ルーマニアの
   壁画修道院群
 世界遺産
  ブコヴィナ地方のフレスコ画
 
 
 
 
 サプンツァの陽気な墓  
  
Cimitiul Vesel SAPUNTA 
  
生涯を描いた絵物語で飾られた墓碑
  の並ぶ美しい墓地

 
(ルーマニア・マラムレシュ地方)
 
 ルーマニアの北部、ウクライナとモルドヴァ
に国境を接するブコヴィナ地方はモルダビア地
方とも呼ばれ、世界遺産に指定された美しいフ
レスコ壁画の描かれた修道院が密集している。
 今回の旅で私達はその内の7ヶ所を訪ねた。
素朴な集落を巡るドライブは、粗悪な道路に悩
まされたものの、それを遥かに凌駕する感動を
与えてくれたのだった。
 15~16世紀に描かれたものが中心で、特
に外壁に描かれたフレスコ画の密度と鮮やかな
色彩には驚嘆した。
 ルーマニア正教の東方ビザンチン的古典と、
モルドヴァに伝わる民俗性が混合した独自の表
現には、とても優しい美しさが感じられた。
 修道院巡りの中心となる町はスチェヴァで、
私達はここに2泊し、ルーマニアの田園地帯な
らではの風物に接することが出来た。
 
 
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プロボタ修道院 (Probota)
 
 スチェヴァの東南50Kmの辺鄙な村の外れにあ
る、1530年創建の修道院。
  
 
   
 
 外壁に描かれたフレスコ画「最後の審判」が
見所。やや褪色しているが、リンゴの樹に囲ま
れた冥想に相応しい、心洗われる静寂に包まれ
た空間である。
 
    
 
 聖堂内の壁一面に、フレスコ画が描かれてい
る。かなり修復されたものが目立つが、鮮やか
な色彩と壮麗な図像は見事と言うしかない。
 
 
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パトラウチ修道院 (Patrauti)
 
 スチェヴァの東北10Kmに位置する。
  
1487年の創建の古い修道院である。
 
 
     
 
 まことに愛らしい聖堂である。外壁のフレス
コは正面ファサード部分に残るのみだが、残念
ながら内陣へは入れなかった。
 
 
    
 
 扉口右上に描かれているフレスコで、大天使
ミカエルなど「最後の審判」の場面である。ビ
ザンチンの雰囲気が色濃く感じられるが、この
フレスコが描かれたのは1550年とのことで
ある。
 
 
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アルボレ修道院 (Arbore)
 
 スチェヴァの西北西38Kmに位置する小さな
村に在る。林の中の静かな一画で、塔の無い聖
堂建
築はとても質素だった。
 1502年の創建である。
 
 
     
 
 船をひっくり返したような形の屋根が特徴。
 影になって見えないが、正面の半円アーチ内
壁に描かれたフレスコは圧巻だった。入口の有
る南壁の壁画も見事だ。内部は修復中だった。
 
 
    
 
 正面のフレスコ画である。多彩な色が使用さ
れており、1541年にアルボーレ公の娘アナ
によって描かれた。マリア伝など端正な画風
が印象的で美しい。
                  
 
 
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スチェヴィツァ修道院
 (Sucevita)
 
 アルボレの西20Kmの原野の中に在る。
 
1586年の創建である。 
 
 
      
 
 美しい景観だが、建築年代は少し新しい。
 だが、均整のとれた塔と後陣の佇まいは見
事だ。
 
 
  
 
 北側壁面に描かれた「クリマコスの梯子」の
写真で、右上半分に圧倒的な数の天使達が、そ
して左下には地獄に落とされる亡者達が描かれ
ている。

 最後の審判と同義の主題であり、1596年
の作だ。特異な意匠と色彩がと
ても衝撃的だ。
 
 
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モルドヴィツァ修道院
 (Mordovita)
 
 スチェヴィツァからシウマルナ峠を越えて、
南西に35Km行くとこの修道院に着く。

 手付かずのルーマニアの自然が味わえる素晴
らしいドライブだった。
 
 
     
 
 壮大な玄関間の有る正面入口が特徴の聖堂建
築で、1532年に建てられた。ここも隙間の
無い程の密度で、外壁がフレスコ画で覆われて
いる。壁画は1537年の作になるそうだ。
 
 
   
 
 南側壁面に描かれた「コンスタンティノープル
包囲攻撃」の一場面で、全体が壮大な絵巻物にな
っており、フレスコ画としては一級品の美しさで
ある。
        
 
 
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ヴォロネツ修道院 (Voronet)
 
 スチェヴァの西約30キロに在り、モルドヴ
ィツァから南下出来る。シュテファン大公によ
って、1488年に創建された由緒を持つ。
 
 
     
 
 山里の雰囲気に満ち溢れた村で、日暮れが早
かった。東側の後陣から南壁にかけて、青を基
調にしたフレスコがびっしりと描かれている。
壁に彫られたアーチ列は、ロマネスクのロンバ
ルディア帯にも似た建築装飾だ。
 
 
     
 
 西正面の壁面一杯に描かれたフレスコ画であ
る。西日と樹木の影が、不思議な模様を作って
いて綺麗だった。ここでも「最後の審判」が表
現されており、
啓蒙を目的に描かれたルーマニ
ア正教の遺産だろう。
 
 
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フモル (Humor)
 
 ヴォロネツの南9Kmという至近に在る。
 1530年の創建である。
 
 
    
 
 夕日が影を長く落としていた。外壁にはモル
ドヴィツァと同じような、コンスタンチノープ
ル包囲が描かれていた。モルダヴィアでは最も
古いフレスコの一つである。
 
 
     
 
 西正面扉口の上に描かれた大天使ミカエル。
ヴォロネツ壁画に似た「最後の審判」の中の一
部だ。この部分はやや新しいが、ビザンチンの
古典的な雰囲気に
満ちていて美しい。玄関間の意
匠もヴォロネツにそっくりだった。
 
 
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