れのサンチャゴに感極まってか、浄土
宗の家に育った小生も、更に日蓮宗の家人もが、
中央柱に彫られた聖ヤコブの像の足元に接吻して
いたのだった。
 身廊を進み、祭壇に詣で、そして地下祭室クリ
プタで、聖ヤコブの遺体が眠る銀の柩を拝むこと
が出来た。
 聖堂前のパラドールに泊まった夜、広場の真ん
中に立って聖堂を改めて見上げた。塔やファサー
ドがバロックに改修されている事など気にならな
い。ついにやって来た、ピレネーを越えて!
 
 
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  ア・コルーニャ聖マリア・
   デル・カンポ参事会教会

   A Coruña/Colegiata de
    Santa María del Campo
      
      A Coruña
      
      
 
 ア・コルーニャに泊まり、タコやエビといった
海鮮料理を満喫した翌朝、家屋が密集した旧市街
の中に建つこの教会を訪ねた。
 十字架の建つ小さな広場に面して、聖堂西正面
のファサードが展開している。
   
 創建は12~13世紀と言われているが、かな
りの部分が後世に改造されている。
 五つのベイを持つ身廊は三廊式で、翼廊は設け
られていない。
 天井は尖頭アーチ形ヴォールトで、横断アーチ
が見られる。側廊との間のアーケードは五連アー
チで、石積みも荒々しく素朴なイメージを保って
いる。

 写真は正面のファサードで、薔薇窓の下にタン
パンのある立派な扉口が開けている。
 タンパンの主題は聖母子に礼拝する三博士の像
である。その直ぐ周囲の輪郭に、十二使徒が放射
状に嵌め込まれている。数えたら、何故か十一人
しかいない。理由は分からないが、聖母子像の右
にもう一人の人物がおり、併せて十二人というこ
となのだろうか。

 聖堂北側にも小さな扉口があり、小さなタンパ
ンが保存されている。すっくと立つ聖女と周辺に
彫られた四つの車輪から、聖カタリーナを描いた
とされる。謎めいた彫刻だが、ロマネスク的な素
朴さが捨て難い。  
 
 
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  カンブレ聖マリア教会
   Cambre/
    Iglesia de Santa María
      
      A Coruña 
      
     
 
 ア・コルーニャから東南へ10キロほどに位置
する郊外の町で、周辺にはまだかなり田園風景が
残っている。
 教会は、町の中心にある公園の一画に建ってい
た。扉口に小さなタンパンがあり、十字架を背負
った子羊の輪を、二人の天使が支える図像が彫ら
れている。
 聖堂建築は四つのベイのある三廊式の身廊に翼
廊が続き、サンチャゴ巡礼教会と同じ周歩廊が、
祭室の外側に設けられている、という明快な構造
だった。
 そして更にその外側に、放射状に五つの礼拝堂
が付設されている。
 身廊の束ね柱と、周歩廊の柱が林立する様は何
とも壮観だった。
 写真は、聖堂後方から、その五つの半円形後陣
を写したものである。堂々たる巡礼教会、と言っ
て過言ではないだろう。  
 
 
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  ブレアモ聖ミゲル教会
  Breamo/Iglesia de San Miguel
      
      A Coruña 
      
     
 
 ア・コルーニャから海岸線沿いに Ferrol
ェロル方面へと北上すると、入江の町であるポン
テデウメ
Pontedeume に着く。
 町の南背後は樹木が鬱蒼と繁る小高い丘になっ
ており、教会はその頂上近くの深い森の中に保存
されていた。
 苔むした石積みを一目見ただけで、プレ・ロマ
ネスク的な素朴な聖堂である事が判る。実際には
12世紀の建築だった。
 しかも、この地方には珍しい、単身廊ラテン十
字形の平面プランで、袖廊に小祭室が付いている
という構造だった。
 鍵がかかっており、人影も見えないので内部見
学は断念したが、そのプリミティブな美しさは、
外観からだけでも容易に想像出来るだろう。
 写真は後方から眺めた後陣と翼廊だが、窓も無
い石の塊のような妙な建築に、何故かくも惹かれ
るのかは未だに理解出来ないところではある。
 
 
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