ガスコーニュピレネー
 
  ミディ・トゥールーザン地方のロマネスク
  
  Gascogne, Pyrénées et
          Midi-Toulousan Romans

 
       サンチャゴへの巡礼路が通る、フラン
  ス最南端の重要な地域であった。ピレネ
  ーを越えるソンポール
(
Somport)とバン
  タルト
(
Bentarte)の両峠が、最も著名な
  中世のルートだった。

   バスクやトゥルーザン地方はピレネー
  を挟んでスペインと接しており、独自の
  伝統文化を守って来た誇り高き地方であ
  る。
   ロマネスクにも見るべきものが多く、
  自然と調和した美しい聖堂が数え切れな
  いほど点在している。
 
  Abbay St-Jean de Sorde
Landes 







県名と県庁所在地

 
ガスコーニュ地方
   
1 Landes (Mont-
        de-Marsan
)
   
2 Gers (Auch)

 ピレネー地方
   
3 Pyrénées-
     Atlantiques
(Pau)
   
4 Hautes-Pyrénées
       (
Tarbes)

 ミディ・
   トゥールーザン地方

   
5 Hautes-Garonne
      
(Toulouse)
   
6 Ariège (Foix)
   
                            

             
              
     トゥールーズ聖セルナン聖堂
       Toulouse/Basilique St-Sernin

                         5 Hautes-Garonne   

                
   フランスを代表する大都市だが、旧市街
  は歴史的遺産の宝庫である。かつてのサン
  チャゴ巡礼路沿いに、この11世紀の教会
  は建っている。
   放射状祭室と周歩回廊とが、巡礼教会の
  典型的プランとして意匠されている。
   聖堂の外へ出て、ミエジュヴィルの門と
  呼ばれる扉口の彫刻を見た。
   写真はその半円形タンパンの部分で、上
  部には天使に支えられて昇天するキリスト
  像と、これを祝福する天使達が彫られてい
  る。持ち上げようとする天使のポーズと、
  両手を挙げたキリストの姿とが、上昇しよ
  うとする躍動感を見事に表現している。
   壁面にはヤコブとペテロの両聖人が、そ
  して門の柱頭には「楽園追放」や「受胎告
  知」「訪問」などが彫られている。
   少し離れた旧修道院内のオーギュスタン
  美術館にはぜひ立ち寄って、ロマネスクの
  柱頭彫刻コレクションなどを見なければい
  けない。
       

             
           
     トゥールーズオーギュスタン美術館
       Toulouse/Musée des Augustin

                         5 Hautes-Garonne   

                
   聖セルナンから南へ800m歩くと旧修道
  院があり、そこにこの重要な美術館が建って
  いる。旧石器時代からの豊富な彫刻蒐集で知
  られるが、私達はロマネスク柱頭彫刻の部屋
  へと急がねばならない。
   ダルバド聖母教会、聖セルナン、サン・テ
  ティエンヌなどに残された、創建当時の柱頭
  が集められているのだ。全てが一級品ばかり
  であり、その造形の美しさ、完成度の高さに
  は圧倒されるばかりだった。
   ロマネスク柱頭彫刻を見るための場所を一
  つだけ選ぶとしたら、ここ以外は全く考えら
  れない。
   写真は、その中で特に印象深かった作品で、
  サン・テティエンヌの「ヘロデの宴」である。
   柱頭の四面に渡って、サロメやヘロデ王や
  首を切られる洗礼のヨハネの姿が、ドラマテ
  ィックに描かれている。
   写真の面には、切られたヨハネの首が、手
  渡しでヘロデ王まで届く様を、絵巻物のよう
  に連続した場面で表現されている。
          

    
   
