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| ギュイエンヌ・ペリゴール地方のロマネスク Guyenne et Périgord Romans |
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| ガロンヌ河とドルドーニュ河が合流してジロンド河となり、大西 洋に注ぐ一帯である。 何と言ってもフランス屈指のワイン産地であり、旅する楽しみは 尽きないが、巡礼路上に位置することから、数々の美しい聖堂が点 在する魅力的な地方である。 特にボルドーの東、両河の合流する三角地帯はアントレ・ドゥ・ メール地方と呼ばれ、葡萄畑の中に点在するロマネスク聖堂の姿は 格別美しい。 ドルドーニュ(ペリゴール)地方は、フォアグラとトリュフの故 郷である。「ほあぐら」と名乗っている原点は、実はここにある。 |
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県名と県庁所在地 1 Gironde (Bordeaux) 2 Lot-et-Garonne (Agen) 3 Dordogne (Périgueux) |
デュラベル教会の柱頭 Eglise de Duravel Dordogne |
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| サン・レオン・シュル・ヴェゼール/聖レオン教会 St-Léon-sur-Vézère/ Église St-Léon |
3 Dordogne |
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夏のドルドーニュ地方を旅した際に、この町と 教会を訪ねたことがある。町を流れるヴェゼール 河は澄んで涼しく、緑の柳が揺れ、この教会の塔 の影を水面に映すという、まことに美しい光景で あった。 教会の建築は理想的ともいえるほどの規模で、 十字型をしており、祭室の他に翼廊に小さな礼拝 堂を備えていた。 教会の背後に廻り、後陣を眺めると、これ以上 に無駄の省かれたロマネスク建築というものが他 に有るだろうか、と思わせられてしまうほど、こ の聖堂は均整のとれた美しさを見せてくれたのだ った。 正面の扉口に立派な装飾でも無い限り、聖堂の 最も美しい姿を見たければ後陣へ回れ、というく らいだが、これほど純粋で完璧な後姿も珍しい。 聖堂内部には若干の修復の手が入っていたが、 さして不自然ではなく、ちょうどリハーサル中の 室内楽にしばし聞きほれていたものだ。 |
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| ティヴィエール/ノートルダム教会 Thiviers/Église Notre-Dame |
3 Dordogne |
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ペリゴール地方の特産である、フォア グラとトリュフの集散地として有名な町 である。 教会はゴシック様式に修復されてしま っているが、内陣の柱頭から下はロマネ スクが保持されている。 柱頭の彫刻には様々な図像が無数に溢 れており、充分に見応えの有る作品ばか りである。 写真はその中でも最高の傑作で、聖ペ テロとマグダラのマリアに挟まれたキリ ストの像である。私の最も好きな柱頭の 一つであるが、なんと優しく愛らしい図 像であろうか。 いかなる写実をも凌駕するほどの、こ の抽象に秘められた表現力には感嘆せざ るをえない。 他にも、「ライオンと戦うサムソン」 なども有り、さらに無数の怪獣や怪物が 跋扈する不思議空間である。 |
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| ベッス/聖マルタン教会 Besse/Église St-Martin |
3 Dordogne |
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ベッスの村は、詳細な地図にしか記載されてい ないような小さな寒村なのだが、ひっそりとした しかもチャーミングな雰囲気に包まれていた。 高い塔が目印になっていて、教会を探す苦労は 全く無かった。 写真は、村の石畳の路地に面した石の門から、 教会の西正面入口を眺めたものである。 建築年代は複合していて明確ではないが、聖堂 正面の部分は12世紀、その奥一部が11世紀で 背後の翼廊や祭室・鐘塔部分は15世紀以降の再 建であるらしい。 この教会を訪れた最大の目的は、正面の門に施 された装飾彫刻だった。 特に、三重のアーチ状に彫られたヴシュールの レリーフは、とても興味深い作品だった。 アダムとイヴを主題とした場面や、多くの天使 や聖人、馬や鹿や羊などが彫られている。 人物や動物の表現は稚拙であったが、真摯な信 仰心が背景に感じられる素晴らしい彫刻だったの である。 この村で私達は、ランチの食べられそうな店を 探したのだが、雑貨屋が一軒あるのみだった。 |