     サン・プランカール葡萄畑の聖ジャン礼拝堂
       St-Plancard/Chapelle St-Jean-des-Vignes

                         5 Hautes-Garonne   

               
   親友のM夫妻と御一緒にここを訪ねたのは、86
  年末の冬期休暇のことであった。教会の鍵を管理し
  ていた、親切な町の雑貨屋夫妻に世話になったのだ
  が、この交流がきっかけとなり、数年後M夫妻はこ
  の地を再訪し、爾来交誼は継続している。
   小麦畑が作る牧歌的な風景の中に、この小さな礼
  拝堂は、墓地と数本の木立に囲まれて静かに建って
  いた。名前の通り、礼拝堂の裏は小さな葡萄畑にな
  っている。
   礼拝堂は元来十字形だったのだが、現在は東南側
  のみが残っており、この翼廊の小祭室と中央祭室の
  壁面とに、鮮やかなフレスコ画が描かれていた。
   写真は、翼廊小祭室天井部に描かれた「栄光のキ
  リスト」像である。周囲にも色彩が豊かに残り、キ
  リストを支える天使や、洗礼のヨハネからの使者な
  どが描かれている。
   中央祭室にもフレスコが見られ、一部修復の痕跡
  は有るものの、東方三博士礼拝や磔刑図など美しい
  ロマネスク壁画を見ることが出来た。
   雑貨屋の御主人が先年亡くなられたので、早急に
  夫人のもとを訪ね、お悔やみをせねばならぬと思っ
  ていたが、03年10月にM夫妻と御一緒にこの念
  願を果たすことができた。 
         

    
   
    サン・ゴードン旧聖ピエール聖ゴードン参事会教会
     St-Gaudens/Ancienne Collégiale St-Pierre-et-St-Gaudens
 
                         5 Hautes-Garonne   

             
   前述のサン・プランカールに旧知の一
  家を訪ねた翌日、私達はそこから程近い
  この地方の中心であるこの町を訪ねた。
  町を通過したことは何度か有ったが、こ
  この教会もロマネスク時代のものと知り、
  今回は見逃さなかったのだった。
   中央の広場に面した聖堂は壮大なもの
  だったが、後陣部分の外壁を修理してい
  る最中だった。
   内陣は三廊式で、身廊は高い半円アー
  チの天井、側廊は交差穹窿という美しい
  構成になっている。小さな窓から差し込
  む光が列柱と天井の陰影を造り出してお
  り、建築とは空間の創出なんだと改めて
  再確認させられる。
   柱頭の彫刻は非凡で、特にこのアダム
  とイヴの場面が印象的だった。大胆な構
  図、深い彫り、二人の虚ろな表情、妖し
  い蛇の誘惑など、幻想の世界へ引き込ま
  れるような気分にさせられたのだった。 
            

   
   
    サン・ベルトラン・ド・コマンジュ
           /
コマンジュの聖マリー大聖堂
       St-Bertrand-de-Comminges
             
/
Cathédrale Ste-Marie-de-Comminges

                             5 Hautes-Garonne    
                 
   ガロンヌ渓谷を見下ろす絶景の地で、古代ローマ
  の時代から開けていたらしい。何処を掘っても必ず
  遺跡に当ってしまう、と言うほど大きな町だったと
  いう。広場の車止めにローマ式石棺のレプリカが使
  われるほどだが、本物だと言われたら信じてしまい
  そうな雰囲気の有る町なのである。
   広大なコマンジュの原野からも遠望出来る聖堂建
  築は豪壮だが、身廊や後陣はバットレスの備わった
  ゴシックである。
   だが、正面部分と身廊の西半分、さらに隣接する
  回廊の柱頭などは、れっきとした12世紀ロマネス
  クである。
   写真は回廊の柱頭彫刻で、植物模様や鳥などの動
  物をモチーフとしている。特に中央の柱には四人の
  福音書家の像が彫られており、一際光彩を放ってい
  る。
   見落としてならないのは、正面扉口のタンパン彫
  刻である。東方三博士の礼拝を受ける聖母子像と、
  右手を掲げる聖ベルトランの像が彫られている。天
  使達が上から色々な小道具を持って祝福しており、
  十二人の使徒を彫ったまぐさ石と共に、構図の面白
  さが魅力である。
          

    
   
     サン・ジュス・ヴァルカブレール聖ジュス教会
       St-Just-Valcabrère/Église St-Just

                         5 Hautes-Garonne   

                     
   前述のコマンジュ地区にヴァルカブレールという
  集落が有り、その村外れにこの教会がポツンと建っ
  ている。ここからサン・ベルトランの聖堂が良く見
  える。
   緑一面の草原と麦畑の中に、ピレネー山塊の先端
  一部を背景とし、糸杉に囲まれた墓地を前景にし、
  そして、赤い屋根の古式な風貌をした塔や後陣の眺
  めは、全てが絵になる類稀なる景観である。

   聖堂は三廊式の単純な構造で、三つの祭室がそれ
  ぞれに付いている。扉口は側面に有り、荘厳のキリ
  ストや四福音書家を描いたタンパンや、四人の聖人
  像、繊細な柱頭彫刻などが美しい。
   特に、ローマ彫刻を連想させる四人の聖人像は珍
  しく、ローマの遺跡として栄えたコマンジュの伝統
  を、端的に表現しているようにも思えた。
   写真は、扉口左側の二人の聖人像と柱頭彫刻であ
  るが、あたかも古代ローマの彫像を想起させるよう
  なこの像に、むしろ斬新な感動を覚えてしまうとい
  う、なんとも不思議な経験であった。
 
          

    
      
     モンゴーシュ聖ピエール教会
       Montgauch/Église St-Pierre

                         6 Ariège  

                  
   後述のサン・リジェから近い谷間の奥
  に、この小さな集落と教会が在る。
   入口の扉が閉まっていたが、鍵を管理
  する村人を探すのに家人が村の外れまで
  行き、一人の老婦人を伴って戻った。
   お陰で私達は内陣へと、無事入ること
  が出来た。そして、祭室の天井ドームと
  それに続く半円アーチ天井に描かれた、
  美しいフレスコ画をゆっくりと鑑賞した
  のだった。
   かなり剥落が激しいが、色彩は意外と
  鮮やかに残っている。かなり修復の手が
  入っているが、中央のキリストの顔は失
  われている。しかし大方の像容は破壊さ
  れておらず、キリスト像の周囲に描かれ
  た天使や聖人像には、ロマネスクの図像
  としての親しみを感じてしまう。
   ドームの下には御訪問や磔刑が描かれ、
  天井の部分には聖ペテロの逸話などを見
  る事が出来る。いずれも、かなりの表現
  力を持った傑作であった。
   まことに静かで素朴な里で、フランス
  の田舎を旅する事の魅力に満ちていた。  
          

     
     
     ユナック聖マルタン教会
       Unac/Église St-Martin

                        6 Ariège   

             
   異端カタリ派がたてこもった山上の城砦モンセ
  ギュール
(
Montsegur)へ登った後、私達は更に山
  を越え、ピレネーの山裾に在るこの村を訪ねた。
   スペインやアンドラとの国境にも近い、風光明
  媚だがまことに山深い辺境の村であった。
   鐘塔部分は11世紀、後陣・祭室部分は12世
  紀築造とのことだが、確かにアンドラなどで見た
  ピレネー山中のロマネスク建築に共通している。
   単身廊に袖廊が付いた十字形の聖堂で、袖廊の
  手前に塔が付いた形になっている。
   内陣はかなり修復されて小綺麗になっているが、
  創建当初からのものと思われる柱頭彫刻が何個か
  見られた。それは、モアサックの回廊の彫刻を連
  想させるほどの、優れた表現力を示していた。特
  に、獅子をモチーフにしたものが出色だった。
   西側のファサードは破壊されたようで、見所は
  自ずと後陣と鐘塔である。周囲の山並みをも取り
  込んだ景観が美しかったが、素朴さの中に秘めら
  れたロマネスクならではの洗練されたフォルムの
  素晴らしさが感じられたことが、何よりもて嬉し
  かった。 
           

     
           