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| メルランド/旧聖ジャン小修道院 Merlande/Ancienne Prieuré St-Jean |
| 3 Dordogne |
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この聖堂は、ペリギュ(Périgueux)の町の西北 約10Kmに位置している。いかにも修道院であっ たに相応しい、森の中の静かな一画である。 聖堂は単身廊のバジリカ式だが、三つの部屋が 縦に並んでいるような様式になっている。 中央の部屋の天井は円形ドームになっており、 写真はその奥の祭室部分の入口から中を覗いたも のである。 全体に12世紀の建築らしいのだが、どうやら この祭室部分が最もオリジナルに近そうである。 凱旋門と呼ばれるこの入口の柱頭の彫刻で判る 様に、質の高い内容の彫刻を随所に見ることが出 来た。この柱頭彫刻はライオンの群像で、四頭が 絡み合った美しい彫刻だった。 その他にも、ライオンや植物模様を彫った柱頭 が在る。比較的目線に近い高さに彫られているの で、ディテールまで観賞できるのが嬉しかった。 修道院の礼拝堂であったと思われるが、他の建 物は全て消失してしまったらしい。 私達はその後ここから数Km車を走らせ、ブラン トム(Brantome)という村に在る旅籠に泊まった。 水清い爽やかな宿だった。 |
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| セナック/聖母教会 Cénac/ Église Notre-Dame de Cénac |
3 Dordogne |
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ドルドーニュ地方には、英仏百年戦争 時代の要塞都市が数多く残っている。モ ンパズィエやドムなどが著名だが、その ドムの町から崖を下ったドルドーニュ川 に沿った場所にこの教会が建っている。 聖堂の背後は墓地になっていたが、こ こから眺める後陣の姿がとても美しく感 じられた。 もっともその筈で、12世紀創建当初 の建築は、写真に写っている半円形の祭 室と、両翼廊に付随したやはり半円形の 二つの小礼拝堂だけだったからである。 それ以外の翼廊や塔は取って付けたよ うな不自然さが目立つだけに、後陣部分 にはロマネスクらしい均整の取れた落ち 着きが、一際強烈に感じられる。 身廊部分の大半も失われてしまったよ うで、これらは全て後世に再建されたと 思われる。 祭室内部の柱頭には、怪獣などが活躍 するロマネスク的な彫刻が見られた。 |
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| サン・タマン・ド・コリイ/聖アマン教会 St-Amand-de-Coly/Église St-Amand |
3 Dordogne |
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この町は先述のサン・レオンの在るヴェゼー ル谷から、その支流に沿って少し山に入った所 に在る。 静かで閑散とした町だったが、黒っぽい扁平 な石を屋根に敷き、黄色い石を組んで建てられ た家並みはとても美しく感じられた。 教会は元は修道院だったらしく、門や塁壁な どは丸で要塞のように堅固である。 聖堂は典型的な十字形ではあるが、両翼廊に は八角形を半分にした小礼拝堂が付いている。 祭室は方形で、要塞のように見えるのはこうし た建築プランが影響しているらしい。 翼廊両端のファサードも、まるで城郭建築の ような風貌で、聖堂の外観はあまり美しいとは 言い難かった。 しかし、内陣は荘厳で、ロマネスクらしい石 の壁と半円アーチで構成された美しい建築であ る。高い天井と長い柱や柱頭の彫刻が創出する その空間は、とても幻想的で優麗な雰囲気に満 ちていた。 写真の柱頭は、龍と戦う聖人で、肩を噛まれ て痛そうである。 |
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| モンセンプロン/聖ジェロウ教会 Monsempron/Église St-Géraud |
2 Lot-et-Garonne |
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ロット川沿いの道を、ボルドーに向かって走っ ている途中で立ち寄った町である。 聖堂の扉が閉まっていたため、開けて貰うのに 洗濯屋のお兄さんや市役所のおじさんのお世話に なった。 内陣は複雑な構造になっていた。12世紀当初 から17世紀あたりまでの建築が、複合的に重な り合っているからである。 聖堂の基本的なプランは三廊式であり、祭室部 分が一段高くなっている。両側廊端に半円形祭室 が設けられているが、主祭室部分は細長く延長し た形で再建されている。 写真の半円形祭室部分と塔だけが12世紀のも ので、右側は再建された16世紀の主祭室部分で ある。 身廊の円柱の柱頭部分に彫られた帯状のレリー フは、かなり修復はされているものの、ケルト的 な生首の行列も見られて面白かった。 旧祭室部分の柱頭彫刻は、主題は明確ではない が素朴であり、おそらく創建当初の彫刻だろうと 思う。 心配して見に来てくれた洗濯屋のお兄さんや市 役所のおじさんに、心からの感謝を伝えた。 |