     サン・リジェ旧大聖堂
       St-Lizier/Ancienne Cathédrale

                         6 Ariège   

                  
   狭い通りの両側に木組みの家々が並ぶ、雰囲気の
  良い古い街である。この聖堂は12世紀創建だがか
  なり修復されており、祭室、小祭室及び回廊だけが
  当時のままである。
   中央祭室の丸天井から壁面一杯に、やや剥落して
  はいるものの、大変シックで物静かな色使いのフレ
  スコ画が残っていた。
   天井のキリスト像にはやや後世の手が入っている
  ようだが、壁面に描かれた八人の預言者達の像や、
  その下段のマリア伝などは12世紀のものである。
   写真は「受胎告知」で、聖母マリアと大天使ガブ
  リエルを描いてある。濃紺が際立って美しく感じら
  れたが、抑えた色調がさらにレヴェルの高い美意識
  を感じさせる。右隣には、全く同じ色調の「訪問」
  が描かれていた。
   回廊は、一本と二本の柱が交互に続くという、変
  化に富んだ設計だが、半円アーチで仕切られた中庭
  は、雑草が生え荒廃していた。しかし、柱頭の彫刻
  は見事で、その複雑で繊細な意匠は見ていて飽きな
  い。 
          

    
         
     ヴァル聖母教会
       Vals/Église Notre-Dame

                         6 Ariège   

               
   トゥールーズの東南に位置するこの教
  会は、先ずその異様な佇まいに驚かされ
  る。岩山と一体化して建つ城砦のようで
  もあり、教会の入口は何と洞窟へ入るよ
  うに狭い。
   しかし、一歩堂内に入れば、そこはプ
  レ・ロマネスク時代のクリプトである。
  そして祭室に当るサン・ミシェル礼拝室
  の天井に描かれたフレスコ画の壮麗さに、
  思わず目を見張らされてしまう事になる。
   剥落が激しいが、鮮烈な色彩が残って
  おり、フレスコ好きにはたまらない空間
  である。
   蒲鉾形の天井や梁に、ピエール、マタ
  イ、アンドレ、ルカといった聖人達や、
  多くの天使、受胎告知の場面などが明快
  な輪郭線で描かれている。
   上ばかり向いていたので、すっかり首
  筋がくたびれてしまった。   
          

          
         
     オロロン・サント・マリー聖マリー教会
     
  Oloron-Ste-Marie/Église Ste-Marie

                         3 Pyrénées-Atlantiques   

                 
   ルシオン地方から出発して、ピレネー
  山麓のロマネスク教会を巡ったことがあ
  る。出発前の計画の段階から、私はずっ
  とこの美しい響きの地名に憧れ、そこに
  建つロマネスクの寺を想像していた。
   バジリカ式の簡素な建築にも興味があ
  ったが、鐘塔の中門のような正面扉口の
  彫刻は、私が考えていたレヴェルを遥か
  に越えた素晴らしい意匠であった。
   中心柱の有る半円形タンパンの中に、
  さらに小さな半円形の二つのタンパンが
  重なるという珍しい形式である。
   中心にキリストの十字架降下を、そし
  て半円の縁飾りとして、楽器を持った黙
  示録の二十四人の長老が彫られている。
   写真はその内側に彫られた、日常的な
  庶民の暮らしの一部である。生き生きと
  した表情がとても良いのだが、いったい
  何を作っているのだろうか。
               

           
          
     モルラー聖フォア教会
       Morlaas/ Église St-Foy

                         3 Pyrénées-Atlantiques   

                 
   ポー Pau 市郊外に位置するこの町は、
  とても静かな美しい所だった。
   教会は町のほぼ中心に建っている11
  世紀創建の建築だが、側廊部分は後世の
  修復であり、内陣もとても綺麗なのでや
  や戸惑ってしまう。
   しかし、扉口の装飾は必見であり、ど
  こかで見たことがあるような気がした。
  それは前述のオロロンのタンパンと同様
  に、タンパンが二重になっていたからだ
  った。
   小さいタンパンの主題は、左が「幼児
  虐殺」、右が「エジプトへの逃避」であ
  り、主タンパンは「荘厳のキリスト」で
  ある。キリストの左側に天使、右側に鷲、
  下に小さなクリスモンが彫られている。
   ヴシュールの彫刻も、オロロンの内容
  にとても似ているようだった。
          

   
    