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| フレスペシュ/聖母教会 Frespech/Église Notre-Dame |
2 Lot-et-Garonne |
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モアサック(Moissac)に泊まった翌日、カオー ル(Cahors)を訪ねた帰り道に立ち寄った小さな教 会だった。 まるで農家の入口みたいだったので、そのまま 通り過ぎようかと思った時、写真の後陣建築がち らっと見えたので、あわてて車を止めたのだった。 この地方からメドック地方にかけて、後陣に特 徴を持つ教会建築が広く分布している。 聖堂全体は単身廊で三つの空間に分けられ、身 廊と鐘塔、そして祭室それぞれが半円アーチの門 で仕切られている。 まことに単純素朴な建築だが、三重のアーチや 幻想的な柱頭彫刻によって構成された内陣は、ロ マネスクの原点を見る思いにさせてくれた。 写真に見る後陣建築は、注意しなければ見逃し てしまいそうなほど素朴だが、屋根や軒持送りや 壁面の全てがお手本とも言うべき純粋美を示して いる事に気が付かねばならない。 教会周辺はまことに牧歌的な農村であり、素朴 な信仰が営まれてきたからこそ、こうした原初的 な建築が今日まで伝えられたのであろう。 |
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| モワラ/聖母教会 Moirax/Église Notre-Dame |
2 Lot-et-Garonne |
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アジャン(Agen)の郊外に在る町で、ロ マネスクに興味のある人には、通り過ぎ てしまう事の決して許されない場所であ る。 私達がこの町に着いたのは冬の日の夕 方で、堂内はすっかり暗くなっていた。 三廊式の壮大な聖堂で、身廊には左右 六本づつの太い柱が立ち、立派な祭室へ と続いている。 最も古いのは身廊と翼廊部分で、11 世紀のものである。祭室は12世紀だと 言われている。 身廊の柱にはいずれも、素晴らしい柱 頭彫刻が見られる。写真はその内の一基 で、聖人や聖女らしき人物が彫られてい るが、どういう主題かは不明である。 持参した簡易照明を横から当てるなど して、苦心惨憺努力した結果がこの写真 である。真っ暗な中にしては良く撮れた と解釈していただきたい。 見るべき柱頭が十基以上有ったので、 私達は撮影のために2時間近く聖堂に居 たのだった。 |
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| サン・ジョルジュ・ド・モンターニュ/聖ジョルジュ教会 St-Georges-de-Montagne/Église St-Georges |
1 Gironde |
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ワイン産地としてのモンターニュは、モンター ニュ・サンテミリオン (Montagne-St-Emilion) という呼称のAOCを認められた、高級赤ワイン の産地サンテ・ミリオンの衛星地区の一つでもあ る。サンテ・ミリオンの有名なシャトー群を横目 に見ながら北上すれば、すぐにモンターニュの町 に入る。ここはそのモンターニュに隣接している。 背後からの教会の眺めは素晴らしいもので、後 陣と鐘塔の佇まいは、ロマネスクが示すであろう 簡素な美しさの標本のようであった。 入口のファサードは、やや荒廃しているが、太 いアーチ、素朴なレリーフや柱頭など、この聖堂 にふさわしい質素な装飾で好感が持てる。 単身廊で祭室が有り、翼廊が付いた十字形のプ ランである。翼廊の片方の上部が、写真でも分か るように塔になっているのである。そして小さな 礼拝堂が付いており、これら全ての建築が11世 紀のものである。 一見地味だが、飲み進む内に深い味わいと香り に感動させられる、メルロー種中心のサンテ・ミ リオンのワインにも似て、通好みのロマネスクで ある。 |
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| モンターニュ/聖ジョルジュ教会 Montagne/ Église St-Georges |
1 Gironde |
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モンターニュ村の隣にサン・ジョルジ ュ・ド・モンターニュ村が在り、そのど ちらにもサン・ジョルジュという教会が 在る。 なんとも紛らわしい話だが、どちらも 素晴らしいロマネスク教会なのである。 単身廊の十字形、祭室と翼廊に張り出 た小礼拝堂二つが、共に角形になってい る。 交差部に鐘塔が建つという、典型的な 十字教会である。 部分的にかなり補修の手が入っている ので、ややまとまりの無い後陣からの眺 めとなっているが、ロマネスクの教会と しての愛らしさが感じられるのがとても 気に入ったのだった。 もっとも、モンターニュ産のサンテ・ ミリオンが安くて上質であることが、教 会の評価にまで影響しているかどうかに ついては御想像にお任せしよう。 |
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| ラ・ランド・ド・フロンサック/聖ピエール教会 La Lande de Fronsac/Église St-Pierre |
1 Gironde |
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サンテ・ミリオンからドルドーニュ河に沿って下 って行くと、これも赤ワインで有名なポムロールに 至り、その先がフロンサックである。ラ・ランドは フロンサックの外れに在る、葡萄畑に囲まれたのど かな村だった。ここにも知る人ぞ知る通好みの、隠 れた銘酒が有る。 教会は、鄙びた村のさらに村外れ、深い木立と墓 地に囲まれてひっそりと建っていた。 ボルドーの東、つまりギュイエンヌ(Guyenne)地 方と呼ばれる一帯から、サントンジュ地方にかけて の広い範囲に、装飾的なファサード彫刻を持つ教会 が数多く分布している。ここの教会もその一つであ り、扉口の見事な彫刻を見ることが出来た。 中央のタンパンは小型だが、周囲の四重アーチ装 飾は、門の大きさに比してかなり厚みのある迫縁が 圧倒的な重量感を持っている。タンパンなど、図像 の内容は分からなかったが、しっかりとした彫りの 美しさには不思議な説得力が有る。 キリストの背後の花と剣、蔓の先に有る聖堂と聖 パウロ。ここのタンパンは、丸で判じ物みたいだ。 |
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| カステルヴィエイユ/ノートルダム教会 Castelviel/Église Notre-Dame |
1 Gironde |
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アントル・ドゥー・メール (Entre-Deux-Mers) と呼ばれる、ドルドーニュ・ガロンヌ両河が合流す る三角の地帯は、白ワインの名産地であると共に、 珠玉のロマネスクが潜む隠れた聖地でもある。 この地方でも、サントンジュに似た装飾の美しい ファサードの教会が、葡萄畑に囲まれた村毎に点在 している。葡萄畑を抜けると、そこはロマンの寺だ った、などと言えば些か大袈裟だが、決してイメー ジは間違ってはいない。 ルピアック (Loupiac)、ブラシモン(Blasimon)、 ガバルナック (Gabarnac) など、優れた意匠のファ サードを見たが、中でもこのカステルヴィーユの門 が最も美しく、とても印象的だった。 両脇に小さな見せかけアーチを付けた壮大な門で あり、飾りアーチ迫縁は五重に作られている。柱頭 や小アーチ部分に美しい図像が集中しているが、全 体的には、けばけばしさの余り感じられない趣味の 良い豪華版である。装飾図像の統一的な主題は、天 国と地獄を表現したもののように私には見えた。 |
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| サンテ・ミリオン/聖エミリオン参事会教会 St-Émilion/ Colllégiale St-Émilion |
1 Gironde |
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サンテ・ミリオンのオーベルジュに泊まり、た っぷりワインと料理を楽しんだ。勿論それが目的 なのではなく、夕方訪ねた当教会のロマネスクが 本命だったのだ、と申し上げておく。 それにしても、メルロー種の葡萄を主体に醸造 されるサンテ・ミリオンは格別だった。 さて、この写真は参事会教会のファサードであ る。最も重要な地下教会 (Église Monolithe) では 暗くて人が多かったために、良い写真が撮れなか ったので、次に訪ねた当教会を掲載することにし たのである。 半円アーチの門や窓や盲アーチが、均整の取れ たアンサンブルになっている。夕陽がファサード 全体を照らし、彫刻の陰影を浮き出させていた。 身廊の天井は尖角アーチで、ややゴシック的だ が12世紀後期とされている。 翼廊や祭室部分は交差オジーヴの完全なゴシッ クで、ステンドグラスだけは美しかった。 翌日、この教会の建つ丘の西南斜面に在るシャ トー・オゾンヌの畑を訪ねたが、ボルドーを代表 する銘酒の一つであり感激した。 |
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| プティ・パレ/聖ピエール教会 Petit-Palais/ Église St-Pierre |
1 Gironde |