     セヴィニャック聖ピエール教会
       Sévignac/ Église St-Pierre

                         3 Pyrénées-Atlantiques   

                 
   現在見るこの教会は二廊式である。側
  廊が南側にしかないのだが、北側が消失
  したのか、南側だけに増築したのかは判
  らない。
   いずれにせよ、身廊部分と写真の南門
  のみがロマネスク様式なのである。従来
  西正面のファサードだったものを、移築
  したものと考えられる。
   タンパンの中は、玉座のキリストを中
  心に、鍵を持つペテロと長い巻物を持つ
  パウロが彫られている。
   ヴシュールの外側は黙示録の二十四長
  老らしいのだが、不思議なことに一つお
  きに十二人しか居ない。
   美しい墓地の中に建つ、民家の柿葺の
  ような屋根を持った穏やかな建築の教会
  だった。
         

         
        
     レスカールノートルダム大聖堂
       Lescar/Cathédrale Notre-Dame

                         3 Pyrénées-Atlantiques   

                 
   聖母マリアが出現したとされる奇跡の聖地ルル
  ドを訪ねた後に、私達はこの地にたどり着いた。
   この教会に素晴らしいモザイクが有る事を、資
  料によって調べてあったからである。
   教会の建物は三廊式で三つの祭室が有り、少し
  へこんだ程度の翼廊が両側に付いていた。全て1
  2世紀の建造である。
   モザイクは祭室最奥の床面に施されており、狩
  猟の場面や動物同士が激しく絡み合う姿が描かれ
  ている。モザイクといえばビザンチンかローマを
  連想するが、不思議とここのは12世紀ロマネス
  クのモザイクである。
   モザイク以上に感動したのが、写真のものを始
  めとした柱頭群だった。「アブラハムの犠牲」や
  「キリストと預言者達」のほかに、数々の妖怪や
  怪獣が彫られていて飽きない。ルルドの直後だっ
  たせいもあるが、写真の「東方三博士の聖母子礼
  拝」の造形美に唸ってしまった。盛り上がるよう
  な彫りは、類例を見ないほどの絶品であった。
           

  
   
     ヌルビ聖ピエール教会
       Nerbis/ Église St-Pierre
    
                            1 Landes   
       
   今回の旅はランド(Landes)地方を中心に歩いたの
  だが、フォアグラなど多くの美味をを堪能できた。

   ダックスに泊まった翌朝、サンテ・ミリオンへ向
  かう途中で、朝もやに霞む村の外れの高台にひっそ
  りと建っているこの教会を訪ねた。
   かなりの修復が成されており、ロマネスク時代の
  名残は、写真の後陣部分と塔、そして向こう側の身
  廊の壁だけなのである。

   後陣の半円形祭室部分は三つ揃っているのだが、
  身廊の両側に在るべき側廊は北側部分しかない。
   身廊の屋根も後補であり、修復の際に大きく改造
  されたらしい。
   しかし、聖堂全体の佇まいはロマネスク的な情緒
  に満ちていて、私達は墓地の中からしばらくの間後
  陣の姿を眺めていた。
   内陣の天井はオジーヴだが、柱はロマネスク様式
  であり、素朴な柱頭も残っていて楽しめた。

   このくらいの規模のロマネスク聖堂にこそ、しっ
  くりと落ち着いた大仰でない美しさが感じられるの
  で好きである。
           

   
  
     ソルド・ラベイ聖ジャン修道院
       Sorde-l'Abbaye/ Abbaye St-Jean
    
                         1 Landes   
   
     
   教会全体がかなり修復されているので、車を止め
  た広場からはゴシックの教会のように見えた。
   事実、後陣の半円形祭室や祭壇周辺にはロマネス
  ク様式の建築が見られたが、身廊の柱頭から上、天
  井や梁の部分は完全にゴシック様式だった。

   写真は、身廊部分から主祭室の祭壇を眺めたもの
  で、新しい聖母子像が立っている。

   祭室と身廊を仕切るアーチ部分には、見るべき柱
  頭が有り、彩色がほんのりと残っている。聖母子像
  やダニエルと獅子、キリスト誘惑などといった主題
  の柱頭が目に入った。