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サンテ・ミリオンの町を中心にして、 広大な葡萄畑が果てしなく続いている。 郊外の村に残る教会を訪ねることは、そ のままワインの里を巡ることとなる素晴 らしい旅だ。 この村も、そうした葡萄畑に囲まれた 閑静な集落だった。 村外れの墓地を前景にして、このチャ ーミングな教会が建っていた。 ここでは、正面のファサードに注目し なければならない。 聖堂建築の構造にとっては力学的な意 味の全く無い、装飾のための“見せ掛け ファサード”であり、これはお隣のサン トンジュ地方ではよく見られる様式だ。 門の左右や中段、上段に、盲アーケー ドが多用され、それぞれのアーチ部分に 繊細な模様が彫られている。 ファサード全面を利用した意匠は情熱 的で、聖堂を荘厳しようとした12世紀 の信仰心の強さと、高い美意識とを感じ 取ることが出来た。 |
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| トーリアック/聖エチェンヌ教会 Tauriac/ Église St-Étienne |
1 Gironde |
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ドルドーニュ川がガロンヌ川と合流 してジロンド川となるのだが、この村 はその合流点からかなり近い場所に在 る。前述のフロンサックからは、国道 を隔てて至近である。 この教会の正面にも、見せ掛けファ サードが造られている。国道を北上す ればすぐサントンジュであるだけに、 様式が似ているのは当然かもしれない。 門の左右と、上段に盲アーケードが 造られている。ファサード全体が、や や無骨な感じのするアーチである。 写真は、正面入口の右側に造られた 盲アーチで、半円の内部にタンパンの ようなレリーフが彫られている。 十字旗を持つ小羊はキリストの象徴 であり、受難や死を超えて復活したキ リストの勝利を表現している。 小品ながら、タンパン彫刻としても 傑作である。 左のアーチには、ポアトウ地方では よく見られる、コンスタンティヌス帝 の騎馬像が彫られている。 |
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| サン・フェルム/旧聖フェルム大修道院 St-Ferme/Ancienne Abbatiale St-Ferme |
| 1 Gironde |
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ガロンヌ川とドルドーニュ川が合流する 手前の三角州地帯は、アントレ・ド・メー ル Entre-deux-Mers と呼ばれる有名な白ワ インの産地である。 ここの村々には数多くのロマネスク教会 が残されていて、旅する私達の目的が時と して狂わされてしまうという、何とも悩ま しい地方である。 その中で最も美しい柱頭彫刻を見る事が 出来るのが、この小さな村の小さな教会な のであった。 聖堂の建築は後世に再建されたものなの だが、柱頭彫刻だけは創建時のものが残さ れている。 東方三博士礼拝、弟子の足を洗うキリス トの場面や、ライオンとダニエルなど聖書 の逸話を主題にしたものが多い。 写真右の人物は、ダヴィデによって殺さ れるベリシテ人の戦士ゴリアテである。敵 役にしては憎めない表情をしている。 ここはあたかも、柱頭彫刻美術館さなが らに楽しめる、別世界の教会だった。 |
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| ブラジモン/聖ニコラ教会 Blasimon/ Église St-Nicolas |
1 Gironde |
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前掲のサン・フェルムから比較的近い、やはり ここもアントレ・ド・メールの村の一つである。 かつては壮大な修道院であり、現在でもその遺 構が残されている。礎石を見ただけでも、いかに その規模が大きかったかが判る。鐘塔や壁の一部 が残存する部分も見られる。 この教会は、修道院付属教会のような形で、敷 地内の遺構に隣接する格好で建っている。外観は ゴシックだが、西正面の門だけにロマネスクの装 飾が残されていた。 先の尖ったアーチになっているが、六重のヴシ ュールを飾る彫刻にはロマネスクからゴシックへ と移り行く時代の特徴を見る事が出来る。 ほとんどが植物の葉の連続模様なのだが、一番 内側と四重目の帯には、とてもひょろ長い人物像 が彫られている。悪徳を意味する怪物を、美徳を 象徴する人物が踏みつけている図である。 帯状の中に収めるためなのだが、円柱に細長い 人物像が彫られる前兆と考えられ、ゴシック的な 造形へ移行する前触れででもあるかのように、私 には思えたのだった。 |
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| ラ・ソーヴ・マジュール/旧聖ジェロウ修道院 La Sauve-Majeure/Ancienne Abbaye St-Géraud |
1 Gironde |