   祭壇の据えられた床一面には、目を見張るような
  モザイクが敷き詰められている。写真を撮ったが、
  逆光のためモザイクが光っていたため余り上手には
  撮れなかった。(当ページの表紙写真参照)
   近世の修復の際に発見されたとのことだが、色彩
  が見事に残っていて素晴らしい。
   ここでは、赤・黄・黒・白・青がモザイクの基調
  になっており、組紐模様や葡萄の図、様々な動物な
  どが巧みに図案化されている。
           

  
   
     サン・ポール・レ・ダックス聖ポール教会
       St-Paul-les-Dax/Église St-Paul
    
                         1 Landes   
     
   この教会は、フランス第二の温泉地
  として名高い、ダックス
Dax の町の
  郊外の閑静な高台に建っている。

   修復中で内陣へは入れなかったのだ
  が、12世紀の創建部分は写真の後陣
  部分だけだそうなので、無念さはやや
  減少した。
   外側の壁面に組まれた盲アーケード
  と同じものが、祭室内部の壁にも飾ら
  れているので見たかったのである。
   壁面の薄いピンク色の石が朝陽に照
  り、周囲の景観の中に浮かび上がって
  綺麗だった。

   写真には小さく写っているが、壁面
  中段に帯状に彫られたレリーフを見逃
  してはならない。
   最後の晩餐、キリスト捕縛、磔刑な
  ど、一連のキリスト受難の場面が絵巻
  物のように彫られている。顔に特徴の
  有る、個性的な彫刻群である。
           

  
   
     サン・スヴェール聖スヴェール教会
       St-Sever/Église St-Sever
    
                         1 Landes   
     
   5世紀創建とも伝えられる修道院の
  付属教会であったのだが、現在は町の
  中央広場に面して建つロマネスク様式
  の教会である。
   身廊は三廊式で、それぞれに祭室が
  有り、さらに袖廊に左右二つづつの小
  祭室が付いているので、後陣には七つ
  の半円形祭室が重なって見える。
   身廊の柱に見るべき柱頭彫刻が並ん
  でいて、ロマネスク柱頭を愛する我々
  にとってはさながら至上の楽園のよう
  に感じられた。
   写真の柱頭は「ヘロデの宴」で、左
  蔭の部分に首を切られる洗礼のヨハネ
  が彫られ、正面にヘロデ王達の宴が描
  かれている。
   身を反らせて踊るサロメの姿は、ど
  こぞのフィギア・スケートの選手を想
  起させて面白い。
          

  
     
     アジェトモー聖ジロン教会
       Hagetmau/ Église St-Girons
    
                         1 Landes   
          
   いくら探してもこの教会を見つけることができなか
  ったので、仕方なく町役場を訪ねてみたのだが、そこ
  に係りの人がいて、待っていましたとばかりに案内を
  してくれた。鍵は彼が持っていたのだから、最初から
  役場へ行けばよかったのである。

   ここはクリプトの柱頭が見所で、外部から見ること
  は不可能だった。
   12世紀初めの創建で、クリプトの壁面などはかな
  り修復されてはいるものの、柱頭彫刻は比較的その当
  時のままであるらしい。

   写真のように雰囲気の良いクリプトで、柱は壁面に
  10本、中央に4本立っており、それぞれに特徴のあ
  る柱頭が彫られていた。
   写真一番手前の「ダニエルと獅子」や、右奥の「ラ
  ザロの奇跡」などが印象的だった。
   悪魔と戦う聖人の像も多く、中でも物凄い形相をし
  た怪物の姿が実にユニークである。
   ここは旧聖ジロン教会の祭室部分の地下であり、か
  つての三廊式であった教会の建造物は全て失われ、こ
  の部分だけが残されている。
   
           

   このページTOPへ  次のページ (Roussillon)  前のページ (Provence) 

     ロマネスクTOPへ  日本庭園TOPへ 石造美術TOPへ

   古代巨石文明TOPへ  世界の建築  総合TOPへ  掲示板へ