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ボルドーとサンテ・ミリオンのほぼ中間から、 少し南に下がった辺りに、この大規模な修道院の 遺跡が残っている。 数多くの壁や円形ドームや柱など、聖堂建築の 一部がかなり当初の姿を留めたまま廃墟となって しまっている。 写真は、天井は落ちてしまっているが、側廊や トリビューンの面影を伝える身廊の内壁を撮った ものである。崩落した姿は痛々しいが、廃墟が示 す凛とした独特の美しさがとても好きだった。 堂々たる太い柱は飾らぬ素朴さの表現であり、 当代の美意識がいかに豪胆で大らかであったかを 示すものだろう。 聖堂は三廊式十字形で、主祭室の両側に小祭室 が、さらに両翼廊には小礼拝堂が付いている。 つまり、半円形の祭室が横一列に、五つ並んで いるという壮麗なものだったようだ。祭室周辺に 残る柱頭彫刻や、美しいアーケードなどがそれを 物語っている。 鐘塔のてっぺんからの眺めは抜群で、修道院全 体が見渡せる。礎石の配置から、回廊であった場 所も判る。目を遠くに転じると、アントレ・ド・ メールの葡萄畑の向こうに、美しく輝くガロンヌ の流れが光の帯のように見えた。 |
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| ボルドー/聖スラン教会 Bordeaux/Église St-Seurin |
1 Gironde |
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大都市ボルドーでは最古の教会で、聖堂建築の 大半が12世紀から13世紀にかけてのものであ り、ポーチやクリプトなどの一部が11世紀なの だと言われている。 身廊は三廊式で、12世紀の建築である。 祭室は現在方形だが、かつては半円形の祭室が あったらしい。後年に増築された部分が多く、外 観を見た限りでは、そんなに古いということは判 らないだろう。 写真は身廊入口から、ポーチ部分を振り返って 見たところである。全てに、11世紀という時代 の風格のようなものが感じられる。古色蒼然とし た中に、揺るがぬフォルムの美しさが腰を据えて 存在しているのである。 天井の半円ヴォールト、大きな柱頭彫刻、太い 円柱、堂々たる盲アーチの意匠など、どれをとっ てもロマネスクの基本的な美しさを備えている。 そして、それらが見事に調和しながら、建築全体 の美しさを構成しているのである。 クリプトの入口が閉鎖されていたので、残念な がら内部を見る事が出来なかった。 |
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| ベガダン/聖サトゥルナン教会 Bégadan/Église St-Saturnin |
1 Gironde |
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ジロンド川と大西洋に挟まれた半島はメドック (Medoc)地方と呼ばれ、ボルドーワインの重要な 産地となっている。メドックでのグランクリュ・ ワインの最北端はサン・テステフ (St-Estèphe)な のだが、この町はそこから更に北へ行ったとこ ろである。 教会の建物はわざわざ訪ねるほどのものではな いか、と正直がっかりした。しかし、背後に回り 込み、後陣を見てびっくりしてしまった。 単身廊の半円形祭室なのに、これほどまでに見 事に装飾されたものは珍しいだろう。 細長い半円アーチの窓がぐるりと並び、その上 層に盲アーケイドが平行している。それぞれのア ーチには円柱と柱頭と縁飾りが付いており、見る からにリズミカルな意匠となっている。 写真は、そのアーケイドと柱頭、そして軒持ち 送りの彫刻である。屋根のすぐ下の帯状装飾など にも、目立たぬ所にまで繊細なセンスを感じさせ るような細やかな配慮が成されている。 ワインだけでなく、ロマネスクのグラン・クリ ュがメドックに存在したことが嬉しかった。 ポイアックの宿で、取って置きの赤を注文し、 乾杯をしたことは言うまでもない。 |
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| サン・ヴィヴィアン/聖ヴィヴィアン教会 St-Vivien-de-Medoc/Église St-Vivien |
1 Gironde |
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ベガダンからさらにジロンド河口の方 に、つまり半島の先端に向かって北上す るとこの町に着く。 教会の建築を正面から見ると、ここも 全く凡庸だったのだが、祭室の後陣はベ ガダンと瓜二つの見事な装飾建築だった。 半円の細長い窓も、上層の盲アーケー ドも全く同じ意匠である。 ただ、窓のすぐ上の円形帯状のレリー フ装飾は、ベガダンでは見られなかった ものだ。 どちらが先駆的だか判らないが、影響 し合ったことだけは間違いない。同じ建 築家か石工だったのかもしれない。 もう一つの違いは、左側二つの窓が盲 アーチになっていて、半円タンパン状の 彫刻が見えることである。 左側は音楽師と曲芸師、右側には四人 の人物が対峙している場面が描かれてい る。 装飾の網目や植物模様も含め、石工の レヴェルは相当高いものだと思う。 |
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